捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 聖女というのは決して特別な人間ではない。ただ結界の魔法の才能に恵まれただけの、どこにでもいる平凡な少女、らしい。

 

「あの子も故郷で生まれ育って……。十歳の時に、王都から迎えが来たんだ。僕たちも詳しくはないけど、次代の聖女が十歳になると、現在の聖女の夢で女神様がお告げするとか?」

「その時まで誰もあの子に結界の才能があることなんて気付かなかったのよね」

「ふうん……」

 

 そう説明してもらえたけど、リフィルは興味がなさそうだった。本当に聖女が嫌いなんだなって思ってしまう。

 アレシアは……。聖女についてはあまり分からない。いや、リフィルには言っていないだけで、アレシアも聖女はそこまで悪くないと思ってる。

 アレシアが旅立ちを決意した日。アレシアは観測の魔女に出会って、リフィルのことを聞いた。たった一人で、この国を守る結界を張ろうとしているということも。

 恩師がいなくなって途方にくれていたアレシアだったけれど、それを聞いたからこそリフィルを手伝わないといけないと思った。おばあちゃんも、きっと友だちを助けるように言うはずだから。

 

 アレシアもある意味では聖女の結界の消失が原因でおばあちゃんを失っているけれど……。そこまで聖女を嫌いになっていないのは、被害の大きさなのか、それとも別の何かなのかは分からない。

 でも。アレシアの気持ちをリフィルに押しつけようとも思っていない。リフィルの気持ちも分からないでもないから。大切な友だちがいなくなった原因とも言えるなら、リフィルが聖女を嫌いになるのも当然、かもしれないから。

 もしも。もしもこの先、聖女の結界が消えたのが原因でリフィルに何かあったら……。その時は、アレシアも聖女を嫌いになる、かもしれない。

 

 そんなことを考えてみたけど、これもやっぱり、かもしれないの話だ。だって、リフィルはいろんな人に守られてる。あのとっても強い不思議な使い魔のトラに、何よりもいつも見守ってる魔女さんに。リフィルに何かあるとは思えない。

 だから、うん。アレシアはリフィルを手伝う。ただそれだけ。つまり結局、アレシアもやっぱり聖女についてはどうでもいい。

 

「もぐもぐもぐもぐ」

 

 リフィルはアレシアの隣でお肉をもぐもぐしてる。リフィルの足下でレオンもお肉をもぐもぐしてる。アレシアは、そんなリフィルを守りたい。それでいい。

 エルクとリリスは少しだけ残念そうにしていたけど、それ以上は諦めたみたいで同じ話題を続けようとはしなかった。

 

「そうそう。魚も捕れたからね。それも焼いてみたんだ。食べるかい?」

「食べる!」

「まだ食べるの!?」

 

 いつも思うのだけど、リフィルはちっちゃいのにとってもよく食べる。いや、アレシアも決して大きくはないけれど、食べる量はリフィルの方が圧倒的に多い。多分アレシアの三倍は食べるかもしれない。

 リフィルはずっと魔法を使い続けているから、もしかしたら体力とかエネルギーみたいなのをもっといっぱい取らないといけないのかも。だからたくさん食べる、のかも?

 

「んー!」

 

 でも。美味しそうに食べるリフィルを見るのが、結構好き。

 普段のリフィルはあまり感情が表に出ない。アレシアですら、リフィルの表情を読み取れるようになるのは時間がかかったから。

 でも。こうして美味しいものを食べている時のリフィルは、わりと分かりやすい。表情があまり変わらないのはそのままだけど、声の抑揚とか、雰囲気とか……。とっても、分かりやすい。

 そんな美味しそうに食べるリフィルを見ていると、なんだかアレシアも嬉しくなってしまう。アレシアのちょっとした楽しみだ。

 エルクとリリスも、リフィルの様子を微笑ましそうに見つめてる。

 リフィルはもぐもぐと口を動かしていたけど、ふとみんなに見られていることに気付いたのか首を傾げた。

 

「なに?」

「なんでもないよ」

「そうとも」

「なんでもないわ」

「……?」

 

 不思議そうにしていたけど、リフィルは気にしないことにしたのかそのままご飯を食べ進めた。

 

 

 

 食べ終わった後はもう辺りも暗いので、少し雑談をした後に就寝することに。

 アレシアとリフィルは寝袋を使うつもりだったけれど、エルクたちが一緒のベッドで寝ることを提案してきた。

 

「いっしょのベッド?」

「うん。子供二人ぐらい、一緒に入ることができるよ」

「んー……。わかった」

 

 一緒に寝るらしい。こういうところは、わりとリフィルはゆるゆるだ。無防備、というほどではないと思う。多分ちゃんと信頼できるかどうかはリフィルなりに見定めていると思うから。

 レオンがいるから何かあっても安心とか思っているのかもしれないけど。

 ともかく。一緒のベッド。アレシアも特に不満はない。だって一緒に寝ると、あったかくて気持ちいいから。旅の間はよく二人でくっついてるし。

 エルクとリリスのベッドに二人で潜り込む。エルクとリリスが両端で、アレシアとリフィルはその間に収まった。レオンはリフィルのお腹の上。

 

「リフィちゃん、重くない?」

「だいじょぶ」

「そっか」

「もふもふ」

「もふもふだね」

 

 両手を伸ばしてレオンをもふもふするリフィル。どことなく幸せそうだから、レオンのもふもふが本当に好きなんだと思う。

 明かりを消して、目を閉じる。そうすると、アレシアの隣のリリスに頭を撫でられた。

 

「ごめんね、嫌だった?」

「いえ……。大丈夫です」

「そう。よかった。もっとこうして、子供を撫でてあげたかったから」

「子供……いるんですか?」

「昔、ね。取られちゃったけど」

「…………」

 

 ああ。とても分かりやすい。きっとこの人たちが、聖女の両親だ。取られちゃった、というのは、王都の人たちに、ということだと思う。

 聖女の両親だからこそ、やっぱり聖女を嫌いになってほしくないんだと思う。この人たちからすると、子供を連れて行かれて、そして婚約破棄されて悪者にされて追放されちゃったのだから。

 王都を、王族をこそ、恨んでる人たちだ。もっとそう言いたいんだろうけれど……。リフィルの気持ちに配慮してくれたのかな。

 

「ありがとうございます」

「ふふ……。何のことかしらね」

 

 うん。この人たちは、優しい人たちだ。

 そうアレシアは安心して、目を閉じた。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)次回投稿は11月4日です。
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