男の娘シスターに憑依転生した俺が神を殺すまで〜クソ難易度の死にゲー世界の男の娘シスターに憑依転生した俺はクソッタレの神に復讐をする〜   作:ミタケ

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第二十話 限界

「さて、情報を吐いてもらおうか……」

 

 喉を押さえて、地面に蹲っている魔術師に短剣を突き出してそう言う。

 

「ひ……! 情報を渡すから殺さないでくれ……!」

 

「本当のことを言うなら命までは奪わないさ」

「俺だって望んで人を殺したいと思わないからな……」

 

「どの口が……!」

 

 魔術師が俺の背後に転がっている死体を見て、俺を睨みつけた。

 

 元はと言えばそちらが俺を、襲ってきたのが原因だろうに……と言いそうになったがそれを寸でのところで堪える。

 

「……だが、嘘を言えばどうなるかわかるよな? 生憎、今の俺は冷静でいられないんだ。それが嘘だと分かれば……その所為でシャルに取り返しのつかない事になれば……俺はお前の事を地獄の果てまで追いかけるぞ?」

 

 俺は手元にある短剣を魔術師の喉元に宛がいながら言う。

 

「っああ! ……自分の命の為にちゃんとした情報を吐くさ!」

「場所は街はずれにある廃れた教会だ! ここから北の方へ十分歩けば見える筈」

 

 情報を聞き終えた魔術師を、殴って気絶させる。

 

 取り合えず、シャルの居場所は分かった。

 

 体力が先程の激闘で、激しい消耗をしてしまっている。正直今にでも休みたいが、悲しい事にそんな暇などない。

 

 魔力も体力ど同等にこれから戦闘を行うには心もと無い……

 

 今にでも倒れこみたいほどの脱力感に襲われるが何とか踏みとどまる。

 

 倒れるのはシャルを助けた後で良い。それまでは倒れてたまるか……

 

 そんな気合だけで意識を保っている俺は、先程魔術師が言った方向へ歩を進めるのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「待っていたぞ? 聖女の嬢ちゃん……」

 

「シリカちゃん……!」

 

 魔術師の言った通りの場所に、向かうとそこには一人の男が立っていた。

 

 その傍らには一人の獣人の少女が拘束されている。

 

 如何やら、魔術師の言っていた事は本当だったらしい。図書館から北の方向へにある寂れた教会にはシリカと一人の男が居た。

 

「どうしたんだ? ……そんなボロボロの状態でここまで来て」

「生憎とお姫様を助けに来る騎士には、見えないが?」

 

 寂れた教会に佇んでいる男は俺の格好を見て、愉悦に顔を歪めていた。

 

「シリカちゃん!」

 

 シャルが俺の格好を見て心配そうに叫ぶ。

 

 それもそうだろう……今の俺の格好は酷い物だった。管理人から貰ったローブはボロボロの状態になっていて、体には凍傷やら切り傷など先程の激闘でついた傷が残っているのだから。

 

 今の俺には之だけの傷を、巻き戻せるだけの体力が無かった。

 

 そんな俺の姿を見てシャルが心配するのも仕方ないだろう。

 

「まぁ、その原因の俺が言う事じゃないがな」

 

 男はくつくつと笑いながら、視線を俺に向ける。

 

「で? 嬢ちゃん……今ここで大人しく気絶してくれたら痛い目には会わないが……どうする?」

 

「今の俺をもう一回よく見て言えよ?」

 

「くっく……確かにお前はもう痛い目に遭ってたな」

 

「性格悪いってよく言われないか? ……オッサン」

 

 俺は額に青筋を浮かばせてそういう。この野郎、俺の状態を見てわざと言いやがったな。

 

「ああ? まだ俺はおっさんって言われる年じゃねえよ……!」

「まだ俺は二十六だ」

 

 男が額に青筋ぴくぴくさせて言う。

 

「十分いい年じゃないか? ……オッサン」

 

「よし……今決めた、気絶程度で良いかと思ったが半殺しにしてやる……!」

 

「子供相手にマジ切れとか、大人気ないな……オッサン」

 

「先ずはその喧しい口を閉じさせてやる……」

 

 おっさんがそのセリフを言った次の瞬間、途轍も無い圧迫感が俺を襲った。

 

 ……こんなの人が出せていい殺気じゃない!?

 

 息をする事すら困難になる程の殺気。それを何とか耐えておっさんを睨みつける……

 

「できるもんならやってみろ……それに俺は男だ!」

 

 口喧嘩と言う茶番を終わらせて、俺はおっさんに突撃する。

 

 片手に持っている短剣で、おっさん喉元を掻っ切ろうとする……が。

 

「おいおい? ……そんなのろまな攻撃じゃハエすら切れねぇよ」

 

 身体強化すらしていない俺の攻撃は、おっさんに容易く避けられる。

 

 避けられた所を予測して回し蹴りを放つが、それも簡単に避けられる……

 

 それから次々に攻撃をしていっても避けられるばかり。そして、激しい運動しているからだろう……傷口が開いて血が吹き出し始めた……

 

「おいおいどうした? 。俺は攻撃すらしてねぇのにもう満身創痍じゃねぇか」

 

 ……まずいな。このまま出血し続ければ貧血で動けなくなる。その前にこいつを倒したい所だが……

 

 生憎とおっさんは避けているばかりで攻撃をしては来ない。

 

 何時までも当たらない攻撃に焦燥が出始める。このまま攻撃し続けても、すぐに動けなくなるのは目に見えている。

 

「オッサン……どうした。はぁ……! 俺を半殺しに。するんじゃなかったのか? はぁ……! 。さっきから……避け続けてるばかりだが」

 

「そんな、息も絶え絶えで煽られてもな。俺が攻撃した所でカウンター入れようって魂胆が丸見えだ」

 

 くそ……こんな見え見えの煽りには乗ってこないか。

 

 本格的に出血量が不味くなってきている。このまま動き回れるのも後もって数分って所、その前に決着をつけないと……!

 

「……だが」

「せっかくここ迄お膳立てされたんだ。それにさっき半殺しにしてやるって言ったからな。……その喧嘩、買ってやるよ」

 

「結局煽りに乗ってんじゃねぇか……!」

 

 額に青筋ぴくぴくで突進してくるおっさん。如何やら煽り性能は存外、低かったらしい……

 

 ……だが、これでおっさんに攻撃の隙ができる。

 

 カウンターがうまく決まれば……!

 

 そこまで考えて、おっさんが目の前に来たのを確認する。

 

 おっさんは俺の眼前にまで来て、俺に向かって掌を広げる……

 

 おっさんからは魔力を感じない……この感じからして魔法ではない。そしてその手には武器も持っていなかった。

 

 ……なんだ? この違和感。

 

 何か、嫌な予感がした。武器も魔力も無い……ただ掌を広げているだけ。それなのに何故か嫌な予感が止まらない。

 

 俺の勘が全力でその手に触れるなと言っていた。

 

 その勘の通りに避けてみれば、おっさんが興味深そうな顔をして俺を見つめていた。

 

「なんだ? 嬢ちゃん……ただのタッチにそんな必死こいて逃げるなんて、ちょいとビビりすぎじゃねぇか?」

 

「おっさん……! 本当にそれはただのタッチか!?」

 

 避けた瞬間、体中から一気に汗が噴き出した……

 

 俺がそう言うと、おっさんは目にもとまらぬ速度で俺に突進した。

 

「勘か何か知らねぇがさっきのを避けたのは褒めてやるよ……だが、今回は避けれるかな」

 

 いつの間にか眼前に居たおっさんに、俺は反応もしきれない内に広げられた掌で触られる。

 

「──ッが!?」

 

 ……瞬間。俺は地面に這いつくばった……

 

 何かに押し潰される感覚。空気すら重く呼吸すらままならない……

 

 この感覚に俺は一つ思い当たることがあった。

 

 ……それは

 

「……重力か……!」

 

 重力の結界……!

 

「正解だ」

 

 おっさんは地面に這う事しかできない俺を見下して、顔を喜悦に染めた。

 

 だが、これが重力の魔法だとすると可笑しい所がある。

 

 魔力が感じれない事……魔法とは術式を構成してそれに魔力を通して発動するものだ。だからそれを発動すると、どれだけ使用者が優秀であろうが魔力という物は漏れ出る……

 

 だが、この男にはそれが無い。

 

 だとするとなんだ、この重力は……この力は……

 

「固有能力……!」

 そこまでいって俺はようやくこれが魔法でもなく、固有能力であると気づいた……

 

「これまた大正解」

 

 おっさんは、少し目を見開いてそう言う。

 

「花丸をくれてやりたいが、生憎と手持ちがなくてな……代わりに魔弾をくれてやる」

 

「……ぐ!?」

 

 おっさんそう言った次の瞬間、俺の両手両足に激痛が走った。

 

「さてと、これで後は力を奪うだけだな……カルナ、強奪の砂時計を持ってこい」

 

「はい……ボス」

 

 おっさんが誰かに指示した瞬間、突如金髪の少女が現れた。

 

 カルナと呼ばれた金髪の少女の手には、中身が何も入っていない砂時計の様な物が握られている。

 

「安心しろよ嬢ちゃん。命までは奪わない……ま、力は奪わせてもらうがな」

 

 おっさんはそう言うと、カルナと言う少女から空の砂時計を受け取り、俺にゆっくりとした歩みで近づいてくる……。

 

 

 その歩みはゆっくりと……

 

 

 そして、着実に。

 

「じゃあ……その固有能力とさよならの準備は出来たか?」

 

 おっさんはそう言うと、俺に砂時計を近づけてくる。

 

 まずい……!

 

 本当に固有能力を奪われるが分からないが、このままじゃどっちにしろ避けられない。

 

 俺はもう体力も魔力もゼロの状態になっている。それに加え重力により身動きを封じられた上に、四肢が使えない状況。

 

 ……八方塞がりだ。

 

「じゃあ……さよならだ」

 

「くそ……」

 

 砂時計が俺の体に触れる──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──その寸前、俺の体が……いや、俺の来ているローブが光った。

 

「……何だ?」

 

 おっさんは突然の事に警戒してか……後方へ飛んだ。

 

 力を奪われそうになった次の瞬間、何故か光を放っているローブ。

 

 その光は段々と強くなっていく。

 

 俺は光の中で意識が薄れていく。

 

 俺の体はもう限界をとうに超えていた……その状態で気合だけで戦っていたせいか、今はもう指一本動かせない。

 

 指一本動かせない状況で、俺は光の中からおっさんを睨むことしかできなかった……。

 

「シリカちゃん!!」

 

 意識が消えていく中。俺が最後に見た光景は、シャルが己を拘束している鎖を引き千切ろうと、もがく姿だった……

 

 

 そうして俺は無力感の中で、意識を手放すのだった……

 




 シリカちゃんの戦績。

 シャルの家の中でシャルの母親を庇いながら戦闘。

 死亡回数2回

 図書館の前で魔術師20数名との多対一。(一人一人の魔術師の力量はこの世界での中堅)

 死亡回数62回

 街外れの教会での固有者との戦闘。

 死亡回数0回

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