Welcome to New Kowloon Walled City.   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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Moonshine/Stranger

ある年端も行かない少女が暗い細道を歩く。微かに見える空は既に日が落ち、進む道は上下にも入り組んでいる。

「やってるか?」

そういい彼女はトタンでできた扉を開ける。そこは外装とは裏腹にモダンな酒場であった。

「何かおすすめの物を」

そう言い彼女はカウンターに腰掛ける。

「ロイヤルズが何かお探しかい?」

そう言って隣に座るカウボーイハットの男。

「ジャック!まだ生きてたのかい!」

「もちろん、ロイヤルズがそう簡単に死ぬわけが無いだろう」

少しばかりの抱擁。それは軽い挨拶のようなものだった。

「で?何しに来たんだ?」

「少し、頭が煮詰まってな」

そう言って彼女はテーブルに肘を立てる。バーテンダーが透明感のある酒を用意する。

「ムーンシャインか」

「夜中にピッタリだな」

そう言ってグラスを持ち上げる。ジャックが持ち上げたのを見て音頭を取る。

「「自由を」」

そして――。

「ドギーに」

 

彼はムーンシャインを飲み干す。若いドッグタグを掛けた彼、もとい俺はストレンジャーである。

「もう一杯飲めや」

そう言って手渡されたムーンシャインを持つ。

「自由を」

そう言って渡してきた彼は飲む。

「自由を」

そう言って俺も飲み干す。……さっきから視線がうるさい。俺に向けられたものではないが敵意がこもっているようにも思える。

「あんたストレンジャーだろ?じゃあ俺が先輩だなぁ?」

先ほどから目の前に居るチャラい男はずっとうるさい。

「そうだな」

適当に相槌を打つ。しかし酔っ払いというのは喧嘩っ早い。

「先輩に向かってなんだぁ?お前」

面倒ごとになりそうだと思いホルスターに手を掛けておく。

「落ち着け……騒ぎを起こすと面倒になるぞ」

何かが頭に来たのか彼もホルスターに手を掛け、拳銃を抜き放った。

――3発の銃声。

しかし倒れていたのは目の前のチンピラであった。

「ぐああああ……クソ……イテぇ……!!」

血が出る訳ではない。ここの服はハンドガン程度は貫通しない。しかし打撲や骨折はする。見た通りに苦しむことになる。

「おい……あいつゴブリンで撃ち勝ちやがったぞ……」

酒場がざわつく。更に狙いを付け頭に撃とうとする。しかし、不発。俺は運が良かったなと言い放ち銃を投げる。

「ここらで銃を売ってるところ、知らねぇか?」

そうバーテンダーに聞くがここらにはジャンクしか無いと答える。仕方がない。またジャンクを買って過ごすとしよう。そういえば後に知ったことなのだが俺が持っていた銃はゴブリンと呼ばれていたらしい。なんでも一番安く一番弱い銃、頭でっかちでゴブリンみたいな弱さらしい。

「騒ぎを起こしてすまん。これは詫びとして受け取ってくれ」

そう言いチップを渡し店を離れようとする。

「ようドギー!実はこいつ抹殺の対象だったんだ。譲ってくれない?」

そういい肩を組んでくる前髪がもじゃもじゃな男。後ろには大男と紳士が居た。

「まぁ、いいが」

「あり!!じゃあ良い銃買わせてやるよ、必要だろ?」

「そうだな。助かる」

「じゃあついてきな」

そう言って彼はチンピラを引きずって外に出る。酒場から離れ裏路地に着いたとき、銃声が鳴った。

 

「そういえばあんたらってどっから依頼受けてんだ?」

「うん?ああ……あんたは知らんか、ストレンジャーだし」

そう言ってもじゃもじゃの男は振り返る。

「フィクサーっつう奴らだよ。特にうちはクイーンに養ってもらってる」

「へぇ……」

「裏だとフィクサーが仕切ってる。フィクサーを介さずに動くのはナンセンスだよ」

そういうもんなのか。そんな考えを巡らせながらトタンでできた扉を潜る。そこは外装からは全く考えられない煌びやかな内装であった。

「ここがガンスミスなのか?てっきりもっと鬱蒼とした場所だと思っていたが」

「いや?違うね。ここは俺たちの住処――」

そう言って男は両腕を広げる。

「クイーン……その邸宅だよ」

 

「やあクイーン……こっちはドギーだよ」

「……客人を招いた覚えはないのだが」

クイーンは聞いた限りだとデカい、女傑だと思っていた。しかし実際は小さい……18歳にも満たなそうな少女だ。

「さて、ドギーと言ったか?」

「それが名前じゃないが……まあ、ドギーと名乗ろうか」

「何の用でここに来た」

そう彼女は圧力を崩さぬまま訊く。

「銃を仕入れに」

答えると眉をひそめる。

「ここはガンスミスではないぞ?」

「銃をくれると聞いてきたのがここだったんだ。他は知らん」

そういって男を見つめる。

「どういうことだ?クラック」

「どうもこうも……こいつが依頼の奴をぶっ飛ばしちゃったもんで、恩に何も返さないのはダメじゃん?ついでにツテでも増やしてやろうってね」

「ふん……」

そう言って彼女はこちらを品定めするかのようにまじまじと見てくる。

「まあ、いいだろう。だがこっちとしても条件がある。お前、バトラーズに入れ」

「バトラーズ?」

「うちのランナーチームだ。主に運び屋として飼っている」

「やだね、うちはフリーでやりたいんだ」

そう言って部屋を出ようとする。しかし彼女はそれを引き留める。

「ここ、Newkでは信頼できる奴は少ない。特に依頼を仲介してくれる奴はそれほど居ない。責任を取ってくれる奴もな。お前がフィクサーも介さず、チームも作らずソロで生きられるというならその扉を開けるがいい。だが――」

死ぬと思え。彼女の言葉が重くのしかかる。チンピラ然り、ここでは立場を弁えようが関係なくストレンジャーは死ぬ。その事実が扉に掛けた俺の手を止める。

「そこに自由はあるのか?」

「ある。私は縛ることはあまり好きじゃない」

「……わかった」

そう言って扉に背を向ける。

「受けよう。それで取引成立だ」

彼女は不敵に笑い銃を差し出す。

「持ってけ。餞別だ」

 

紫煙が立ち昇る。細く伸びたその糸は暗闇に解ける。

息を吐く。

その綿は次第に薄くなり狭い空間に広がる。

名は捨てた。忌々しい記憶と共に何者かであることを捨てた。弱みを捨てた。そうして何もかも捨て去って……何を得た?

「変わらない」

ため息を吐く。結局Newkに来ても自由は無かった。圧政、不信、排斥。一体どうすれば自由の女神は降りてくるのか。

踏み潰す。

煙草は19本しかない。ただ、俺は進むのみだ。




Newk観光案内板

<勢力>
企業…Newkを実質的に支配する拝金主義者。特にK-Tac、大東技術研究社(大東技研)、UniMediを指して三大企業と呼ばれる。

市民連合…企業に抵抗する反逆者。自治活動を行い市民を助けているがギャングと結託している団体も多い。

フィクサー…企業、市民連合どちらにも従わない第三勢力。何でも屋であるランナーチームや傭兵へ依頼を仲介し名声を稼ぐ。

<ランドマーク>
ウェスタンハイヴ…ドギーお気に入りの中部南側に存在する違法酒場。さあ乾杯しよう、自由を。

クイーン邸宅…中部のど真ん中のエリアにあるクイーンの家。外見とは裏腹に煌びやかだ。

<雑学>
ストレンジャー…Newkの異端者。外から来た人間はすぐに消える羽目になるだろう。

ゴブリン…今は亡き企業によって作られた拳銃。最も安価で醜い銃。
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