捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

59 / 65
05-05

 

「まさかこんな子供がここまで来るなんて思わなかったわ」

 

 部屋に入ってきたのは女性の兵士さん。兵士さんはリフィルたちを見ると、目を丸くして驚いていた。まんまるおめめ。

 剣をしまってくれた兵士さんに、旅をしていてここまで来たことを説明。とりあえずはそれで納得してくれたみたい。安心。

 

「へいしさん、いきのこり?」

「ええ、そうね。姫様が隣国の菓子が欲しいと言ってね……。城になかったから、私が買いに行ったのよ。その間に……」

「まもの、きた?」

「そう」

 

 幸運、だったのかも? そのおかげでこの人は生き残れたのだから。

 でも、兵士さんはとても悔しそうにしていた。

 

「私は……本来は姫様の護衛だったの。ちょっとわがままだったけれど、無理難題を言うような子じゃなかったわ。明るくて、がんばりやで……。お菓子も、お菓子好きのメイドがいつか食べてみたいって言っていたから、こっそり買っておいてサプライズにするつもりだったのよ」

「いい人だったんですね」

「ええ。せめて……私は、あの人を守って死にたかった……!」

 

 ぎゅっと剣の柄を握る兵士さん。その気持ちは、ちょっとだけ分かってしまう。リフィルも、あの子と一緒にいたかったから。

 

「その……。ドレス、ごめんなさい……」

 

 アレシアがそう言うと、兵士さんははっとして笑顔で首を振った。

 

「気にしないで。姫様も、持ち物がこのまま朽ちてしまうより、誰かの役に立った方がきっと喜ぶはずだから。宝石とかも持っていって構わないわ。ドレスも……着せてあげる」

 

 ほらほら立って、と兵士さんに促されて、リフィルとアレシアは立ち上がった。とっても優しい兵士さんだ。どれが似合うかな、なんて言いながら選び始めてる。

 

「姫様はいろんな国の服をお持ちだったから……。いろいろあるわよ」

「おー」

「気に入った衣服があれば、それも持っていってね」

「いいの?」

「いいのよ。きっと、その方が喜ぶから」

 

 リフィルにはよく分からない感覚だけれど、そういうものらしい。きっと姫様という人は、とってもいい人だったんだと思う。

 そんな人も魔物に食べられてしまったのだと思う。良い人も、悪い人も、みんなみんな食べられて……。会ったことがないから実感はわかないけど、悲しいことだと思う。

 兵士さんに手伝ってもらって、ドレスを着てみる。アレシアは赤いドレスで、リフィルは青いドレスだ。背中がぱっくり開いたドレスで、なんだかとってもすーすーする。

 

「へん」

「そう? リフィちゃん、かわいい!」

「んぅ……。シアも、かわいい」

「えへへー」

「にゃあにゃあ!」

 

 二人で見つめ合って、アレシアがなんだか照れ臭そうにはにかんだ。それがとってもかわいいと思う。リフィルもかわいいらしいけど……。よくわからない!

 レオンはにゃあにゃあ鳴きながら器用に後ろ足で立って、前足でぺふぺふ拍手してくれてる。似合ってる、と言ってくれてるのかも。そんなレオンもやっぱりかわいい。

 

「うんうん。二人とも、とってもかわいい!」

 

 兵士さんがにこやかに褒めてくれる。褒めてくれるのはいいけど……。また新しい服を取り出そうとしてる。

 なんだか、嫌な予感がする。具体的には、かなり前に訪れた魔道具職人さんがいる町の、お針子さんの勢いに似てる。そんな気がする。

 つまりは! めんどくさいやつだ!

 

「シア。まかせた」

 

 そっと逃げようとしたら、腕をがっしりと掴まれてしまった。

 

「にがさないよ、リフィちゃん」

「にゃ」

 

 なんと足はレオンにホールドされてしまってる。前足で抱きつくような形でがっしりと。かわいい! ふりほどけない! 困る!

 

「さあ、次にいきましょう」

 

 兵士さんが出してきた服は、また違うタイプの服だ。今回のはドレスじゃなくて……。ローブ。魔女さんが着ているようなローブだ。

 

「ほらほら」

 

 兵士さんに急かされて、お着替え。ドレスは着るのも脱ぐのも大変だけど、ローブはとても簡単だった。ポンチョのようなローブなので。頭から着て、頭を出す。ただそれだけのローブだ。

 

「リフィちゃん、魔女っぽい!」

「シアも、まじょ」

「えへへー」

 

 みんな魔女っぽい。ただ、このローブは手も出せないから、ちょっと動きづらいと思ってしまう。不便。ちょっと、不便。

 でも兵士さんもレオンも喜んでいた。レオンは訳知り顔でうんうんと頷いてる。なんだこの猫。

 

「どうしてこんな服があるんですか?」

 

 アレシアが聞くと、兵士さんが苦笑いして教えてくれた。

 

「姫様は魔法に憧れていたのよ。魔女にもちょっとだけ憧れていたみたいでね……。あまり人には言えなかったから、この服もほとんど着れなかったわね」

「そう……」

 

 魔女が、リフィルの知る魔女さんみたいな人ばかりだったら、きっと違っていたんだと思う。魔女さんのような人が少数なのは分かってるけど。

 

「ほら、次!」

「まだあるの?」

「次で最後にするから!」

 

 そんな兵士さんに呆れながらも、着替える。これもまたちょっと着方が分からなかったけど、兵士さんが手伝ってくれた。

 なんだか不思議な服だ。明らかに今までの服とは違うもの。

 

「これは極東の民族衣装で、和服、というものよ。不思議な形状だけど、かわいいでしょ?」

「かわいい?」

「リフィちゃん、かわいい!」

 

 アレシアはそれしか言ってない気がする。でもアレシアもかわいいと思う。

 そしてレオンは。

 

「にゃああああん!」

 

 右前足を掲げていた。ガッツポーズ、みたいな感じ。我が人生に悔いなし、みたいな言葉が聞こえてくるような気がする。きっと気のせい。

 でも……。レオンが好きなら、たまになら着てもいいかも。

 結局、着させてもらった服は全部もらうことになってしまった。売るのももったいないので、大事にさせてもらおうと思う。

 




壁|w・)きせかえ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。