ー第二文明圏外グラ・バルカス帝国西部経済都市ランクー
グラ・バルカス帝国西部の経済都市であるランクでは厳重な警戒態勢が敷かれていた。理由は言わずもがな、本土にほど近いロレア島が陥落したことで、敵部隊の本土上陸が現実味を帯びてきたからだ。ロレア島陥落から既に3カ月程が経過している。
ここランクは武器弾薬を生産する西部最大の工業地帯だ。ここが落ちれば陸海空軍の兵器生産が滞る。故に、対空砲やレーダーが急ピッチで復旧を進めていた。
しかし、毎日の様に襲来する日本国の爆撃によって武器弾薬生産は低下の一途を辿り、爆撃を阻止する戦闘機や高射砲はすべて破壊され、工業地帯の様相を呈していなかった。
故に、海上や空はもっぱら人力での監視にせざるを得ない。対空、対水上レーダーが破壊されているのだから仕方ない。そんなランクにて、見張りをしているのは1人の伍長だった。彼は夜明け前にあった日本国の爆撃を終えて、まだ午前6時頃であった。彼は水平線にシミのような物が有るのに気づいた。
それは徐々に大きくなり、まだ眠気で目を擦っていた伍長にも何があるのかを理解させるには十分だった。
「あれは…日本国の艦隊だ!報告!日本国艦隊がランク沖に襲来しました!」
『何だと?!数は?!』
「空母3隻、軽巡洋艦9隻、駆逐艦12隻、強襲揚陸艦約20隻です!」
『戦闘配置!各員戦闘配置に付け!』
けたたましくサイレンが鳴り響き、兵士達が所定の位置に慌ただしく移動する。グラ・バルカス帝国はこの3ヶ月の間で敵部隊が上陸すると思われる地点の海岸に要塞線を築いていた。しかし、要塞とは言うものの、急ごしらえで作ったものであった。しかし、兵士達は進んで要塞に籠り、機関銃を撃ち込むべく待ち構える。
やがて、強襲揚陸艦から出てきた強襲揚陸艇が砂浜に着底した。兵士達は機関銃で蜂の巣にするべく照準を定める。扉が開いた瞬間、兵士達は一斉に弾丸を叩き込む。しかし、それは鈍い音を立てるだけだった。扉から出てきたのは水陸機動団の水陸両用戦車や水陸両用戦闘車だったからだ。対戦車ライフルでもない唯の機関銃相手に機甲戦力は荷が重かった。
AIが搭載された水陸両用戦車は脅威度の高い兵器から優先して砲撃を加える。戦車砲の砲撃だけではない。他にも"02式自爆ドローン"による飽和攻撃で要塞や野戦砲、"2号戦車シェイファーⅡ"が破壊されていく。
グラ・バルカス帝国側は連日の爆撃で満足な兵器生産を行えず、強力な陸上兵器である野戦砲や戦車は生産できずにいた。そこで、グラ・バルカス帝国側は強力な兵器生産を取りやめ、小銃生産と弾薬生産に舵を取った。
結果、小銃は全兵士に…とまでは行かないが8割がた届いた。しかし、小銃を生産しても圧倒的な技術の差によって覆される。あっという間に日本国は前線を押し上げていく。
一際目立つのは、やはり稲荷神の存在だろう。稲荷神は圧倒的な動体視力で敵の小銃弾丸を掴み取り、マサイ族も真っ青の視力で敵の狙撃手や機関銃手を見つけては狐火で焼く。
稲荷神の視力は日本住血吸虫と言う顕微鏡を使うレベルの生き物すら肉眼で見ることができるのだ。狙撃手が如何に隠れようが無駄であった。稲荷神は、敵の戦車を持ち上げて投げ飛ばす事もあり、この様子には亜人が如何に常識外れの力を持っていると知識では知っていたグラ・バルカス帝国兵士達は慌てふためく。
彼らは亜人がいるパガンダ島やイルネティア島、レイフォル国に行っていない者が多い故の反応だった。まあ、いた者が見てもこの圧倒的なパワーには同じ反応をするだろうが…
とにかく、上陸作戦は無事に成功し、後はグラ・バルカス帝国の経済都市であり工業地帯でもあるランクの占領だけになった。しかし、問題は市街戦と言う事だ。
市街戦というのは厄介だ。戦車を使おうにも街が射線を塞ぎ、建物の瓦礫が行く手を阻む。故に、市街戦は避けて兵糧攻め…とでも言うべきか。都市を包囲して放置する方が安上がりだ。しかし、今回は上陸作戦だ。都市の占領は安全保障上必須であった。
しかし、日本国はグラ・バルカス帝国よりも高い技術を誇る。日本国はドローンを用いた作戦に出た。
まず、サーモグラフィーを搭載したドローンで人間がいる場所を把握する。その場所に向けてマイクロドローンを向かわせる。建物に突入したマイクロドローンは内部の敵の位置情報を確認する。その後、マイクロドローンは敵に向かって突撃、自爆する。
また、ある場所では大型ドローンが屋上を監視し、中型ドローンが窓際を射撃する。それと同時期に地上を強化外骨格を着用した歩兵や小型ドローンが制圧をする。中には手榴弾を投げる者もいるが、直ぐに手榴弾を投げ返されている。撃たれた者の中には民間人もいる。その民間人も拳銃を所持している。
市街地の表通りでは"12式戦車"が走行していた。彼らは事前の偵察で敵兵士が籠城している建物に向かって猛スピードで前進していた。
"12式戦車"は猛スピードで走行する最中に主砲弾を建物に叩き込んだ。その後、グラ・バルカス帝国から見れば常識外れの速度で後退する。また、その近くでは歩兵戦闘車が建物に文字通り擦り付ける程の近距離で横付けする。向かい側の建物から狙われる必要がない歩兵は速やかに横付けした建物に突入し、歩兵は建物を制圧する。
また、この経済都市ランクは非常に発展した都市であるが故に地下鉄が存在する。地下鉄は多数の市民が避難し、敵を軍人と一緒に待ち構えている。ある意味では都市の建物より危険だ。だからこそ、日本国陸上自衛隊は地下鉄の入り口を閉鎖して兵糧攻めをする。
兵糧攻めと言っても物理的に閉鎖するのではなく、歩兵を2人から4人程監視に当てる程度だ。一見すると戦力不足に見えるが、強化外骨格を装着している以上大丈夫だろう。
そして、一際戦場で異彩を放っているのはコンバットフレームだろう。コンバットフレームは多数のレーザー兵器を搭載している。機甲戦力=戦車と言うのが常識だったグラ・バルカス帝国側は見たこともない鉄人形に驚きを隠せない。
グラ・バルカス帝国が温存していた戦闘機や爆撃機を飛ばすが、燃料不足で練度が足りないパイロットはその練度の低さと技術の差によってあっと言う間に撃墜される。中には狐火に包まれる機体もある。植物油などの代用品を燃料としているので性能が低下しているのもその原因の一因だろう。
攻撃をするがその全てが装甲によって弾き返され、逆にレーザー兵器を撃ち込まれて部隊が全滅することなどこの戦場ではありふれていた。
そして何より歩兵のストレスを軽減したのは、数年ほど前から支給されていたヘルメットだろう。
このヘルメットはカメラやスマート無線が装着されている。この2つがドローンと連動し、ドローンの偵察情報を元にAR(仮想現実)のように投影し、壁の向こう側にいる敵を視認することが出来る。また、壁を破壊して直線で進んだり、スネークカメラで扉の内側を確認したり、手榴弾、閃光弾を投げ込んで…
とゆっくりと、しかし着実にランクの制圧作戦は進んでいった。
◆
グラ・バルカス帝国本土西部方面軍総司令部は慌てていた。つい先程、経済都市ランクに敵部隊が接敵しているとランク守備隊から連絡があった。
ランクは重要な工業地帯である。ここの占領は何としても止める必要があった。そこで、司令部は大規模な援軍を送ることにした。突貫で編制作業を終え、出撃させてすぐであった。
総司令部は謎の爆発によって壊滅した。
◆
この爆発を引き起こしたのは、例に漏れず日本国の戦闘機"富士"であった。日本国の狙いは単純。大規模部隊が援軍として来るのを見越して事前調査で判明していた敵司令部を攻撃。
斬首戦術によって敵の頭脳を刈り取り、指揮系統を混乱させた所を航空機による爆撃やミサイル、レーザー攻撃で増援を刈り取ろうと言う算段だ。その作戦は見事に成功。
敵の司令部は壊滅し、軍人たちは上官の命令にも従わず右往左往している。そんな時だ。突如として地面が爆発し、幾多の兵士が巻き込まれて宙を舞う。敵の攻撃だと気付いた時には遅かった。援軍として派遣される筈だった万を超える兵士は殲滅された。
◆
経済都市ランクは陥落直前にまで陥っていた。敵軍は次々と拠点を奪取している。これに慌てているのは勿論ランク守備隊であった。
「司令官!今すぐにでも臣民義勇軍を出しましょう!」
「しかし…軍は臣民を守るためのもの。その軍が臣民を使うなど…」
守備隊の司令官は中立的な立場であった。彼は国家総動員法について懐疑的であった。故に、守るべき民までも戦場に駆り出す事に抵抗を覚えていた。だが、それは彼だけであり、その他の者たちは臣民の動員に疑問を持たない、謂わば帝王グラ・ルークスを盲信する者達であった。
そして、この司令官は中立的であるが故に大多数の意見を無視することが出来ず、かと言って良心が咎めた彼は1つの折衷案を下すことになる。
「臣民義勇軍は可能な限り後退し、遅滞戦闘に移行。その後、指揮官の下でゲリラ戦を展開せよ」
司令官の決定に少し眉を顰めた部下だが、最終的には司令官の判断が優先される事になった。
◆
工業地帯である経済都市ランクは日本国の手によって約1週間と少しで占領した。やはり、現代兵器をもってしても建物が密集しているので一軒一軒クリアリングして少しづつ戦線を押し上げる必要があるので仕方ないと言えよう。逆に、1週間で終わったのは稲荷神や自衛官の努力の結晶と言っても過言ではないだろう。
日本国陸上自衛隊は海上自衛隊が運んでくる物資を用いて急ピッチに航空基地を整えていく。グラ・バルカス帝国が取り返しにくる可能性もある。なので、航空基地と合わせて防衛陣地も整えていく。
今回は急ごしらえと言うこともあり、大掛かりな陣地は作れない。しかし、本国から態々輸送した機器を取り付けていく。
経済都市ランク郊外にグラ・バルカス帝国が整備していた航空基地を上陸作戦の際に破壊してしまったので、滑走路を修理機械で修理していく。基地から数十km先に"02式地対空レーザー車"を設置し、敵戦闘機や爆撃機を航空基地に近づく前に撃墜する。
また、個人携帯型の対空誘導弾やドローンを用いた敵航空機の撃墜や、ドローン偵察を用いた一方的な誘導弾による精密爆撃で敵戦車や歩兵を攻撃する事が出来る。
勿論、航空基地近くには土嚢を置き、敵が万が一にでも接近してきた場合の壁として設置する。しかも、この土嚢には遠隔の機関銃を配備し、熱源センサーで敵の接敵を視認し、安全な指揮所から攻撃する。そんな現代兵器と技術を駆使した防衛陣地に進化していた。
グラ・バルカス帝国本土西部方面軍は残った僅かな戦力を集めて経済都市ランクを占領した日本軍を何としてでも追い返そうと大軍を送り込んだ。燃料が少なく運用することが出来ない爆撃機や戦闘機をも送り込んで上陸こそされたが、直ぐに追い出そうと躍起になった。
だが、対空レーザーや対空誘導弾、ドローン。半自動操縦の機関銃によって数万の兵力は約1週間足らずで壊滅した。だが、日本国側も弾薬の心配をする程には激しい戦闘であった。
◆
1週間程で、グラ・バルカス帝国からの反撃を耐えた日本国は順次第二文明圏連合軍を入港させていた。戦力は以下の通りだ。
《神聖ミリシアル帝国》
・陸軍…第1・2師団
・海軍…ミスリル級戦艦2隻
シルバー級魔導巡洋艦5隻
ロデオス級航空魔導母艦2隻
ヒヒイロカネ級魔導小型艦1隻
輸送船団
・空中戦艦パル・キマイラ1隻
・空軍…天の浮舟"エルペシオ4"多数
《ムー国》
・統括陸軍…第1・2軍
第1機甲師団
・統括海軍…ドレットノート級戦艦2隻
ラ・カサミ改型戦艦2隻
ラ・カガ型空母2隻
防空重巡洋艦ラ・マヤ型2隻
対潜駆逐艦ラ・シグレ型2隻
輸送船団
・統括空軍…戦闘機"マリル"
爆撃機"マウン"
新型戦闘機"マデン"
《エモール王国》
・空軍…風竜騎士団
《ニグラート連合》
・陸軍…歩兵師団第1軍
・海軍…輸送船団
竜母3隻
・空軍…ワイバーンロード所属竜騎士団
《ソナル王国》
・陸軍…歩兵師団第1軍
・海軍…輸送船団
竜母3隻
・空軍…ワイバーンロード所属竜騎士団
《マギカライヒ共同体》
・陸軍…マギカライヒ陸上隊第1軍
・海軍…カタルーニャ型戦艦1隻(三笠クラス)
輸送船団
トラファルガー型竜母1隻
木造竜母3隻
・空軍…ワイバーン所属竜騎士団(
《イルネティア王国》
・陸軍…マスケット銃及び炸裂魔導砲装備1個師団
・海軍…戦列艦
竜母3隻
・空軍…ワイバーン所属竜騎士団
神竜1騎
《日本国》
・陸上自衛隊…第1軍及び第2軍
機甲師団
・海上自衛隊…出雲型空母2隻
木曽型巡洋艦2隻
ミサイル駆逐艦3隻
大潮型駆逐艦3隻
・航空自衛隊…戦闘機富士
・稲荷神…1柱
と言った大部隊だ。しかも、最高戦力として神竜や稲荷神、空中戦艦パル・キマイラもある。グラ・バルカス帝国が可哀想になるほどの戦力だが、稲荷神は第二文明圏の犠牲を出さないために遠慮するつもりはなかった。だが、戦力が戦力だけに、各国の配置に時間がかかったのは内緒である。
〜コラム〜
各国の兵器について
神聖ミリシアル帝国
ヒヒイロカネ級魔導小型艦
防空、及び対潜に特化した小型艦。建造コストが高い。
ムー国
ラ・マヤ型防空重巡洋艦
摩耶型の防空重巡洋艦。
ラ・カガ型航空母艦
航空母艦加賀がモデル
ラ・シグレ型対潜駆逐艦
駆逐艦時雨をモデルにした対潜駆逐艦
マギカライヒ共同体
カタルーニャ型戦艦
ムー国のラ・カサミ級戦艦に酷似
トラファルガー型竜空母艦
鳳翔型空母がモデル。世界初の機械化竜母
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尚、私は文才ないので、もしかしたら次回か次次回で愚帝編終わりかも知れません
グラ・バルカス帝国の存亡について
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徹底抗戦からの無条件降伏
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