男の娘シスターに憑依転生した俺が神を殺すまで〜クソ難易度の死にゲー世界の男の娘シスターに憑依転生した俺はクソッタレの神に復讐をする〜   作:ミタケ

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今回、重力のおっさん視点多めです。


第二十三話 『重力』対『巻き戻り』

「そんじゃ……もう一回負けときな」

 

 オレがその言葉を吐いた直後、教会内に砂塵が舞った。

 

 ……さて、嬢ちゃんには三十倍の重力を付与した。嬢ちゃんの体重が40キロぐらいだとすると。今の嬢ちゃんは1200キロの自重で圧死している筈だ。

 

「これじゃ体がぐちゃぐちゃになっちまったか……」

 

 1200キロの重さで地面に落ちたんだ。たとえ十数センチの落下でも、肉体はぐちゃぐちゃにつぶれているだろう。

 

 これじゃ、能力の強奪は諦めた方がいいか?

 

 そんな事を考えながら、懐からたばこを取り出して口にくわえる。

 

 そうして、魔法で火をつけようとした所……

 

 一つ、可笑しい所があることに気づいた。

 

「……まて。何で、何も音がしない?」

 

 そう。あの嬢ちゃんに重力を付与した時、砂塵は舞っていたが嬢ちゃんが地面に潰される音が聞こえなかったのだ。

 

 何故、何も音がしない!? ……1200キロの物が地面に落ちたんだ。轟音が鳴り響くならまだしも、無音なのは可笑しい……それどころかありえない事だ。

 

 ……それなのに無音。まるでその場に何もなかったのように……!

 

「まさか!」

 

 そうして、一つの可能性にたどり着いたオレは、口にくわえている物を吐き捨てて地面の方へ視線を向ける。

 

 先程まで砂塵が舞って見えなかったが、嬢ちゃんがつぶれている筈の所へ……

 

 舞っている砂塵がはれて見通しが良くなった視界で、肉塊があるだろう場所を見るとそこには──

 

 

 

「いない……!」

 

 

 

 ──何もなかった。

 

 それに気づいたオレは、直ぐに戦闘態勢へ切り替える。

 

 

 

 そうして、周囲を見渡して……

 

 嬢ちゃんがいるべき場所に居なかったのが原因で、焦っていたオレはいつの間にか、近くに居た存在に気づくのが遅れた。

 

 いつの間にか、オレの眼前に出現したそいつはその右拳をギチギチィ……! と音が鳴るぐらいに握りしめられていた。

 

 そして、その拳はオレの顔面目掛けて突き進んできて……!

 

 

 ……そして

 

 

 

 

 そしてそしてそして……!

 

「……ぐッ!?」

 

 そうして、オレは地面で肉塊になっている筈のそいつに初めての有効打を受けるのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「はぁ……! はぁ……! ようやく顔面に一撃入ったな……!」

 

 盛大に息を切らしながら、俺の一撃によって壁まで吹き飛ばされたおっさんを見る。

 

 今ので何回戻った!?

 

 途中からある事に気づかなかったら、今のだけで三桁以上も戻るところだった……!

 

「繰り返しになるが、三十倍の重力を掛けた筈だったんだがな……」

「それをどうやって避けた……」

 

「ハッ……! お前が欲しがってる力だよ……!」

 

「固有能力か……!」

 

 

 どうやって俺があの攻撃を避けたのか……

 

 それは巻き戻りの力が大幅に原因している。

 

「オッサン……さっきの重力。俺がいた場所まるごと掛かるようにイメージしたな?」

 

 ……そう。おっさんが重くなるようにイメージしたのは、()()()()()()に……だ。

 

 重力の対象が俺だったら、話が変わったのだが。それが、空間にだったらその避け方は簡単……

 

 おっさんの能力の対象である場所から離れればいい。

 

 だが、言うは易し行うのは難し……だ。

 

 あんな高重力の中では、脳に血液が回らずまともに思考が出来なくなってしまう。

 

 そんな中では固有能力の対象が俺ではなく、空間そのものである事に気づくまで何回死んだ事か……

 

 そして、それに気づいた事自体偶然だった。

 

 一々数えてはいないが大体30回程の死に戻りで、俺は打開策を探るため手を伸ばした。……すると、偶然範囲外に出た指先に圧迫感が消えたのだ。

 

 重力の対象が俺じゃなくて空間である事に、気づいた俺はこの重力の範囲外に出ることを目的としたのだ。

 

 まぁ……まともに脳みそが働かない状況で固有能力を使うイメージを行うために、さらに50回以上の死に戻りを行ったのだが。

 

 

 閑話休題

 

 

「なら後は簡単。範囲外から出てしまえばいい……」

 

「三十倍の重力の中で能力を使うイメージ……バケモンか何か、嬢ちゃん?」

 

 おっさんは立ち上がって、戦闘態勢に入った。

 

 自身の体には色々な傷がついていた……だが、それを巻き戻すのは、体力的に難しい。

 

 固有能力は魔力を使わない代わりに、体力を持っていかれる。あくまで、固有能力は身体能力の延長的な物らしい。

 

 身体能力の延長に重力を操ることが出来たり、物の時間を巻き戻す事が出来ることに関係あるのか? ……と思うが、それはこの際無視しよう。

 

 そもそもこの世界は、創作物だ。所々可笑しい所があるのは仕方ない……之ばかりは考えても仕方ない事である。

 

 俺も考えるのを止めた。

 

 そんな意味も無い思考を打ち切り、俺は目の前の存在に集中する。

 

「そろそろ準備もできたし。これから本気で行くぞ──

 

 

 

 

 ──オッサン」

 

 下準備は完了した。

 

 今からは、俺の全てを使ってシャルを──

 

「取り戻す」

 

 そうして、俺は固有能力へと意識を向けるのだった。

 

 

 

 ^^^

 

 

 

「ちッ……次は何処からくる!」

 

 オレは()()()()の嬢ちゃんの攻撃を警戒しつつ周囲を見渡す。

 

「こっちだよ」

 

「……っ!」

 

 突如背後に、現れた嬢ちゃんの攻撃を受け流す。

 

 どういう絡繰りだ?

 

 気づいたら近く出現したり消えたりする嬢ちゃんの事を警戒しながら、オレは目の前で起こっている事象について思考する。

 

 今のこれが固有能力による物と言う事は分かっている。では、その能力はなんだ……

 

 嬢ちゃんが今、消えたり現れたりする事を見て瞬間移動の力か?

 

「いや……それにしては妙だ」

 

 瞬間移動にしては消えてから、出現するまでのスパンがありすぎる。

 

 それに、あの大図書館で見た能力とあまりにもかけ離れている。大図書館で使用した力は壁の修復……

 

 おそらく、壁の修復に使った方が能力の本質だ。そして、今の瞬間移動擬きがその力の応用だろう……

 

 だとしたら、この二つの共通点はなんだ? 修復と瞬間移動……それぞれ別の力に見えるが、固有能力である以上どちらも同じ力である筈だ。

 

 固有能力は一人一つが絶対条件だ……じゃないと体が耐えきれずに爆散する事になる。

 

 だとしたら、今起こっている現象はなんだ。

 

 そんな事を考えながら、オレは嬢ちゃんの行動を観察する。

 

 消えて……数秒のタイムラグの後、オレの正面に出現。そして、その拳を俺めがけて振るう。

 

 一見、修復とはかけ離れているが根本は同じ力の筈だ。なら今の行動のどこかに、固有能力のヒントは隠されている筈だ。

 

 気になることは、嬢ちゃんは瞬間移動の際……一秒か二秒のタイムラグがある事。

 

 そこに何か隠されている筈……

 

 ……考えろ。

 

 まるでその一~二秒の間、この世界から消失しているように、気配がすっと消える。

 

 そして、嬢ちゃんの出現場所はある程度固定されている。

 

 オレの背後に瞬間移動した方が有利だった時も、何故か嬢ちゃんはオレの正面に現れた。

 

 それに、こんな厄介極まりない力をどうして死に際迄使わなかった?

 

 そうだ、戦い初めの頃の嬢ちゃんの動きは少し妙だった。

 

 オレの顔面に一発入れるとほざいていた割には、ちょこまかと逃げ回っていた。……そう、まるで何かの準備をするみたいに……な。

 

 では何の準備か……当初の嬢ちゃんの目的はおそらくマーキング的な何かを瞬間移動先に残す事。

 

 マーキングの下に、瞬間移動する能力だとするといくつか候補は絞れてくる。

 

 そして、壁の修復……

 

 修復、瞬間移動……マーキングした場所に戻る。

 

「過去の場所に戻ってんのか……?」

 

「……なっ!?」

 

 オレがその言葉を発した瞬間、嬢ちゃんの動きが乱れた。

 

「図星だったか……?」

 

 その瞬間をわざわざ見逃してやる理由も無く……嬢ちゃん目掛けて蹴りを放つ。

 

 嬢ちゃんは二回バウンドして、壁にぶつかった。

 

 それを見て、にやり……と笑みを作る。

 

「さて、嬢ちゃん。今のでお前の能力のネタは分かった」

「オレもそれに気づくまでに色々と攻撃をもらったが、それは嬢ちゃんも同じ。状況的には五分五分って所だ……さて、魔法もまともに使えねぇ。固有能力しか持たないお前と、魔法も使える……オレ」

 

「どっちが勝つかな?」

 

 口元の笑みを更に歪ませる。

 

 久しぶりに楽しくなってきたんだ……直ぐにくたばってくれるなよ?

 

 そんな、誰に言っているかもわからないセリフを心の中で呟いて、嬢ちゃんを見る。

 

 固有能力がばれたと言うのに、不思議と嬢ちゃんの目の奥は炎の様に輝いていた。

 

 それは、爛々と光る焚火のような優しい炎……と言うよりかは、どす黒く全てを燃やし尽くしてしまいそうな……そんな地獄の炎の様に。

 

 

 そうして、オレと嬢ちゃんの戦いは終幕へと突入していくのだった……




☆9評価
ヘイホー様

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