AIにかいてもらった、ひろがる!スカイプリキュアのオリジナルストーリーです。
キュアスカイ、キュアプリズム、キュアマジェスティが登場します。

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第1話

朝の空は、どこまでも透き通るように青かった。

窓から差し込む陽射しが机を照らし、教室のざわめきと混じって、心地よい賑わいをつくり出している。

 

「ソラちゃん、おはよう」

ましろさんがいつもの柔らかな笑顔で声をかけてくれる。

「おはようございます、ましろさん」

私は背筋を伸ばし、丁寧に返した。胸の奥で少しだけ熱くなるのを、隠しきれなかった。

 

彼女は隣の席に鞄を置き、机の上にノートを広げる。髪を耳にかける仕草が、なぜかやけに印象に残る。

いつ見ても、彼女の仕草はやさしさに満ちていて、気がつけば目で追ってしまう。

 

「今日、帰りに公園のカフェに寄らない? 新しいメニューが出たって聞いたんだ」

「えっと……はい! ご一緒させてください!」

思わず声が大きくなる。周囲のクラスメイトがこちらをちらりと見たので、あわてて小さくうなずいた。

 

ましろさんは、口元に手をあてて小さく笑う。

「ソラちゃんって、本当に素直だよね」

その言葉に頬が熱くなるのを自覚した。胸の奥が、少し苦しいくらいに高鳴っている。

 

放課後。

二人で歩く帰り道、アスファルトの上に伸びる影が寄り添うように重なっていた。

「この道、ソラちゃんと歩くと、なんだか特別に見えるんだ」

「特別……ですか?」

「うん。空が広くて、風が気持ちよくて。ソラちゃんが一緒だと、余計にね」

 

私の胸の奥に、くすぐったいほどの温かさが広がった。

どうしてだろう。戦うときの勇気とは違う、けれど確かに力をくれるもの。

彼女の横顔を見つめるたび、それを強く感じてしまう

 

カフェのテラス席。

ガラスのグラスに満たされたソーダは、澄み渡る空のように青く輝いていた。

「これが限定のスカイブルーソーダだって。きれいだね」

ましろさんは、嬉しそうに目を細める。

「本当に……まるで空を閉じ込めたみたいです」

私は思わず見とれてしまう。だが、視線はソーダではなく、隣で笑うましろさんの横顔へと吸い寄せられていた。

 

「ふふっ、せっかくだから一口交換しない?」

「えっ……」

戸惑う私の前に、ましろさんは自分のグラスを差し出す。

代わりに、彼女の手がすっと私のソーダへ伸びた。

「はい、あーん」

ストローを軽く向けられて、胸が跳ねる。

「……っ、あ、ありがとうございます」

 

おずおずと口をつけると、甘酸っぱい炭酸が喉を駆け抜ける。それ以上に、彼女の仕草に全身が熱くなる。

「どう? こっちの方が甘いかも」

「そ、そうですね……」

隣では、ましろさんが何気なく私のソーダを飲んでいた。口元がほんの少し濡れ、陽光にきらめく。その光景を直視できなくて、視線をそらす。

 

椅子の上で小さく姿勢を変えたとき、肩がふと触れ合った。

「……っ!」

体が強張り、思わず固まる。

「ソラちゃん?」

「い、いえっ……なんでもありません!」

必死に取り繕う私を見て、ましろさんはくすっと笑う。

「そういうところ、かわいいな」

その何気ない一言に、心臓が痛いほど跳ねた。

 

その穏やかな時間を、ふいに空を裂く轟音が奪った。

大気を震わせる低い響き。

見上げると、青空に黒い亀裂が走っていた。

 

「な、なんですか……これは……!」

亀裂から漏れる漆黒の光が、まるで空そのものを呑み込もうとしている。

ましろさんの手が、不安そうに私の袖を掴んだ。

「ソラちゃん……いやな予感がする」

「……はい。変身して、確かめましょう」

 

胸の奥に溢れる熱。勇気が翼に変わる瞬間。

私とましろさんは、同時に拳を握った。

「ヒーローの出番です!」

「ヒーローの出番だよ!」

光が二人を包み、制服は鮮やかな戦闘装束へと変わる。

――キュアスカイ。

――キュアプリズム。

 

その姿で、私たちは空を裂く亀裂へと駆け出した。

 

 

「ふふふ……」

 地の底を震わせるような低い笑い声が、裂け目の奥から響いてきた。

 黒い光の奔流と共に現れたのは――全身を漆黒と紅の鎧に包み、筋肉そのものを鎧とした女。

 身長は私たちよりも二回りは大きく、その鋭い瞳は獲物を射抜く猛禽のよう。

 彼女はゆっくりと両腕を広げ、闇の瘴気をまとわせながら声を張り上げた。

 

「我が名は――女帝グランディーネ! 闇を束ね、力を統べ、すべてを跪かせる者!」

 その言葉が響いた瞬間、裂け目から吹き上がる瘴気が空を黒く染め、岩盤が悲鳴を上げる。

 大地ごと魂を押し潰されそうな威圧感。

 

「小さき勇者どもよ……わざわざ迎えに来るとは、殊勝なことだ」

 彼女が一歩進み出ただけで、大地が震えた。

 

土砂がぱらぱらと崩れ落ちる。

 息をするだけで、胸の奥を圧迫される。これが――絶対的な強者。

 

「いきます!」

ソラの声に合わせ、二人同時に駆け出した。

敵へと突進するスカイの拳に青い光が集い、烈風を巻き起こす。

「スカイ・パンチ!」

振り抜かれた拳が空気を裂き、女帝の胸を狙う。

 

しかし、その一撃は――片手で止められた。

「……軽い。」

 低い声。重みのある冷笑。指先ひとつで握り潰すかのように、女帝はスカイの拳を弾き返す。

「くっ……!」

 

「プリズム・ショット!」

 すかさずプリズムが放った虹色の光弾が、夜空に花火のように散る。だが、女帝の周囲に纏う黒いオーラに触れた瞬間、弾は音もなく霧散した。

 

「何も……効かない……?」

「スカイ……下がって!」

 

プリズムが前に出て、スカイの肩を庇うように立つ。しかし次の瞬間、女帝の腕が一閃した。衝撃波が地を裂き、二人はまとめて吹き飛ばされる。

 土煙の中、二人はなんとか立ち上がる。傷は浅いが、体に圧力がのしかかる感覚は消えない。

 

女帝は悠然と歩を進め、立ち尽くす二人を見下ろした。

「……ふん。わざわざ道を塞ぐ必要すらなかったか。まぁよい。」

「……道を塞ぐ? どういう意味ですか!」スカイは息を荒げながら問いただす。

 

女帝は嗤った。

「この地に降り立つ前に、私は手を打った。蝶も、翼も、そして神秘も――スカイランドから戻れぬようにな。お前たちに残された戦力は、たった二人。」

「そんな……! 揚羽さんも、ツバサくんも……! それにエルちゃんまで……」

 

スカイの目が揺らぐ。頭に浮かぶのは、今まで共に戦った仲間たちの姿。もし本当に戻れないのだとしたら――。

 

女帝はさらに告げる。

「私の目的は地上に闇の基盤を築くこと。

それを邪魔できるのは、プリキュアの力だけ。ゆえに私は分断した。……もっとも、この程度の力なら、そもそもその必要すらなかったがな。」

 

その言葉は鋭い刃のように胸を抉る。ソラは一瞬、呼吸を忘れ、心が折れそうになる。――私たち二人だけでは、とても……。

そのとき、温かな感触が指先に触れた。

「……ましろさん……?」

 隣で、プリズムがそっとソラの手を握っていた。

 静かに、それでいて強い声。

「大丈夫。ソラちゃんは一人じゃないよ。二人でなら、必ず立ち向かえる。」

 

その言葉に、スカイの頬がかすかに熱を帯びる。握られた手から伝わる温度は、確かな絆。胸の奥に沈みかけた心が、不思議と再び燃え上がるのを感じた。

「……はいっ! 一緒に、戦いましょう!」

 二人の視線が交わり、力強くうなずき合う。

 女帝の圧倒的な存在感に押されながらも、その瞳にはもう恐れはなかった。

 

女帝グランディーネはその姿を楽しげに見下ろしていた。

「ふふ……その目だ。その反抗、その輝き。……だからこそ、折る価値がある」

 黒い闘気が渦巻き、次なる一撃が放たれようとしていた――。

 

女帝グランディーネの圧が、肌に刺す。胸がきしむ。けれど、ましろさん――いや、いまはキュアプリズムが強く手を握ってくれている。私は頷き、足を踏み出した。

 

「――いきます! ヒーローの出番です!」

私は地を蹴り、風を裂く。女帝の前に一気に踏み込み、拳を引き絞る。心臓の鼓動と同じリズムで、グローブのハートに青い光が満ちる。

「ひ~ろ~が~る! スカイパンチ!」

蒼い奔流となった私の拳が、黒い瘴気の壁に激突する。刹那、空気が爆ぜ、岩肌が震えた。だが――。

 

「無駄だ。その力も、その技も――我が前では羽虫の戯れにすぎん。」

 

女帝は腕を斜めに構えただけで受け止め、掌の返しで私の軌道を外へと弾く。体が回転し、地面に片膝をついた瞬間、頭上から影が落ちた。巨大な踵が、稲妻のように振り下ろされる。

 

「――っ!」

私は背で滑り、砂煙を切って退く。直後、地面が陥没し、放射状の亀裂が走った。足裏に伝わる震動が、彼女の質量をいやでも知らせてくる。

「スカイ、目をつむって!」

プリズムの声。彼女は前に躍り出て、両手を胸の前で合わせる。指先に集うのは、やわらかな白と桃の光。

「ひ~ろ~が~る! プリズムショット!」

掌から生まれた光球がぱっと弾け、眩い閃光が周囲を洗う。黒い瘴気の縁が一瞬だけ薄れ、女帝の視界が細く狭まった。

 

「……ふむ。」

女帝が眉をひそめた、その狭間。私は地を蹴り、プリズムが投げた二発目の光球を受け取る。肩越しに合図が飛ぶ。私は無言で頷き、天へ跳ぶ。空気が軽い。掌の球体を肘の後ろへ大きく引いて、カーブの軌道を描くように投げ放つ。光球は弧を描き、女帝の足元へ吸いこまれる――爆ぜる直前、女帝の足首がわずかに止まった。

 

「今!」

プリズムがもう一つ、光の球を足場のように紡ぎ出す。私はそれを踏み切り板にして、さらに加速する。女帝の側面、死角へ。刃のような前腕が切り払ってくる。頬を掠めた風が痛い。私は体を捻り、拳を再び握る。

 

「ひ~ろ~が~る! スカイパンチ!」

蒼光の拳が横殴りに炸裂。女帝の頬に、確かな手応え――だが、彼女は笑った。ほとんど首を傾けただけの動きで威力をいなし、そのまま私の腕を掴んで地面に叩きつける。肺が跳ね、視界が一瞬白んだ。

 

「スカイ!」

プリズムが滑り込む。彼女は私の背に掌を当て、もう片方の手で小さな光球を連続して生む。それは私と女帝の間に浮かぶ盾のように煌めき、衝撃波を少しだけ和らげる。

 

「守り合うか。良い。だが――」

女帝の足先が、軽く地を叩いた。黒い波が半円状に走り、光球をまとめて粉砕する。私たちは横に跳ぶ。砂塵の向こう、女帝は悠然と歩を進めながら、口元だけで笑う。

 

「ほう……まだその眼光を絶やさぬか。面白い。だが希望という名の火種こそ、踏みにじる価値がある。」

喉の奥で、何かが震えた。恐怖ではない。悔しさでもない。並んで呼吸を整える私の右手に、左の手が重なる。温かい。プリズムが、私を見て頷く。

「二人で、行こう。」

 

私は頷き返し、スカイミラージュを取り出す。プリズムも同じように構え、二人で視線を合わせる。小さく、息を合わせる。

「――スカイブルー!」

「――プリズムホワイト!」

スカイトーンWシャイニングをセットした瞬間、青と白の光が私たちの間を流れ、指と指をつなぐように絡み合う。足元に現れた巨大な光の台座が、ふわりと浮かぶ。私とプリズムは並んでその上に立ち、ボタンを力強く押し込む。

「プリキュア・アップドラフト・シャイニング!」

 

台座から放たれた光が、女帝の周囲に渦を巻く。黒い瘴気を巻き上げ、彼女を内側へと引きずり込む。空気が震え、光と闇の境目がぎざぎざに波立つ。私はプリズムの手をさらに強く握った。二人の体が、光の推進で前へ押し出される。

 

「――っ!」

女帝の鎧に、輝きがめり込む。裂け目から、紅い火花が散った。私たちはいま、届いている。届いて――。

 

「面白い。」

低く、乾いた声音。次の瞬間、光の渦の中心で、女帝が足を踏み鳴らした。黒い柱が内側から突き上がり、台座の底を抉る。私とプリズムの足が一瞬ふらつく。その隙に、女帝は両腕を十字に組み、闇を凝縮させた盾を胸前に形成した。光は確かに削る。だが、削り切れない。

 

「二人で組んでも、この程度か。」

闇の圧が逆流し、台座が悲鳴を上げる。亀裂が走った。私は歯を食いしばり、もう一押しを――その瞬間、プリズムが小さく声を漏らした。

「スカイ、右!」

 

反射で身を捻る。女帝の掌から放たれた衝撃波が、台座の端をえぐり飛ばす。私とプリズムは同時に跳躍し、光の台座から離脱する。背後で台座が砕け散り、破片が光に溶けた。

 

着地と同時、女帝が前に出た。大地が鳴動する。彼女の拳が一閃。空気が折れる音がした。私は両腕で受け、滑る。腕が痺れる。プリズムが背中合わせに位置取り、私の肩越しに光球を連射する。弾幕のような桃色の小球が、女帝の足元と視界を絶え間なく叩く。まぶしさで生じたわずかなブレ――そこへ私は踏み込む。

 

「ひ~ろ~が~る! スカイパンチ!」

拳と拳がぶつかる。骨を通じて伝わる圧。私は押し込む。押し込まれる。互いの足が地を刻む。

 

女帝の口元がわずかに吊り上がった。

「悪くない。」

低く呟いた女帝は、握ったままの拳にさらに重みを積み増した。重力そのものをねじ曲げるような圧が、肩から背へと突き刺さる。膝が沈む。視界の端で、プリズムが走る。彼女は私の横に並び、私の腕に自分の手を添えた。体温が、迷いを断つ。

 

「もう一回、二人で。」

息が合う。私は頷き、同時に踏み込む。私たちの足元に、プリズムが素早く小さな光球を二つ、足場として並べた。私は一歩、二歩、その上を駆け上がる。視点が一段高くなる。女帝の肩口、鎧の継ぎ目が見えた。そこへ――。

 

「ひ~ろ~が~る! スカイパンチ!」

上段から、真芯。衝突の火花が視界を白く染め、女帝の体が半歩だけ下がる。大地が沈み、土煙が巻き上がる。女帝の足が、確かに後ろへ滑った。

 

「……ほう。」

女帝の瞳に、わずかな愉悦が灯る。次の瞬間、彼女は私の拳を受け流し、空いた掌を私の胸元へ。重力の塊のような衝撃。体が地に叩きつけられ、石片が背に食い込む。肺から空気が漏れた。視界の端で、プリズムが光球を爆ぜさせて女帝の追撃を逸らす。

 

「スカイ!」

プリズムが駆け寄る。私は親指を立てて応える。立てる。立てる。立てる。私は立ち上がる。足は震えていない。震えを止めてくれているのは、隣の温度だ。

 

「……まだ立つか。」

女帝が一歩、また一歩。黒い瘴気が濃くなる。肌が粟立つ。私は息を深く吸い、吐く。プリズムが横で、私の手をもう一度握った。指先が、かすかに震えている。けれど、その目はまっすぐだ。

「二人なら、届く。」

私は強く頷く。スカイミラージュを握り直す。プリズムも同じ。二人で視線を合わせ、短く息を合わせる。

「スカイブルー!」

「プリズムホワイト!」

「プリキュア・アップドラフト・シャイニング!」

再び光の台座が生まれ、二人の体を押し出す。今度は迷わない。私は台座の端に片足をかけ、溜めた力を最後のひとかきとして放つ。プリズムは私の背を両手で押し、推力を重ねた。白と青が混ざり、蒼白の奔流となって女帝へ突き刺さる。

 

黒と白の境界が、悲鳴を上げて歪む。女帝の鎧が火花を散らし、瘴気が剥がれ落ちる。女帝は――笑っていた。圧倒的な重さはそのままに、楽しげに、笑っていた。

 

「良い。実に良い。二人で、ここまで。」

光が爆ぜ、遅れて衝撃波が街路樹の葉を舞わせる。私とプリズムは地に着地し、肩で息をする。女帝はほこりを払うように肩を回し、私たちを見た。

 

「だが、翼も蝶も神秘も戻れぬいま――お前たち二人だけでは、絶対に止められない。」

宣告。冷たく、確信に満ちた声。喉の奥が焼ける。けれど、私の手はもう震えない。繋がれた指先の温度が、胸の奥の火を絶やさないから。

 

「――それでも、立ち向かいます。」

私は前に出た。プリズムも隣に並ぶ。女帝の唇が、楽しげにわずかに吊り上がった。

 

 

黒い闘気が再び膨れ上がる。

女帝グランディーネの影が地を覆い、重力そのものが増したかのように体が沈む。肺に入る空気が重い。息がしづらい。

「……ここまで、だな。」

女帝の低い声が落ちる。その掌に渦巻く瘴気が槍の形を成し、私とプリズムを串刺しにしようと迫る。

 

「――スカイ!」

「――っ!」

互いに声をあげて飛び退く。槍が突き刺さった地面が一瞬にして抉れ、瓦礫が宙を舞った。

息を合わせて跳び込むも、追撃は止まらない。振り下ろされた腕の一撃で石畳が波打ち、衝撃波が背中を叩く。私は前のめりに転がり、何とか立ち上がる。

 

「ふ、はは……」

女帝の笑い声が響く。私とプリズムの肩はすでに荒い息で上下し、足元はよろめいている。

 

――勝てないのか? 二人では。

 

胸の奥に、熱が込み上げる。悔しさ、無力感、そして……何より、守りたいという想い。

私は拳を握り、無意識に前へ踏み出していた。

「スカイ……」

 

プリズムが小さく名を呼ぶ。その声に一瞬、理性が揺れたが――私は首を振る。

「プリズム…ましろさん……あなただけは、生きて帰ってほしい。」

胸が焼ける。視界が赤く染まる。私は力を溜める。全身の生命力を拳に集める。

わかっている。これは、ただの暴走だ。撃てば、私は命を落とす。

 

でも――。

振りかぶった腕が震える。蒼い光が、いままでにないほど濃く拳を染めていく。

女帝の瞳が愉快そうに細められた。

「ほう……命を削ってでもか。悪くはない。その蛮勇、確かに火花は散ろう。」

 

私は一歩を踏み出した。

 

「――やめてっ、ソラちゃん!」

振り返るより早く、柔らかな温もりが触れた。

唇と唇。

衝撃に、心臓が止まったかと思った。いや、それよりも――胸が、溶けそうに熱い。

 

「……っ!?」

蒼光が、拳からすぅっと霧散していく。力が抜け、膝が折れそうになる。

目を見開く私の前で、プリズム――ましろは、顔を真っ赤にしながら、でも真剣に見つめ返していた。

 

「一人で死ぬなんて、絶対に許さない……! 私も一緒に戦う。二人でじゃなきゃ、意味がない!」

涙がにじむ。胸の奥で、暴れ狂っていた衝動が鎮まっていく。

私は拳をほどき、ただその温もりを受け止めた。

 

「プリズム……」

「大丈夫。私たちなら、絶対に負けない。」

指先が重なる。震えはもうない。

女帝はそれを眺めて、鼻で笑った。

「ふふ……面白い。命を懸けた拳よりも、くだらぬ情が力になるとでも?」

 

だが私は、もはや迷わなかった。

「そうです。私たちは、二人で一つです!」

 

 

闇が渦巻き、大地を軋ませる。

体の芯まで凍えるような圧力に、膝が折れそうになる――だが、私は拳を強く握りしめた。

「……まだだ」

重苦しい気配が肺を押し潰しても、倒れるわけにはいかない。

私ひとりなら折れてしまっても仕方ないかもしれない。けれど隣にはプリズムがいる。

彼女と一緒に生きて帰る――そのためなら、何度でも立ち上がれる。

「二人で帰るって、決めたんだから……!」

 

闇を切り裂くように、気持ちを奮い立たせる。

身体が悲鳴を上げても、心は折らせない。

私の拳は、まだ空を掴める。

 

女帝が嗤った。

「愚かしい。希望の火種など、踏みにじるほどに価値がある」

それでも私は一歩、前へ踏み出す。

絶望の影に抗うように。

拳に残った力を絞り出し、再び戦う覚悟を燃やす。

 

――その瞬間。

閉ざされたはずの通路から、柔らかな紫の光が差し込んだ。

闇を裂き、花が咲くように広がる光。

 

「なに……!?」

女帝が動揺に目を見開く。「封じたはずの道が……!」

光の中から、ひとりの少女が姿を現した。

長い銀紫の髪を風に揺らし、王冠を戴いた気高いシルエット。

純白とラベンダーの衣装を纏い、凛と立つその姿。

「――降り立つ気高き神秘! キュアマジェスティ!」

胸が熱くなる。

間違いない。エルちゃん……いや、今はマジェスティ。

小さな体で笑っていたあの子が、こんなにも堂々と――。

 

女帝はなおも叫ぶ。

「なぜだ! 闇を越えられるはずがない!」

マジェスティは胸に手を当て、静かに答える。

 

「ソラとましろを助けたいって願ったとき、胸の奥から力が応えてくれたの」

その瞬間、彼女の背後に淡い幻が浮かぶ。

それはマジェスティに驚くほど似た容姿を持つ女性――伝説の初代プリキュア、プリンセス・エルレイン。

 

朧げな光の残滓が、確かに彼女に重なっていた。

「……エルレインさまが、私に力を貸してくれたの」

マジェスティの言葉は静かで、けれど胸の奥に響く。

 

マジェスティは胸元から、淡い光を帯びた古風な扇を取り出した。

小さな宝玉が埋め込まれた、いかにも由緒正しげな造り――だが。

「エルレインさまが……私に託してくれたの」

マジェスティは扇を掲げ、澄んだ声で告げる。

 

「――“すこやかシャイン☆バタバタ扇”!」

あまりに場違いな響きに、私は思わず瞬きをした。

隣でプリズムが小さく「……名前……」と呟く。

 

けれど次の瞬間、扇から溢れた光はすべてを払った。

淀んでいた闇が一気に吹き飛び、空気が澄み渡る。

体に絡みついていた重さが消え、呼吸が戻る。

マジェスティがこちらを振り返り、やわらかく微笑む。

「闇が弱体化したわ。さあ、三人で一緒に…終わらせよう」

 

闇の瘴気を吹き飛ばす光が広がり、呼吸がようやく楽になる。

手足の力が戻り、心臓の鼓動が強さを取り戻す。

 

「スカイ、プリズム。無事でよかった」

マジェスティが微笑みかけてくれる。その声に、胸の奥が温かく満たされた。

「マジェスティ……ありがとう!」

「エルちゃん……いいえ、マジェスティ。来てくれて、本当に……」

プリズムの声も震えていた。

 

女帝は忌々しげに舌打ちする。

「チッ……余計な小娘がひとり増えたところで、何も変わらぬ!」

しかし、その声には先ほどまでの余裕がない。

扇から放たれた澄んだ光が、彼女の纏う闇を確実に削ぎ落としているのがわかる。

 

「変わります。だって……三人で戦えますから!」

スカイの声が自然と高ぶる。

隣にプリズム、そしてマジェスティがいる。その事実だけで、心の炎は強く燃え上がる。

 

「――プリズムショット!」

ましろ――いや、プリズムが放つ光弾が女帝の進路を阻み、爆ぜる閃光が闇を裂いた。

「――はぁ!」

マジェスティの放つ高速の打撃と蹴撃が女帝を押し返す。

 

「スカイパンチ!」

私は全身の力を拳に込め、女帝の胸元に突撃する。

拳が衝撃を刻み、巨体が後方に弾かれた。

「ぐっ……ぬぅ……!」

女帝が呻き声を漏らしながら、なおも立ち上がる。

だが、その身体を覆う闇は確かに削がれ、揺らいでいた。

 

「小癪な……! 貴様らごときに、この我を追い詰めるなど!」

怒声とともに、女帝の身体から濁った闇が再び噴き出した。

だが、それは明らかに焦りの証でもあった。

私たちの攻撃が、確実に届いている。

「スカイ、プリズム、油断しないで!」

マジェスティの声が響いた瞬間、女帝が巨大な手を広げ、闇の渦を生み出す。

 

「うわっ!」

咄嗟に身を翻すが、渦の余波が肌を切り裂くように掠める。

背筋が凍るような殺気。これまで以上の力を無理やり引き出しているのが分かる。

「ならば――余をここまで追い詰めたことを後悔させてくれる!」

 

 

女帝の体表にひび割れが走り、そこから黒い光が噴き出した。

裂け目から覗くのは、もはや人の形を逸した禍々しい肉塊。

四肢が伸び、背から突起が生え、濁流のような咆哮を放つ。

 

「な、なんて……!」

プリズムが息を呑む。

マジェスティが険しい顔をして答える。

「……闇の力を、自分の体に取り込んでいる……! こんな無茶をしたら……!」

 

「無茶でも……やり遂げるのだ! 余の勝利のために!」

女帝の声が混濁し、理性を失った怪物の吠え声へと変わっていく。

胸の奥で鼓動が高鳴った。

これまでの戦いとは桁が違う――でも、ここで怯むわけにはいかない。

「二人とも……行きましょう! 私たちで、絶対に止めます!」

 

闇に包まれた女帝の肉体は、なおも肥大化を続けていた。筋肉の線が裂け、膨張し、赤黒い紋様が全身を覆っていく。

そして――耳をつんざく咆哮。

次の瞬間、巨体とは思えない速さで迫ってきた。

 

「――ッ!」

気づけば、視界が一瞬で黒い壁に埋まる。女帝の怪物じみた肩が私を弾き飛ばそうとしていた。

衝撃。骨が軋み、肺が震える。拳で受け止めたものの、体重ごと吹き飛ばされ壁を砕いて転がった。

 

「スカイ!」

「くっ……まだだっ!」

立ち上がる間もなく、再び影が覆う。今度は連撃――腕が唸り、鈍重なはずの巨腕が、空気を割く音を響かせて襲い掛かってきた。

 

マジェスティが手刀で受けるが、その衝撃で床に亀裂が走る。

プリズムの光弾も撃ち込まれるが、まるで意に介さない。

女帝の動きは乱雑で粗暴。けれど――力の爆発だけで押し潰してくる。

三人とも完全に押し込まれていた。

 

――息を荒げながら拳を交わす。

重い、速い、痛い。それでも、私は諦めずに目を凝らした。

「……これは……」

彼女の攻撃を紙一重でかわした瞬間、直感が弾けた。

振り下ろす腕は確かに凄まじい速度だ。だが――軌道が直線的すぎる。

 

「――そうか!」

私は拳を打ち返しながら叫んだ。

「さっきまでの鋭さがない! 人間の時に確かに感じられた技巧が――全部消えてる!」

プリズムとマジェスティの目がこちらを向く。

「ただ暴れてるだけ……なら、隙は作れる!」

 

「プリズム、牽制を!」

「うん!」

プリズムの光が散弾のように怪物へ降り注ぐ。動きが一瞬止まったところへ、私は拳を叩き込む。

 

「はぁああああっ!」

拳が肉を割り、骨を砕く感触が返ってくる。

その隙にマジェスティが滑り込み、手刀に凝縮させた光を叩き込む。鋭い閃光が怪物の肩口を切り裂き、断面から黒い血飛沫が弾けた。

「はあッ!」

彼女の蹴りが巨体をよろめかせる。

 

「いい……! 効いてる!」

三人で畳みかける。プリズムが足を縫い止め、私は拳で胴をえぐり、マジェスティが刃のような一撃を首筋に突き立てた。

怪物が大きく仰け反る。確かにダメージは通っている。

 

だが――。

「……そんな」

抉られた肉が、ずるり、と音を立てて再生していく。

切断したはずの腕が、再び隆起して伸びる。

焼け爛れた皮膚からは新たな血肉が芽吹くように盛り上がり、瞬く間に元通り。

 

「なんて……再生力なの……!」

プリズムの声が震えた。

「これじゃ……いくら叩いても、削っても……!」

歯噛みしながら私は拳を握る。

確かに押し返せる。戦える。だが――決めきれない。

女帝の咆哮が、暗闇に轟いた。

 

「プリズム!」

「うん――っ!」

私と彼女は同時に飛び上がり、互いの手を重ね合わせた。

胸の奥から、呼吸と鼓動を揃える。

「――アップドラフト!」

「――シャイニング!」

 

ふたりの声が重なり、天空へと光の渦が走る。

拳に宿った蒼と白の輝きが唸りを上げ、巨大な竜巻のごとく怪物を包み込んでいった。

轟音。空間が軋み、天井のゲートが開いて吸い込みを始める。

怪物は咆哮しながら暴れ、竜巻に押し上げられていく。

「これで――!」

私の叫び。だが――。

 

巨体は、確かに持ち上がっていった。

だがその重さ、力強さは尋常ではない。

ゲートに吸い込まれながらも、両腕を大地へ突き刺し、爪を喰い込ませて抵抗する。

そして――。

「なっ……」

裂けた肉体が、またも再生していく。

竜巻に削がれた傷口も、ゲートに引き裂かれた箇所も、黒い肉が溢れ出しては塞がっていく。

「っ……足止めしか……!」

プリズムが苦しげに歯を食いしばる。

――決定打にはならない。

 

「……倒しきれない」

そう呟いた時、背後から落ち着いた声が届いた。

「だったら、次はちょっと違うやり方を考えよっか」

マジェスティが歩み寄ってきた。

その表情は穏やかで、けれど芯の強さを感じさせる。

 

「アップドラフトシャイニングはすごく強いよ。でも、あの巨体を削りきるにはまだ足りないんだ。もっと直接的に叩き込む必要があるんだよ」

 

彼女は私を真っ直ぐに見て、ふっと笑う。

「スカイ……“スカイパンチ”あるよね。あれを、プリズムの力で支えて強くしようよ。ふたりならきっとできる」

「えっ……!?」

「……スカイパンチを……二人で?」

プリズムの頬が赤らみ、私の胸もざわめいた。

 

マジェスティはくすっと小さく笑った。

「だってさ……ふたりはちゃんと気持ちを確かめ合ってるでしょ?」

そのまま指先を自分の唇にそっと触れさせる。

「……だから大丈夫。ラブラブなふたりなら、絶対力を出し切れるよ」

 

一瞬、頭が真っ白になった。

プリズムも肩を震わせて真っ赤になり、視線を逸らす。

「ちょっ、ど、どうしてそれを――!」

「スカイランドにいたはずなのに……!」

 

マジェスティは少し困ったように笑って肩をすくめた。

「ふたりのこと、隠せてると思ってたんだ?すぐ分かっちゃうくらい仲良しだもん」

その声にはからかいの色もあったが、柔らかくて、背中を押されるように胸が軽くなる。

 

やがてマジェスティは真剣な表情になり、拳をぎゅっと握った。

「だから……私が時間を作る。ふたりは新しいスカイパンチを完成させて」

 

「でも……ひとりでなんて!」

思わず声を荒げる私。

けれど彼女は静かに首を振った。

「今はそれしかないんだよ。だから信じて」

その優しい笑顔に、心が揺れた。

私は拳を握り直し、プリズムと視線を合わせる。

彼女も真っ赤な顔で、小さく、それでも力強く頷いてくれた。

 

「……分かりました。必ず……必ず決めます!」

マジェスティはにっこり笑い、踵を返す。

その背中が、一人で怪物へ向かっていった。

 

 

「プリズム!」

「……うん!」

視線を交わし合い、私たちは互いの拳に残る光を握りしめる。

吸い上げ続けていた竜巻はまだ怪物を押し上げていたが――決定打にはならない。

そのことを、誰よりも私たち自身が理解していた。

「――解除する!」

「――アップドラフトシャイニング、解除!」

ふたり同時に叫ぶと、光の渦が急速に萎み、天井のゲートが閉じていく。

拘束を失った巨体は、地に爪を突き立てて大地を震わせ――

「グゥゥオオオオオォォォ――ッ!!」

凶暴な咆哮が響き渡り、瞬間、暴力的な勢いでこちらへ突進してきた。

 

「来る!」

私が声をあげるより早く、紫の光が弾けた。

「任せて!私が抑える!」

マジェスティが飛び出し、巨腕に真正面からぶつかっていく。

 

地面を砕く突進に対し、彼女は手刀に光をまとわせ、鋭く振り下ろした。

衝突の轟音。火花のような光の奔流。

巨体がわずかによろめくと、すかさず彼女は踏み込み、逆の拳をえぐるように突き込んだ。

 

「――はぁっ!」

拳が黒い肉を裂き、蒸気のような煙を噴き出す。

だがすぐに再生の肉が盛り上がり、傷は塞がる。

「チッ……やっぱり、すぐ治るか……!」

吐き捨てながらも、マジェスティの目は鋭い。

 

彼女は紙一重で爪の連撃を回避し、空へ舞うように跳び上がって蹴りを打ち込む。

頬をかすめる風圧。髪がばらけて乱れる。

それでも一切の傷はない。ギリギリの回避を繰り返し、仲間のために前線を維持する。

 

「……っ」

その背中を見送りながら、私の胸は熱く締め付けられる。

彼女が一人で巨体を相手取っている。その一撃一撃は、私たちのために時間を稼ぐもの。

 

「スカイ……!」

プリズムが震える声で呼びかける。

私も頷き、拳を握り直した。

「……やるしかない。あの再生を超えるために」

「うん……!ふたりでなら……絶対!」

 

互いの手を重ね、指を強く絡め合う。

彼女の掌の柔らかさ、熱、脈動が伝わる。

それがまるで自分の力そのものへ溶け込んでいくようだった。

「スカイパンチを……」

「ふたりで――強化するんだ!」

私たちは大きく後方へ下がり、呼吸を整える。

胸の奥で鼓動が揃い始め、視線が重なる。

その瞬間、光の粒子が私たちの周囲に舞い始めた。

 

 

前線。

巨体の爪が地を抉り、粉塵が爆発のように舞い上がる。

マジェスティはその合間を縫い、滑るように身をかわしながら次々と斬撃を浴びせていた。

「はっ!やぁっ!そこっ……!」

彼女の拳や蹴りが入るたび、肉が裂ける。

だが再生が追いつく。終わらない。

 

それでも彼女は怯まない。

「……ふふっ、単純だからね。力押しは強いけど……読みやすいんだよ!」

次の一撃を予知するように跳躍し、巨腕をすり抜け、脇腹へ回し蹴りを叩き込む。

鈍い衝撃音とともに巨体がよろめいた。

 

私とプリズムは、互いに顔を寄せ合いながら拳を重ね続ける。

彼女の頬が熱で赤く染まり、汗が光っている。

その表情は恥ずかしげで、それでも真剣だった。

「……スカイ、絶対成功させよう」

「うん。ふたりで、必ず」

胸の奥で、愛しさと闘志が混ざり合って燃え上がる。

その熱は拳へ、全身へ、そして二人の間を繋ぐ光の道へと流れ込んでいく。

 

マジェスティの声が聞こえてきた。

「大丈夫!ふたりならできる!信じて!」

その声に支えられ、私とプリズムはさらなる力を拳へ込めていった――。

 

 

私とプリズムは拳を重ね合わせ並び立っていた。

次第に心臓の鼓動が同調し、吐息のリズムが重なっていく。

 

「スカイ……感じる?」

「うん……全部、伝わってる」

青い光が私から、白い光がプリズムから溢れる。

二色の輝きが絡み、やがて虹の帯に変わる。

「……きれい……」

プリズムが瞳を潤ませる。私も言葉を失った。

光は二人を包み込み、さらに巨大なシルエットを描き出す。

それは拳――虹色の拳の形。

まるで私たちの想いが具現化したかのように、オーラの拳が大地を震わせた。

 

 

「これが……ふたりの!」

「新しいスカイパンチだよ!」

虹色のオーラが轟音を立て、空気を焦がす。

拳型の光は稲妻を散らし、怪物すらその圧にたじろぐ。

 

「プリズム!」

「うん、いっしょに!」

二人同時に大地を蹴った。

虹の拳を纏った体が、流星のように一直線に前へ突進する。

衝撃波が広がり、地面が砕け散る。

拳型のオーラが膨張し、前方のすべてを押し潰していく。

 

「スカイパンチ――ッ!!!」

「プリズムチャージ――ッ!!!」

声が重なり、拳型の虹光が炸裂。

怪物の胸を正面から撃ち抜いた。

「グオオオオオォォォッ!!!」

絶叫。

肉は砕かれ、再生すら虹の光に呑み込まれていく。

そして――

 

「……すみわたったぁ~~……」

怪物の顔はコミカルになり、奇妙に間の抜けた声が浮かぶ。

 

全身が虹色の粒子にほどけ、あっけなく弾け飛んだ。

爆発音ではない。

まるで朝の霧が晴れるように、静かに、柔らかく。

 

虹色の残滓は空へ舞い上がり、やがて雨のように降り注ぐ。

瓦礫と化していた街並みが光に包まれ、ひとつ、またひとつと元の姿を取り戻していく。

崩れたビルが再構築され、割れたガラスが逆再生のように嵌まっていく。

焦げ跡は消え去り、破壊の爪痕は穏やかな街並みに戻っていった。

 

静寂。

煙が晴れた跡に、敵の影はなかった。

「……ほんとに……倒せたんだ」

プリズムが微笑む。私も頷くしかなかった。

その背後から、マジェスティが歩いてくる。

髪は乱れていたが、傷一つない。

強気な瞳に、少しの安堵の色が混じっていた。

 

「ふたりとも……ほんとにすごいよ」

そう言って笑みを向ける。

私たちの胸に、熱が溢れた。

虹色の光はまだ漂っていて、三人を優しく包んでいた。

 

 

戦いが終わり、虹色の光が街を覆っていた余韻もようやく薄れていった。

変身を解いたソラとましろは、まだ熱の残る身体を抱えながら、瓦礫の消えた広場に立っていた。

 

「……ましろさん」

ソラは少し俯き、ぎゅっと拳を握る。

「わたし……あのとき、本当に命を投げ出そうとしました。けど……ましろさんが止めてくれたから……こうして、まだ生きていられる」

ゆっくりと顔を上げる。真剣そのものの瞳。

「だから……ありがとうございます。おかげで、今……ましろさんと一緒にいられます」

 

その言葉と同時に、ソラは不意を突くように身体を寄せ――。

ましろの唇に、短く、けれど確かな口づけを落とした。

「……っ」

一瞬の沈黙。触れ合った唇の感触が消えても、ふたりの頬は赤く燃えている。

 

ソラは耳まで赤く染めながら、それでも逃げずに言った。

「だ、だいすきです……ましろさん……!」

ましろの胸が熱く震える。驚きと、込み上げる嬉しさ。

「……私も……大好きだよ、ソラちゃん」

顔を赤らめ、微笑みながら答えたその声は、涙をこらえるように震えていた。

互いの視線が絡み合い、ふたりはただ見つめ合う。

戦いの緊張とはまるで違う、甘く静かな時間がそこにあった。

 

――その後ろで。

すでに変身を解いて、赤ん坊ではない成長した姿で佇んでいたエルが、頬を赤く染めながら腕を組んでいた。

「……わ、私、いるんだけどなぁ……」

小声でそう呟き、さらにぷくっと頬を膨らませる。

「やっぱり……ラブラブじゃん……」

 

ため息混じりのひとりごと。

けれどその顔は、どこか嬉しそうに緩んでいた。

虹の余韻が漂う広場に、三人の笑みが重なった。

 

 


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