どうやら俺の友達は異世界転移に巻き込まれているらしい 作:papaiyaiyaiya
ヴー、ヴー、ヴー。
枕元に置いてあったスマートフォンの振動で目が覚める。まだ視界がはっきりしない目をこすりながら時計を確認すると、ぼんやりとその数字が網膜上に現れていく。
「10時……遅刻じゃん」
今日は泣く子も黙る月曜日。健康優良高校生児たる俺はもちろん学校に行かなければいけないわけだが、完全に寝坊をかましてしまっていた。機能夜遅くまでネットで異世界小説を読んでいたのが原因だろう。目覚ましをかけた記憶が脳みそのどこにも見当たらない。じゃああんまり夜更かし関係ねえな。
「もう今日は自主休校でいっかぁ」
大きな口を開けてあくびをしながら俺は独り言ちる。一斉に酸素が脳内に届けられ、意識が一気に覚醒いていく。うん、今から行っても遅刻で怒られるだけだ。ならもう今日はいかないほうがいいな。
寝坊したとき特有の謎理論で早々に休むのを決意したところで、ようやく自身のスマホが震えていることに気が付く。
画面に表示された相手の名前を確認し、特に何も考えることなくすぐに通話に出る。
「うーい。どうした?リン」
「よし、つながった!」
通話の相手であるリンの声は、寝起きには少々堪える大音量だ。
「朝から大声はしんどいんでやめてもらえる?」
「あ、ああごめん。ちょっとテンパってて。まさか繋がると思ってなかったからさ。いっちゃん今どこにいる?家?」
「今絶賛自宅にて眠りから覚めたところだけど……」
「おそ」
「うっせ。んで何?お前今授業中じゃないの。サボリ?お前学生はちゃんと授業受けなきゃダメでしょうが」
「なんで来てすらいない奴にそんなこといわれなきゃいけないんだよ!じゃなくて、それどころじゃないんだって!」
なんだかいつになく慌てた様子だが、それでも突っ込んでくれるところはさすがのノリの良さだ。
しかし意外にも相当焦っているらしく、俺の返事を待たずに続きを話し出す。
「いいか、今から話すことは冗談に聞こえるかもしれないが全部本当のことなんだ。マジで信じられないと思うけどお願いだから信じて飲み込んでほしい」
「お、おう」
電波を通して届く声はいつになく真剣で、自然俺も体に緊張が走る。手のひらはじんわり熱を帯び、背中からは変な汗が噴き出る。
い、いったい何の話をされるのだろうか。彼女ができたとか?いや、あいつに彼女ができるだろうか、いやできない。なら忘れ物したとかか?それなら今かけてくる理由は説明つくが、この真剣さで話す内容じゃあねえわな。な、なら犯罪系か?おいおい勘弁してくれよ。俺にできることと言えば穴を掘るのを手伝ってやるぐらいしかねえぞ。
急いで考えるが、碌な予想が立てられない。こちとら寝起きですぞ。
「実はな……」
ごくり
「学校で授業を受けていたら急に教室が謎の光に包まれていて、気が付けば次の瞬間にはクラスメート全員が中世ヨーロッパの王様が住んでいそうな城に移動していたんだ」
「は?」
俺はわなわなと震えながら頭を抱え込む。おいおい嘘だろ、冗談だと言ってくれよ友よ。それって……それってよ、つまり……
「異世界転移じゃねえか!!!!」
そんでもって俺は異世界転移できてねえじゃねえか!!!!
その日ほど早起きをしなかった自分を悔やんだ日はない。
早起きは三文の徳である、とはよく言ったものである。