「あと少しで着きますからね~……大丈夫ですか?もしかして、またお腹が空いてしまったとか……?」
「え?……あ、ううん大丈夫!むしろお腹いっぱいだよ!」
初めての出会いから少しして、アビドス高校への道を行くショウマとノノミ。
もうあと数分もしない内に学校へ到着するという事で、ふとショウマの様子を窺ってみれば、彼はしきりに周囲を見回したり、お腹をさすっていたりと落ち着かない様子を見せている。
やはりお菓子だけでは満足いかないかとノノミは心配になるも、ショウマはそれを否定する。
「そういえば、この街ってどうしてこんなに沢山の砂が有るの?何かに使ったりするものなの?」
彼が今考えている事、それはこのアビドスという街の景色について。
道中どこを見ても目に付く、黄土色の砂山の数々……何かに使うにしては量が多い気がするし、山の配置も乱雑というか……言葉を選ばずに言えば、街全体が砂に埋もれているかのようなこの景色は、ショウマからすれば奇妙に映るのだ。
「いえ、これは……災害と言えば良いですかね。」
「災害……?」
「この街……ひいてはアビドスの自治区は、アビドス砂漠という砂漠地帯の真横に在りまして、その砂漠からの風に乗って砂が運ばれてきてしまうんです。昔はここまで積もってしまう事は無かったようなのですが、年々砂漠地帯で起こる砂嵐が酷くなっていっているようでして……。」
「砂漠なんて有るんだ……でも日本には砂漠なんて無い筈だし、やっぱりここは……。」
その選ばずに言った言葉が事実であった事にショウマが見せた反応。
それは驚きではなく……いや、多少は驚いているのだろうが、それ以上に何か別の事柄に目を向けているような様子であって。
一体何を考え、何を思っているのか……なぎはましに続く、にほんという
「あ……えっと、着きました。ここが私達の学校です。」
と、ノノミがそれまでの会話の流れを切り、新たな話題の種を示す……どうやら、目的地としていた学校まで到着したようだ。
見れば、そこには学校としては普遍的とも言える造りの建造物が建っている。
しかし、やはりというか、校庭の隅等にはこれまでにも見かけた砂の山が、そこかしこに点在している。
ショウマからすればそれだけでも現実離れした印象を受けるのだが、学校の中へ入ってみれば、よりその感覚を強調する要素が見えてくる。
「何だか静かだね?人も見かけないし……皆どこか別の場所で授業受けてるの?」
そう、人が居る気配が全く無いのだ。
どこか別の場所で授業を、なんて言ってみたが、校内の様子を見ていると生活感というか……そこを人が使っているような形跡があまり見られない。
故に自身とノノミの、砂を踏みしめながら廊下を歩く音しか耳に聞こえてこず、そういった意味でも廃墟の中を案内されているようで、段々と不気味な感覚さえ湧き上がってくる。
そんな不安が表に出てしまっていたのだろうか、ノノミは「あ、いえ……。」とばつが悪そうにしながらも、決して気前良く話せる事では無いその事情を説明してくれた。
「……実は今この学校に在籍しているのは、私を含めて4人だけなんです。」
「4人だけ⁉どうして……⁉」
その理由については「色々と事情が有りまして……。」とはぐらかされてしまったが、それでもこちらが抱いた疑問に答えてくれた事が、先にお菓子を恵んでくれた事実と合わさり、ショウマの中で彼女に対する好感度が上がる。
まだ知り合って本当に間も無いが、彼女と知り合えた事が、そしてこのアビドスなる場所で最初に知り合えたのが彼女で良かったと、そう思える程に。
「ここです、ここに皆が居ます。」
そんな彼女の、たった3人しか居ない学友……どんな子達なのか、興味が湧いてくる。
やがて辿り着いた教室の一角……中から数人の話し声が聞こえてくるその教室を前にして、先程まで抱いていた不安の感情は、ショウマの中から既に消え去っていた。
「ただいまです~。」
「あ、お帰りノノミ先輩。買い物お疲れ様……って……。」
「お邪魔しまーす……。」
「えっ⁉何⁉誰その人⁉」
「あっ……ごめんね驚かせちゃって。俺はショウマ、
「そうなんです。色々と事情が有るお方のようでして、それで行き倒れていた所をたまたまばったり……あ、なのですみません、買ってきたお菓子は全部この人にあげちゃいました。」
「い、行き倒れですか……⁉」
「え、ちょっと待って?今お菓子全部あげたって言った⁉まさか1人で全部食べたっていうの⁉だって結構な量なかったそのお菓子⁉」
「ご、ごめん!俺お菓子大好きだから……!」
そうしていざ教室の中へ入ってみれば、そこには2人の少女の姿が。
1人は黒の長髪をツインテールに纏めている少女……驚いたのは、頭部に獣耳が生えている事だ。
お菓子を食べ尽くしてしまった事の弁明に対し、「そういう問題じゃない気がする!」とツッコミを入れる彼女の仕草に合わせて動くその獣耳は所謂コスプレ等の類いでは無く、本当に頭から生えて動いているものなのだと、否応にも見る者を納得させる。
そしてもう1人……同じく黒の髪をボブカットにし、赤い眼鏡がトレードマークとなっている少女は、もう1つ目に付く特徴として、長く三角形に尖った耳をしていた。
それもまた、こちらを窺うように見つめる視線……そこに込められている内心を端的に表しているかのように微かな動きを見せており、その滑らかな挙動や見た目から分かる質感からして、やはり非現実的ながらもそれが確かに現実のものなのだと主張をしている。
「とりあえず、紹介しちゃいますね?こっちに居る子が
「え?えっと……ど、どうも?」
「初めまして、奥空 アヤネです。ショウマさん、でしたよね?よろしくお願いします。」
軽くではあるが、セリカとアヤネ……2人が自己紹介を終えた所で、ふと教室に入る前のノノミの言葉がショウマの中で思い起こされる。
確か彼女は自身を含めて4人の生徒が居ると言っていたが、今ここに居るのは3人……1人足りないのだ。
「あとはホシノ先輩が居る筈なのですが……ホシノ先輩はどちらに?」
「先輩なら隣の部屋で寝てるよ?起こしてきた方が良い?」
「そうですね。お昼寝のお邪魔をしてしまう事にはなりますが、折角のお客さんですから……。」
ノノミもそれが気になったらしく、残り1人の行方を問うてみると、どうやらその1人は隣の部屋に居る様子。
昼寝の最中というのは大変忍びないが、事が事なだけにショウマとしては藁にも縋りたい思い……申し訳無いが起きて貰って事情を聞いて貰おうとした、その時であった。
「っ⁉な、何⁉」
突如として聞こえてきた、強烈な物音。
思わず体をびくつかせて耳を塞いでしまう程のそれであったが、少女達はそのような様子を見せる事無く、皆窓の外を注視している。
恐らく物音の正体に当たりが付いているのだろう……未だその物音が響く中、どこか慣れた様子さえ見せている少女達に続くように、ショウマも窓の外を見てみれば……。
「ヒャーッハッハッハッハ!!」
そこには
ショウマの名前に関して、本来は「井上