真っ赤な果実のような空が、端からグラデーションになっている。
歩兵隊本部での打ち合わせを終えた時には、もう空は夕暮れなっていた。
「アスナヴァさんは後方で、治療だそうです」
「そうだな」
本部の建物を出て、確認のためにルークが言った。先ほどまでギャレヲンを含めた軍の人間と作戦会議をしていたのだ。
「アスナヴァさんが居るなら安心ですね」
「そうか」
出口までは案内の兵士は居なかった。あとは帰るだけだから。信用されているのかもしれない。それとも、ここで変な行動をせず、真っ直ぐ帰ることを見張られているのかも知れない。
風がぬるい。日中の熱の名残が頬を撫でる。
ルークは真っ赤な空を見ながら歩き出した。
気温がだんだん下がり始める。
まだまだ暑いが、ゆっくりと。兵士の訓練の声を背後に、ぱたぱたと夕空を飛ぶシュンカに微笑み、ルークは歩兵隊を後にした。
◆
『やっ、新人クン。このあと時間ある?』
そんな声をかけられたのは、スゥの家への道すがら。
アスナヴァは医療品や薬草の買い出しでシュンカ共に別行動をしている時だった。歩兵隊本部を出て、十数分経ったころだろうか。
「あなたは」
『リャムだよ。ほら、蠍から助けて貰ったでしょ?』
赤い、砂漠の砂ような髪をしたエメラルド色の瞳の猫獣人の彼女は、コテンと顔を倒しながら言った。
場所は坂道になっている、裏道に近い通りの一つだった。道幅は馬車一台も通れないくらいだろうか。両脇に酒屋や食事処が固まっているらしく、仕事終わりの人で賑わっていた。鼻腔にスパイスや、独特の香水の香りが入り込んでくる。これを嗅ぐたびにルークは、ここはソラナム王国とは遠く離れている場所なのだと実感する。
猫獣人の女性はルークを道の端まで呼んで、ぱちりと瞬きをした。
彼女はくい、と背後の店を一つ親指で指す。
『お姉さんが一杯奢ったげる』
彼女が指したのは、店の前に、手のひら大の木の実をくり抜いたランプが掛かっている食事処らしかった。2階は宿屋だろうか。灯りが漏れている。人の生活の匂いが。
「えっ、と」
避難の知らせが出ているのに、まだ営業しているのかとルークは思った。だが、そんな考えをリャムは別の疑問と受け取ったのか、ルークを見つめながらぽつりと言った。
『アタシは戦わないよ。だって、死んじゃうから』
行き交う人はそれなりに多い。道の端で会話をしながら、雑踏の音に彼女の少し低めの声が溶けて、藍色に変わり始める空に一斉に通りに灯りがついた。
『新人クンみたいに強く、ないしさ。助けられちゃった身だもん』
彼女はすん、と鼻を鳴らす。
すぐ後ろを、頭に布を巻きつけた若い商人が走っていった。
ルークの手に、静かな感触があった。顔を正面に戻すと、夜の始まりの、深い青色を取り込んで、複雑な色合いを放つ彼女のエメラルドの瞳があった。
『ね、今からでもやめにしない? やっぱり、危ないと、思うんだけどなー』
吐息がかかるほどの距離で。
あくまで言葉は軽く、しかし真剣に。
心配をしていた。
彼女は、迫り来る魔王の都市と戦うと宣言をしたルークを心から心配していた。
「なんで、そこまで」
ルークは困惑に瞳を揺らす。
返ってきた答えは、シンプルだった。
『死んで、欲しくないって言ったら?』
沈黙が降りる。
周囲の雑踏がいろんな音が混じり合った音を奏でる。道の脇で話し込む二人に、誰も気にしない。
世界が遮断されたような、二人だけの世界が出来ていた。
くい、とルークの手が引かれる。
リャムの濃い翠の瞳が丸くなる。
『アタシ、2階で泊まってるんだ。来てよ』
彼女は言った。
ちょっとはにかみながら。ちらりと白い牙が覗いた。
彼女の、柑橘のような香りが広がる。
手を引かれて、二人は宿に一歩、二歩と近づく。
状況がいきなりで、ルークは完全に頭が止まっていた。
夜の街が始まる。ざわめきが大きくなる。空は完全に灯りが落ちる。建物の中に人は吸い込まれていった。そんな時。
『おっとごめんよ、通るぜ』
近くを丁稚が通った。ルークの背後、ぶつかるかぶつからないかくらいの距離を。もう日も暮れた。急いで帰ろうとしていたのだろう。
青年は脚を止めた。引かれる手が、ぴんと伸びる。リャムの手が止まる。
前を歩く彼女は張った自分の手を見て、それからゆっくり振り返ってルークの顔を見た。
彼女が浮かべる表情は、困惑でもなんでもなく、悟ったような優しい諦めの表情だった。
『行けない?』
そう、目尻を下げて彼女は言う。
流石のルークもこういうことは分かった。というより、彼は人一倍勘違いをして粉砕されてきた過去があるので、察することは容易かった。
『アタシと──』
リャムは静かな声でまた口を開く。ルークは“ダメだ”と思って無礼を承知で急いで彼女の口を繋がれていない方の手で遮った。
『えっ? な、なに?』
ルークの手の奥で、彼女の吐息がかかる。瞳が困惑に揺れている。ルークも心臓がバクバクしていた。正直、場の雰囲気に流されてしまってもいいと思った。相手の誘いに身を委ねて、なんとなく、進めばいいと思っていた面もある。でも、それは違う。
ルークの頭をよぎったのは、明瞭でない幾つかの記憶の欠片。ハッと冴えるような風に遊ぶ白い髪、毒に侵された空を見上げる団員の横顔、瓦の屋根がある路地を声を上げながら笑って走っていく子どもたち。階段状の教室。
ルークはスゥ、と目を閉じて、力の入らない口を動かし、言った。
「そこから先は、あなたには言わせたく、ありません」
リャムが目を見開く。
ルークの手のひらが熱くなる。
「ぼくに、ぼくなんかに、むきあってくれたあなたに、惰性で返すことは、しちゃいけない。したく、ない」
人混みが少し多くなった。二人は更に近づく。
ざわめきを背景に、二人は息が掛かりそうなほど近くで向かい合う。ルークは言葉を必死に選びながら、拙いながらも喋った。
「人に、気持ちをつたえるのは、とても、勇気のいることだとおもう」
辿々しく、表現を選びながら。
頭の中はごちゃごちゃしていて、何を言ってるのかわからなくなっていたが、言葉と言葉をどうにか繋げて繋げて、相手に渡すように、努力した。
そうだ、ルークの頭によぎった記憶たちは、人に真剣に向き合う事を伝えていた。ような、気がする。ここで適当に選んだら、そんな過去たちに、出会ってきた人たちに申し訳がない。
だからルークは不慣れでも、リャムの真剣な瞳と向かい合う。
「ありがとうございます、とても、嬉しい。でも」
『でも?』
「ぼくには、うけとれません」
たとえ、口の中で苦いものがひろがるようかどうしようもない返答でも。
『そうかな』
「はい、そうなんです」
ルークは鼻の頭に皺を寄せる。相手は悪くないのだ。ただ、どうしても、血生臭い、女神に依存していたと自覚した空っぽの自分では、相手のこんな素敵な気持ちを受け取るに値しないと思ったのだ。
いや、違う。
そんなのおためごかしだ。
怖かったのだ。
ルークは相手が想像するような、綺麗な人間ではなくてちっぽけな、人間だと失望されてしまいそうで。
「だから、……ごめんなさい」
こんな素敵なものは、とてもとても受け取れないと、突き返したのだ。
それがどれだけ自分勝手で、自分本位で、相手のことを慮っていない答えだとしても、嘘はつけなかった。罵倒されても仕方がない。叩かれても仕方がない。そんな、最低な答えだった。
でも、相手を騙す、甘い嘘はつけなかった。
『ごめんなさい?』
「はい、すみません」
ルークは無意識に唇を噛んだ。
惨めだった。
なんて、醜い、自己保身の塊か。そう、思った。
人一人の思いすら受け止められない自分が、どうしようもなく不甲斐なくて、ルークは気がつけばポロポロと涙をこぼした。
「…………っ」
彼は何も言えない。
異国の夜の入り口で、青年は足踏みをして情けない姿を晒していた。
向けられた感情に戸惑って、うまく答えられなった。
ルークは必死に頬を伝うものを止めようと歯を食いしばる。相手に迷惑だから。傷つけているのはこちらなのに、被害者のフリをするのは道理が合わないから。
すると、目の前からぷっと、声が聞こえた。
『まじめだねー、アハハ』
リャムだった。
赤い髪を揺らして、夜の灯りにその身を染めながらリャムは笑った。仕方のない弟を見るような、そんな雰囲気で。
『でも、そんなトコ、アタシ好きだよ、新人クン』
ふっと彼女が掴んでいたルークの手を解いて、青年の鼻先をツンとつついた。
突然の行動に彼が固まると、彼女は悪戯っぽく笑った。
『ちゃんと、悩みなよ。その時間を悪いと、思っちゃダメだよ。じゃないと、それこそ不誠実になっちゃう』
ちらりと、桜色の彼女の唇から犬歯が見え隠れする。
砂漠の街で、夜の寒さがだんだんやってくる。そとはすっかり暗くなって、灯りで照らされた目の前の世界だけが輪郭を伴って浮かび上がっていた。どこかの店で、宴会が始まった。騒がしい声が聞こえてきた。
リャムは目尻を下げて笑った。
『マジメだね、ホントに』
ルークは茶髪を揺らしながら、首をゆるゆると振る。
「なさけない、だけです」
『年長者の言葉を否定しないの。人の話を聞く』
きゅっと両手で頬を挟み込まれる。ルークの方が身長が高いので、彼女がだいぶ腕を上に伸ばしている状態だ。
「あっ、えっ?」
『うごくなよ〜』
ルークは強制的に彼女と目を合わせられた。
すこし潤んだ緑色の目は、赤色ばかりのこの場所では、ひどく輝いて見えた。
『いい? キミはちゃんと足踏みして、時間をかけて、歩いてね。──アタシみたいにならないように』
彼女はそう言って、首を少し傾けて隷属民の証の紋を見せた。縦線が横に並んだ、落ちることのない刺青だ。
ルークは黙って、呼吸が詰まったような錯覚と共に、ゆっくり瞬きを繰り返すしか出来なかった。
「ぼくは」
うん? と彼女が鼻を鳴らす。
ルークは目を逸らさず、溢すように言った。
「あなたみたいに、つよくて、きれいな人になら、なりたいです」
『そっか』
リャムは頷いて、パッとルークの両頬から手を離し、背伸びをした。そしてそのまま、また手を伸ばして、ルークの麦色の髪をゆっくりと往復させるように撫でた。優しい手触りが、ルークの髪を梳かしていく。
『そう、思ってくれるんだね。君は。君は、そう思えるんだね』
彼女は満足げに微笑んで、何度も背の高い相手の頭を撫でる。身長や体格こそそれなりにあるルークだが、どう足掻いてもまだ青年で、未熟で、リャムよりも年下だった。
『ね、手を出して』
やがて彼女は手を戻して、ルークに言った。
言われた通りにルークが右手を出すと、リャムは自身の耳に付いていた飾りを取り、そっとルークの手の上に載せた。
ひんやりと、金属が手のひらの熱をすこし奪っていった。
『あげる。売ったら、お金になるから』
彼女がくれたのは、耳飾りだった。金色の金属が菱形に幾つかの形をつくり、中央に翡翠色の石がはまっている。大きさは人差し指の半分くらい。
『悩むことは、ダメなときもあるけど、でも悩むのを面倒くさがってやめちゃう方がダメなときの方が多いから』
ルークが反応を返す前に、彼女はパッと体を反転させた。
そして最後にニコ、と笑うと、反転の反動でルークの腕を下に引っ張って、ルークの頭の位置を下げた。
「なにを──ッ!!?」
そして、ペロリと頬に軽く。
妬けた鉄のような熱が、肌を伝った。
『死んじゃ、ダメだよ、バイバイ!』
リャムは悪戯っぽく笑い、ぴょんと跳ねてルークから距離を取り、青年が反応を返す前に手を振って雑踏の中に紛れていった。
その場に取り残された青年は、しばらくそのまま、動かないでいた。
手には冷たい、金属の耳飾りだけが残されている。
『きれいね、それ』
ふと、ここまで黙っていてくれたカランコエが呟いた。彼女の意識はルークの手のひらにある髪飾りに注がれている。契約を通して、ルークには分かった。
その時、少し離れた民家で悲しみ啜り泣く声が細い慟哭と共に聞こえた。ルークが見ると、若い女性が、片腕になって、頭にも包帯を巻いている若い男に縋り付いている風景だった。
あれは兵士だ。
ミルシットの、偵察兵。魔王の近くまで接近して、情報を持ち帰る部隊の一人だ。それが、かろうじて生きて帰ってはこれた。
若い女性、妻だろうか。彼女は無表情で、ボロボロになって帰ってきた男に縋り付く。えぐ、えぐと泣いていた。通行人は少し遠巻きに、その景色を眺めていた。ルークは視線を手元に戻した。
「そうだね。良い耳飾りだ」
『ええ』
昼過ぎに、一報があった。
先遣隊が、ほぼ壊滅したと。
新婚だろうか。若い女性は、男の膝でずっと、泣いていた。
『しまっておきましょうか』
「そうだね」
ルークは頷く。
そして懐にゆっくりと、丁寧に手を入れた。
数秒後には、彼女の髪飾りはすっかり懐の奥に仕舞われていた。
そして、そこにはもう、先ほどまでの泣いていた青年はいなかった。
すらりと、研がれた刃物のような。
ひとつの使命に突き動く、迷いのない意志だけがあった。
「帰ろう」
あの、腕を欠損した彼は、戦いがなければ笑えていたはずだ。
魔王がいなければ、攻めてこなければ、いつも通り暮らして、幸せに生きていたはずだ。
ルークは、じゃりと砂を踏んで、歩いた。
通りを、人の間を縫って。
道ゆくひとの、しあわせを願って。
戦いの準備をしながら。
◆
早朝、まだ暗い夜の時間にルークは起き、出発の準備をした。
家主であるスゥを起こさないようにしたのだが、スゥはぱっちりと起きていて、それどころか出発前に軽く儀式をしてくれた。
特別な鉱石をすり潰した粉を、跪いたルーク、アスナヴァ、シュンカの額にそれぞれ祝詞共にかけていく。
簡素で、ちいさな小屋の中ではあったが、出立する戦士にかける祝福の作法だった。彼女はルークよりも数時間早く起きて、儀式の準備をしてくれていたのだ。
「いってきます」
とルークが言った時、彼女は服の裾をぎゅっと握りながら、キチンとした神官の正装で送り出してくれた。
吐いた息が白くなる時間帯のことだった。
◆
戦いの日は、当然ながら晴天に恵まれていた。
街からの距離は20キロの地点。そこに前線拠点はあった。
まだ日が昇ってすぐの時刻。
風には僅かに熱気が混じり始めている。
前線拠点の主な武装は、横に数キロ続く固めた砂でできた、胸より高い位置にある壁と、所々に作られた櫓だ。
壁の上に立って、ルークは前を睨んだ。
『すごい数』
カランコエが呟く。
「…………」
簡易的な拠点の前には、三千を超える兵が整列して激突の瞬間を待っていた。斥候によると魔王は背後に都市を従えながら、ゆっくりと軍勢を前に出した侵攻してきているらしい。あと30分もしないうちに一番先頭の敵が見えるだろうと。
『おい、まだか』
『黙って待ってろ、隊長が見張ってる』
『来るのか?』
『来るだろうさ』
ざわめき、鎧の擦れる音が何十、何百にも重なって聞こえる。
押し殺した息が張り詰めそうな熱気となって砂漠を埋め尽くしている。数十メートルにも伸びた隊列は、息を潜めるようにして待っていた。
魔王の軍勢の編成は主に魔物だ。
一般的な兵士1人が鎧を装着した状態で対処できる、小鬼などが代表とされるランクEが数千体。あるいは万に届く数。これが歩兵のように、魔王の拠点となっている都市から定期的に排出され、存在している。
次に対処に小隊規模が必要な場合がある、ウルフ系の魔物が含まれるランクD。これが数百を超えている。騎兵のような役割で突撃してくるだろう。軍の分析担当は言った。
そして中にはひときわ目立つ、対処に中隊規模以上が必要な場合がある、オーガなどのランクCが数十体。これは完全に攻城兵器の類である。絶対にミルシットの街に近づけさせてはならない。
このように、合算すればとんでもない数である。きっと地平線を埋め尽くすほどの数になるだろう。
ルークは櫓の上で風に遊ばれる髪を見ながら考えた。
今回言い渡された役割は遊撃。強力な個という特性を活かして、高ランク生物で崩れそうになっている部分に向かい、打ち倒せというのだ。
「やらなきゃね」
ルークがうまく動けば、それだけ助かる人数が増える。ピンチの部分を立て直すサポーターだ。わかりやすい役割だ。だからこそ、気をつけなければいけないのは魔物の中に孤立しないこと。
単体単体ではそれほどでもなくても、集団というのは脅威だ。
囲まれる事態は避けなければ簡単に物量でなぶり殺しだろう。迷宮の死亡率がトップのトラップにモンスターハウスがあるのだから当然である。
太陽が光を強める。
『見えたぞッ』
誰かが叫ぶ。
地平線の、蜃気楼に揺れる向こう側に黒いものが見えた。
それは一直線の波のように見渡す限り薄く広がって、だんだんと厚さを増していく。
『なんだ、ありゃあ』
誰かが言った。
ルークは気がついた。
黒い波が、蠢いている。
あれは全部、魔物なのだ。魔物の数が多すぎて、いろんな色が混ざった黒い波としか認識できていないのだ。
彼我の距離は五キロ。接敵まで30分。
ルークは剣を握りしめた。
周囲に気を配り、囲まれないようにし続ける。神経を削る戦いになるだろう。
そう、思った時──
『ロード』
『勇者ルークが、魔力の乱れにより、敵陣上空にいた』
そんな、距離を無視するような声が聞こえて。
はっ? とルークが思う瞬間には、ぱっとルークの視界が切り替わり。
『まりょくがっ』
カランコエの焦ったような声と共に。
「はっ?」
敵陣上空に一瞬で投げ出された彼の
ばさばさとマントが上空の強風に煽られて爆音を立てる。
髪の毛が乱れに乱れ、乱気流の中に放り込まれたような有様。
「な、にっ、が!」
ルークは状況把握のために、半ば反射的に再度下を見渡す。
『gy hu』 『Gugugu』 『kakakkk!』
『aeee!』 『kikiki』 『gegeg 』 』『gugigi!』『Karori』 『refuge!!』
『heguro…』『zareki』『kakakkk』『deqer!』 『kiruru』『gugigi』 『jeya jeta 』 『lllolo』
『bugg 』 『Karori』 『kyao 』『deqergugigi』 『 kik』 『zareki』uro…』『zareki』『kakakkk』
『deqer!』 『xi xi』『gy hu』 『Gugugu』 『kakakkk!『aeee!』 『zareki』『gugigi!』『uua 』 『gegeg』 『dudu』 『fyzuzuzu 』 『dwq few』 『dae』
『Suzu uzi 』『aaaaee』『dudu 』 『cu vev eve 』
『gy hu』 『Gugugu』 『kakakkk!』 『aeaeae 』
『aeee』『gy hu』 『Gugugu』 『kakakkk!』
『gugigi!』『uua 』 『heHaHA』 『GYA GYA』 『awsw』
『uua …』『gugigi』 『to tifi』 『Karo』『refuge!!』 『heguro…』『zareki』『kakakkk』
『deqer!』 『kiruru』『gugigi』
『buggy』『Karori』 『deqergugigi』 『 kik』 『zareki』』『uua 』 『gegeg』 『dudu』
『Suzu uzi 』『aaaaee』 『dudu 』 『cu vev eve 』
『gy hu』 『Gugug 』『uua 』『gegeg』 『dudu』
『Suzu uzi 』『aaaaee』 『dudu 』 『cu vev eve 』
すると、そこには一人一人は簡単に押し潰せる悍ましい処刑場が、見渡す限り敵敵敵敵敵敵敵敵の、絶望の地平が広がっていた。砂漠の赤茶色の砂地すら見えない、超特大のモンスターハウスへ強制転移。味方から大きく引き離された、敵陣真っ只中への移動。
「う、おぉぉぉッ!?」
錐揉み回転する空中でルークは必死に体勢を整えようと姿勢制御でもがく。すると視界の一つの方角に、建物が見えるほど近く魔王の都市が見えた。数百メートル先に見える、薄紫色の都市。
あれが、歴史に名を刻む、存在が確認されている魔王の一つ。
今までに六つの国を引き殺してきた、パンデモニウム。
見た目は動く超巨大な城塞のようだ。
その、中央の山のようになっている城のバルコニーに立つ、魔王の姿も。ロマンスグレーの、貴族のような格好をした男が。
『我輩はいつも思うのだよ』
距離を無視したような声が、ルークの頭に響く。
空中落下の風圧で呼吸がしづらいのを感じながら、目を見開く。
魔王は髪の毛をかきあげながら、ゆっくりと呆れ混じりに言う。
『やっかいな不確定要素に頭を悩ませるくらいなら、先に処理してしまえ、と。だから、やった』
「は、はぁぁぁあっ!?」
ルークは空中で落下をしながら悟った。
この転移は禁忌由来のものだ。
魔王がやったのだ。勇者ルークの排除のために。セオリー通りを無視して、いきなりぶち抜いてきた。
『お前は我輩と同じく未来から来た。確実に乱数だ。だから、死ね。順当に戦えるとでも思ったか? 違うな、
3日前に魔王と邂逅した時に言っていた。
──当たらんよ。吾輩は時間を操る
時を操る?
違う、違う!
そんなのデタラメだ!
こいつの能力は──
『ギャレヲンは無理だが……貴様なら
こいつの能力はっ──!
『あっはっは! 死ね! 勇者。我が数万の臣民のために。我が国のために。疾く、──死に晒せよ』
午前7時10分。勇者ルーク、味方陣地より消失。
敵陣中央、上空50メートル地点へ。
個人で暴れれる厄介な戦力の早期排除。絶対に、継戦をさせず、味方に近づけず、分断し、すり潰す。
魔王軍の取った戦略の複数あるうちの一番最初は、これだった。
侵蝕蠕動国家
『パンデモニウム』戦