ワッケイン   作:いくさふね

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ルナⅡの守り人
ファーベ、オーベル


旧オランダ、北海沿岸のアルクマール宇宙軍装備研究所にいた俺へ、ジャブローからの出頭命令が

届いたのは、開戦から一ヶ月も経とうと言う頃だった。

地表にコロニーが3本も落ち、民間航空便はほぼ全便欠航、足もないのにどうやって南米まで行け

と言うのか?

当然の如く日付まで指定されてはいたが、軍は足の心配などしてはくれない。

基地の車両でアムステルダムまで出ると、そこから軍の救援物資輸送トラックを捕まえて便乗し、

4日掛けて辿り着いたのは海軍基地のあるブレスト。

そこで運良く南米へ向かう大西洋艦隊のフリゲイト、ブランデンブルクと出くわした。

欧州の大西洋岸にある港は何処も、コロニーの落着した北米へ向かうか、もしくはその救援活動の

拠点となった旧英国への船で溢れ返っており、南米に向かう船は数える程しかなかったので、これ

は正に幸運だったのだが、全くの部外者が乗船許可を得るのに丸1日、ジャブローからの返令でよ

うやく乗り込む事は出来た物の、これはブランデンブルク本来の予定通りではあるのだが、出港ま

でに更に2日間船上で待たされ、大西洋を3日掛けて渡り、ジャブローに着いたのは2月3日の事

だった。

既にルウムでの戦局挽回にも失敗し、艦隊司令が捕虜になると言うオマケまで付いて、前月25日

には降伏まで迫られた連邦ではあったが、連邦側にその意思など微塵もなく、代わりにムンゾの言

う所の南極条約と呼ばれる一連の戦時条約が話し合われた所だ。

彼らは我が国を降伏させられなかった理由を、ルウム戦で捕まえた艦隊司令の逃亡と、その言動に

拠る物だと報道したが、当日に逃げて来た者の言う事などで交渉の行方が変わる筈もない。

大体、南極条約と言う名前すらもムンゾが勝手に付けた呼び名で、恐らくは調印場所の極軌道基地

から来ているのだろうが、正式な名称はあくまで0079交戦当事団体戦時規定で、ならば北極は

どうするのだと言ってやりたくもなる。

とにかくも、俺は予定より5日遅れで何とかジャブローの入り口に立つ事が出来た。

アマゾン最大の都市マナウスから約120キロ程河口側にある海軍ノボ、レマンソ基地は強靱なベ

トン天蓋に守られたジャブロー接続港で、ライムンド打ち上げ基地と並び一般人の知る事が出来る

数少なく、そして最も大規模なジャブローの玄関口だ。

此処からジャブローまでは地下通路で繋がっているが、その長さは100キロとも150キロとも

言われており、トンネル長その物が部外者を寄せ付けない防壁として機能している。

食料品を納入するトラックに乗せて貰い、延々と続くトンネルを3時間以上走らされると、ようや

く開けた地下空間に足を踏み入れた。

運転手は俺を良い雑談相手が出来たと喜んでいたが、選ばれた者しか入構が許されないジャブロー

で、自動運転の監視役とは言え毎日このトンネルしか見えない勤務もそれなりに大変なのだろう。

この穴蔵で長期勤務を命じられたら、外の天気なぞ何処かに忘れてしまいそうだ。

俺は、ノボ、レマンソ基地までの旅路での予想外の涼しさと、一度も顔を見る事がなかった太陽を

思い出した。

 

トラックは俺を降ろすと運転手曰く物品搬入ヤードへと走り去って行く。

まずは警備詰め所へ向かい、ジャブロー内でのみ有効の身分証を貰わなくてはならない。

此処は軍の最重要施設、部外者が入構するには煩雑な手続きが必要なのだ。

無人のゲートをくぐり、その先の警備詰め所のカウンターで担当者を捕まえる。

「私はファーベ、オーベル、階級は少尉、アルクマール宇宙軍装備研究所から出頭命令を受けて此

処まで来たのだが…」

既にゲートで自動認証は通っているのだが、此処では人の目に拠る二重チェックを経て初めて入構

が許可されるらしい。

受付で俺の相手をしてくれた担当者には、俺の情報が事前に伝わっていた様だ。

到着が5日遅れた事に付いては触れては来ない。

「オーベル少尉ですね、伺っております。取り敢えずこれが本基地内での身分証となります。全て

のゲートでこれが必要となりますので紛失はせぬ様に、そして常に携帯して下さい。因みに此処は

まだ緩衝地区でジャブロー中央区画は更に奥となります。迎えを手配しましたので、中で暫くお待

ち下さい。」

この先からジャブローだと思い込んでいた俺は甘かった様だ、何しろ俺はジャブローとは縁もゆか

りも無い軍歴を歩んでおり、一生係わる事などないと思っていた所に今立たされている。

案内された部屋は結構は広さがある物の居るのは俺一人、30分程も待たされたろうか、

現れたのは明らかに軍警の少尉だった。

軍警の人間は、言わずとも雰囲気で判るのだ。

「お待たせしました。ファーベ、オーベル少尉ですね。これより私が案内します。」

自らの名前は伏せたまま、彼は俺を連れ詰め所建屋を後にする。

外に出ると、恐らくは彼が乗って来たのだろうエレカが停まっていた。

中を覗くが運転手の姿はない、ジャブロー構内ではトラックを除けば無人運転が基本なのだろう。

彼に誘われるまま俺は右後ろの座席に座ると、彼は隣に乗り込んだ。

「第16警務事務所まで頼む。」

彼は人のいない前席にそう告げると、エレカはゆっくりと走り出した。

合流ランプから、更に奥へと向かう二車線の自動車専用道に乗った所で、ようやく俺は最大の疑問

を彼にぶつけて見た。

「自分はなぜジャブローに呼ばれたのだろうか? ただ出頭を命じられただけで任務も所属も知ら

されてはいない、少なくとも軍警の世話に成るような事はしていないつもりだが。」

階級は同格なので先任なのかも知れないが普通に話し言葉を使う、彼は特に表情を変えるでもなく

穏やかな口調で返してよこした。

「まず、職業柄、私の名前は今はご勘弁下さい。詳細は後程担当の者から説明がありますが、我々

が少尉の力を借りる為にお呼びしたとだけ伝えておきましょう。」

エレカは時速40キロ程度とは言え、1時間にも届く程奥へとひたすら進み、2つの検問を越えて

ようやく自動車専用道から降りると、目的地と思われる建物の脇に停まった。

1時間近く走ったのに、地下施設は更に奥まで続いており、しかも途中の道は幾重にも分岐してい

て最早自分がどのあたりにいるのかすら見当も付かない。

「ここが第16… 済まない、忘れてしまったがその建物なのだろうか?」

建物は3階建ての低層ビル、地下空間に建てられているので当然と言えば当然なのだが、逆に地下

に普通の建物を建てるのなら直接地下室を作った方が良いのではと思ってしまう。

「その通りです、第16警務事務所と言います。我々警務部の活動拠点で同様の施設はジャブロー

全体では40を超える筈です。」

「良いのか? そんな情報を私に話しても。」

「本来は宜しくないのですが、この程度は許されるでしょう。話した所で位置を特定出来なければ

意味がないので。」

「確かに、ジャブローの中央区画とは恐ろしく広くて入り組んでいるのだな。」

「いえ少尉、此処はまだ中央区画ではないのです。」

ノボ、レマンソから3時間トラックで進み、更にエレカで30キロ以上奥まで来たのに、まだ先が

あるとは…

「この中は一体どうなっているのだ?」

「ジャブローと一括りに呼びますが、実態は複数の地下施設の集合体なのです。建設途中で掘り当

てた大規模な鍾乳洞も含め、広範囲かつ複雑に入り組んでいる上、防諜の為、全体を表す地図は通

常閲覧出来ません。此処で勤務する兵は、自身の使う出入り口と勤務地周辺の地理しか知らない状

態で働いているのです。」

成程、それでさっきの話も合点が行く。

此処は天然の鍾乳洞が元になっているのか、隣にあるビルは一段高い所に建っており、地表面はな

だらかな起伏で覆われていたが、氷柱状の鍾乳石は見られなかった。

「私は此処までです。中で暫くお待ち下さい。」

俺を連れて来た少尉はそう言い残すと、エレカで元来た道を引き返していった。

 

覚悟していたとは言え、本当に待たされてばかりだ…

俺は第16警務事務所とやらに足を踏み入れる。

建物は先程の通り3階建ての低層ビルとなっており、普通の事務所らしい造りをしていた。

案内された部屋で待つ事5分程、それ程待つ事もなく大佐の階級章を付けた男性が現れた。

「5日遅れだが自力で辿り着いたようだな、私はエリオット、ブッフェハーゲン、軍警察の大佐を

している。早速だが、君は大学の法学部に在籍していた事があるな?」

いきなりの事で戸惑ったが、確かに俺は大学二年までは法律を学んでいた。

兄の影響を強く受けての事だったのだが、その頃始まった軍の拡張計画に拠る増員キャンペーンに

俺は乗せられ、士官学校への編入あっせんに応じ、法学を投げてしまったのだ。

「はい、しかし、士官学校へ編入したので卒業はしておりません。」

ブッフェハーゲン大佐には俺の経歴は丸裸の様だ。

「無論承知している、在学中の成績も調べさせて貰った。それで君の任務だが、軍法会議である士

官の弁護に就いて貰いたい。」

流石にこれには驚いた。

俺は素人だし、そもそも軍事裁判ならいざ知らず、今の我が軍の軍法会議では被疑者に弁護役など

付かない筈だ。

「御言葉ですが、私は弁護士の資格など持ち合わせておりませんが。」

だが、ブッフェハーゲン大佐は何事もない様に話しを続ける。

「形だけで良いのだ。会議は出来レースで被告の無罪は決まっている。軍はこれをプロパガンダと

して一般に公開するのが狙いなのだ。流石に軍事裁判として判例を残す訳にはいかないので、軍法

会議の形式を取り弁護人を付けた状態で通常の裁判形式として行う。これは確定事項であり君に与

えられた任務だ。」

任務と強調されれば逃れる術はない、諦めて受け入れるしかないが質問位は許される筈だ。

「軍には他にも法律をかじった者が幾らでもいるのではないですか? 何故私なのでしょう?」

聞いて見た物の、答えは期待出来ないと踏んでいた。

だが、ブッフェハーゲン大佐は普通に答えをよこして来る。

「いや、実の所少数派だ、しかも開戦で人材は不足している、実質フェイクなので我々の組織から

と言う声もあったのだが、流石にそれは退けられた。君はこのタイミングで地上にいたし、上層部

の一部から強い推薦があったのだ。」

一体誰だ? 俺にコネなど無いぞ。

だが、推薦者の名前まで聞く事は流石に出来なかった。

「本件は特例事案であり、本来軍法会議に弁護士に相当する者は存在しないので、表向き君は広報

担当として扱われる。司令本部付きの広報担当少尉と言う肩書きだ。公判は4日後の0010開廷

、資料は既に君が使う部屋に運び込んである。部屋は3階の一番北側に用意した。前日1500よ

りわれわれの担当者と打ち合わせを行い、当日は7時半に迎えをよこす、それまでは君の自由だ。

因みに被告はこの2階にいる、会うのは1日1回2時間迄、他に制限は設けない。後は資料通り概

ねこちらに合わせてくれれば良い。但し、被告はこの事を知らないまま会議に臨む事になっている

ので其処だけは注意してくれ。何か質問はあるか?」

全て万端整っていると言う事か…

「判りました、ファーベ、オーベル、現時刻を以て司令部付き広報担当官を拝命致します。」

「ジャブロー司令本部のな、取り敢えず説明は此処までだ。後は外で待っている伍長に聞いてくれ

。因みに形式上私が君の直属の上司だ、間に人は挟まない。まあ、殆ど会う事もないだろうがな、

それでは宜しく頼んだぞ。」

 

部屋を出て行く大佐を目で追うと、出口に立っている兵と目が合った。

どの位から其処にいたのだろう…

俺も出口へ向かうと、その兵は先に挨拶して来た。

「私はルマイエ、コックウェルです、暫くの間オーベル少尉の直属の部下となります。宜しくお願

い致します。」

「私の名前は既に知っている様だが、改めてファーベ、オーベル、少尉だ、宜しく頼む。私の下に

就くのは君だけか?」

「はい、5日前に転属して来ましたが他には誰もいませんでした。」

上司1人に部下1人、やはり例の軍法会議専任の一時的な組織と言う訳だな。

「そうか、5日待たせたのは自分のせいだ、済まなかった。所で生活全般について教えてくれるか

? 部屋の場所しか聞けていないのだ。」

教えられた部屋に向けて歩き出しながら、コックウェル伍長が説明を始める。

「まず食事ですが、此処は食堂がないので隣のビルにあるストアか、更に2つ先の兵舎の食堂で摂

る事になります。ストアは24時間開いていますが、食堂は6時から22時までの営業です。日用

品は先程説明したストアで、軍装品はストアの隣に営繕課の出張所がありますのでそこで、クリー

ニングもそこで受け付けています。簡単な洗濯物でしたら食堂のある兵舎にランドリーコーナーが

あり、無料で使用する事が出来ます。他に何かありますか?」

「いや、十分だ、此処は事務所関係だけしかないのだな。」

エレベーターもないので階段を昇り、部屋の前まで辿り着く。

だが、開けようとした扉は開かなかった、鍵付きの扉だったのだ。

「済みません、この建物は全て鍵付きの仕様なのです。扉横の壁にあるインターフェースに身分証

をかざして下さい、少尉のデーターは既に登録されています。」

部屋の中には、大佐の言う通り資料のファイルと卓上端末が置かれていた。

「済まん、予想より資料の量が多い様だ。説明を聞こうと思っていたのだが、すぐに精査を始めた

いので此処までとしよう。下がってくれ。」

「では、ブッフェハーゲン大佐と私の個人アドレスを送ります、何かあれば気兼ねなく私を呼んで

下さい。」

俺のアドレスは既に取得していると言う事だな、まあ、軍用端末だからプライベートなど無い様な

物だが…

コックウェル伍長を帰すと、大凡の部屋の造りを確認する。

1人用としてはそこそこ広い部屋、贅沢にもシャワーとトイレ付きだ。

殆ど佐官待遇だな…

大きめの机に積み上げられたと言う程でもないファイル類と卓上端末。

ロッカーを挟んで間仕切りがあり、奥はベッドだ。

今までの軍歴で言えば、最も贅沢な部屋だろう。

時計を見ると17時を過ぎている、昼を食いそびれたので腹はそこそこ減っているが、この建物の

中で食事にありつけないのはさっきの説明で聞いている。

被告への好奇心は俺の半端な食欲を忘れさせるに十分だ。

まずは机の上のファイルを開けて見る。

ライナス、ワッケイン、宇宙軍大佐、サイド1ザーン西艦隊司令を経て臨時集成第4艦隊を率いて

第2次ルウム戦従軍、ん、ザーン西艦隊司令と兼任なのか? 

大佐か… 地方防衛艦隊の指揮官なら大体中佐が普通だが…

それ以前の経歴を見ると、やはり昇級で躍進している部分があるにはあった。

中々真面目な大佐殿ではないか… 一体何をやらかしたんだ?

経歴に一通り目を通すと、肝心のコピーされた起訴状に移る。

UC0079年1月3日0816、サイド1ザーン西地区区長筒32バンチ、オーラフスビークシ

リンダーに対し、住民の避難誘導なく独断で構造破壊工作を実施、反太陽側港湾大門部に核弾頭付

き長距離誘導弾2発を設置、起爆させ、その炸裂を以て居住シリンダー全体を破壊せしめる行為に

及ぶ、罪状は作戦立案上の越権行為、非戦闘員に対する虐殺行為並びに都市筒防衛任務の放棄。

何、コロニーを1本吹き飛ばしただと…

俺は軽く弁護対象の略歴のみ見るつもりだったのを忘れて、当日の戦闘詳報などの資料にまで手を

付けてしまった。

ふと我に返ると時計は22時を過ぎていた。

くそう、穴蔵の中では時間感覚が麻痺してしまう。

流石にまともな空腹を感じたが、食堂の営業時間は過ぎているので隣のビルのストアに向かう。

だが、店内にあったのは缶詰類とパン類のみ、硬めのパンとポークビーンズの缶詰がこの日の夕食

となった。

 

翌朝目覚めたのは8時過ぎ、軍隊の中とは思えぬルーズぶりだが、本当に24時間自由が約束され

ている事の証明にはなった。

昨日の続きを読み漁り、10時半頃、コックウェル伍長を呼び出す。

「被告と面会したい、ワッケイン大佐の収監場所に案内してくれるか?」

「面会ですね、判りました。2階の北側階段前でお待ち下さい。」

最初に自分の部屋の場所を聞いた時にはどっちが北かと思った物だが流石は地下施設、天井にNと

Sが表示されていた、つまりこの建物は南北を軸に建てられているのだ。

伍長と落ち合い、1階下がると5つ並んだ部屋の丁度真ん中に案内される。

「此処になります、開錠は私が行いますので。」

指紋認証と暗証番号の二重のロックが解かれると、中は俺の頭の中にある営倉のイメージにはそぐ

わない、狭いがまあまあ小綺麗な部屋だった。

作り付けのベッドがあり、トイレも普通に扉付きだ。

椅子やテーブルはなく、被告はベッドに腰掛けていた。

よく見ると、床にはテーブルの跡らしき物が残っており、それらは元々あった物を運び出したらし

い事を伺わせる、どうやらこの部屋は本来このような使い方をする所ではない様だ。

コックウェル伍長は中には入らず入り口の外で待機している。

監視も兼ねているのだろう。

「ライナス、ワッケイン大佐ですね、私は大佐の弁護役に任ぜられましたファーベ、オーベル、階

級は少尉となります。少々お話を聞かせて貰いたいのですが。」

俺より6つ年上の精悍な顔立ちの男は、直ぐに言葉を返してよこす。

「済まない、度々言っているのだが私の階級は中佐の筈だ、昇進した覚えはないのだが。」

いきなりジャブを放って来たか、だが資料はどれも彼が現在大佐職である事に疑いの余地を持たせ

ない。

「資料を見る限り大佐で合っている筈ですが、この件は改めて調査して見ます。今は大佐と言う事

で話を進めさせて下さい。まず、大佐の指揮したザーン西艦隊は事実上全滅していると言う事で宜

しいですね?」

「書類上ではどうか判らないが、貴官の言う通りだ。私はルナⅡに連れて行かれ、臨時集成第4艦

隊の指揮を命じられたがザーン西艦隊の司令を解任されてはいない。書類上、私はザーン西艦隊の

亡霊と臨成第4艦隊の司令を兼任していたのかも知れん、因みに拘束後は自動的に司令職を解任さ

れた様だが。」

冒頭のジャブには少々面喰らったが、俺の質問に良く答えてくれ、話も非常に筋が通っているので

取り敢えずは安心した。

「では、現在の階級を除いて此処に記された経歴に誤りはありませんか?」

先程抜粋して、コピーを取った紙を手渡すと、一瞥して返してよこす。

「問題はない。」

「それでは、現在大佐に掛けられている嫌疑について説明致します。資料に拠ると、開戦2日目の

1月3日0816にザーン西区長筒反太陽側大門に核弾頭2個を設置、起爆させ、同都市筒を破壊

、越権指揮と民間人虐殺の疑いが掛けられています。これについて大佐から意見、反論はあります

か?」

大佐が冷静に答えるのを見て、俺はいきなり本題を俎上に上げてみた。

「いや、大筋では間違っていない。反論はないが行動に説明は付けられる。」

本人に無罪を争う気はないと言う事か、だが、これは形ばかりのパフォーマンスで大佐の無罪は確

定事項だ、争う気を見せてくれないのはむしろこちら側が困る。

「では、その説明を聞かせて下さい。」

「まず越権指揮の件だが、敵の奇襲に拠り直属の上司との連絡が途絶え、敵の電波妨害でその上位

組織とも連携が取れず、全ての判断を私が行うしかない状況だった。都市筒破壊に伴う住民の避難

については核弾頭の起爆前にある程度の確認を行なった所、既に敵に拠り住民の虐殺が行なわれて

おり、住民の生存が期待出来る状況ではなかった。が、ゼロではなかったであろう事も承知してお

り、住民の虐殺に付いては受け入れる所だ。」

もしや、この大佐は有罪になる事を望んでいるのか? それは我々にとっては宜しくない。

「取り敢えず今日は此処までとしましょう。階級の件に付いては調べて見ます。」

時計は11時40分を過ぎていた。

外で待っていた筈のコックウェル伍長はいつの間にやら被告の昼食を持って来ている。

「済みません、今、昼食を持って看守が上がって来た物で。」

流石に伍長がこの場を離れる訳はないか… と言うか看守が別にいると言う事だな。

「丁度良いタイミングだったな、聞いていたとは思うが今日は此処までだ。」

「では、少しこちらで待っていて下さい。」

そう言うとコックウェル伍長は昼食をワッケイン大佐に渡しに行く。

横目で覗くに一汁一菜にパンだが、少なくとも俺のメシより遙かにまともな物を食っている。

大体、此処にいてメシの方から来てくれるのは羨ましくさえ思えてしまう。

伍長は施錠をすると俺の横に付いて歩き出す。

「見ましたか?我々より良い物を食べているんですよ。」

彼は俺の気持ちを察して話を振ったつもりだったのだろうが、俺は却ってその言葉に驚いてしまっ

た。

「そうなのか?そんなに食料は切迫しているのか?」

伍長は慌ててフォローに入る。

「昨日の食事がまともだっただけですよ、少尉は此処へ来たばかりなので実感はないかもですが、

コロニーが落ちてから食事は悪くなる一方です。」

いや、外から来た俺の方が身に染みて判っている、俺は昨日食堂に行きそびれただけで、むしろ軍

の中枢たるジャブローだけは違うと思っていたのだが…

「実の所伍長は食堂で食事をしていないだろう、私も夕べは行けなかった。少なくともストアには

大した物は置いていない様だったがな。」

そんな話をしている内に階段前に辿り着いてしまった。

「ジャブローも外と同じだと言う事は良く判った。それはそうと明日も又、被告と会いたいので又

宜しく頼む。」

バツの悪そうな顔をした伍長と別れ、俺は3階の自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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