男の娘シスターに憑依転生した俺が神を殺すまで〜クソ難易度の死にゲー世界の男の娘シスターに憑依転生した俺はクソッタレの神に復讐をする〜   作:ミタケ

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第十六話 僅かな休日……下

 シャルに腕を掴まれたまま引き摺られていったその先は、アクセサリーショップだった。

 

「シリカちゃん。これなんてどうですか?」

 

 そういってシャルが、見せて着たのは青色のバラの装飾がされた髪飾り。

 

「奇麗だな……」

 

 それを見て、俺は目を見開いた。

 

 何故なら、それは原作のレアアイテムだったから……。

 

 その効果故に原作では滅多に手に入らない物。

 

 それを一般的な店に、置いてあるとは……。

 

「ですよね! でも、高くていつもこうして見る事しか出来ないんですけどね……」

 

 シャルはそう言って、手に持っているにある髪飾りを元にあった棚に戻す。

 

 心なしかその猫耳は、力なく倒れている。

 

「あっ! これも可愛くないですか!」

 

 今度は、オレンジのコスモスの髪飾りを手に持つシャル。

 

「そうだな」

 

「ですよね! 他にもこれとかあれとか──」

 

 その後にもシャルは、色々な髪飾りを見せてきた。

 

 花の装飾の他にも蝶や動物等、様々な物があったのだが見せてきたその殆どが花の装飾だった事はシャルの趣味だろう……。

 

 バラやユリ……他にもセントポーリア等、様々な髪飾りが見せられた……。

 

 時間的にはもう数十分はここにいる気がするが、女の子の買い物とはこれだけの時間が掛かるのだろうか? 

 

 何もしていない筈なのだが、何故か疲れているような気がする……

 

「これで最後ですね!」

 

 そういって見せられた物に、俺は目を見開いて驚いた……。

 

 いや、驚いた程度ではない……気がつけば声が掠れてしまって、うまく発声が出来なくなってしまっている。

 

 大きく見開いた状態の目も、元の状態には戻らなかった。

 

 シャルが手に持っているのは、何処にでも売っている様なロウバイの髪飾りだった。

 

 それに何を驚くことがあるのか? ……と思われるかもしれないが、それは俺にとって途轍も無く見覚えのある物だった。

 

 何故なら……それは

 

 

 

 

 何時しかシア達が、俺に買ってくれた髪飾りだったから……。

 

 天使と戦っている時に、消えてしまったのだが……今シャルが見せているそれは、シア達がくれたものに酷似していた。

 

「シリカちゃん? ……大丈夫ですか」

 

 急に動かなくなってしまった俺を心配してだろう……いつの間にか近くにいたシャルが心配そうにそう声をかけた。

 

「ッああ! ……大丈夫だ」

 

「……そうですか」

 

 無理にでも声を出してそう言ったのだが、シャルは俺の様子に気づいているのか納得して無さそうにそう言った……。

 

「じゃあ……もうすぐ時間も良い頃ですし、そろそろ次の場所に行きましょうか!」

 

「……ん? 何か買わないのか?」

 

「……買いたいのはやまやま何ですけど、お金がなくてですね」

 

「そうか……ちょっと用事が出来たから店の前で待っててもらえない?」

 

「……? わかりました。では、待ってますね!」

 

 店の外に出ていくシャルを尻目に見て、俺はとある商品棚の前に立った。

 

 そこにあるのは二つの髪飾り……その二つを買って俺はシャルのもとに向かうのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「シリカちゃん、何をしてたんですか?」

 

 店から出てきた俺に開口一番そういったシャル。

 

 それに俺は手元の袋見せる。

 

「……え! これ……いいんですか」

 

「ああ……」

 

 俺が手渡した袋を開けてその中身を見たシャル……シャルはそれを見て驚いたように、俺にそう聞いた。

 

「……でも、高くなかったですか? これ」

 

 シャルが青いバラの髪飾りを袋から出して、心配そうに言う。

 

「大丈夫……お金はまだあるから」

 

 嘘である。この髪飾りが想像以上に高くて財布の中身がほぼ空っぽだ……

 

「それに自分の分も買ったからさ」

 

「そうですか」

 

 自分用の髪飾りを取り出して言えば、シャルも少し安心したようにそう言った……。

 

 ハハ……一つだけならまだしも、二つ買うのは財布に来たなぁ……! 

 

 だけど、シャルには色々してもらってるしな……それに一応この服だってシャルがお金を出してくれたからな。

 

 これぐらいしかできないが軽い恩返しぐらいにはなっただろうか。

 

 履き慣れないスカートのポケット越しに財布を触れば、殆ど中に入っていないのか……薄い皮の感触だけがした。

 

「……どうですか」

 

 そんなことを考えているうちにシャルは髪飾りをつけて、上目遣いで言っていた。

 

 シャルが黒髪なのもありその髪飾りはとても似合っている。

 

 髪飾り自体派手ではないので、普段使いがしやすいのではないだろうか? 

 

「どうですか!」

 

 そんなことを考えていればシャルが少しむっとしたように、さらに近づいて先程の言葉をもう一回言う。

 

「ふふ……可愛いと思うよ」

 

 シャルのその姿にミアの幻影を重ねてしまう……ミアも他の子にかまってばっかりの時、こんなふうになったっけな。

 

 そう思えばいつの間にか、口元から笑みが出てそう言ってしまった。

 

 シャルは少し恥ずかしそうにしながらも「シリカちゃんにもつけてあげますよ……」と、俺に髪飾りを着けてくれた。

 

 そのシャルの姿にまた、笑みが零れる。

 

「……ッ! さっさと最後の場所に行きますよ」

 

 顔を赤くしたシャルに手を引っ張られて、俺はどこかに連れていかれるのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「空は随分暗くなっちゃいましたね……でも、ここは明るいとは思いませんか?」

 

 シャルの言う通り、空は黒に染まっている……時刻も、もう八時を下回っているであろう時間帯だ……。

 

「下の方を見てください……」

 

 シャルの言う通り下を見ると、そこにはいろいろな花が咲いている。

 

 その花の中には前世にもあるような普通の花や、この世界特有の魔力が宿っている花まで……

 

 いや……まてよ。何で夜の暗闇の中、花がこんなに鮮明に見える? 

 

 そんな事を思って、俺はもう一度花の一つ一つをよく見ていく……

 

「そうか! だからここだけ……」

 

「はい! そうです……ここには魔力の宿っている花から、無い花まで様々な花があります」

 

「ここだけが明るいのは、魔力がある花のおかげですね……!」

 

 目を凝らしてよく見れば、光を放っている花がそこかしこに咲いている。

 

「この場所は、私とお母さんだけの秘密の場所だったんですよ……」

 

 光る花に照らされている、咲き誇っている花々……

 

 よく見れば、夜には咲くことが無いであろう花まで咲いているのが見える。

 

 これも魔力のおかげだろうか? 

 

 この世界で魔力とは、一種の生命エネルギーである。それをここに咲いている花は、太陽光の代わりとして利用しているのではないだろうか……

 

 若干だがこの場所の魔力濃度は、他の場所よりも濃いように思える……

 

 それも起因しているのだろうな……少なくともこのような光景はほかの場所では見たことが無い……

 

 月だけが明かりであるこの世界の夜。

 

 その筈なのだが、ここでは花が光を灯して同じ花を照らしている。

 

 そしてこの場所では魔力が起因して同じ時間帯、同じ場所で咲くことがあり得ない花々が同一の時間帯……場所でともに咲いている。

 

 人の感覚にもよるが、この光景は少なくとも俺にとっては幻想的に見えた。

 

「……奇麗ですよね」

 

 シャルがその場に座り、俺に座るように合図する。

 

「シャル……今日ずっと聞きたかったんだ。なんで俺を連れて遊びに来たのかを……」

 

 シャルの合図の通り、シャルの隣に座ってそう問いかける。

 

「気になりますよね。何でここに連れてきたのか……なんでシリカちゃんを連れて色々な場所に遊びに行ったのか」

 

「理由の一つはもちろん私がシリカちゃんと遊びに行きたいって、言うのもあるんですけどね」

 

「一つって言うにはほかのもあるんだろ?」

 

「はい……もう一つはですね。シリカちゃんは頑張りすぎだからです」

 

「頑張りすぎ?」

 

「そうです。シリカちゃんはお母さんの事を知ってから、時間の殆どを使って呪の事を調べてくれているでしょう?」

 

「シリカちゃんが呪をかけた相手の事を教えてくれないから、私も手伝うことが出来ないですけど」

 

「ご飯を食べる時くらいしか、休んでいないんじゃないですか?」

 

 図星だ……シャルの言う通り、俺は基本食事時くらいしか休んでいない。

 

 寝る時間も削ってクロノスの呪を調べているくらいだ……。そうはいっても、能力を使って体を元気な状態に戻しているから肉体面では問題ないのだが。

 

「ふふ……驚いてますね! 取り繕っているみたいですが、私は誤魔化せないですよ!」

 

「だから、俺を休ませようとするために……」

 

「そうですね。今日からでもたまに休んでくださいね! じゃないと今日みたいにかわいい服とかいろいろ着せちゃいますからね!」

 

「うぐっ……」

 

 俺の格好を見て小悪魔の様に、笑うシャル。

 

 それに俺はドキッとしながら視線をそらした……

 

「わかりましたか?」

 

 いつの間にか俺の前に、移動したシャルが上目遣いで言う。

 

「……わかったよ」

 

「ふふっ……わかってくれたようでよかったです!」

 

 そういってシャルは、にこやかに笑った。

 

 シャルの姿を見て俺はこんな日が、いつまでも続けば……と、そう思うのだった……。

 




ロウバイ

花言葉 一部抜粋
慈愛、愛情、先見。


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