キヴォトスに来たおカシな先生   作:ナリカオル

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第2話「はじめての戦い」

 こんにちは!俺、ショウマ!

 どこにでも居る普通の……とはちょっと言えないけど、色んなお仕事をしながら日々を過ごしています!

 そんな風に毎日を送っているからなのかは分からないけど、ある日突然アビドスっていう全く知らない場所に来ちゃって……。

 ノノミちゃんを初めとしたアビドス高校の皆と出会えて、何とかそれ以上迷う心配は無くなったんだけど……このアビドスっていう場所、想像以上におかしな所みたいで……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ヒャーッハッハッハッハ!!」

「攻撃!!攻撃だ!!奴等は既に弾薬の補給を絶たれている!!襲撃せよ!!学校を占領するのだ!!」

「な、何あの子達……⁉」

 

 突如として聞こえてきた、耳をつんざく程の大きな物音。

 近くの窓から外の様子を伺ってみれば、学校の校舎付近に物々しい様子の集団が押し寄せていた。

 制服を着ている事から察するに、他校の生徒であろうか……しかしその集団は皆銃器を片手にバイクのヘルメットを共通の装備としており、集団の発する士気も合わせて異様な雰囲気を晒し出している。

 

「あれはカタカタヘルメット団です!この辺りでいつも騒ぎを起こしている不良の生徒さん達で、特に最近は私達にちょっかいをかけるようになっていまして……!」

 

 そう、かの者等はカタカタヘルメット団という不良生徒の集まり。

 この学校を支配下に置くなどと宣い、こうしてたびたび襲撃を仕掛けてくるのだが……当然そんな事を自分達(アビドス生)が許す訳が無い。

 

「ホシノ先輩を呼んできたよ!ホシノ先輩!ヘルメット団がまた襲ってきたよ!寝惚けてないで早く起きて!」

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー……。」

 

 と、いつの間にか隣の部屋に行っていたセリカが人を連れて戻ってきた。

 彼女が連れてきたのは、桃色の髪を長く伸ばし、青と黄色のオッドアイが特徴的な小柄の少女……彼女の名は小鳥遊(たかなし) ホシノ、このアビドス高等学校に於ける4人の生徒、その最後の1人だ。

 

「っとぉ……何だか見慣れない人が居るような……もしかしてヘルメット団?もうここまで来たの?」

「いや違うから‼この人は……その、よく分からないというか……と、とにかく装備持って!!学校を守らないと!!」

 

 そんなホシノはこの状況に於いてもかなりのマイペース振りを発揮しており、その眠たげな様子からは一見して、あまり真剣に事に当たろうとする気概が感じられないが……これでもいざその時になったらしっかりやってくれるものなのだ。

 

「ふぁあ……むにゃ……ヘルメット団めー、おちおち昼寝も出来ないじゃないかー。」

「えっ、待って⁉その手に持ってるのって……⁉」

 

 そして少女達がヘルメット団に対抗する為にそれぞれ準備を進めるていると、突然ショウマが上擦った声を上げた。

 どこからか、そしていつの間にか少女達が手に取った、様々な銃器の類を指差しながら。

 

「え?……私達の銃だけど?」

「銃⁉まさか本物⁉」

「当たり前でしょ⁉じゃなきゃ学校守れないんだし!」

 

 そう……武装した集団を相手にするのに、こちらも武装をする。

 銃を手に取るという、そんな()()()()()()()()に対し、ショウマは何故かそれを信じられないと言わんばかりの目で見てくるのだ。

 

「時間が有りません!いつも通り私がオペレーターを担当します!ショウマさんは私と一緒にここに居てください!」

「では、皆準備が終わった所で……出撃です☆」

 

 一体何をそんなに驚く事が有るのか……ショウマの事が気にはなるが、今は火急の事態。

 ひとまずはそちらを優先すべきとして、アヤネを除いた少女達は教室を後にする。

 

「本物の銃って、まさかそんな……⁉」

 

 残されたショウマは未だに困惑した様子を見せている。

 その彼が溢した台詞に違和感を覚えたアヤネであったが、再度鳴り響いた銃声を耳にして、意識をそちらへと向ける。

 先程のヘルメット団のものとは別に、幾つもの銃種による射撃音……少女達が戦闘を開始したのだ。

 

「それでは手始めに……行きますよー☆」

 

 先陣を切っていたのはノノミ。

 彼女はヘルメット団から放たれる鉛弾の雨を前に何ら臆する事無くその手に持つ……というより何故持てているのかが分からないミニガン、リトルマシンガンⅤから弾丸の嵐を返し撃つ。

 当たれば当然ひとたまりも無いそれから逃れるべく、ヘルメット団は散り散りになって分かれるも……。

 

「お、ノノミちゃんやる気満々だね~?こりゃおじさんは高みの見物してて良い感じかな~?」

 

 ホシノが自前のショットガン、Eye of Horusと、その小さな体躯には似つかわしくない大盾を構え、軽薄な台詞とは裏腹に誰よりもヘルメット団へ肉薄し、そして撃破していく。

 

「ちょっとサボろうとしないでよホシノ先輩!ただでさえ敵の数が多いんだから!」

 

 そんな前線に立つノノミとホシノの2人をアシストするのがセリカの専らの役目……彼女はシンシアリティというスコープを用いた狙撃に特化したアサルトライフルで以て、後方からヘルメット団を1人ずつ確実に射貫いていく……彼女達の定石となる戦術であった。

 

「補給物資を投下します!皆さん随時弾薬の補給を!」

 

 こうした戦術を取れるのも、偏にアヤネのサポートがあってこそ。

 手元の端末へ休む事無く指を這わせ、彼女の操るドローンが少女達の元へ必要な物資を送り届ける。

 

「本当に戦ってる……あんな普通の女の子達が……⁉」

「ショウマさん……?」

 

 眼下で繰り広げられる戦闘……それをショウマは、またも信じられぬといった様子で凝視している。

 そんな彼の姿を見ていると、先程抱いた違和感がさらに掻き立てられると同時に、アヤネの中ではうっすらとその正体が何なのか、言葉に出来そうな予感が湧いてきていた。

 何か1つ2つ問い質せばはっきりと分かる……そんな風に気を取られていたからか、それが隙となって戦場に影響を与えてしまう。

 

「ッ⁉ドローンが……‼」

 

 耳に装着しているインカムから、一瞬の強烈な破壊音。

 そして同時に手に持つタブレットの画面に写る、砂嵐の映像。

 その映像がドローンに搭載されているカメラからのものである事と、聞こえてきた破壊音とを合わせれば、今の一瞬で何が起こったのか、アヤネには容易に察する事が出来た。

 

「あちゃー、あんな離れた所に落ちちゃったよ。」

「おまけに障害物も無い開けた場所……取りに行ったら確実にやられる……!」

「ですが私達の手持ちも、もう殆ど残っていませんし……。」

 

 そう、ショウマの事に気を取られていたが故に操作が疎かになってしまい、その隙をヘルメット団に突かれてドローンを撃ち落とされてしまったのだ。

 その為少女達の下へ送られる筈だった補給物資が、校庭の端の方へと飛ばされてしまう。

 

「どうしよう……残りのドローンは整備中だし、どうにかヘルメット団の注意を引く方法は……⁉」

 

 非常にまずい状況となってしまった……ノノミが言っていたようにショウマもショウマで色々な事情が有りそうだが、アビドスもアビドスで色々と複雑な事情を抱えている。

 それによって日常戦時問わず様々な事に余裕というものが無く、特に戦場と物資を繋ぐ補給線に関してはこのドローン配送1つしか無い。

 それが絶たれたとなれば、少女達に待っているのは過酷な消耗戦……敗北という結果へ繋がる一本道だ。

 何とかしなければならない、でもその方法とは?

 下手に出向いても返り討ちに遭うだけ……一体どうすればと、己の失態から始まってしまうやも知れぬ負の連鎖を前にアヤネが焦燥としていた時だった。

 

「俺に……出来る事は……。」

「え……?」

 

 ふと、横でショウマが何かを呟いた。

 見れば、彼は眼下の戦況をつぶさに確認している。

 そしてその強い眼差しの中には、同じく強い行動の気概が感じ取れた。

 

「っ……!」

「えっ⁉ショウマさん、どちらへ⁉」

 

 それと同時に1人駆け出し、部屋を出ていってしまうショウマ。

 一体何を考えているのか……いや、一体何をする気なのか。

 まさか……と、アヤネは予想したその事態が起きない事を祈るしかなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ヤバッ、弾切れた……‼」

「いよいよ万事休すって感じだねー……仕方無い、ここはこの老体に鞭を打ってでも……。」

「ですが、いくらホシノ先輩でもこの攻勢の中というのは……!」

 

 果敢に応戦していたセリカの弾倉(マガジン)が、遂に空となった。

 ノノミも既に手持ちを撃ち尽くしてしまっており、残るはホシノのショットガンのみ。

 定石であれば今取るべき行動は、補給物資の下まで1人ずつ赴き、その間の援護(カバー)を別の者が行う事。

 この状況では最初の援護担当者は弾丸の余っているホシノが該当するが、彼女は基本的に相手に接近しての近距離射撃を戦術の基本としており、弾丸もそれに合わせたバックショット弾を多く選択(チョイス)してしまっている。

 長距離射撃に適しているスラッグ弾も持っていない事はないのだが持ち合わせが少なく、補給が終わるまで援護しきれるかどうか正直分からない。

 となれば道は1つ……校庭の端に落ちた物資の下まで全員で赴き、ノノミとセリカが同時に補給を行う。

 そしてその間の盾役をホシノが担い、2人の補給が終わったら交代する……が、少女達が窮地に陥っているのは向こう(ヘルメット団)も理解しており、故に先程から鉄色の嵐が止まらない。

 この中を他2人の補給が終わるまで耐えられるものか……体に鞭打つどころか骨まで絶たれかねないとして、今にも駆って出ようとするホシノを引き止めようとするノノミとセリカ。

 だがその役目は、別の人物によって果たされる事となる。

 

「おーい!!こっちだ!!」

「ん?何だあいつは?」

「もう1人居たのか⁉撃て!!絶対に逃がすな!!」

 

 不意に聞こえる、誰かの大声。

 その声に聞き覚えが有るとして、少女達が身を寄せて隠れている遮蔽物から顔を覗かせてみると……。

 

「し、ショウマさん⁉」

「何してんのあの人⁉馬鹿‼危ないわよ‼」

 

 驚くべき事に、ショウマがヘルメット団の事を牽制していたのだ。

 しかもあの動き……ヘルメット団の狙いを自分達から逸らすようなあの立ち回りは、囮としての役割を買って出ているという事になる。

 

『やっぱり……ショウマさん、なんて無茶を……聞こえますか皆さん‼今の内に補給物資の下へ‼』

「アヤネちゃん何で……⁉」

 

 つまりは、同じ部屋に居た筈のアヤネがそれを促した可能性が有るという事。

 見ず知らずの人物にあんな危険な真似をさせるなど……彼女が一体何を考えているのか分からず、セリカは聞こえてきた通信の向こう側に居る存在に大きな疑念を抱く。

 

「セリカちゃん、話は後でにしよう。今は……。」

 

 しかしどのような思惑であれ、こちらに集中していた火線が次第にばらけていく。

 今がチャンスだ……少女達はこの機を逃さず、補給物資の下まで一気に走り出した。

 

『ショウマさん、聞こえますか⁉絶対に無理をしないでください!!既に囮としての役割は十分果たされていますので!!』

「分かってる!」

 

 一方ショウマの方はというと、文字通り必死の立ち回りを演じていた。

 校内放送を利用してアヤネの声が聞こえてくるも、それに優しく返事を返す余裕は無い。

 少しでも足を止めれば、今も髪を薙いだ鉛玉が全身を襲うのだ……死に物狂いで走り回るしかない。

 

「くっ……⁉」

 

 しかしそれも、足元を狙って放たれた弾丸によって叶わなくなる。

 体に当たった訳では無いが、意識がそちらの方に向いてしまったせいで足がもつれてしまい、派手に転んでしまう。

 

「よーし、コケたぞ‼」

「撃て撃て‼これでまずは1人だ‼」

「ッ……‼」

 

 当然、目を付けられる。

 そして何の躊躇いも無く向けられる銃口の数々にどうする事も出来ず、ショウマはこれから襲い来るであろう危機に、無意味な抵抗ながらもせめてと身を固くして目を閉じる。

 

「……?」

 

 しかし予想していたその危機が、いつまで経っても襲って来ない。

 危機を告げる音はした……だがそれによって生じる筈の痛みを感じない。

 恐る恐る目を開けて己を見てみるショウマ……その体に、傷は1つも付いていない。

 

「……うへ、大丈夫?」

 

 と、頭上から掛けられる声。

 見上げれば、揺れる桃色の髪と、鎮座する無骨な大盾。

 そう、ホシノがその身を挺してショウマを守ったのだ。

 

「待たせたわね、ヘルメット団‼よくもまぁ目の前で好き勝手してくれたじゃない‼」

「ここからは、私達の反撃ですよー!」

 

 さらに横からセリカとノノミが。

 どうやら、己の決死の行動が実を結んだようだ。

 

「ショウマさん、もう大丈夫です!後は皆さんに任せましょう!」

 

 やがてヘルメット団へ邁進していく少女達と入れ替りで、アヤネがショウマの下へとやって来る。

 そのまま彼女に手を引かれ、校舎の中へ避難するショウマ。

 

「……うん。」

 

 そんな彼の視線は、少女達の戦いそのものに哀い色で以て向けられていた……。

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