捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 かぽかぽと、お馬さんがたくさん歩いてくる。リフィルは最初、先頭の女の人を見つめていたけど……。お馬さんに意識がいった! だってかわいいので!

 

「おうまさん!」

 

 ちょっぴりわくわく。撫でたい。とても、撫でたい。でも今走っていったらお馬さんがびっくりしてしまう。だから今はまだ、ちょっぴり我慢だ!

 お馬さんたちがリフィルたちの目の前で立ち止まる。先頭の女の人が口を開いた。

 

「ようやく、追いつきました……!」

「おうまさん!」

「あれえ!?」

 

 女の人が何か話しているけど、無視。だって目の前にお馬さんがいるから!

 リフィルが手を伸ばすと、お馬さんが顔を近づけてくれた。お顔をなでなで。すべすべで、とてもかわいい。レオンのようなもふもふも好きだけど、この子も好き。

 

「で、殿下。どうしましょう。いきなり無視されました」

「ああ……。この子が、その……。新しい聖女で間違いないのか?」

「はい。あの新しい結界の魔力を感じられます」

「なんと……」

 

 お馬さんをたっぷりなでなでして、満足した。それじゃあ、とリフィルは振り返って、

 

「シア。かえる」

「あ、うん。そうだね」

 

 そのまま帰る。だってもう用事は終わったので。

 でもやっぱり、それは女の人たちが許してくれなかった。

 

「待って! 待ってください!」

 

 そんな、女の人の声。リフィルはそれでも無視しようと思ったけど、兵士さんがちらちらと気にしていたので、仕方なく相手することにした。兵士さんにはいろいろお世話になったから仕方ない。

 

「なに?」

 

 そう返事をすると、女の人は安堵のため息をついた。身なりをぱぱっと整えて、こほんと咳払い。そうしてから、名乗った。

 

「私はリーリア。かつてこの国で、聖女と呼ばれていました」

「うん。わたしは、リフィル。結界を、つくってる」

「はい……。その、新しい結界のことを知って……。是非とも、あなたにお会いしてみたいと思っていたんです」

「ふうん」

 

 聖女と聞いて、アレシアが心配そうにこっちを見てる。心配しなくても、いきなりケンカをしたりはしないのに。だってそもそも、リフィルは聖女に興味なんてないのだから。

 

「じゃあ、これでおわり。ばいばい」

 

 いちいち会話をすることすら面倒。それがリフィルの本音だ。だって、リフィルには関係のない人だから。

 

「お願いします! 待ってください!」

 

 でも、聖女さんはそれで納得してくれないらしい。どこか必死とも思えるような顔でそう言ってくる。それでも無視してお城に戻ろうと思ったけれど、

 

「その、聖女様がああ言っているから、話をしてみては?」

「…………。ん……」

 

 お世話になった兵士さんに言われると、リフィルも無下にはできなかった。心の底から面倒だけど。

 もう一度、聖女と向き合う。アレシアがやっぱり心配そうにしてるけど、とりあえずはリフィルに任せてくれるみたい。

 

「その、ですね……。私は今まで、結界を張っていました」

「うん」

「ですので……。お手伝い、できるはずです。あなたに協力させてくれませんか?」

 

 そんな聖女さんの申し出。どうしてそんなことを言うのだろう。リフィルには理解できない。

 

「どうして?」

「え? あ、その……。今までの経験がありますから。私も、今はサハル王国の結界で手一杯ですけど、お手伝いぐらいなら……」

「聖女のてつだいは、いらない」

 

 がんばって結界を張らないといけない、とは思ってる。でも。それでも。

 

「わたしは、聖女が、大嫌い」

 

 そう、正直に言った。

 

「え……。あ、あの……。私、何かしましたか?」

「結界、きえた」

「え?」

「結界、きえたから……。わたしのむらが、なくなって。あの子が、いなくなった」

 

 結界が消えた理由。それは、聖女が結界を張らなくなったから。

 どうして張らなくなったのか、その理由はよく分からないけど……。それでも、結界が消えた結果、村がなくなってあの子がいなくなった。それは、変わらない事実。

 そう、つまり。

 

「お前のせいだ」

「あ……」

「お前のせいで、わたしのむらは、きえた。あの子が、いなくなった、だから……。わたしは、聖女が、大嫌いだ!」

 

 聖女にも何か理由があったのかもしれない。そんなことは分かってる。分かってるけど、どうでもいい。大切な片割れがいなくなった。ずっとがんばっていたあの子が、どこかにいってしまった。

 あの子だってがんばっていた。村がずっとあるように、魔物が来ても大丈夫なように、たった一人でがんばっていた。そのがんばりが報われなくて、みんななくなって、あの子もいなくなった。

 全部、全部、聖女のせいだ。

 

「嫌いだ。お前が嫌いだ。私の前からいなくなれ。どこかにいけ。消えろ!」

「り、リフィちゃん、落ち着いて……!」

 

 リフィルの後ろからそっとアレシアが抱きしめてくる。それだけで、興奮がゆっくりと静まっていく。それでも、リフィルは聖女を睨み付けた。

 

「そ、その……。私は……。結界は……。あの……」

 

 聖女は、顔を真っ青にして、何かを言おうとしてる。でも意味のある文章になってなくて、何を言いたいのか分からない。

 そんな聖女の代わりに、後ろにいた男の人が前に出てきた。

 

「聞き捨てならないな」

 

 なんだかかっこいい人、だと思う。多分。誰だろうと首を傾げると、男の人が名乗ってくれた。

 

「私はサハル王国第一王子、チェスターだ」

「おー……。おうじさま。すごい?」

「え? す、すごいかは分からないが……。ともかく!」

 

 こほん、と咳払い。そうしてから、王子さんが言った。

 

「リーリアはずっと、国のために結界を張り続けてきた。幼い頃に両親と引き離され、休むこともなく、ずっとだ。それなのに、この国に裏切られた! 先に裏切ったのは、この国だ。それとも君は、リーリアに犠牲になり続けろと言いたいのか?」

「んむ……」

 

 なんだか難しいことを言われてる。えっと……えっと……。

 

「あの、チェスター様……」

「言わせてくれ! 君が悪し様に言われるのは耐えられない!」

 

 ああ、きっとあの人は、聖女さんを大切にしている人なんだ。大人の、こわいひと。それが、リフィルに対して、怒ってる。

 

「君だって! 今まで結界なんて張っていなかったんだろう! リーリアのことを責める資格が君にあるのか!?」

「……っ」

 

 こわい。とてもこわい。でもそれ以上に。

 ずるい。

 どうしてあの人の側には、大切な人がいるんだろう。

 

「あの、リフィちゃ……、わあ!?」

 

 そんな、シアの声。驚いて振り返ったら。

 

「むぎゅ」

 

 レオンが顔にくっついてきた! そのままよじよじのぼって、リフィルの頭の上へ。リフィルがあわあわと慌てている間に、

 

「ごめん。ちょっとだけ、交代しよう」

 

 そんな懐かしい声が聞こえたかと思うと、リフィルはいきなり意識が遠くなってぼんやりとした。

 そのぼんやりとした感覚は、あの子の中からのんびり世界を眺めていた時のそれだった。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)ちっちゃい子を大人げなく責める王子がいるらしい。
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