捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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01-06

 魔女さんに続いて、リフィルもお家の中に入った。

 ちょっと広い部屋だ。部屋の中央にはテーブルが置かれてる。出入り口のドアの側には、料理をする台。火を使えるようには見えないけど、魔女さんには魔法があるから必要ないのかも。

 部屋の奥にはもう一つドアがあって、そこは寝室兼書斎なんだとか。本がいっぱいあるらしい。

 さらにそのドアの隣には梯子があって、二階に行けるようになっていた。二階というか、屋根裏部屋みたいなものらしい。ただの物置とのこと。

 

「おー……」

 

 これが、魔女さんのお家。なんだかとってもかわいらしい。

 

「じゃあ、椅子に座ってね。晩ご飯は……どうする?」

「パン、いっぱい」

「食べてたみたいね。フォースの目を通して見ていたから」

 

 フォースが見ていたものは魔女さんも見ることができるらしい。それはとってもすごい。リフィルもレオンの目を通して何かを見るとかできるのかな。やってみたいけど……。

 

「魔法の一種だから、難しいわよ」

 

 無理そう。素直に諦める。それを覚える時間があるなら、結界を作らないといけないから。

 晩ご飯はいらないけど、飲み物はいれてくれた。温かい茶色の飲み物。ちょびっと飲んでみると、とても甘い飲み物だった。甘くてほかほか。幸せのお味。

 

「なにこれ?」

「ホットチョコレート。隣の国で買えるのよ。交易品らしくて、高いけどね」

「おー」

 

 チョコレート。とても甘い飲み物。こんなに美味しい飲み物があるなんて、世界ってすごい。

 ちびちびこくこく飲んでいたら、魔女さんが気遣わしげにリフィルを見ていることに気が付いた。

 

「ねえ、リフィル。本当に、旅に出るのよね?」

「ん」

「そう……。それじゃあ、旅に必要なものを用意するから……。三日。三日ちょうだい。それなら待てるでしょ?」

「わかった」

 

 もとより急ぐ旅でもないから。それぐらいなら待とうと思う。でも、急いでも仕方がないとはいえ、他の村とかが心配でもある。何も起こってなければいいけど。

 

「ちなみにだけど。他の村や町は、まだそこまでひどいことになっていないみたいね」

「そうなの?」

「ええ。各地にいる使い魔に様子を見させたから」

 

 魔女さんはこの国の、どころか世界中のいろんな場所に使い魔がいるみたい。それらの目を通して、世界がどんな動きをしているのかも調べているのだとか。魔女ってすごい。

 

「被害が大きかったのは、二ヶ所。あなたの村と、王都」

「おうと」

「あー、えっと……。首都……も分からないか。王様が住んでる、一番大きな街よ」

「おおー」

 

 それはなんだかとってもすごそうだ。いつか、是非とも見てみたい。大きな建物とかあるんだろうなあ。

 そこまで考えて、あ、と思い直した。魔女さんが言うには、被害が大きかった場所ということ。つまり今は……ひどいことになってる。リフィルがいた村のように。

 リフィルがちょっとだけしょんぼりしていたら、ずっと抱えていたままのレオンがリフィルの腕をなめてきた。元気づけようとしてくれてる。なんだかすごくかわいい。

 よいしょと抱き直して、レオンをもふもふしてみる。ふわふわなレオンは抱いていてとっても心地良い。お腹に顔をうずめてみれば……とてもいい匂いだ。とてもいいもの。

 

「みゃあ!」

 

 さすがにレオンに抵抗されて、小さな前足で押し返されてしまった。残念。

 

「だめ?」

「みゃ……!?」

 

 じっと見る。レオンはちょっと視線をさまよわせていたけど、諦めたようにため息をついて力を抜いてくれた。それじゃあ、もう少しだけ。ふがふが。

 そうしてレオンとじゃれていたら、魔女さんが小さく笑っていることに気が付いた。

 

「ふふ……。仲良くなってくれて、良かったわ」

「レオン、かわいい」

「そうね。とってもかわいいと思う。さすが私」

「うん……?」

「なんでもない」

 

 レオンを見つけてくれたのは魔女さんだから、間違いではないだろうけれど……。なんだか別の意味があるような気がする。リフィルには分からないけれど。

 

「話を戻すけれど……。他の村や町については、そこまで大きな被害がないみたいね。理由は分からないけど、王都を攻めた後は活発には動いてないみたい。魔物の発見報告が増えたぐらい、かしらね」

「そうなんだ」

 

 それならしばらくは安心、かもしれない。でも動いてない理由が分からないから、あまりのんびりもしていられないかも。

 責任重大。リフィルはがんばらないといけない。ふんすふんす。

 そんな謎のやる気を出しているリフィルを、魔女さんはなんだか微笑ましげに眺めていた。

 

 

 

 晩ご飯は周辺で捕れた鹿肉のシチュー。不思議な調理法でとっても柔らかくなっていて、味付けも濃いめ。香草とかいろんなものを使ってる、らしい。最初はパンをたくさん食べたからいらないと思っていたけど、作っているのを見ていると美味しそうで、食べることにしてしまった。

 あとは、ふわふわパン。魔女さんはどうやってこのパンを作ってるんだろう。

 

 こんなに美味しい物ばかり食べていたら、あまり食べられないだろう旅はちょっと不安だ。リフィルはすっかり食べることが好きになっていた。

 リフィルの隣では、レオンがテーブルの上で同じ物を食べている。前足で器用にお皿を支えて、一心不乱にシチューをもぐもぐしてる。そのせいでお口の周りはべちゃべちゃだ。ふわふわが台無し。あとで拭いてあげないと。

 そう思うリフィルには説得力なんてない。リフィルも口の周りがべちゃべちゃなので。

 

「もうちょっと落ち着いて食べなさいね」

 

 魔女さんは楽しそうに笑いながら、リフィルの口の周りを拭いてくれる。それがなんだか、とっても心地良い。

 家族って……こんな感じなのかな?

 

「食べ終わったら、この本でも読んでおいてね。レオンと遊んでいてもいいけど」

「ん」

「それじゃあ、寝る時間になったら戻るから」

 

 魔女さんはそう言うと、自分の部屋に入っていってしまった。リフィルの旅の道具を作ってくれるのかも。とても楽しみ。

 ご飯を食べ終えたリフィルは言われた通りに本を読もうとしたけど……。今日はちょっとレオンと遊びたい気分になってしまった。今日だけ。今日だけだから。

 レオンの口の周りを拭いてあげて、ふわふわレオンを抱きしめる。レオンと遊ぶのって、何をすればいいんだろう。

 

「レオン。何かしたい?」

「ふにゃ」

「んー……?」

 

 レオンはテーブルの上で……何もしない。ちょこんと座って、リフィルを見つめてる。撫でようと手を伸ばすと、レオンも前足を出してきた。

 

「ん……。にぎにぎ」

 

 その前足を握ってみる。前足もふわふわで……ぷにぷにだった。これは、そう。噂に聞く肉球だ。これはとてもいいもの。触っていて気持ちいい。

 

「にゃあ」

「ぷにぷに」

「うにゃ」

 

 レオンの肉球を堪能していたら、もう片方の前足も出してくれた。両手でにぎにぎ。とても幸せ気分。レオンはかわいくて、とってもすごい!

 

「にゃあ?」

 

 レオンが何かを聞いてくる。使い魔の繋がりがあるからなのか、なんとなく、言いたいことが分かる……ような気がする。なんとなくだけど。

 

「んと……。さびしいか? よくわからない。わたしはずっと、ながめていただけだから」

「にゃあ……」

「ずっと。ずっと、あの子のなかから、ながめてた」

「ふにゃ?」

「うらんでない。あの子はずっとがんばってたから。だから、ここからは、わたしががんばる。あの子がもどってきた時のために、がんばるの」

 

 あの子の魂は疲れて出て行ってしまったけど……。それでも、消えてしまったわけじゃないから。だから、リフィルががんばるのだ。あの子が戻ってきた時に、安心して過ごせるように。

 しっかりと結界を張って、あの子が幸せに過ごせる場所を作る。それが、リフィルのお仕事。

 

「あの子がもどってきたら……。わたしはまた、のんびりながめる。たのしみ」

「ふにゃあ……」

「どうしておちこむの?」

 

 なんだかレオンがしょんぼりしてしまった。とっても申し訳なさそうな、そんな顔、の気がする。頭を撫でたり喉元をこちょこちょすると、レオンは気持ち良さそうに目を細めた。かわいい。

 

「にゃあ!」

「ん……。よろしく?」

 

 なぜかやる気たっぷりなレオンに首を傾げながら、リフィルは小さく首を傾げた。

 




壁|w・)ひたすらもふもふするお話。
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