勇者、家政夫になる   作:ベルえ

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第6話 勇者、初体験

「食べた、食べた。我は満腹。うれしいなり」

魔王はお腹を抱え、ソファにふんぞり返っていた。

「おじさん、本当に料理上手だね!今日は久々に手料理を食べた気がする」

凛は幸せそうに笑いながらこちらを見た。

 

久々?

「久々?……魔王、一体こいつに何を食べさせてたんだ!?」

「勇者よ、落ち着くのじゃ。心の声が駄々漏れじゃぞ」

「あぁ……」

 

「出前宿。出前宿で好きな食べ物を選んでたよ」

凛が四角い物体を片手に、はにかんだ笑顔を浮かべる。

ほんの少し、寂しそうにも見えた。

 

「出前宿か……そんなの聞いたことねぇな」

「おぬしはそうじゃろうな。人間界の文明と縁がなかったからの」

「違うわい!俺も一応、現代人のはずだ!」

魔王はくすくすと笑い、凛もそれにつられて頬を上げていた。

 

「魔王様、年頃の子にはちゃんと栄養のあるもんを食わせろ。これからは俺が責任もって育ててみせる!」

 

「今までつらかったよね……魔王は料理できないみたいだから」

「え、そんなの気にしてないよ?」

「言えないよな……大丈夫。これからは俺が守る」

「あ、ありがとう」

 

俺は少女を軽く抱き寄せた。

 

「言わせておけば、我だってご飯くらい作れるわ!」

魔王は胸を張り、どこか誇らしげに言い放つ。

 

「本当?魔王も作れるの?食べたい!」

凛はぱっと俺の腕から離れ、魔王の元へ駆けていく。

 

「任せるがよい!……」

魔王は胸を張ったまま言うが、視線が泳いでいるのは見逃さなかった。

虚勢なのは明らかだが、そこは突っ込まずにおくことにした。

 

 

――――――――――――――――――

 

「お風呂入れてくるね」

凛はそう告げて立ち上がり、そそくさと走っていった。

 

「よろしく頼むぞ〜」

「今日は入るんだな?」

「お主も、言うようになったの」

魔王がジト目でこちらを睨む。

 

「入れる日は入るのが当たり前ですよね!?」

 

「ワレ、シラナイ。メンドクサイ。マホウ、ツカエバ、シツヨウナイ」

 

そう言えば……三日間風呂に入ってないのに、

髪はさらさらだし、不快な匂いもしない。

 

「勇者よ。我を犯すつもりか?やらしい目で見おって」

「おじさん!?出会って一日目で!?」

「ちょっと待って、誤解だ!話を聞け!」

 

「凛ちゃーん、勇者が舐め回すように我を見るのじゃ〜。コワイヨー」

 

「おじさん、いい人だと思ってたのに」

凛は小悪魔のような笑顔を浮かべ、からかってくる。

 

ええい、こうなったら

 

「正直に言おう!魔王、そなたは美しい!」

「はっ!?」

「今までに会った誰よりもだ!

種族なんて関係ない!

赤い髪も似合ってる!

飯を食べる顔すら愛おしい!」

 

凛には敵わないが……

 

「それに、スレンダーな体型に似合わない、その――」

 

言い切る前に、

拳が飛んできた。

脳震盪での、気絶は初めてだと感じながら床に伏せた。

 

 

 

 

 

 

 




もののけ姫の言葉を使ってみたかったのは内緒★
再放送だったので(執筆中)

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