おつかれ勇者とつるぎの魔女   作:調味のみりん

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9話 誰かへ

 

 

 ルークは王国の隅の小さな小屋で産まれた。  

 何の特徴もない、貧しい下町の煉瓦職人の両親のもとに。

 

 

 生活は苦しかったが、彼には優しい姉がいた。

 聡明で、賢く、可憐な姉が。

 近所の人はみな姉を誉めそやした。将来が楽しみだと。

 

 姉もまた、そんな期待に応えるようにぐんぐんと知識を深め、人格を養い、優しく強くなった。

 

 未来を嘱望された少女だ。

 

 

 

 それを、殺した。

 

 ルークが殺した。

 今でも胸骨の、隙間を肉を押し除けて。強制的に切り離しながら進むナイフの感触を覚えている。細胞と細胞のあるべきつながりを致命的に、乱暴に、暴君のように壊していく刃物を覚えている。

 

『ごめんね、ルーク』

 

 その言葉の意味を理解するのは、まだ遠かった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ぐぁッ!?」

 

 肘の断面から吹き出す血液が、拍動に合わせて勢いをリズミカルにしている。

 ルークは咄嗟に身体強化魔術で切断面周囲の筋肉だけを活性化させ、簡易的な止血をした。

 

『引きなさい!』

 

 カランコエが叫ぶ。

 彼女にしては珍しく声を荒らげているな、と思いながら頭痛のする頭で小部屋の入り口から元いた通路まで退却を始めた。

 

 女は追ってこない。

 だが、気配がこちらを見ている。

 

 

 一瞬でルークの腕を落としてきた。

 そんなバケモノが、第一層に出た。

 

 

 誰かが出会ってしまう前に、すぐに知らせなければ。

 

 腕を押さえながら通路に下がる。途中で小部屋の向こう側にある別の通路が視界に入り、銀灰色に青の混じった少女が通路を駆けていくのが見えた。幸い、こちらとは別方向に向かっているようだ。あの女とばったり出会う事はない。尤も、時間の問題だろうが。

 

『はやく、はやくしなさい』

 

 カランコエが急きたてる。

 ルークは岩陰に身体が隠れたのを確認した瞬間、足に強化魔術を発動して猛スピードで通路を遡上した。

 

 流れる視界の中で、すぐに新進気鋭の2人を見つける。

 

「お、おい……あんた腕……ぐっ!?」

 

「ふぇ、ぇ……うきゅ!?」

 

 

 顔面蒼白ながら、剣を構えて警戒をしていたノウスと、座り込んでしまっていたフィニスを走りながら回収する。装備をつけていて重たいノウスは左腕で。フィニスは初級水魔術の拘束力の弱い縄で絡めて回収した。

 

 駆ける、駆ける。

 とにかく遠くへ。

 あの女から離れるように。

 

「おい、おい! 離せ!」

「る、ルークさんっ! うでが! ち、治療しないと……!」

 

 血は止まらない。

 思考がだんだん白くなっていく。

 

 そして数十メートルは稼いだといった地点で、ルークは2人を下ろした。

 ぼたぼた、と地面に赤黒い止血しきれなかった血が重たい音を立てて染み込む。

 

「君たち()、逃げろ」

 

「はぁ!? 俺も戦う! 嫌だ! 逃げるなんて、そんな卑怯なことはしない!」

 

 ノウスは怒った。

 目の前にいる青年は腕を失い、顔色が悪く、荒い呼吸を繰り返している。それなのに、君たち()、だと? 

 

「俺は逃げない! 俺は臆病な大人どもとは違う!」

 

 確かに怖かった。

 あの、得体の知れないバケモノ女は死の気配を鮮明に押し付けてくる。逃げたかった。足が震えた。だけど、ノウスにも意地があった。

 

「? 何を言ってるんだい?」

 

 そんな震えた決意を聞いたルークは心底不思議そうに首を傾げた。

 呼吸がいっそう荒くなる。彼は魔術を重ね掛けして震えを抑えた。

 

「卑怯って……逃げることも戦いじゃないか」

 

 ルークは腰のベルトを外して、千切れた右腕にぐるぐるとキツく巻く。明らかに戦いの準備をしていた。ノウスは呆気に取られた。

 

 フィニスは泣きそうになった。

 

 

(この人は、今から死ににいくんだ)

 

 彼女には分かってしまった。

 同じような経験を、子供の頃にしたことがあったから。

 

 ルークは、足止めに、2人を逃すために足止めになる気だ。

 

 

「いいかい? 短かったけれど、僕からの最後の教導だ。──戦いだ。全ては戦いなんだよ。人生全ての行為は戦いの変形だ。だから、懸命にやれ」

 

 血塗れの青年は、揺らがない瞳でノウスを見つめた。

 その後ろにいるフィニスを見つめた。

 

 がし、と肩を掴まれる。

 ノウスのまだまだ成長途上の肩に、残った左手をルークが乗せる。

 

「戦え。逃げるために、懸命に」

 

 ノウスは何か言おうとしたけれど、何も言葉にならなかった。代わりに血が出るほど唇を強く噛み締め、自分の無力さについてくる自己嫌悪を押し殺した。

 

「──いいね、強い冒険者だ」

 

 ギリギリと歯を食いしばりながら、頷いたノウスにルークは優しく微笑む。そして、一言。

 

 

「カランコエ、鍛造してくれ。ありったけ」

 

 

 カランコエ? 誰だ? と思う間も無く周囲に無数の剣がガシャンガシャンと落ちる。数十本はある。

 ルークはそのうちの一つを手に持って、あとは水魔術の縄で野菜を纏めるように繋いで、引きずって運べるようにした。手慣れた魔術だった。

 

「ノウス。フィニス。未来ある冒険者たち、──彼女を頼む」

 

 続けて、腰に佩いていた白く控えめな装飾のある剣をノウスに手渡した。

 何がなんだか分からない。彼女? 頼む? 

 

 

 ノウスは混乱する。

 

 

 だがルークはお構いなしに準備を進める。

 いつのまにかここは死線を前にする鉄火場になっていた。

 

「カランコエ、契約を切れ。“事前に宣言する、僕は契約を破棄する”」

 

 魔術師見習いのフィニスは何かに気づいたようだ。

 驚くように手を口に当てて、剣を見た。

 

「あとは君の同意があれば、大丈夫」

 

「はっ? なにを……え? 彼女?」

 

 血塗れのルークは最後に剣に向き直った。

 決意を秘めた表情が一瞬寂しげな色を帯びて、瞬き一つのあとには見間違えのように元の表情に戻っていた。

 

「カランコエの次の持ち主は、いちど、君にする。君に託す。優しいこの子を未来に繋げてくれ」

 

 言い残すと、ルークは強化された脚力で駆け出した。

 あの、バケモノの方へと。

 

 

 

 ◆

 

 

 青年は風のような速度で走っていった。

 後に残されたのは静寂と、ぼんやり光を放つ白い剣だ。ずしりと手に重さを伝えるその剣は、なんだか本来の場所に収まっていない違和感があった。

 

「ノウスぅ! いくよ、にげるよ! しらせないと!」

 

 剣を見つめ固まっていたノウスをフィニスが服の裾を掴んで引きずる。彼女の顔面は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

 

「わかっ──『まちなさい』

 

 迷宮の出口に向かおうと、体の向きを変えた瞬間だった。

 鈴のような初めて聞く声が響いて、しゃらん、と音がした。

 

「わたしはあっちに行く。あなたたちだけで逃げるのよ」

 

 そこにはいつの間にか、白髪の少女がいた。

 無表情の彼女はふわりと洞窟の地面に着地すると小さな指で出口を指差した。

 

 見慣れない人物の登場に、ノウスは目を白黒させる。

 先に動いたのは、意外にもフィニスの方であった。

 

「貴女は、ルークさんの、近しい人、でしょうか!」

 

「ええ、契約者」

 

 少女が頷く。

 ノウスはその言葉にかろうじて理解が追いつく。契約は耳に挟んだ事がある程度に珍しいものだが、無いわけでは無い。よくよく見れば少女の一部の髪色はルークと同じだった。

 

「あと、魔女」

 

(は?)

 

 理解は振り切った。

 魔術師ゆえに魔女への理解がある程度あるフィニスに至っては口をぱくぱくとしている。

 それだけ魔女というのは出逢ってはならぬとされているものだから。

 

 子供の頃、寝物語に聞かされる悪役。

 大勢を殺した御伽話の存在。

 

 フィニスが杖を構えて、涙の溜まる目で、ノウスの前に立った。

 カランコエは震えながら少年を守ろうとする小さな魔術師を見て目を細める。

 

 結局、少女は特に咎めるような事はせず、通路の奥に向きを変えた。

 

「時間がないわ。それじゃ、げんきでね」

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 歩き出したカランコエの腕を掴んだのはノウスだった。

 顔には混乱と怯えと、それ以上に悔しさの滲んだ顔。

 

「ダメだ! 俺は、……託されたんだ! アンタが誰でどんな奴かは知らないが、行かせられない! いまは、逃げる時だ!」

 

「あら、“魔女”に道理を説くのね?」

 

 少女の声は凛と響いた。

 思わず勢いづいていたノウスも鼻白む。

 

「わたしが行きたいから行く。あのバカが勝手に死にに行くのが気に食わないから行く。命を粗末にするアホを引っ叩きにいかなきゃいけないから行くのよ」

 

 無表情に魔女は宣う。

 紅い、人ではない瞳が妖しく輝く。

 あたりの雰囲気を支配しているのは、いつの間にか、この魔女の一挙手一投足だった。

 

「っ! そんなの、理屈になってない!」

 

「ものごと全てに理屈がつけられるなら、人は狂わないし、魔女にもならないわ」

 

 

 沈黙。

 何も言えない。

 それだけ、少女の言葉には重みがあったから。

 

 

「それじゃあ、ね」

 

 魔女はそれだけ行って、ペタペタと人と変わらない速度でルークの辿った道を走っていった。

 

 ノウスが伸ばした手は届かなかった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 時刻は少し巻き戻り。勇者が2人の元を去った直後。

 ルークは走っていた。

 

「はあっ、ふっ……」

 

 岩壁が流れる。

 あのバケモノの元に急ぐ。

 

 背後で魔術で繋いだだけの剣たちががちゃん、がちゃんと音を立てて引きずられているが、気にはしない。

 今さら隠密など、意味がないから。

 

 やがてルークは腕を千切られた地点までやって来た。

 小部屋の中央には相変わらず黒い服の女がいる。

 

「ほぉ、戻ってきたか、虫ケラ」

 

「……話が出来るタイプか」

 

 ルークは全神経を集中させ、剣を構えた。

 女は不思議そうな顔をした。

 

「話が出来る? 当たり前ではないか。寧ろワタシにとっては下等な貴様ら虫ケラが言葉を解する方が不思議だ」

 

 言葉一つ一つが不吉だ。

 葬式で鳴らされる鐘のような響きを伴っている。

 

「元いた場所へ、帰ってくれないか」

 

 真剣な表情で、汗を一滴頬に流しながらルークが言った。

 

「──ふ」

 

 空気の漏れる音。

 女が無表情に身体を少し曲げ、

 

 

 

「ふ、アハハハハ!」

 

 

 大笑いをした。

 その笑いはピタリと止まる。

 

 

()()。どうやら、この迷宮を“岩の魔王”が乗っ取ろうとしているらしい。不愉快だ。だから、この迷宮にいる()()()()()()

 

 可笑しな宣言だ。

 狂人の戯言のようにも聞こえる。

 

 だが、目の前の()()はやる。

 絶対に。ルークの直感がそう告げていた。

 

 

「理不尽って顔だなぁ? 分かるぞ、皆んなそんな顔で死んでいった。迷宮は色んなことがあって、理不尽だ」

 

 ルークの視界の隅で、天井が変形して口になり、飛んできた。

 過集中をしていたために、かろうじてその姿を捉えて、剣で防ぐ。

 

 ぎゃいん、と金属が擦れる音がして“一刀の加護”が発動。口の軌道を逸らした。

 

「ほお? ん? ……ああ、虫ケラ、お前勇者か」

 

 黒い女が目を細める。

 

「じゃ、()()()()

 

 現れるのは、十はくだらない口、牙、舌。

 迷宮の壁や天井、地面が歪み、変形して牙のついた口になる。ワームの魔物のように、一斉に狙いを定める。

 

「お、おおおおっ!!」

 

 そして、口が僅かにブレたと思った瞬間に襲いくる重撃。

 一撃一撃が致命の威力を孕んだ攻撃が雨のように降り注ぐ。

 それら全てをルークは弾く。剣が砕ける。予備の剣を振る、砕ける。また予備をキックでかち上げ、掴むと同時に振る。

 

「ほうほうほう! なかなか虫ケラ! しぶとい!」

 

「ぐっ、うぅぅ……!」

 

「ご褒美に、もっと()()()()()

 

 かろうじて保っていた均衡があっさりと崩される。

 防ぎきれなかった口が、牙が、脇腹を抉っていく。腕に溝状の傷が生まれる。

 痛みで思考が点滅するが、集中は切らさない。減らさない。途切れさせない。その瞬間が、死の瞬間になるから。

 

「アハハハハ! 可哀想になぁ! 必死で防いでいたのに、もっと足されて! 理不尽!」

 

 女は愉快そうに笑っている。

 ルークとの距離は10メートルほど。そこから一切近づけない。

 

「どうした、どうした。意気揚々と戻って来た割にはワタシに傷一つ付けられてないぞ! ワタシは一歩も動いていないぞ? それでも英雄か?」

 

 

 ぶちん、と音がして、視界ががくんと低くなった。

 左脚が脛の半ばから噛みつかれ、ちぎられていた。

 

 許容量を超えた苦痛に、脳の電気信号が焼き切れて一瞬気絶。すぐに意識を取り戻した。

 目の前に女の黒い目があった。

 

「おはよう、虫ケラ」

 

 女が地面を触って、その地点から盛り上がり、発生した口に剣を持った左手が落とされる。

 

 

「が、ぁぁぁッ!?」

 

 

「世界は理不尽に満ちている」

 

 女の顔が少し離れて、唄うように言った。

 ルークの顔は脂汗に濡れている。

 

「ああ、悲しき哉! 道端を歩く親子が雷に打たれたり、運悪く馬車の事故で愛する人が亡くなる」

 

 芝居がかった台詞は、この戦いをたちの悪い演劇に仕立て上げているようだ。

 主演は女、やられる脇役以下は、ルーク。

 

「道理に合わない、不公平、正しくない、運が悪い、運が悪い!」

 

 いや、戦いですら無い。

 一方的だ。蹂躙だ。女は明らかに余裕で、嬲っていた。

 

 

「ああ! 理不尽!」

 

 

 力を入れて姿勢を制御しようとしていた右脚も撃ち漏らした口に噛みつかれ、ぶりん、と捩じ切られる。

 

「そして、ワタシが“理不尽(それ)”だ。世界に満ちる、『どうしてこんな目に?』の化身だ」

 

 ルークは地面に倒れ伏す。

 動く事は出来なかった。物理的に動く機能を喪失していた。

 

「残念だ」

 

 女が言う。

 

「君が死ぬことに大した理由はないし、ワタシが今からこの迷宮にいる全生物を殺すのにも理由がない。それが理不尽だからだ」

 

 もはやルークに出来るのは顔を上げることぐらい。

 女は高い位置から勇者を見下ろし、感情のない目に死にゆく“虫ケラ”を見ていた。そこに何の感慨もない。口では軽やかに語っているように見えて、何一つ相手に感情を向けていない。

 

 だって、誰も虫にまともに喋りかけるヤツなどいないから。

 

「手も足も出ない運命を恨めよ、勇者。──尤も、もう手も足も()()がな! アハハハハ……!」

 

 嗤って女は興味を無くしたように視線を切った。

 見つめるのは何処かの通路の奥だ。きっと、迷宮にいる冒険者を感知した。

 そして、仕留めに行くのだろう。虫を殺すように。感慨もなく。

 

 これが、理不尽。

 突然目の前に現れて、全てを奪っていく存在。

 自然災害のようなものの前に、誰も彼もが等しく膝を折った。

 

 

 だが──

 

 

(運命を恨む? 理不尽に屈する?)

 

 ルークの瞳はまだ、敵を捉え続けていた。

 

 理不尽だと? バカを言え。そんなもの、姉を殺した時に経験済みだ。

 

「僕は──」

 

 誰もが膝を折ってしまう、そんな理不尽に立ち向かうのが、勇者だ。

 そう決めて、そうあれと生きてきた。

 

 ごふ、と粘度の高いねばついた血を吐き出す。

 鼻からも、口からも。

 

「お゛い」

 

 濁った声だ。

 血で口の中がいっぱいで、発音がままならない。

 だが、女には届いた。僅かに眼球を地面のルークに向けた。

 

 

「勇者なめんな」

 

 べろ、と開けた口の中には、手のひらより小さな短剣。

 

 ルークの授かった加護は『一刀の加護』

 どんな形であれ、振れば発動する。

 

 それで近くまで油断して来ていた女の足首に噛みついた。

 響く炸裂音。直接発動した加護は口と近い地面も削り、砂埃を上げた。

 煙が晴れた、その先には──

 

 

 

 

 

「ざぁーん、ねん。なんの効果も、ありません」

 

 

『いいえ、貴方の()()()()()()()()()

 

 

 ひゅるりと飛んできて、ルークの目の前に刺さったのは見覚えのありすぎる剣。

 白い本体に、控えめな装飾の、魔女の剣だった。

 

 

 魔女、カランコエ。

 勇者ルークの余計な気遣いにより、戦闘から遠ざけられ、契約フィードバックの消耗はあれど、五体満足で馳せ参じる。

 

 あはっ、と少女は嗤った。

 

()()()()()! わたしが、こうやって、魔法を使えるもの!』

 

 

 禁忌を破りしものは、楽しげに笑った。

 

 

 

 

──そう。

 

──世界には、十の禁忌がある。

 

 

 第一禁忌『神を騙るな』

 第二禁忌『魂を変形させるな』

 第三禁忌『時に触れるな』

 第四禁忌『生命を逆行させるな』

 第五禁忌『世界を上書きするな』

 第六禁忌『次元を覗くな』

 第七禁忌『星と大地を繋げるな』

 第八禁忌『因果を盗むな』

 第九禁忌『▫️▫️▫️』

 第十禁忌『鏖殺するな』

 

 以上を以て『世界禁忌』とす。

 破るな犯すな増やすな。

 

 魔王などの名前や異名に『魔』を冠するものはこのどれかを犯したものである。

 基本的には最も犯しやすいのは第十禁忌であり、大抵の魔王はこれを犯している。

 

 

 そして、『つるぎの魔女』カランコエは、第二禁忌を破りし魔女である。

 禁忌をぶち破り、勝手に魂を鍛えやがった魔女である。

 

 

「鍛造魔法、てんかい」

 

 

 

 

「魂魄鍛造、対象   

 

 

 

 

 

 

 ▶︎ 勇者ルーク」

 

 

 

 彼女もまた、世界の理に、仇なす存在であるのだ。

 少女が唱える。

 

 魔法の呪文を。

 

 

 

「鍛造、開始」

 

 

 世界が白く、包まれた。

 

 

 

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