キヴォトスに来たおカシな先生   作:ナリカオル

17 / 35
第16話「逃げた先で」

 翌日。

 いつも通りショウマの朝餉を届けに教室へ向かうノノミ。

 しかし昨夜の出来事が今尚足を引っ張り、どうしても歩を前へと進める速度が落ちてしまっている。

 井上 ショウマの悲惨な生い立ちに衝撃を受け、その裏にショウマ・ストマックという顔が有る事を知り、そしてその家系(ルーツ)が人を喰らう……バケモノの血筋である事に恐れを為して。

 本当なら、最後まで話を聞かなければならなかった……だがそのような感情を抱いている事を、彼は目ざとく気が付いた。

 恐らく今までも同じ様な経験をしてきたのだろう……そしてその度にきっと蔑まれもして……。  

 

「(最低です……私……。)」

 

 ふと、前に彼が見せてくれた写真の中の風景が思い起こされる。

 彼が大切な仲間だと言ったあの人達……あの人達はきっと、受け入れられたのだろう。

 自分とは違って、臆する事無く。

 それが出来る程、自分は大人では無かった……人として、出来ていなかった。

 

「(……それでも。)」

 

 それでも、受け入れたいのだ。

 一度拒んでしまった分際で烏滸がましいかもしれないが、それでもあの人はもう、自分達にとって……。

 そんな思いを胸にノノミはショウマが寝泊まりしている教室の前に立ち、扉を叩く。

 返事が無い、まるでもぬけの殻のようだ。

 やはり、怒っているのだろうか。

 この時間帯に自分が来るのは、もはや恒例の事……誰が来たかなんて容易に察する事が出来、故に沈黙で以てその意思を示しているのだろうか。

 だとするならば、ノノミの胸中には辛く悲しい感情が大きく募る。

 だがそれでも、と……その言葉の下、今一度己に活を入れ、勇気を出して扉を開ける。

 扉を開けたその先で、何を言われようと、何をされようと……どんな事が起きようとも、必ず受け入れるのだと。

 

「おはようございま……す……?」

 

 しかしそこで彼女を待っていたのは、そんな決死の思いでさえ灰燼に帰す程の辛さと悲しさ、そして苦しみであった。

 

「ショウマさん……?」

 

 居ない。

 彼の姿が、見当たらない。

 もぬけの殻のようだと例えた想像が、現実のものとしてノノミの視界に映る。

 また、1人で散歩に行っているのであろうか?

 と、机の上に1枚の紙が置かれている事に気が付く……何か、短い文章が綴られているようだ。

 それを目にした途端、突然息苦しくなる程の動悸に見舞われる……それは、予感であった。

 己の心が無意識の内に予想していた、考え得る限りの中での最悪……それが突き付けられてしまうのではという予感。

 そしてそれを認めたくない己の意識との鬩ぎ合いが起こしている、葛藤の表れ。

 その末に耐えかね、ノノミは震えながら置かれている紙を手に取り、そして綴られている文章に目を通す。

 

「っ……!!」

 

 思わず、堪らず、手で口元を押さえてしまうノノミ。

 そこに書かれていたのは……。

 

 

 

 

 

 アビドスの皆へ

 ごめんなさい、やっぱり俺が居ると皆に迷惑を掛けちゃうから、ここを離れる事にしました。

 俺の事は気にしないで、皆は皆のやるべき事をやってください。

 短い間だったけど、皆と知り合えて、一緒に居られて、本当に良かったです。

 ありがとう皆、元気でね。

 ショウマより

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『先生、やっぱり戻りましょう……!?何もあんな風に皆さんとお別れする必要なんて……!?』

 

 アロナの声が、虚しく通りへ流れていく。

 語り掛けている相手であるショウマが、碌に言葉を返さないからだ。

 ノノミが教室に置かれた手紙を見つけた頃、2人はアビドスの街中を彷徨い歩いていた。

 

『それに、他に行く当てなんて有るんですか!?他に先生が行ける場所なんて、それこそD.U.ぐらいしか……!?』

「うん、だからまずはそのD.U.に行く……アロナちゃんの事、リンちゃんに預けなきゃだから。」

『えっ……!?』

 

 日の光が世界に差し込み始めて、普段ならまだ眠りに就いている時間帯に急に起こされた時は何事かと思った。

 そのまま訳を聞いて、学校を……少女達の下を離れると聞いた時は、一体何を言っているのかと思った。

 そしてそれは、今もまさにだ。

 

「リンちゃんにアロナちゃんを……これ(シッテムの箱)を渡して、それで俺は外を目指す。キヴォトスの外を……。」

『それじゃ……先生は……。』

 

 彼でしか扱えないこの端末を返却し、この世界を離れようとする……それが意味する所は、ただ1つ。

 

 

 

 

 

「俺は……先生になんてなれないよ。」

 

 

 

 

 

『……それがどういう意味か、分かって言ってるんですか?本気で言ってるんですか!?』

 

 昨夜の一幕は、アロナも端末の中から聞いていた。

 物語の中でしか見ないような、不幸の具現化とも言える彼の半生……それが1つの偽りも無い事は、彼が語ると同時に解除されたデータが証明した。

 

「俺なんかじゃ……皆の足手纏いだから……俺の勝手で……心配させて……不安に……させちゃう……から……。」

『せ、先生!?大丈夫ですか!?もしかして、どこか具合が……!?』

 

 だからアロナは後悔しているのだ……かつて困らせたいなどという幼稚な発想に従ってまで、彼に先生という役割を押し付けようとした事を。

 既に十二分にも課せられていた重荷を、背負わせたくなくてもそうせざるを得ない結局の次第に。

 

「大丈夫……大丈夫……だから……。」

 

 だが元々の不調に、今回の一件……ショウマの心身は限界だった。

 

「俺は……バケモノ……だか……ら……。」

 

 そう言って、バタリと倒れてしまうショウマ。

 力無く手足を投げ出し気絶している彼の苦しげな呼吸と表情が、アロナの胸の内を抉る。

 

『先生!!しっかりしてください!!先生!!』

 

 力が無いのは、自分も同じだ。

 誰かに声を掛け、願いを聞き届けて貰わなければ何も出来ない。

 そしてその聞き届けて貰える誰かの居ない今、彼女の声は一層虚しく辺りへと響くだけであった……。

 

 

 

 

 

「あー面白かった♪あの2人、ちょーっとからかっただけであんなにプリプリ怒っちゃって……くふふっ♪……って、あれ?この人って……?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「何よ……これ……。」

 

 私の親友……セリカちゃんが、手元の紙にくしゃりと跡を付ける。

 今朝、彼女と共に学校へ向かう中、唐突に便利屋68のメンバーの1人と出会したという事実が容易く打ち消されてしまう程に、学校へ着いてから目にしたそれは言葉を失ってしまうようなものでした。

 

「ふざけないでよ!!何が……!!」

 

 何が迷惑よ……!!と、声を殺すセリカちゃん。

 そんな彼女の眼差しは、怒りに震えているのと同時に悲しく潤んでもいました。

 正直に言えば、私はショウマさんとはそこまで親睦を深め合っていたとは言えません。

 それでも、セリカちゃんが抱いている思いは十分理解出来ます。

 そしてそれは、先輩方も……。

 

「ノノミちゃん……何があったか、話してくれる?」

 

 帰ったのは失敗だったかー……と、それまで嘆いた様子を見せていたホシノ先輩は、その思いを全て眼差しにのみ移し、机を挟んだ向かいに座るノノミ先輩へと語り掛ける。

 昨夜、彼から一体何を聞いたのか。

 それから何があって、今の状況に繋がる事となったのか。

 既に泣き腫らしていた瞳に再び涙を滲ませながら、ノノミ先輩は語りました。

 そして、私達も知る事となりました……思いきり目尻の下がった、あのふにゃりとした癪に障る笑顔。

 何の曇りも無い、何の陰りも知らないような……気に入らないけれど、眩しくて優しい笑顔だと。

 いつしか、記される事も無い日常の中で、親友がそう評していた、あの人の素顔を……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

─んしょ……うんしょっと!ふぅ……あと少しだけど、重たいなー全く……!

 

 

 

 

 

 ……揺れている。

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 心地良いような、でも時折感じる軽い衝撃がちょっと窮屈で。

 俺は今、どうなっちゃってるんだろう?

 

 

 

 

 

─よし……たっだいまー♪見て見て!すっごい落とし物あったから拾ってきちゃったー♪

─おかえりムツキ、そんなに嬉しそうに何を……って、えええええ!?て、手が!?手が出てるぅぅぅ!?

─いや本当に何拾ってきて……って、この人……!

 

 

 

 

 

 人の声が聞こえる。

 色んな人の声……聞き慣れない声。

 でも、聞き覚えは有る気がする。

 

 

 

 

 

─そう!いや何か道っ端で倒れてたもんだからさー、ついつい♪

─だからって連れてきてどうするの……まさかうちで面倒見るつもりじゃないよね?

─そこはアルちゃん次第でしょー。で、どうするアルちゃん?この人……やっちゃう?それとも看病してあげる?

─えっ!?わ、私が判断するの!?

─そりゃアルちゃんが社長なんだから、社員のやらかしには責任持って対応しなきゃでしょ。

─何て厚かましい……これが幼馴染みの間柄ってやつか。

 

 

 

 

 

 目は開けられなかった。

 身体中どこにも力が入らなくて……意識も段々薄れていって……。

 

 

 

 

 

─でもまぁ、実際この人はアビドスの連中と一緒に居た……転ばせ方によってはうちにとって大きなアドバンテージになるかもしれないね。

─も、もし始末するなら私が……アル様のお手を煩わせる事無く終わらせてみせます……!

─くふふっ♪アルちゃんどうする?ねえどうする?

─ちょ、そんないきなり……え~っとぉ……!

 

 

 

 

 

 俺……どうなっちゃうんだろう?

 帰りたいよ……皆の所に。

 幸果さんの……絆斗の……ラキアの……。

 

 

 

 

 

 アビドスの……皆の……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ん……。」

 

 目が覚めた。

 しかしそれ以上の感覚が暫く沸き上がってこなかった程に思考が朧気である。

 1つずつ、思い出してみる……目覚めるまでに、何があったかを。

 何故眠っていたのか、その訳とは。

 それは自身にとって苦々しい理由であり、故に明瞭でなかった思考でもすぐに思い出す事が出来、結果としてその明瞭でなかった思考もまたすぐにはっきりとしたものとなる。

 そうして自己を取り戻したショウマは、過程を経た先の結末……要は目覚めたこの場所が一体何処なのかを把握するべく、今度は目の前の景色へと注力する。

 

「ここは……。」

 

 何度目の、見慣れない場所という感想だろうか?

 質素で、事務的な、恐らく天井。

 これまでの人生で見てきた中で一番近い風景は、絆斗……彼が仕事場としていたオフィスの風景がそれに該当すると思った。

 そして意識が落ちる前、自身が最後に居たのはアビドスの街中であった……という事は、誰かが倒れていた自分をここまで運んでくれたという事だろうか?

 では、その誰かとは?

 そう思えば、真横に人の気配がする。

 そこに居るのが、件の人物であろうか……ショウマはゆっくりとそちらの方を向く。

 

「ひっ……!?」

「君、は……。」

 

 居たのは、全身を紫色のコーデで纏めた少女。

 向けられた視線に気付き、何故だか怯えた様子を見せるこの少女に、ショウマは見覚えがあった。

 そうだ、彼女は確か昨日の……。

 

「す、すみませんすみません!!まだ顔色も優れていないというのに無理矢理起こしてしまってすみません!!し、死んでお詫びします!!」

「え、ちょっ、待って……!?」

 

 と、目の前の少女についての記憶を引き出していると、突然少女が謝言と共に何度も頭を下げ始め、終いにはヘイローから銃器を取り出して自らの顎下に銃口を当てたのだ。

 馬鹿な、自殺でもするつもりか?

 訳の分からない少女の愚行を止めるべく、ショウマは寝ている体を起こそうとする。

 しかし現在の彼のコンディションは最低限目が覚めたというだけの状態であり、まだ碌に体を動かす事も出来ない。

 上手く力が入らず、何とか上体だけは起こせたものの、そこから先の手が出せず、彼女の暴走を止める事が出来ない。

 やがてその指が銃の引き金へと置かれ……。

 

「ハルカストップ!!だからそう簡単に死のうとしないの!!」

「あ、あああああアル様!?も、申し訳ありません!!」

 

 引かれる直前、第三者の介入によって少女の狂行は止められた。

 構えていた銃器を瞬時にヘイローへ戻し、目にも止まらぬ速さで正座する少女。

 そんな少女の視線の先に居たのも、また見覚えの有る顔触れ。

 

「君達は、昨日の……。」

「そうだよー、昨日振りだね。それで?どうしてあなたはあんな所で倒れてたの?向こうの子達に追い出されでもした?」

「ちょっとムツキ、いきなりそんな事……。」

 

 便利屋68のアル、ムツキ、カヨコ、ハルカの4人が、そこに居た。

 という事は、自分は彼女達の手によって拾われたという事だろうか?

 

「ううん、そうじゃなくて……俺の方から離れたっていうか……。」

「へえ……どうして?」

「それは……。」

 

 仮にも昨日アビドスへ進攻してきた相手だとして多少の警戒心は有るものの、自身の窮地を救ってくれた事には素直に感謝の意を持つ。

 なので問われたそれに端的ながらも正直に答えるが、その詳細はと突つかれてしまえば、経緯が経緯故に口ごもるしかない。

 

「まあ、その辺りの事情は私達の知った所じゃないし……それより、具合はどう?」

「あ、うん……まだちょっと体がダルい感じがするかな……。」

「じゃあ、まだ横になってた方が良いね。少なくとも1人で歩き回れるようになるまで……社長もそれで良い?」

「え?……え、ええ。ゆっくりすると良いわ。」

 

 しかしながら彼女達はあまり気にしないという名目の下、それ以上触れずに居てくれるらしい。

 少々ぶっきらぼうにも見えるが、それは確かな優しさ……対立して牙を向いてくる直前まで、共に食を囲んで楽しんでいた程であったとアビドスの少女達が言っていたように、依頼を挟まなければ彼女達も普通の感性を持った人間なのだろう。

 

「ありがとう……でも、大丈夫だから……。」

「えっ、ちょっと!?何処行くつもりよ!?」

 

 だからこそ、世話になる訳にはいかない。

 関わってしまえば、そんな彼女達の感性に傷を付けかねない。

 早急に、ショウマは己の体に鞭を打ってでもこの場を離れようとした。

 

「あれ……?」

「どうかした?」

 

 しかし立ち上がって数歩、何かを思い出したかのように立ち止まった彼は、途端に着ている上着の中を探り、そして次第に焦りを見せ始めた。

 

「無い……アロナちゃん……タブレットが……!」

 

 そう、これまで肌身離さず持ち歩いていたシッテムの箱が無かったのだ。

 だが街中で気を失うその時まで傍には有った筈……ならば考えられる可能性は概ね2つ。

 1つは、気を失ったあの場所に置き去りになっている可能性。

 そしてもう1つは……。

 

「タブレット?……ああ、これの事?」

「あ、そう!それ……!」

 

 自身を拾ってくれた少女達4人の内、誰かが持っている可能性。

 そしてその予想通りムツキがショウマの言葉を受け、あたかも思い出したといった様子でバッグの中からそれを取り出す。

 良かった、失くしたとなれば大変な事になっていたと安堵しながら、ショウマはムツキから端末を受け取ろうとして手を伸ばした。

 

「ん。」

「え……?」

 

 だがムツキは伸ばされたその手に端末を授けようとしなかった。

 疑問に思いながらもう一度手を伸ばすも、やはり彼女はその手をひらりと躱す。

 

「やだ、あげない。」

「何で……?」

 

 遂には直接拒否を言い渡され、困惑を隠せないショウマ。

 何故急に意地の悪い事をと一瞬訝しんだものの、よく考えればその理由は直ぐに分かるものだった。

 

「お願い、それを渡して欲しいんだ。凄く大事な物だから……。」

 

 そうだ、彼女達から見て自分はアビドスの者という認識なのだ……普通に考えて、相手の益に繋がるような行為を易々とする筈が無い。

 

「ふーん……そんなに大事な物なんだ。」

 

 悪戯のし甲斐が有るとでも言うように細めた目から向けられる、ムツキからの挑発的な態度。

 他の少女達からもその態度を咎めるような動きが見られず、彼女と同じ意思の下である事をショウマへ示している。

 つまり今、自分は取り引きを持ち掛けられているのだ……望む物が欲しければ、こちらが望む事を為せと。

 

「返して欲しい?」

 

 その問いに、黙って見つめ返す事で答えとしたショウマ。

 それを交渉成立の合図とも同時に捉えたムツキは、じゃあ……と、おもむろに彼の下へと近付いていく。

 そして先程まで彼が寝ていたソファを、ポンポンと優しく叩いたのだ。

 

「……え?」 

「だから寝る。寝て元気になったら返してあげる。」

 

 一体どんな要求をされるのだろうか?

 先に感じた彼女達の優しさは、この取り引きの為の演技でしかなかったのか?

 色々な考えが悪しき方へと向きながら巡っていたが、実の所はショウマの考え過ぎであって。

 演技でも無く、意地の悪い事をしてまで、彼女達は本当にショウマの身を案じていただけだったのだ。

 

「あなたに何があったか、何処に行こうとしてるのか、無理に聞くつもりは無いわ。ただ何処を目指しているにせよ、そんな体じゃ辿り着けるものも辿り着けないわよ……時には足を止めてゆっくりするのも、人生には必要よ?」

「でも……皆に迷惑を掛ける訳には……。」

 

 その気遣い自体は嬉しく思うものの、つまりはそれだけの時間彼女達の下で世話になるという事。

 もしそれで彼女達と縁が出来ようものなら、いずれ自分はそれを裏切る事になる……彼女達をも、傷付けかねない。

 するとそれまで事の成り行きを静かに見守っていたカヨコが口を開いて語り始める。

 

「……ねえ、あなた名前は?」

「え?ショウマだけど……。」

「ショウマさんね。ならショウマさん、言わせて貰うけど……人に迷惑を掛けたくないなら、それこそ今は大人しくしとくべきだよ。仮にこのまま外へ出て、そんな体じゃすぐにまた倒れて……その後ムツキみたいな物好きが都合良く現れるなんて有り得ると思う?現れたら現れたでその人に迷惑を掛ける事になるし、現れなかったらそのまま野垂れ死んで、それはそれで結局誰かの迷惑になる……それならここに居る4人にじっくり迷惑を掛けて、その後何事も無く居られた方が良いと思わない?」

 

 広く浅く、或いは深くなるやもしれぬ結果とするか。

 それとも確実に深くはなるが、同時に確実に狭くも済む結果とするか。

 どちらも望まぬ結果となるのであれば、どちらが己の望みに少しでも沿う形となるか……答えは明白であった。

 

「分かったなら大人しく横になって。言った側からあれだけど、余計な迷惑を掛けて良いって訳じゃないんだから……。」

「……ごめん。」

 

 言いくるめられたショウマは、カヨコの促し通りに再びソファへ横になる。

 こうしてまた数奇な運命の下、ショウマは便利屋68と関わりを持つ事になる。

 そう……キヴォトスという魔境を取り巻く運命は、彼を手放そうとするつもりなど無いのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。