男の娘シスターに憑依転生した俺が神を殺すまで〜クソ難易度の死にゲー世界の男の娘シスターに憑依転生した俺はクソッタレの神に復讐をする〜   作:ミタケ

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第十三話 狙われる者

「ようこそー」

 

 あれから一時間近くして、俺は本日の目的の場所である図書館に来ていた。

 

 広いな……何かの魔法でも使われてるのか?

 

 やる気のない管理人の挨拶を聞きながら中に入ると、外観からでは考えられない程の広さを持つ図書館が視界一杯に広がっている。

 

 その広さは明らかに外観よりも広い。空間を広げるような魔法でも使われているのだろうか?

 

 空間を広げるなんて、魔法でも不可能に近い領域のような気もするが……

 

 まぁ、それに関しては今考えても仕方ない事なので無視する事にしよう。

 

 そんなことを考えながら、膨大な量の本の中を歩いていく。

 

 今ざっと見ただけでここにある本の量は、人間が一生を読書に費やしても百分の一も読めないであろう数。

 

 読書好きの人間がこの空間を見たら嬉しさのあまり失神する程だろう。

 

 まぁ、俺は勉強とか読書が特に苦手なため。この量の本を見ると蕁麻疹が出来そうになるのだが……

 

 そんなことを考えても仕方がない。俺は目的の為ならば、なんだってやる男である。

 

 蕁麻疹が出来そうな中歩いていくと、目的の情報が並ぶ棚へ来た。

 

 ……時空神クロノスに、関する伝承が書いてある棚である。

 

 本棚を見てみると軽く百を越えるような本の量。

 

 ……今から読むであろう、本の数を見て軽く眩暈がしてきた。

 

 これが漫画ならいくらでも読めるのに……

 

 そんな泣き言を言っても仕方がない……俺はあの呪を解くための情報を探すべく、本棚にある本を一冊を手に取るのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

 本を読み始めてからどのくらい経っただろうか?

 

 体内時計の感覚では4~5時間ほど経ったような気がする。

 

 本に囲まれた静かな空間にいると、時間間隔が狂いそうである。

 

 この世界では時計もないので余計にだろう。

 

 そういえば、この世界には時計という物が存在しない……いや、正確に言うのならば時間を指し示す物を作ることは禁忌とされている。

 

 何故か? と言われれば時間に関する物は、全てクロノスの領域だそうでそれを犯すのはタブーな事らしい。

 

 そういうわけでこの世界では、時間を確認する手段は月や太陽の場所の確認しかない。

 

 そういうわけで時間に関することはとても不便である。

 

 クロノスとかどうでもいいから時計を作って欲しいところだ……特に俺は、朝が苦手なので目覚まし時計が欲しいところである。

 

 いっその事俺が作ってやろうか? ……クロノスの事を、特に信仰している教会の連中や天使共が五月蠅そうだが天使共の宣戦布告としてありだろうか……

 

 天使共に関してはこっちに来た瞬間から狩って情報を引き出せば、クロノスに近づく効率が上がりそうなので手段としてはありである。

 

「天使狩り……ありだな」

 

 教会の連中に聞かれたら目をかっぴらいて突撃してきそうなことをつぶやく。

 

 まぁ、俺に時計やら何やら作る手段や知識が存在しないので不可能な事なのだが。

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 話が逸れたが、今は大体何時くらいだろうか?

 

 一回休憩がてら、外の空気でも吸おう。

 

 そうして、感覚としては4~5時間ほど前に来た道を引き返す。

 

 数分ほど歩いて図書館から外に出る。

 

 数時間ぶりの外の空気がうまい! ……と思いながら、外の景色を見ると……図書館に入った頃と変わらない太陽の位置。

 

 ……あれ?

 

 あまりにも本が嫌いすぎて時間を止めたのか? いやいや……その筈は無いだろ。さっき迄読んでいた本の内容も覚えているし。

 

 意味が分からない現象が起こり、混乱していると前方から何かこっちに向かっている姿が見えた。

 

 目を凝らしてその方向を見てみると、駆け足気味で走っているシャルの姿……。

 

 因みにシャルは獣人族である。

 

 そして獣人族は身体能力が人間よりも高い……そして、シャルはぱっと見わからないが天然が少し入っている所がある。

 

 これが何を意味しているか分かるだろうか?

 

 正解が分からなくても大丈夫だ……すぐわかることだから。

 

「しりかちゃーん!!」

 

 俺の名前を元気よく言って、人間では考えられないほどの膂力をだして突進してくるシャル。

 

 シャルの後ろには、凄い量の土埃が舞っているのが見えた。

 

 シャルは走ってこっちに向かっている。

 

 獣人の力で走れば100メートルなんて2秒もかからない……みるみる内に近づいていくシャルに俺は固有能力の準備をしておく。

 

「あれ!? これ……とまれない!!」

 

 案の定と言うべきかシャルは減速をする事もなく俺の方に──

 

「ぐっ……!」

 

 ──突進した

 

「ふ……なかなかいいものおもちで……!」

 

 思ったよりもきついダメージに俺は吹っ飛びながらそんことを言う。

 

 吹っ飛んだ先は真後ろにある図書館……俺は図書館の壁を、思いっきり突き破ってその先にある本棚に衝突した。

 

 使おうと思った固有能力は思ったよりも強い衝撃によりイメージが霧散してしまった。

 

 掠れていく視界の中で見えたのは、やってしまった……! と言いそうな表情をしたシャルの姿。

 

 その姿を見て思う……

 

 シャル。随分とキャラ変わったね……悲劇ヒロインの次はドジっ子ですか……ちくせう。

 

 そんなこんなで俺は、また意識を失うのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「ごめんなさいぃぃぃ……!」

 

 気絶から復活して目を開けると自分は本棚に埋まっていた。

 

 そして、声の聞こえた方へ視線を向けると……シャルがやる気のない管理人に必死に謝っている姿が見えた。

 

「ねぇー。壁崩れてんだけどうすんのこれ。怒られんの私なんだけど」

 

「ごめんなさいぃぃぃ!!」

 

 やる気のない管理人は眠気眼のままシャルへ詰め寄っている。

 

 何度も謝罪を繰り返すシャル。やる気のないままシャルに詰め寄っている管理人。本棚に埋まったまま放置されている俺。

 

 カオスかよ。

 

 まるで、ギャグマンガのような状況……それを見て思う。

 

 なんで皆、俺の事助けないの……と。

 

 そこにいるシャルと管理人はともかく、図書館の前を通る通行人にも助けてもらえない自分に涙を禁じ得ない。

 

 ……だれかたすけて。

 

 

 

 

 

 

 

 現在、俺は何とか自力で本棚から抜け出した……そして目の前には、管理人にシャルが謝罪している構図が広がっている。

 

「はぁ……しょうがないか」

 

 一度ため息をついてシャルと管理人の前へ出る。

 

 シャルが俺をまるで希望を見る目で見るが、先日のそれとは大分意味合いが違うような気がする。

 

 悲しきかな……

 

「シリカちゃん……」

 

「はいはい……ここは俺に任せな」

 

「ん? ……君、昨日のお客さんじゃん」

 

 ……昨日? 言っている事が何かおかしいような、そんな気がするが……今は無視しよう……。

 

 取り合えず今する事は、この娘の尻ぬぐいである。

 

「この壁は俺が直すからそれで許してくれない?」

 

「……は? 直すだって? 無理に決まってるじゃん」

 

「この大図書館は昔の大魔法使いが、幾重にも空間増強魔法やら情報保護魔法を重ねてやっと作り上げた図書館だ……」

 

「君がやろうとしている。壁一つ治す事でも、現代の魔法使いが何十人も居なきゃできない事……」

 

「それを本当にできるか? ……普通に考えて無理でしょ。変な偽善を振りかざそうとしないで、この子に責任とらせた方がいいんじゃない?」

 

「なに。別にこの子に責任取ってもらうって言っても、悪いようにはしないよ。そうだね……壁の損壊程度なら1年の住み込み労働かな?」

 

「それって外出できるか?」

 

「いや? できないけど」

 

 そうか……一年の住み込み労働。この管理人が言うにはこの図書館はとんでもない魔法がかけられているらしい。

 

 この壁を治すだけでも、今の魔法使いが何十人も必要なレベル。

 

 その壁を破壊した事に対する罰が一年の強制労働か……

 

 なかなかに好条件ではないだろうか?

 

 だが一年間、外出ができないのはシャルにとって相当きついだろうな。

 

 その間、母親の様子や面倒を見ることが出来ないだろうから……。

 

 これに関してはシャルの自業自得としか言いようがないし、その責任を当人が取るのは当り前の事なのだが。

 

 シャルの内情を知ってて、それを無視するのはいささか忍びない……なのでさっさとこの壁を治してしまおう。

 

「……何より人間よりも獣人の子の方が楽できそうだし」

 

 おい、本音漏れたぞこいつ……

 

「私の良心が許しているうちに労働りょ……じゃなくて奴隷を置いていけ……! そして私は責任を負いたくない!!」

 

 キラキラと輝かせる目を、シャルに向けて言い放つ管理人。言い直しても、全く変わっていないどころか余計に酷くなっている。

 

「うわぁ……」

 

 我欲に忠実過ぎてシャルが引いてるぞ……

 

「はぁ……」

 

 その管理人の姿にため息をついてしまう。

 

 何で俺の周りには厄介事ばかりが集まるんだ……勇者然り、姿の変化然り、目の前にいる管理人然り……何かに呪わているんじゃないか?

 

 そんな事を考えても、仕方ないので今は目の前の事を解決するとしよう。

 

「取り合えずこの壁を直したらそれでお終いだ……なら、さっさと直そう」

 

 崩れている壁のそばに近寄り、その近くの崩れていないところに触れる。

 

 そうしてこの壁の時間が巻き戻っていく姿を想像する。

 

 想像し終わったら後は簡単だ、固有能力を発動するだけ……。

 

 

 体力とも魔力とも違う何かが体の内側から消えていく感覚がした後……崩れ落ちていた壁はまるで時間が戻っていくように──まるでと言うか、本当に時間が戻っているのだが──直っていく。

 

 崩れて落ちていた瓦礫の破片が、それぞれ一人でに空中に浮いて破片同士が接着していく。

 

「……!」

 

「……凄い!」

 

 その様子を見た管理人とシャルがそれぞれの反応をした。

 

 管理人は目を見開いて少しずつ治っていく壁を凝視する。シャルは声を漏らして俺の方を見る。

 

 そうして、一分弱ほどだろうか? それぐらいの時間が経過して図書館の壁は完全に元通りになっていた。

 

「……これで元通りになったし、文句ないだろ? だから、もうシャルの責任は──」

 

「はははっ!? ……ねぇこれどうやったんだい? この大図書館の壁がこうも簡単に治るなんて!? この私……この大図書館の管理人にして大魔法使いである、ラノア・リグーですら、年単位でかかる壁の修復をこの一瞬で……! はは! 理屈が判らない! この天才にして偉大な魔法使いにすら分からないだと!? 面白いっ! …………何もわからないが、魔力の変化が微塵も無いって所を見るに固有能力か? そういえば固有能力を見たことは一度もなかったなぁ! いい! ちょうど退屈してたんだ。こんなつまらない情報の掃きだめの、管理なんて天才な私がやる事ではないしな! 一生に一度の機会かもしれないんだ! そうと決まれば実験に────」

 

 俺の言葉を遮って、出てきたのはとんでもない数の言葉の羅列だった。

 

 俺に何かを聞いているようで何も聞かない姿……何も返答していないのに自身の中で答えを導き出している姿。

 

 それに、少しだけだが聞こえた実験と言う言葉……。

 

 こいつ、あの誘拐犯と同類だ……!

 

 未だぶつぶつと、言葉の羅列を続ける管理人。それを見てシャルの手を掴んで、逃げようとして──

 

「ねぇどこに行くんだい? まだ実験は出来ていないだろう?」

 

「モルモッ。ゲフンゲフン……助手君?」

 

 俺の目を見据えて、そういう管理人の姿が初対面の時の勇者と重なってしまった。

 

 マズイ……! こいつにも捕まったら何されるかわからない!!

 

 ……逃げなければ。突如、脳内に浮かんだその言葉に従い逃げようとしたのだが。

 

 地面から伸びた魔法で作られた鎖が、俺の足を拘束して逃げることが出来ない……!

 

「それでは、行こうかモルモットくん?」

 

「あ……おわっ──」

 

「させませんよ!!」

 

 その言葉が聞こえた瞬間、足元につながっている鎖が引きちぎられた。

 

 声の聞こえた方へ振り向くとシャルの姿。

 

 いつの間にかシャルは管理人を、どこかに吹っ飛ばして俺をお姫様抱っこの形で抱えて図書館の前から逃げていく……。

 

 俺を抱えてどこかに走っていくシャルの姿を見て、俺の心の中はシャルに対する感謝でいっぱいになっていた……

 

 ……なのだが、一つ言いたいことがある……。

 

 ……それは

 

 お姫様抱っこじゃなくても良いだろ!!

 

 そう思って俺はシャルに抱えられたまま風に揺られていく、何故か心臓はドキドキとして顔に熱があるが……別にシャルに惚れそうになっているわけではない。

 

 ……別にシャルに惚れそうに、なってるわけじゃないんだからねっ!!

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「ほぉ? あの能力、それに聖女……あの力ならあのクソ野郎にも届きうるかもな……」

 

 闇に染まった空間。光を一切通さない空間で、男は一人呟く……。

 

 男の目には復讐の炎が輝いていた。

 

「道具は整っているな」

 

「はい……ボス」

 

 いつの間にか、男のそばには一人の少女がその場に片膝を着いてその場にいた。

 

 ボスと呼ばれている男が、道具は整っているな……と、問えば少女はその手に持っている物を掲げる。

 

 少女の手には中に、砂が入っていない砂時計のようなものがある。

 

 ボスと呼ばれた男がそれを見て、ふっ……と笑って口を開く。

 

「聖女とやらから、力を奪うぞ。……奪った後はクソ野郎を地に降ろす。やるぞ、カルナ」

 

 カルナ……と呼ばれた少女は今まで閉じた目をその言葉を聞いて、開いた……。

 

 その目にはボスと呼ばれた男のように、復讐の炎が燃えていた。

 

 こうして……物語の異物が気づく暇もなく物語は進む。

 

 勇者、偉大な魔法使い……そして、とある男。

 

 異物を狙う者は、直実に増えていく……その意味合いは別として。

 

 そうして時計の針は一つ……また一つと秒針を刻んでいくのだった……。






これまた投稿に間が空いてしまった。

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