月の神馬   作:人生あかんて!!

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この物語はフィクションです。


1.誕生〜その牧場は出産シーズンに入ると異常気象(現象)みたいなのがよく起こるらしい〜

 

 

シンザンがお亡くなりになりました

 

 神馬/『神』が『(たた)』えた馬/最強の戦士/五冠馬/ナタの切れ味など数々の二つ名で呼ばれ、『初代三冠馬』“セントライト”以来2頭目、戦後初の『三冠馬』となった“シンザン”が1996年7月13日の深夜に亡くなったと報じられ、日本競馬界───いや、日本中に震撼が走った。

 しかし、“シンザン”が亡くなった直後、北海道静内のとある牧場にて、1頭のサラブレッドが生まれ落ちようとしていた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、ある牧場の上空では、無数の流星が()()()観測されていた·····まるでこれから生まれ出る一つの生命(いのち)を祝福するかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

【とあるオーナーブリーダーの男】

 

 身重(みおも)の繁殖牝馬である彼女が、産気づいてから数時間過ぎ、気が付いたら日付が変わっていた。私、妻、娘、牧場長をはじめとした牧場スタッフのみんなに見守れながら、彼女は─“クレールルリアン”は必死に力んでいる。

 

 

 クレールルリアンは、私がある牧場を訪れた時、当時当歳だった彼女に偶然出会って一目惚れし、さらに血統にロマンを感じて、なんとか手に入れようとその牧場を管理する牧場長に土下座する勢いで頼み込んで、譲って貰った。

 

 いや〜、あの牧場と仲良くしてて良かったと、これほど思ったことはない。

 案の定、彼女は私が見込んだ通り走り、牝馬クラシック3冠···とはならなかったが、2冠をとってくれた。

 その年最後のレースは惜しくも2着と敗れてしまったが、来年に向けて期待が持てる走りだった。しかし、レース後に屈腱炎を発症し、治すのに時間が掛かるということで泣く泣く引退をさせた。

 しかし、彼女の血統をより多く残す為に早めに繁殖にあげれたのは、それはそれで良かったのかもしれない───

 

 

 

 

 

「オーナー!!」

 

 

 

 

 

 ──おっと!いけない。つい過去に思いを馳せてしまった····何にせよ、今は彼女が無事出産出来るように見守らなければ。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!!」

「おっ!出るぞ、出るぞ!!」

 

 彼女の体から、徐々にではあるが仔馬の脚が見えてきた。

「あと少し、頑張れ、頑張って!!」

「直ちに、タオルやお湯の準備をッ!!」

「は、はいッ!」

 お産が進むにつれ牧場スタッフ達が慌ただしくなる。

 

 

 

──そして、ついに!!──

 

 

 

「生まれた、生まれたぞッ!」

「くーちゃん、頑張ったね!」

「あなた、よかったわね!」

「うん、よかった···よかったッ!!」

 

クレールルリアンが無事出産し、私達─いや、牧場全体から歓声があがり、なかには涙する者もいた。ふと外を見ると、まるでこの仔馬が産まれた事を祝福するかの如く、空にはたくさんの流星が流れていた。

 

 

 

 

 

 

「···うん?」

「···なんだ、この毛色?」

 

 彼女が産んだ仔馬は、今までに見たことがないような毛色をしていた。

「栗毛···じゃない、尾花栗毛···でもない」

 

 その馬体は、クリームの様な色をしており、私やこの業界(馬産)が長い牧場スタッフ達も見たことがない色をしており、皆困惑していた。

 

「──月毛···ですね」

「···月毛?」

 

 困惑する私に、秘書である“嶋国 結恵(しまくにゆえ)”がいつの間にか持ってきていた「毛色名鑑」を見ながら呟いた。

 

 

──しかし──

 

 

「···あれ?」

「仔馬が動かないぞ!」

 

 なんと、産まれた仔馬はなかなか動き出さず、私達は焦っていた。···が、それ以上にこれが初めての出産だったクレールルリアンも、我が子が動かないで戸惑っているのかオロオロしている。

 このままこの仔は死んでしまうのかと、その場にいた全員が最悪の事態を想像し、顔を青くしていた。

 

 

「···ぐぅzzz

「···うん?」

「···どうした?」

「いえ、何か聞こえたような」

 

 ふと仔馬の近くにいた牧場スタッフが何か聞こえたのか、仔馬に近づき耳を澄ました。すると──

 

 

「···ぐぅ〜zzz

 

「···は?」

「···へ?」

 

 なんとこの仔馬、産まれたばかりだというのにイビキを嗅いて寝ていたのだ。私達は揃ってガクリときたが、生きていると知って皆一斉にその場でへたり込んでしまった。

 

 そんな私達の様子を見て安心したのか、クレールルリアンは我が子に近寄りペロペロと毛繕いを始めた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──それから何分、いや何時間たったのだろう···母馬が舐めたり揺すったりしているが、一向に起きる気配がない。

 

「お~い、寝坊助〜起きろ〜!」

「ふぁ〜〜、寝む〜」

「···ウトウト」

 

 長時間気を張っていたせいか、スタッフ達に疲労が滲み出てきて、中には欠伸がでている人もいる。我が娘にいたっては、船を漕いでいる。そう言う私も凄く眠いが。

 

 ──さらにどれぐらい時間が経っだろう、東の空が白んできた時、起きない我が仔にしびれを切らしたのかクレールルリアンが『ヒンッ!!』と大きく嘶くと、その声に反応したのか“ピクッ!”と仔馬が身震いをした。

 

「···おっ!」

「起きたか!」

「おい、起きろ深雪!」

「···うぁ〜な〜に〜お父さ〜ん」

「仔馬が立ち上がるぞ!!」

「えっ!ホント!!」

 

 

 

 

空が白み始めて馬房に暁光が差し込んだ瞬間、まるでなにかに後押しされるようにその仔馬は、ゆっくりと···しかししっかりと大地を踏み締め立ち上がった

 

 

 

「···わっ!!」

「まあ!!」

「スゲー!!」

「おー!!」

 

 

 

 

しかし、その立ち姿を見て、その場にいた者全員が感嘆の声を思わずあげた

 

 

 

『····』

 

 

 

後に「月毛」と呼ばれる毛色が暁の光に照らされキラキラと金色に輝いていて

 

 

 

『···ヒン!

 

 

 

そして小さく、しかし力強く嘶くその美しい姿は

 

 

 

「ッ!···あなた!」

「···ああ!」

 

 

 

 

 

 

その場にいた私達は、生涯忘れる事は無いだろう。そして、この仔馬が将来日本を···いや、世界を獲るだろうと、この時私と妻は確信した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─なお、周囲に人が大勢いたせいか、それとも()()()()()に驚いたのか定かではないが、その仔馬は盛大にパニックになり、それを見た母馬と周囲の人間はオロオロとなったそうで─

 

 

 

 




登場人物(馬)

○主人公(牡·1歳※当時表記)
·本作の主人公(転生者)
·生まれ後すぐに爆睡をかまして周囲を心配させた
·毛色は月毛で、額の流星は綺麗な三日月型
·なんか、凄い馬になるらしい
·血統がなんかすごい 

○クレールルリアン(牝·5歳※当時表記)
·1991年生まれ※本来は生まれていない
·主人公の母にして、しがない牝馬2冠馬です(!?)
·牧場の人達からは“くーちゃん”と呼ばれています
·とても人懐っこいです
·主人公がなかなか立ち上がらなかったので、凄く心配していました

○私(年齢秘密)∶男性
·主人公が産まれた牧場のオーナーブリーダーです
·縁あって、20代からオーナーブリーダーやっています
·皆さんからは「オーナー」、妻からは「あなた」、娘達からは「パパ」や「お父さん」と呼ばれています
·偶に突拍子もない事を考え実行します
·彼には“凄く凄い”秘密が···

○妻(年齢秘密)∶女性
·“私さん”の妻です。(元秘書)
·秘書として“私さん”を支えてるうちに、お互いに惹かれ合って結婚しました
·ちなみに“私さん”より1つ年上です

○深雪(17)∶女性
·“私さん”の娘です。(三姉妹の末っ子ちゃん)
·お姉さん達は海外で活躍中です

嶋国 結恵(しまくにゆえ)(20歳台らしい)∶女性
·現在の秘書さんです。(2代目)
·出産シーズンになると、何故か「毛色名鑑」という本を持ち歩いている姿を目にします

○牧場スタッフの皆さん
·長年牧場を支えてくれてる縁の下の力持ち
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