Welcome to New Kowloon Walled City.   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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響/Vader

ある部屋から何かを組み上げる音がする。フレームとスライド、バレルの当たる音だ。PL-FSB Mod.2、レべデフ拳銃の発展型。軽量化のため細くなったフレームとスライド、そして専用の非常に短いスライドの形に合ったサプレッサー。あまりにも短いために発砲炎は抑えられないが静音性は健在だ。更にこいつはK-Tac製の新式弾薬を使用し青い炎と共に確かな威力を放つ。これならNewkの防弾服も貫通できるはずだ。

「……良い銃だ」

スライドとフレームが噛み合いロックされた音がする。サプレッサーをワンタッチで付けマガジンを取り出す。軽量化のためにシングルカラムが採用されていて8発しか入らないがそれで十分だろう。

「精が出るな」

「ヴェイダーか」

バトラーズのリーダー、ポイントマンの大男。

「何か用か?」

「クイーンが呼んでいるぞ」

「わかった」

マガジンを装填しスライドを引く。清掃されたスライドは音も立てず動き薬室に弾丸を送り込む。それを見届けた俺はヴェイダーが開けた扉を潜った。

 

「待っていたぞ」

「依頼か?」

彼女の執務室に入ると机の上に1枚の紙とスマートチップが置かれていた。

「依頼主はウェスタンハイヴ。ほらあれだ……お前が初めてクラックと会った酒場だ」

「配達か。何処に?」

「ウィーバース、中部の北側だ。ここだな」

そう言って彼女は紙をこちらに寄越す。

「中部の1番街か。あの辺りは土地勘が無い」

「だろうな。今回はヴェイダーを付ける。お得意様だ、無礼の無いようにな」

俺は彼女の差し出したスマートチップを手に取りこの場を後にする。

 

「……あんときのストレンジャーか」

「クイーンの使いだ」

そう言ってカウンターに座る。

「まずは1杯」

「テキーラ、ワンショット」

そう言うと彼はテキーラを適当に見繕いショットグラスに入れる。

「チップは」

「ここにある」

そう言ってスマートチップをカウンターに置く。彼はそれを左手で隠し右手でテキーラのショットを渡す。

「塩はいい」

そう言うと彼はライムのみを渡してきた。

「いつまで居るつもりなんだ?」

「連れが来る。もうすぐだろうな」

そう言うと入口のトタンが開く。

「すまん。遅れた」

「遅かったなヴェイダー」

そう言うと俺はショットを飲み干す。

「物を用意してくれ。すぐに出る」

彼が奥に行ったのを見届けライムを齧る。

「酒を?」

「駆けつけ1杯ってとこだな。3杯も飲んでられねえよ」

そう話している間に店主が戻ってきてカウンターに段ボールを2つ置いた。

「これが依頼の物だ。よろしく」

「わかった。あとこれは──」

「いい。クイーンから預かっている」

「ドギー、早く行くぞ」

見ると既に荷詰めを終えたヴェイダーが居た。

「また来る」

「楽しみに待っておくよ」

 

Newk最下層のトラムに乗り中部北側を目指す。

「ドギー、そういえばなんだが」

「なんだ?」

「ここに来るまでは何をしてたんだ?」

「どうしてそんなことを聞くんだ?」

そう言うと彼はドッグタグを指差す。

「こいつをしているやつは久々に見たからな」

「……なんだっていいだろう」

「愛想が無いな……俺は軍に居たんだ。戦場を経験したことがある同士仲良くしよう」

「そうだな」

過去は捨てた。このドッグタグは魔除けだ。絡んでくる馬鹿共を避けるためのアクセサリーだ。

「ん、着いたな」

ふと外を見ると駅の明かりがあった。

 

エレベータで7階へ向かい道を辿っていたとき、ヴェイダーに肘で突かれた。

「どうかしたか?」

そう言うと彼は視線をある方向へ向けた。企業警察だ。

「目立たないように行け」

俺たちは視線を背け気づかれないように進む。足を進める。警察の全身が映る。足を進める。顔がよく見える。足を進める。声がはっきりと聞こえる。

「……」

視界から警察が消える。つまり通り抜けたということだ。息をつくとヴェイダーと目が合った。頷いて前へ進む。

「そこの2人」

そう言われて俺達は立ち止まる。しまったな……。

「ここらへんで手荷物検査しているんだ。付き合ってくれるか?」

「ああ、わかりましたよ」

そう言って俺達は鞄を地面に置く。2人か……。ヴェイダーを見ると軽く頷いていた。

「最近ここらで何かあったんですか?」

「ああ、丁度この辺りで大東の奴が殺されてね」

「なるほど……だから手荷物検査してるんですねぇ……」

そう会話しながら少しずつ警察の後ろに寄っていく。

「ん?なんだこれは──」

そう警察が言った瞬間俺達は銃を抜いた。

 

響き渡る2発の銃声。赤と青の発砲炎。

 

警察は銃を抜くことすらできず物言わぬ2つの肉袋になっていた。

「じきに応援が来る。行くぞ」

「わかってる」

そう言って鞄を手に取り先を急ぐ。

 

ヴェイダーの案内に従って進むと目の前に木製のドアが現れた。ヴェイダーが抵抗もなく開けると黒で統一された酒場がそこにはあった。

「ヴェイダーじゃないか!お届けの品かい?」

そう言って出てくる年配の女性。

「ファブリック!ああ届け物だよ」

「いつもありがとうねヴェイダー。……あちらはお仲間の?」

「ああ、ドギーと言う」

俺はどうもと挨拶し、ヴェイダーに合図されて鞄をカウンターに置く。

「はい、これは報酬ね。ヴェイダーや、いつもの席は取ってるからね」

「ありがとうファブリック。響をくれ、ボトルとグラス2つだ」

そう言うとファブリックは棚からボトルキープされているらしいウイスキーとグラスをトレイの上に置いた。

「悪いけど自分で持って行ってね」

「ありがとう」

そう言って彼は俺を誘い特等席とやらに行った。

 

「煙草は吸うか?」

「ん?ああ……」

そう言うと彼はポケットから煙草を取り出しライターで火をつけた。煙がベランダに解ける。

「お前も吸うか?」

「ああ」

俺は煙草を取り出し火をつけようとすると横からライターが伸びてきた。甘んじて火をつけてもらう。

「いい物を吸ってるな、マルボロか」

「ん?ああ、そうだな。そっちは何を?」

「ラッキーストライクだ。アメリカらしいだろ?」

鼻で笑うと満足気に彼は頷く。

「あいつらも今頃は大変だろうな」

「誰が?」

「あの警察だよ。いっつも引っ搔き回しやがって、バトラーズの身にもなってみろってんだ」

「よくわからないが……ここに来て初めてのときは痛い目にあったよ」

「何かあったのか?」

「難癖付けられてな……ライフル取り上げられた」

そりゃ酷い話だ、と笑う。

「改めてだが……」

「なんだ?」

見るとヴェイダーがウイスキーを注ぎ片方を渡してきた。

「バトラーズ加入を祝って」

「ああ、バトラーズに」

自由を──。グラスを一気に煽る。

「戻ったら心優しい姫がケーキを用意しているはずだ」

「……今思ったんだがこっちで飲んで帰ってきたらどやされないか?」

「……だな」

顔を見合わせて笑う。まあこいつらならどやされるのも悪くはないだろうよ。




Newk観光案内板

<勢力>
企業警察…企業の犬。企業が出資する警察で企業法に基づき処罰する。

<ランドマーク>
ウィーバース…初代店長は北部で有名なフィクサーであるウィーバー。現在はファブリックという老婆が店長をしている。

<文化>
金銭…貨幣は全て電子化されている。主に使用されるのはスマートチップというカードである。

乾杯…違法酒場摘発事件のあとそれに対抗するために団結した名残がある。自由を──。それはNewkの自由を謳う音頭であり宣言である。
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