捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 そうしてしばらく歩き続けて、ようやく隠れ里にたどり着いた。

 

「むら」

「村だね」

「にゃう」

 

 なんだろう。とっても期待外れ。村の人に聞かれたら怒られそうなことを、リフィルは考えていた。

 だって、普通の村だから。もっとこう、隠れてる! みたいな要素があると思っていたのに。

 例えば、そう。石壁のどこかを叩いたら道ができたり。滝の裏に道があって、ちょっとした洞窟を抜けると村があったり。そんなものを期待していたのに!

 

「かくれてない」

 

 森を抜けると普通に村があった。確かに他の村みたいにどこかの道と繋がっているわけじゃないけど、それでも隠している様子もなく村がある。隠れ里ってなんだっけ?

 

「イメージと違ったかな?」

 

 男の人の問いに、リフィルは素直に頷いた。

 

「もっと仕掛けがあると思ってました……」

 

 アレシアもそう言って、男の人が苦笑いした。

 

「はは……。残念だけど、隠れ里はこんなものだよ。難しい仕掛けを作る技術なんて僕たちにはないからね」

「それにのう。隠れていない、と思うかもしれないが、道が繋がっていないだけで案外誰もたどり着けないものなのじゃよ。嬢ちゃんらもそうだったろう?」

「なるほど」

 

 言われてみれば、ちょっとした迷子になりそうだった。諦めて引き返すことも考えていたから。だから、この人たちが案内してくれてとっても助かってる。

 でも。今更だけど、どうして案内してくれたんだろう?

 

「わたしたち、よそもの。どうして、あんない、してくれたの?」

「うん? それはもちろん、結界を張ってもらうためだよ」

「んと……。しんじてくれる、めずらしい」

「え? ああ、うん……。それは、まあ……」

 

 リフィルたちもすでにいくつか村を巡ってきてる。村によっては子供だけで旅をしていることを驚かれ、理由を聞かれたりもするので正直に答えるけど……。信じてくれることの方が珍しい。

 だいたいが、それらしい理由を作ってると思われるだけだから。

 

「それにね。嘘でも別に構わないと思っているから」

「え?」

「子供だけで旅をしているんだ。それなりに理由があるだろう? それなら保護をするよ。大人なんだから」

「おお……」

 

 とても、とてもいい人だ。ここまで言ってもらえることなんてあまりないから。

 正体不明の子供なリフィルとアレシアを露骨に嫌がる人だって当然いる。それは仕方ないとリフィルも分かってる。だって、みんな自分の生活があるんだから。

 だからこそ、この人みたいにとっても優しい人と会えるとなんだか感動してしまう。

 

「さて。ではわしは先に戻るとするぞ」

「ありがとうございます、村長」

「なんの。嬢ちゃんたちよ。いつでも遊びに来なさい」

 

 おじいさんはそう言ってリフィルたちを撫でると、村の中へと入っていった。

 村長さん。とっても偉い人。だから優しい、のかも?

 さて、と男の人が気を取り直したように言った。

 

「まずは僕の家に案内するよ。この村に宿なんてものはないからね。滞在してくれて構わない」

「めいわく、じゃない?」

「子供二人増えたところで問題ないよ」

「にゃう!」

「おっと失礼、子供二人と子猫が一匹、だね」

 

 リフィルの頭の上のレオンを男の人が撫でる。レオンは分かっているならいい、とばかりに小さく鳴いた。

 

「自己紹介がまだだったね。僕はエルクだ。よろしく」

 

 エルクと名乗った男の人が手を差し出してくる。アレシアはそっとリフィルの後ろに隠れてしまったけど、リフィルがしっかりとその手を握った。リフィルはお姉ちゃんなので! 妹をしっかり守らないといけないのだ!

 

「リフィル。こっちは、アレシア。猫はレオン。よろしく」

「ああ。それじゃあ、行こうか」

 

 そうして、エルクの案内に従って村の中を歩いていく。

 村は、とってものどか。家と家の間隔は広くて、どこにも広い畑がある。ちらほらとそこで作業している人も見かけることができた。

 狩猟に出ている人もやっぱりいるみたいで、エルクも普段はそうなんだとか。狩猟中に見つけたのが、リフィルたちのたき火の煙。あれがなかったら見つけていなかったらしい。

 

「しゅりょう。おにく。とてもだいじ」

「大事だね。リフィルちゃんはお肉が好きなのかい?」

「だいすき」

「お肉があればお肉ばっかり食べるからね?」

 

 だって、お肉はとってもいいものだから。とっても美味しくて、力になる。そんな気がする。

 

「気持ちは分かるよ。やはり肉を食べないと力が出ないから」

「うんうん」

 

 この人はとても分かってる。ご飯でお肉は一番大事なのだ。間違いない。

 

「わたしがおかしいの……?」

「シアがおかしい」

「即答!?」

 

 アレシアのショックを受けたような声にエルクが笑う。なんだか、とっても楽しい気分。

 そんな話をしながら歩いた先にエルクの家があった。一階建ての小さなお家。というより、そもそも二階建ての家がこの村にはないらしいけど。

 

「ただいま」

 

 エルクが入っていくのに続いて、リフィルたちも家の中に入った。

 中はとてもシンプルだ。小さいテーブルに椅子が四つ。棚とかもいくつかある。そんな家。一応奥にももう一部屋あるみたいで、そこは寝室なんだとか。

 

「おかえり、エルク」

 

 そう言って出迎えてくれたのは、女の人。明るい金の髪に青い瞳が特徴的だ。ちなみにエルクも同じ髪色で瞳はちょっと赤目。

 

「あなたたちが小さなお客様ね?」

 

 そんな優しそうな声。優しく微笑んでいて、すぐにいい人だとなんとなく分かった。

 

「私はリリスよ。よろしくね?」

 

 隠れ里。最初はその言葉からなんとなく楽しみなだけだったけど、ここは来て良かったかもしれない。すごくいい村かもしれない。リフィルはなんとなく、そう感じていた。

 




壁|w・)隠れ里にテンションを上げて、不思議な仕掛けがないことにテンションを一番下げた子がいます。レオンっていうネコっぽい何かです。
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