とある野球の真剣勝負   作:爪先

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 前回は科学サイドピンチで終わりました。


その2

「なんとかできるかもしれません。とミサカはとっておきの秘策を自信たっぷりに提供します」

 

 一回の表、魔術サイド側の攻撃。先頭バッターにヒット、バントで二塁とされてからまたヒットでワンアウト一、三塁。

 バッターは、後方のアックア。

 

 内野陣の話し合いはまとまらず、どうしようもない空気が漂い始めた時。

 

「ミサカはとっておきの秘策を……」

「わかった、わかったからとにかく言ってみなさい」

 自信たっぷりと言いながらやっぱり無表情の御坂妹。しかし勝負に勝ちたいという思いは強いのか熱心に作戦を語り始めた。

 

「……とミサカは作戦の説明を終わります」

 

 聞き終えた御坂と佐天は。

「いいのこれ」

「おもしろいし良いんじゃないですかー?、……というか私クローン計画のこと知ってていいのかな……」

 真面目な吹寄はもちろん反対した。

「そんなのルール違反もいいところよ!!やっぱり私のフォークで……」

「だからフォークはな……」

 結局意見はまとまらない中、近江がこちらへ歩いてきた。もう時間がない。

「もうこれに賭けてみるしかないんじゃない?どのみち普通にやってたら大きいの一発浴びて序盤から流れを相手に渡すことになるわ。何か他に作戦ある?」

 御坂の一言にみんな首を横に振った。

「じゃあそれでいきましょ。絶対ゼロに抑えるわよ!!」

 

 

 

 

 

「……なにあれ……あんなの私の知ってる野球じゃないわ……」

 観客席はどよめいていた。

「はっ、向こうの作戦はぶっ飛んでるな。妹にでも見せたら失神しそうだ」

「……明らかにルール違反ですよね……?」

 相手ベンチもどよめいていた。

「なになに一方通行コレなんか知ってる?」

「……」

「なんだこれ、アリなのかこれ……?」

 ついでに外野守備陣もどよめいていた。どよめく球場の注目は御坂妹に集められる。

 と言っても、それは一点ではない。

 

 どういうことか?

 

 内野には妹達が50人ほど、集結していたのだ。

 

 

 

「内野50人シフト?」

 

「そう言ってた、ってミサカはミサカはネットワーク内作戦会議の結果を簡潔にお伝えしてみる」

 観客席の打ち止めと芳川だ。さっきまで芳川が解説役だったが、今は逆転している。打ち止めはアホ毛をぴょこん、と揺らしながら、

「もともと野球には内野5人シフトというものがあるんでしょ?ってミサカはミサカは確認中」

 芳川はうなずく。

「ええ、それは外野手が一人内野の守備に参加して、内野へのゴロは絶対アウト、外野に飛んだら諦めるという、捨て身的な守備の方法だったと思うけど……」

 普通、内野5人シフトは九回裏サヨナラのピンチなどで見かける守備体形だ。どのみち外野フライでも失点してしまう、無死か一死で三塁にランナーがいる場面などである。三遊間にレフトが入ってきたり、スクイズを警戒して投手の横に陣取ったり、とにかく内野の守備を固めてサヨナラ負けを防ぎに行く。成功するとレフトゴロが記録されたり7-2-3の併殺が見られたりするが、しかし内野の守備が固まる一方外野は穴だらけとなり、そっちに飛ぼうものなら即失点、とにかくリスキーな方法なのだ。まして一回の表にやるようなことではない。大量失点の可能性が上がるからだ。一点でも入ったら負けの、極限の状態で一点を防ぎに行くシフト。

 それが内野5人シフトなのだが。

「これを50人でやるってことなのね?」

「そうそう、今回は数にまかせてもう人数を増やしちゃってるから、外野も穴ができないし、内野のどこに飛んでも誰かが守ってるし、なんなら外野のほうにも被ってるからカンペキかも、ってミサカはミサカは誇ってみる」

 つまり、内野を固めるために他に穴ができるなら、いっそメンバーを増やそうということである。しかし当たり前だが野球は九人対九人で行うスポーツだ。メンバーは増やしてはいけない。

 ……乱暴すぎる。

「こんなの審判は認めてくれるのかしらね?」

 芳川の視線は審判団のほうへ向けられた。審判長の近江をはじめ御坂妹も含めてなにか話し合っている。

「むっ、10032号は遺伝子レベルで同一なことを生かしてゴリ押しをはじめているみたい、ってミサカはミサカはレポートしてみたり」

「仮にほぼ同じカラダの選手としても、出場は認められないでしょう……」

 

 ところが主審近江、これを認めたようである。

「あー、あー、責任審判の近江だ……です。科学サイド側の選手起用について説明いたします。内野守備についた選手たちですが、二塁手として登録されているのは『妹達』という総称であり、また我が甲賀にも分身の術などあるし、まあいんじゃないかということで、試合を再開する……いたします」

 観客席の反応はバラバラだ。純粋に野球を楽しみたかった人と、無茶苦茶なお祭り騒ぎが好きな人とで分かれている。たぶんここまで読んでくれた人もそうなのではないだろうか。頼むからこの先も読んでください。

「そりゃおっけーになるんだよ。だって投稿者が書きたがってるんだもんね。こーしえんで横浜高校が使ってから」

 インデックスはそもそも違う視点で試合を眺めている。

「インデックスちゃん、メタ発言はやり過ぎると嫌がる人は嫌がるよ」

「それもメタ発言かも」

 

 

 魔術サイド側からも抗議は来なかった。

「……そのような計など無用。私が狙うのはホームランである」

 何事にも驚かないアックア。冷静そのものといった表情で、ただピッチャーにのみ集中している。相手が何をしようが、自分は自分のスイングをするだけ。そう決めている。というか、自然とそうなっている。

 自分がどこまでできるか。打席ではそれだけを考える。

 より一層表情が引き締まる。

 

 

「来い」

 

 

 

 さて、内野には50-4=46人の妹達が新たに入ってきた訳であるが、彼女たちはどのような心境であるのだろうか。

「あのミサカだけに出場させるのは納得がいきませんでした、ここからはミサカの時代だぜ! とミサカ一三五七七号は宣言します」

「学園都市の牛若丸とはミサカのことです、とミサカ一〇〇三九号は読者の野球知識を試しにかかります」

「せっかく南極から来たからにはアウトの一つでも捕って帰らなければ、とミサカ一〇七八二号は気合を入れます」

「原作でちょろんとしか出番のなかったミサカはどんなキャラで行けばいいのかわかりません、とミサカ一二〇八三号は投稿者の悩みをミサカの発言として吐露します……」

内野というか外野までミサカミサカの大ミサカだ。これならどこに飛んでも誰かが捕りそうなものだが、

 逆に、

「これ、お見合いが大量発生するんじゃないの?」

 ショートの定位置にいて妹達に囲まれた御坂が言う。

 そう、この守備の弱点はそこだ。守備は人数が多ければ多いほどいいものでは、必ずしもない。例えば通常、ショートが少し動けば捕れるという打球も、このシフトでは2、3人が関わりうる。それ以上かもしれない。複数人が同じ打球を追うとなれば、当然どちらが捕るのか、が問題となり、衝突が発生するだろう。

「いえ、お姉様が心配するような事態にはなるはずがありません、とミサカは断言します」

 上条から御坂妹と呼ばれる彼女が答えた。

「ミサカたちはネットワークで瞬時の連携が可能です、これでお見合いは避けられます、とミサカは自信満々に答えます!」

「本当に大丈夫かしら……」

 

 

 

 様々な混乱の後、ついに試合が再開した。

「ピッチャーの彼女はあの巨人に真っ向勝負でいくのかな?とミサカはミサカは疑問を投げかけてみたり」

「内野5人シフトの時は、併殺をとりやすいように満塁にしてしまうけどね。今回もそうしてくるんじゃないかしら?」

 芳川の言う通り、吹寄青髪バッテリーの考え方は敬遠である。吹寄が振りかぶって投球動作に入ると、キャッチャー青髪は腰を上げて大きく外れた位置にミットをかまえた。

 ボールはゆるゆるとアウトコースからだいぶ離れた位置に捕球される。

 ワンボール。

「ふむ。逃げるのであるか」

 別ににらんでもいないのだろうが打席のアックアはおそろしいほどの迫力だ。青髪はちょっとひるむ。

「も、もも申し訳ないけどこの打席は勝負避けさせてもらいます」

「……それで勝った気にはならないことである」

 

 その後もボール、ボールと投げて、

 4球目。

「ボール、フォアボール!」

 

 

 

 

 

 

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