人々から頼られながらも、その実、誰からも理解されることのない夢占い師の男。その男の前に、身綺麗な女が現れた。

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修正稿


第1話

占い師は孤独である。

夢占師はいっそう孤独である。

人は不幸が訪れるたび彼らのもとを訪れたが、ある程度感心するか飛び切り驚いた後、数時間ほど話した縁を忘れたように弾んだ足取りで去っていく。

 

ここに夢占師の男がいる。

町の中心からやや離れた場所に居を構え、またそこで占いの商売をしていた。哲学者の謳う理屈は難しく、稲が伸びるよりも早く言が変わる為、ものを知る手段として男は一層頼られていた。ただ、男は背筋が曲がっており、人と話すときに必ずどもる癖がある為、休日に街中で話しかけても曖昧な、面倒ごとをきらった笑顔しかもらえなかった。男は世俗に詳しく成れずにいた。

 

秋の風が乾いたある日、男の知らない女が占いを頼みに来た。まつ毛が長く、手の綺麗な、瑞々しい女だった。男はその容姿を見て、キセルを吸い、襟を直し、いかにも真面目そうな顔を無理に作って話を促した。女は椅子を引き、少し笑顔を作った。そして、腰を下ろした後で都合の合わない恋人の、夢の話を始めた。男は鼻息を荒くして、キセルを机に押し付け、女が少し話に間を開けるとすぐに、いやに明るい顔で解決策を語り始めた。女は黙った。女は意表を突かれ、話そうとした言葉を思い出せずにいた。いやこれは得心が言ったのだろう。男はそう考え、言葉を詰まることなくつづけた。

 

男が少し話し、女の顔を見たのちもう一度話すということを続けていると差し込む日はすでになく、女の顔には分かりやすい陰りがあった。およそ退屈していた。男は、女の顔つきに気を悪くし、たいそうな言い回しで話を締め、結論は近くの紙に木炭で書いて渡し、その女を返した。灯台ばかりが照っていた。

 

この出来事から数日、男の話は短くなり、粥を食うより早くものを知れるとまた評判がよくなった。男の陰険な態度は日に増して強くなったが、それを休日にやっかむこともなくなった。厚いローブのせいで誰も気づかないが、男は随分と細くなった。日が経ち、買い足さなくなったライターの代わりに暖炉の火の方へ向かうと、平らになった木炭が目に入り、男は急にあの女のことを思い出した。足が持ち上がり、そのまま風呂場に向かった。湯につかった。久しぶりに湯につかった。上がるとその厚いローブに水を吸わせ、ガラスペンで手紙を書いた。思いのままに書いたが、そのほとんどが悪態であることはこの男にも分かった。ただ楽しげだった。

 

ただ、男は腕を振って休日の街に繰り出した。男は役場のまでの道のりを近くの細い男に聞き、聞き、聞き。何度か繰り返した後男はその役場に着いた。中へ入ると人が一斉に男を見たが、男は気づかないまま受付の、年老いた女のもとへ走った。あれこれといらぬ話が混じり、また老婆が何度も聞きなおし。長くはなったが男は手紙の手続きを終えた。心は休まらなかった為、男は速足で、走るように帰った。

 

老婆は興味から、評判の男の手紙を開いた。2,3行読み、1行読み、宛名をもう一度見て、やめた。奥の方で手紙を回し、役場を締めるころ。誰かが、この手紙は男のものではなかったといい、誰もがそれに頷いた。そういうことになった。あの手の綺麗な女に宛てた、位の高い女に宛てた悪態の手紙は捨てられた。男は疎まれる節もあったが、十分に守られていた。男の占いは評判が良かった。

 

男は街中の足音が確かに聞こえる時間になると、店を開けた。男の手足はまだ細かったが、また男の話は長くなり、時折べらぼうなことを言うようにもなった。ただ人はそれをありがたがり、その噂を流し、また男は孤独になった。


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