ワッケイン   作:いくさふね

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ムンゾ襲来 2

敵が我々の存在を知りながら、こちら側に積極的な攻勢を仕掛けて来ないのがやはり気になる、こ

れまでの敵の動きは我々をこちら側に押しとどめて置くだけの消極的な行動にしか見えないからだ

太陽側で何かをしている事だけは間違いない。

エドガーレ少尉に僚艦を呼び出させる。

「向こうが出たら交信状態を維持し続けろ。」

実際にはオープンチャンネル状態になっているので、実質既に繋がったままではある。

2隻共直ぐに答えた。

「テージョとサスケハナは都市筒中心線上に交信可能限界まで距離を取れ、本艦は再度敵情を確認

し、これを誘因する。敵影を認めたら艦長判断にてレーザー攻撃を実施せよ。」

「距離の見当が付きませんが。」

これはテージョのカレルヴォ艦長。

「それは探りながらやるしかない、取り敢えず毎秒300メートルまで加速後、慣性にて交信不能

となるまで離れてみろ。」

我が主砲たるレーザー砲は、威力の点ではメガ砲に及ばないが、事射程に関してはこちらに利があ

る。

荷電粒子砲は射距離に比例して減衰、拡散するが、高出力レーザーは距離に拠る減衰は少ない、交

信可能距離を維持しながら敵の有効射程圏外に出ることは流石に無理だろうが、あの連射攻撃を封

じる事は叶うかも知れない。

恐らく連射時は1発当たりの出力を絞らなければならないだろうから、あれは近射程限定だと踏ん

だのだ。

それに、都市筒から距離を取れば、見越し角が小さくなり都市筒の影から出て来た敵を早く捕らえ

る事が出来る。

両艦は再度反転し、離脱コースに乗った。

 

後は本艦だ、ムサイとやらは癪な事に丁度船体を隠して艦橋と砲だけを覗かせるのに都合の良い船

体構造をしている。

平たく潰れた主船体から後方に持ち上がる様に出したブーム上に背負い式に砲塔を設け、更にその

後方に艦橋と左右に吊り下げた推進器を設け、主砲火力は全て前方指向と言う非常に極端な艦容だ

反してこちらはタンルウィンがやられた通り不利な艦容をしている。

「艦長、横転180度、天地が入れ替わったら下げ舵30度、艦首下面が最初に露出する様操艦せ

よ、微速でゆっくり出すぞ。」

「艦首下面のB砲塔用射撃指揮装置で覗くつもりですね。」

「その通りだ、どうせ戦闘艦橋に窓は無いからな、都市筒外周に対し斜めに背面姿勢で接近する。

遠距離大型誘導弾、弾数2,航法設定誘導で放出、コースは本艦軸線上に放出後、主鏡翼回転圏外

を迂回後、太陽側ハブ前面4000メートルを着弾点とする山なり弾道、時限起爆せよ。最終フェ

ーズでは回転する主鏡翼間を抜けるコースとなるが上手く通せよ!」

「発射管1番及び3番、通常弾頭、時限起爆、パターン航走、エラン、司令の話聞いて居たな? 

鏡翼外に放り上げて翼間を狙って戻し、向こう岸の真ん中で起爆だ。直ちに諸元入力、発射タイミ

ングは貴官が取れ、右横転180度、終了後下げ舵30度、長、誘導弾放出を待って微速前進。」

艦長の号令一下、艦は姿勢を変え、エラン少尉がミサイルを放ち、それから微速で都市筒外周部へ

前進を始める。

 

「テージョとサスケハナは何処まで離れた?」

「約130キロ、既に交信不能となっております。」

「引き返して来る所だな、距離の確認は何でした?」

「交信が途絶した時点で、主砲射撃指揮装置でレーザー測里し、その後の時間分を計算で足しまし

た。」

「敵の攻撃準備と間違われるぞ。」

「大丈夫です、照射源が本艦なのは一目瞭然ですから。」

もう一人の火気管制官であるリシュアン少尉が割り込んできた。

「放出弾の起爆予定時より30秒程過ぎましたが、起爆信号は拾えませんでした。」

信号は電波なのでそれは想定内だ、確認が取れるに越した事はないが…

「艦長、縁の手前で一度止めてくれ。」

推定では有るが、牽制弾は正常に起爆したと見た。

ここからは敵との駆け引きだ、頭をこのまま出すか、それとも位置を変えるか、先程のタンルウィ

ンの様に正面に待ち伏せされて撃ち据えられると今度は艦橋に直撃を喰らい、ここに居る9名の命

は無いだろう。

ホーの名誉の為に付け加えるなら、彼の操艦は間違っていない。

敵の戦力を測る為、自らを囮とし、敢えてリスクを負ったのだ。

そのお陰で敵のメガ砲に対する新たな知見を得る事が出来た。

そして敵の圧倒的な火力が判明した以上、タンルウィンが犠牲を払って得た教訓は生かされねばな

らない。

 

問題は敵の数と、今、正面に居るかどうかだ。

使えないのが判っていながら無人偵察機を欲してしまう自分がいる。

よし、腹は決まった、この位置のまま出す。

「テージョ、サスケハナとの交信回復しました。」

計った様なタイミングだった。

「両艦に、そこから敵艦が見えるか尋ねよ。」

彼らが未だ攻撃を掛けないのは、敵が見えないからだろうと読む。

「未だ敵影を見ず、です。」

読みは当たった、だが、自慢の人形をけしかけて来ない理由は何だ?

「レーザー砲戦準備、艦長、ゆっくりずり出せ!」

だがそこで、正パイロットが待ったを掛けた。

「艦長、都市筒が僅かづつですが本艦に近づいて来ています!」

「戦闘中に冗談はよせ、動いているのは本艦だろう?」

「いえ、間違い有りません。毎秒30ミリ程ですが都市筒の方からこちらに寄って来ています。毎

秒38ミリ、徐々に増速している様です。」

軍民問わず、宇宙船には近接距離計が備わっている。

航空機の電波高度計に相当する物だが、全周方向を見ている点と、電波では無くレーザーを使用す

る点が異なる、宇宙には霧や雲は無いし、他船や港湾への接舷作業はミリ単位の精度が要求される

のでミリ波レーダーでは無くレーザー距離計が使われるのだ。

そして光学センサーなのでミノフスキー場が励起された状態でも機能は損なわれない。

パイロットになると普段から近接距離計を見る癖が付くので、恐らくそれで異変に気付いたのだろ

う。

連中の仕業に間違いない、だが、何をやっているかは皆目見当が付かなかった。

 

「タンルウィンからです、司令を呼んでます。」

後上方を映すカメラの映像には、センターハブ大門から7割方船体を覗かせる同艦の姿があった。

基地局化に成功したようだ。

光学系の通信は互いを遮る物が有ると通じない。

「私だ、状況が知りたい、通信基地局としては使えるのだな?」

「最初に、西軍統括司令部との連絡が戻る事は有りませんでした、太陽側のセンターハブ部施設は

敵に制圧された模様です。恐らく司令部も… 都市筒内はバンチ連隊の応戦を見なくなったので、

事実上制圧されたと見られますが、敵は兵力的には小規模なので大きな破壊などは有りません。市

民はシェルターに避難中です。」

「この短時間で都市筒丸一つを、しかも小兵力で制圧だと? 師団相当の間違いでは無いのか?」

「いえ、侵入した兵力は二個大隊規模らしいです。32バンチ連隊が主鏡側まで来ており、指揮官

のマドリーン大尉が司令に説明をしたいと言う事で本艦に乗り込んでいます。」

分遣隊では無く、指揮官が来ていると言う事は、バンチ連隊は実質落ち延びて来たと言う事だろう

、こうも簡単に落ちるとは… いよいよエレンとダリルの安否が冷静であろうとする心を乱す。

 

「マドリーン連隊長に替わります。」

背後で大尉を気遣う声が聞こえた、彼女は負傷している様だ、急ごしらえの回線では映像までは見

えない。

「ワッケイン司令、現状報告の為ホー艦長に乗せて頂きましたマドリーンです、まず、西軍統括司

令部は敵艦のビーム攻撃で機能を喪失しました。ヘルマンニ少将以下は難を逃れましたが、続く白

兵戦で、私が増援を連れ帰る為下に降りた後合流が叶わず、以後の消息は不明です。御存知の通り

無線が全く使えない為、部隊間の連絡、連携が取れず、組織的な戦闘は全く出来ませんでした。敵

は、ロボット兵器3機を露払いに特殊な装甲車、丁度昔の大砲の開脚砲架に履帯を履かせたみたい

な車でしたが、それでセンターハブ部から約3キロを直接宙を舞う様に降下して来ました。私が戦

場と化した司令部から部隊主力の待つ駐屯地に降りた時には、敵は既に降下展開を終えており、戦

闘は始まっていました。我々は連絡手段を絶たれた上、元々対装甲火力は持たないので一方的に押

され、最早司令部に増援を送る状況ではなく、鏡板の麓まで追い詰められ採光窓端の連絡道路から

隣の島に逃れる他有りませんでした。その後、ロボットに主鏡側まで追い立てられ、丁度5キロ程

まで逃れた所で敵は引き返して行き、我々は主鏡側分遣隊と合流し戦力を立て直しを図る為、その

ままこちらまで退いてきたのです。」

実質治安維持部隊であり、ほぼ対人装備しか持たない上通信手段も奪われ、防衛陣を敷く暇さえ与

られ無かったバンチ連隊が、装甲されたロボットや特殊車両で装備された機械化集団に成す術も無

かったであろう事は、その道に素人の私でも想像に難くなかった。

 

「住民は今、どうなっているのか? シェルターに避難中とは聞いたが…」

「ほぼシェルターに避難出来た模様で、街中に民間人の姿は有りません。敵のロボット兵器が見境

無く砲を乱射した為、半ばパニックになり逃げ込んだ形です。敵は大量の弾薬を持ち込んだ様で、

その後も散発的に発砲を続けており、シェルターから出るに出られない状況ですが、幸い敵は、積

極的に人を撃ったり、シェルターを攻撃してはおりません。」

「大尉、ホーでも良い、今、オーラフスビークがこちらに向かって僅かづつ移動を始めている、何

か知っているか?」

だが二人共情報は持っていなかった。

彼らが桟橋から離れ、大門入り口に達するまでの間で、状況が始まったのかも知れ無い。

ホー艦長が替わって出る。

「今、基地に確認を取ります。」

基地にしろ港湾管制室にしろ無線が使えないので連絡は面倒だ。

「大尉をもう一度頼む。」

彼女は直ぐに出た。

「マドリーン大尉、負傷している様だが部隊指揮の継続は可能か?」

「はい、問題ありません。しかし、わが連隊は戦力の半数を失っておりますので厳しい状況ではあ

ります。」

「それはこちらに居た分遣隊を含めての数字だな? ならば基地作業員の中から選抜して貴官の下

に就ける、基地にある火器類も全て供出するのでそれで戦力を立て直してくれ。ホー、居るな?」

「はい、聞いております。」

「民間船徴発の件はどうなった?」

「一応各船長共了解は取り付けましたが、現在入港中の船は12隻、そのうち旅客船は2隻のみで

すので6~700人を運べるかといった所です。各船長からは船の安全上、早急な港外退避を求め

る声も集まっている様ですが、管制が入出港停止を盾に足止めしている状況です。」

どうする? 船長達の言う通り空荷で一度外に出すか… だが、敵は途中で引き返したと聞いた、

今なら主鏡側の住民を幾らかは乗船させられるのではないか? 駐屯地近くのシェルターに居るで

あろうエレンとダリルも…

 

「司令、本艦はどうしますか?」

横に居るオクタヴィアン艦長の声が、私を現実に引き戻す。

「済まん艦長、都市筒内の情報収支を優先する、もう暫く船を止めておいてくれ。」

取り敢えず船を止めておく算段をすると、タンルウィンとの通信回線に戻った。

「副司令にバンチ連隊への増援メンバー選出を一任すると伝えろ、ホー艦長、今一度筒内の状況確

認を頼む。」

一度タンルウィンとの交信を止めた。

オクタヴィアン艦長がパイロットに都市筒との距離を確認する。

「まだ、十分な距離は有りますが、速度は上がっていますね。増速ではなく加速しています。現在

秒速4363ミリ、本艦との距離874メートル。」

「タンルウィンから交信来ました。」

「何か判ったのか?」

出たのはホー艦長ではなくタンルウィンの通信担当。

「はい司令、緊急事態です。敵が太陽側ハブのマスターエアロックを内外同時解放しました。現在

都市筒は減圧中です。」

マスターエアロックとは、都市筒両端の鏡板中心にある巨大な耐圧扉の事だ。

主に建設時、都市筒内に大型構造物を搬入する為の物で、大型宇宙船が余裕で通過できる規模があ

る。

都市筒の建設が進み、シリンダー内が大気で満たされると、この扉は通常締め切り状態となり余程

の事が無い限り明けられる事はない。

大規模工事等で使用される例もあるが、二重扉のエアロック構造とはいえ中の大気を全量回収出来

る筈もなく、その損失量は馬鹿にならない為極力使用は控えられる。

そして当然安全対策として内外の扉が同時に開く事が無い様、セーフティが掛けられている筈なの

だ。

敵は、ボトルの栓を抜いたのだ。

恐らく大気の噴出圧が推力となり、都市筒はこちら側に押されている。

 

「艦長と替われるか?」

「艦長は今、基地経由でコロニー公社の管理事務所との連絡を試みてる所です。」

艦橋内の空気が重く変わったのを肌で感じた。

皆、誰がしか縁者を街の中に残して来ているのだ、出来るなら任務など放り出して今すぐ助けに行

きたいと思ってる筈だ。

減圧速度が知りたいが難しそうだ、だが、幸いな事に住民は今シェルターの中だ、シェルターは無

論気密構造であり空気は送気配管からの供給と、それが絶たれた場合に備えた備蓄ボンベの二段構

えになっている、直ちに命を脅かされる事は無いだろう。と、視界の端に入って来た淡い光が、思

慮の海から私を引き戻した。

弱かった光は、やがてモニターの防眩フィルターが働く程にまで輝きを増すと、やがて徐々に消え

て行った。

「テージョが核爆発を確認したと言っています。」

今度はどちらが撃ったのか…

「司令、今の爆発、軍用弾頭の物では無いと思います。」

カレルヴォ艦長だ。

「確証は有りませんが、私にはメテオキッカーの爆発に見えました。」

私は直視出来なかったが、言われて見れば爆発の持続時間が一寸長かった様にも思えた。

公社が応戦しているのか? いや、それは有り得ない、コロニー公社とその母体となる宇宙移民開

発機構は世紀を超えて遡る設立当初より中立を是として活動してきた組織だ、例えコロニーに被害

が及ぼうと争う当事者の一方のみを排斥するなど考え難い。

 

「テージョ、サスケハナでも良い、その位置なら起爆点を割り出せないか?」

サスケハナのベルナディット艦長が加わって来た。

「本艦でも捕らえております、奥行き方向は明確にはお答え出来ませんが、方位的には北1バンチ

、カーナークシリンダーの背後です。」

彼女が話している傍から、二度目の爆発が起こった。

「今のも、先程とほぼ同じ位置です。」

これはカレルヴォ艦長だ、ベルナディット艦長が続く。

「カーナークシリンダーが動き始めました!」

もう間違い無い、メテオキッカーは大質量物を効率良く動かす為に、比較的ゆっくり長時間核反応

が続く様に作られている。

サイド1、1バンチはメテオキッカーに押されたのだ。

公社が運用する接近小天体用排除資材は、4行政府長筒で管理、保管されているが、北1バンチを

動かしたのは同地に有ったメテオキッカーと見て間違い無いだろう。

待て、メテオキッカーなら西行政府長筒のここにも有るではないか。

 

「太陽側鏡板内壁の公社管理区域は今どうなっている?!」

この問いにマドリーン連隊長が答えた。

「敵兵に占拠されていると見られます、市街地に向かったロボット3機に続き、同数機が続いて侵

入して来ましたが、それらは市街地へは向かわず、鏡板中腹の公社バックヤードに向かいました。

西軍統括司令部を襲った敵兵は、それとの合流を思わせる動きをしておりましたので、今頃は…」

「大尉が見た人形は何機だ?」

「合計で今の6機まで数えましたが、その後の混乱で詳しい侵入機数は判りません。が、私がここ

に来るまでの間に後続機は無かった様なので、恐らく中に居るのはそれで全部だと推察します。」

6機か… 後は筒外に居るかどうかだが、居るならこちらに差し向けて来る筈だ、裏を返せば中で

手一杯なので艦砲射で我々をこちらに釘付けにしているとも言える、ならばムサイは2隻と言う事

か?

どうする、筒内の大気は減り続け、敵は恐らくメテオキッカーを運び出すだろう。

敵が2隻なら、こちらから仕掛けるか…

「テージョとサスケハナより警報! 敵ロボットが外壁伝いにこちらに接近中。」

先を越されたか、中の仕事は済んだと言う事か。

「テージョとサスケハナはそこから人形をレーザーで狙撃しろ。」

既に照準操作に入っていたのだろう、命令とほぼ同時に複数本のレーザー条が立ち上がる。

「テージョ、1機撃破!」「サスケハナ1機撃墜!」

リバー級が載せているレーザー砲架は高機動目標向けでは無い、しかし十分な距離が取れれば見掛

け上目標の移動量は小さく、まさに光速のレーザーはこの距離では照準補正の必要も無い、ロック

オンすればそれは必中を意味する。

「残りは鏡翼の影に逃げられました。」

「何機居た?」

「5機は見えました、逃げたのは3機です。」

1機だけ残す筈が無い、恐らく死角に入っていたのだろう、残るは4機、もう飛び出して来る。

 

「艦長、緊急加速、影の外に出せ!」

艦首部を都市筒外緣から覗かせようと待機していたコルレーンは、そのまま船体を全て曝け出す。

その瞬間、敵機が衝突寸前で艦橋を掠め飛び去って行った。

恐らくは鏡翼に隠れる為、都市筒外壁に沿って螺旋を描く様に接近して来た敵機は、そのまま斜め

に都市筒から離れて行く、ほぼ同時に別の2機が離れた位置から同様にこちら側に飛び出して来た

のを後方を映すカメラが捕らえていた。

いや、直後にもう1機が飛び出してきたので、6機出て来たという私の推測は当たりだ。

4機はバラバラにそれぞれ都市筒の外側に向かって大きく旋回運動を掛ける、遠方に居るこちらの

2隻のレーザー攻撃を封じるつもりなのだろう。

彼らはどうする? 本艦を狙うか、それとも離れた2隻に向かうか、彼らはそのまま旋回を維持し

て戻って来た。

やはり本艦か、だろうな。

「対宙誘導弾、無誘導で未来位置に撒け、テージョ、サスケハナはレーザー砲戦継続、本艦もレー

ザーの照射準備。」

敵が本艦を狙うには、行き足を止め、こちらに引き返さなければならない、方向変換中の速度の低

下は運動性に劣るレーザー砲架の弱点を埋め、誘導弾の牽制射は敵の動きを制限するだろう。

敵機は個々大きく弧を描いて旋回する、衝突を躱して飛び去った奴と、遅れて飛び出して来た1機

に向けて放った誘導弾が旋回軌道の最遠点に達しようとする敵機に追い付いた、敵機が否応無く行

った回避運動は旋回軌道を歪に歪め、こちらへ戻るのを一瞬遅らせる。

 

「全艦外すなよ、食え!」

目標指定までは間に合わ無かったが、艦長達は理解してくれていた。

我がコルレーンはそのまま右旋回を掛けて都市筒から離れつつ、丁度都市筒の反対舷から戻って来

る1機を狙う、敵は本艦を狙っているので見掛け上の移動量が少なくなるのだ。

テージョは牽制射で乱した機体、サスケハナは同じく牽制を掛けた遅れて出て来た機体にレーザー

を浴びせる。

勝負は一瞬で付いた、しかし十分な照射時間までは取れない為、撃墜出来たのは1機のみ、残りは

相応の傷は負ったのであろう、都市筒太陽側方向に退避する、攻撃出来無かった最後の1機も、退

避機の後ろを追って退いた。

人形がやられたとなればムサイが撃って来る筈だ。

だが、肝心のムサイは既に都市筒の太陽側に再び戻ったのであろう、その姿を捕らえる事は出来無

かった。

「艦長、船を鏡板の影に戻してくれ、中の様子が知りたい。」

コルレーンは大回りに主鏡側に取って返す、センターハブ大門を正面に捕らえたが、そこにタンル

ウィンは居なかった。

サスケハナからの話しで、ホー艦長はマドリーン連隊長を降ろしつつ、基地と港湾管制に直接確認

に行ったとの事だった。

「艦を大門正面アプローチレーン上に乗せて艦首を門に指向。」

「入港するのですか?」

「いや、タンルウィンの赤外線ビームを拾いたいのだ、だが場合により入港も有り得る、テージョ

とサスケハナは現宙域で待機させろ、敵を見たら艦長判断で攻撃せよ。」

コルレーンがアプローチレーン上に侵入するより早く、タンルウィンは再び大門から顔を覗かせた

、手負いの船を良く動かす…

 

「司令、筒内気圧が0.6を切りました、順応無しで生身で出るのは既に危険な状態です。」

すなわち、住民はシェルターに閉じ込められたと言う事だ。

シェルターには人数分の宇宙服は備えられていない、出入り口も耐圧扉だがエアロック構造ではな

いのだ、所謂地下側となる外壁側にはメンテナンス用の扉があり、こちらはエアロックになってい

るが、一度に大人数での使用は出来無い、そして、宇宙服が無いので最早スペースバスへの移乗も

出来無い。

スペースバスとは自力の推進器を持たず、都市筒の遠心力を利用して近隣の都市筒とを結ぶ交通機

関で、コロニー住民の最も一般的な都市筒外への移動手段なのだが、シェルターへの緊急避難が逆

に仇となったのだ。

「太陽側の公社施設はやはり全て制圧された様です。現在、こちら側の公社管理棟から遠隔でマス

ターエアロックの閉鎖を試みていますが、システムに侵入された様で不調です。」

予想される結果ではある、しかし待て、余りにも手際が良すぎるではないか、もしかして公社職員

に内通者でも居たのか? もしそうなら…

「ホー、コロニー公社の職員を一人残らず退去させろ、いいか一人も残すな、そして港内の民間船

のどれかに乗せて直ぐに外に出せ! マドリーン連隊長は全部連れて行ったのか?」

「いえ、ランドルフ少佐は港湾作業員の概ね3割方は残しました。マドリーン連隊長は選抜隊員を

連れて今、宇宙用装備を調えている所です。我が隊のトラックで一気に太陽側へと進出し、同セン

ターハブ部管理施設群の奪還を目指しています。」

「ならば手勢は居るな、場長のブルックナーに指揮させて、公社管理棟の人員の避難を誘導しろ、

あくまで避難の形を取る事を忘れるな。」

侵入の手引き、開かずの扉の開放、核の持ち出し、これらは全てコロニー公社内に内通者が居れば

実行は安くなる、だが、中立の公社への対応には慎重さがいるのだ。

 

 

 

 

 

 

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