「食べた、食べた。我は満腹。うれしいなり」
魔王はお腹を抱え、ソファにふんぞり返っていた。
「おじさん、本当に料理上手だね!今日は久々に手料理を食べた気がする」
凛は幸せそうに笑いながらこちらを見た。
久々?
「久々?……魔王、一体こいつに何を食べさせてたんだ!?」
「勇者よ、落ち着くのじゃ。心の声が駄々漏れじゃぞ」
「あぁ……」
「出前宿。出前宿で好きな食べ物を選んでたよ」
凛が四角い物体を片手に、はにかんだ笑顔を浮かべる。
ほんの少し、寂しそうにも見えた。
「出前宿か……そんなの聞いたことねぇな」
「おぬしはそうじゃろうな。人間界の文明と縁がなかったからの」
「違うわい!俺も一応、現代人のはずだ!」
魔王はくすくすと笑い、凛もそれにつられて頬を上げていた。
「魔王様、年頃の子にはちゃんと栄養のあるもんを食わせろ。これからは俺が責任もって育ててみせる!」
「今までつらかったよね……魔王は料理できないみたいだから」
「え、そんなの気にしてないよ?」
「言えないよな……大丈夫。これからは俺が守る」
「あ、ありがとう」
俺は少女を軽く抱き寄せた。
「言わせておけば、我だってご飯くらい作れるわ!」
魔王は胸を張り、どこか誇らしげに言い放つ。
「本当?魔王も作れるの?食べたい!」
凛はぱっと俺の腕から離れ、魔王の元へ駆けていく。
「任せるがよい!……」
魔王は胸を張ったまま言うが、視線が泳いでいるのは見逃さなかった。
虚勢なのは明らかだが、そこは突っ込まずにおくことにした。
――――――――――――――――――
「お風呂入れてくるね」
凛はそう告げて立ち上がり、そそくさと走っていった。
「よろしく頼むぞ〜」
「今日は入るんだな?」
「お主も、言うようになったの」
魔王がジト目でこちらを睨む。
「入れる日は入るのが当たり前ですよね!?」
「ワレ、シラナイ。メンドクサイ。マホウ、ツカエバ、シツヨウナイ」
そう言えば……三日間風呂に入ってないのに、
髪はさらさらだし、不快な匂いもしない。
「勇者よ。我を犯すつもりか?やらしい目で見おって」
「おじさん!?出会って一日目で!?」
「ちょっと待って、誤解だ!話を聞け!」
「凛ちゃーん、勇者が舐め回すように我を見るのじゃ〜。コワイヨー」
「おじさん、いい人だと思ってたのに」
凛は小悪魔のような笑顔を浮かべ、からかってくる。
ええい、こうなったら
「正直に言おう!魔王、そなたは美しい!」
「はっ!?」
「今までに会った誰よりもだ!
種族なんて関係ない!
赤い髪も似合ってる!
飯を食べる顔すら愛おしい!」
凛には敵わないが……
「それに、スレンダーな体型に似合わない、その――」
言い切る前に、
拳が飛んできた。
脳震盪での、気絶は初めてだと感じながら床に伏せた。
もののけ姫の言葉を使ってみたかったのは内緒★
再放送だったので(執筆中)