捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 隠れ里。それはとある村が、魔女のすすめで村ごと引っ越したために生まれた小さな村だ。歴史の浅い隠れ里なので、その存在を知っている者もかなり限定されている、らしい。

 

「だからお嬢ちゃんたちが探しに来たことに驚いたよ。しかも子供二人でなんて……」

「レオンも、いっしょ」

「にゃう!」

「ああ、すまないね」

 

 レオンの抗議に、男の人は笑いながら謝った。

 今いるのは、川原のまま。軽く自己紹介をして、男の人にどうしてここにいるのかを説明したところだ。男の人はリフィルの説明をしっかりと聞いてくれていた。いい人。

 でも、何故か近づいてはこない。一定の距離を保っての会話になっていて、それがちょっぴり不思議だった。やっぱりリフィルたちのことを警戒しているのかも。

 

「多分逆だよ、リフィちゃん」

 

 そう思っていたら、小声でアレシアが教えてくれた。

 

「ぎゃく」

「わたしたちが、必要以上に警戒しないようにって離れてくれてるんだと思う」

「なるほど」

 

 じゃあ……。この人はとてもいい人だ。もちろんリフィルたちのことを警戒している気持ちもやっぱりあるんだろうけど、リフィルたちに気を遣ってくれているのは間違いないみたいだから。

 

「結界を張る旅、かあ……。それで隠れ里にも?」

「うん。けっかい、はりたい。だめ?」

「いいや。むしろ有り難いよ。僕たちの村は、もしも滅んだとしても誰にも気付かれない可能性があったからね」

 

 隠れ里の宿命だけど、と男の人が苦笑い。それは仕方ないと思ってるみたい。滅びたいわけじゃないけど、隠れ里になっているのも理由があるからなのかも。

 だって、どこの魔女さんかまでは知らないけれど、魔女さんがわざわざ引っ越しを勧めるのなら理由がないわけがないと思う。

 まあ、けれど。それらはリフィルには関係のないことだ!

 

「かくれざと、行ってもいい?」

 

 そう聞いてみると、男の人は笑顔で頷いた。

 

「もちろんだよ。むしろこちらからお願いしたいぐらいだ」

「じゃあ、いまから……」

「いや、さすがに時間がね……」

 

 男の人がそう言って周囲を見回す。リフィルも同じようにして、仕方ないと納得した。だってもうすぐ日が暮れてしまいそうだから。

 辺りは夕日でほんのり赤くなってしまってる。この辺りは川もあるためか森の木々が途切れていてまだ明るく見えるけど、多分森の中はもう真っ暗だと思う。

 

「だから、そうだね……。明日、案内に来るよ」

「わかった。えっと……。とまる?」

 

 一緒のテントはだめだけれど……。テントの側でなら休んでいってもいいと思ってる。隠れ里までは結界がないから危ないけれど、ここならもうリフィルの結界がある。だから、安心安全。

 でも。男の人は苦笑いで首を振った。

 

「申し出は嬉しいけど、僕は帰るよ。妻が心配するからね」

「わかった」

 

 家族がいるなら、確かに帰らないと心配だと思う。でも無理に帰って怪我する方がだめだとも思うけど……。そもそもここまで一人で来ているから、それなりに戦える人なのかも。

 

「それじゃあ、また明日」

 

 男の人はそう言って、森の中に戻っていった。

 

「シア。かくれざと、やっぱりあるみたい」

「うん。ここで会えて良かったね。場所が分からなかったら、どうにもならなかったし……」

 

 もう少しぐらいは探すつもりだったけど、あまりに見つからなかったらリフィルも諦めていたと思う。だから、うん。来てくれて良かった。

 

「かくれざと、たのしみ」

「うん! どんなところだろうね!」

 

 とってもわくわくだ。隠れ里。響きからして、なんだかすごいから。

 その後はアレシアとそんな雑談をしながらテントに入っていった。明日が楽しみ。

 

 

 

 そうして、翌日。朝ご飯に焼き魚を食べていたら、昨日と同じ男の人がやってきた。あと、もう一人。ちょっとお年寄りのおじいさん。

 おじいさんはリフィルたちを見て、驚いたように目を丸くしていた。

 

「驚いたのう。本当に子供だけでおるのか」

「でしょう? 結界を張る旅をしているそうですよ」

「結界……。結界か」

 

 なぜかおじいさんが複雑そうな顔をしてる。男の人も苦笑い。結界に嫌な思い出があるのかな。

 

「けっかい、だめ?」

 

 リフィルが聞いてみると、おじいさんははっとしたように我に返って、慌てたように首を振った。

 

「まさか。おぬしらの行動はとても立派なものだと思うよ。ただ、わしらの村は結界に少し思うところがあるのじゃよ」

「おもうところ」

「うむ……」

 

 なんだろう。結界に何か嫌な思い出でもあるのかな? でも、結界はとっても大事なもののはず。それに、人は問題なく通れるから、困ることなんてないはずなのに。

 

「けっかい、いらない?」

 

 そう聞いてみたら、慌てたように二人とも首を振った。結界はやっぱり必要らしい。それを聞けただけでリフィルは十分だ。それなら、隠れ里まで結界を張りに行こう。

 アレシアと二人でテントを畳む。男の人とおじいさんも片付けを手伝ってくれた。

 そうして片付けた後は、隠れ里に出発だ。どんな里なのか楽しみ。

 

「かくれざと。かくれざと」

「楽しみだね!」

「みゃあ!」

 

 アレシアとお手々を繋いでぺたぺたてくてく。二人でどんな場所なのかを想像するのはとっても楽しい。レオンもすごく楽しみにしているのが何となく伝わってくる。

 そんなリフィルたちの様子を見て、頬を引きつらせているのは男たち。

 

「ど、どうしましょう、里長。なんだか期待しているようですが」

「う、ううむ……。隠れ里と行っても、他の村と大差ないのじゃがな……」

「隠れ里の歌でも作ります?」

「お前は何を言っておる?」

 

 男たちは男たちでちょっぴり迷走しちゃっていた。

 




壁|w・)いざ隠れ里へ。
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