今回は説明回です。次回は戦闘に移ります。少し難産でした。
ー第二文明圏外グラ・バルカス帝国経済都市ランクー
今や第二文明圏連合軍の手に落ちたこの都市は日本国の兵器によってグラ・バルカス帝国にとっては攻略不可能な無敵の要塞となっていた。
そんな都市も市街戦の影響で廃墟となっている。そんな都市の中に急遽建てられた前線司令部のテントで今後の話について話し合っていた。
「それでは、今後の前線配置についてご説明します」
自衛官五十嵐が説明する。
「では、我々日本国はグラ・バルカス帝国の帝都ラグナに空挺降下を、また、それと並行して帝都ラグナ郊外の砂浜に上陸を敢行します。その際、神聖ミリシアル帝国の空中戦艦パル・キマイラとイルネティア王国の神竜イルクスさんには上空支援をお願いします。恐らく、空中戦艦パル・キマイラとイルクスさんには敵味方を識別する機能がないので、我々含め他国のワイバーンも別の戦場に出撃してください。また、ムー国及びマギカライヒ共同体の戦艦による艦砲射撃をお願いします。我々の艦艇では面での攻撃が出来ません。しかし、ムー国とマギカライヒ共同体に提供した戦艦であれば、それは可能でしょう」
パル・キマイラとイルクスは派手な陽動が目的だ。グラ・バルカス帝国からすれば神竜はネームバリューには劣るが性能は空中戦艦パル・キマイラにも劣らない。この2つが帝都で暴れ回れば十分な陽動になると考えたのだ。また、二カ国の戦艦が艦砲射撃によって完全とまでは言わないが、敵掃討に費用対策効果の面でも有効と言う判断だった。
「そして、第二の陽動として神聖ミリシアル帝国及びムー国、各国の軍は前線での大規模攻勢を仕掛けてもらいます。布陣としてはムー国と神聖ミリシアル帝国が前線を担当し、各国のワイバーンなどの航空戦力が近接航空支援を担当します。この攻勢には我々日本国も参加し、我々歩兵師団は山岳や森林地帯を担当します。ですので、皆さんには平野を担当して頂きたく存じます」
ここで、グラ・バルカス帝国本土の地理について解説しよう。グラ・バルカス帝国の本土面積は、地球で言うところのアルゼンチン程度だ。しかし、経済都市ランクより東、中部地域に程近い場所に大きな山脈が聳え立っている。ここを境に、日本国の様に季節によって気候が異なる。更にその山脈の付近には森林地帯が広がっている。国民が総ゲリラ化したグラ・バルカス帝国にとっては格好の隠れスポットだ。因みに、東側は平野が広がり、穀倉が盛んである。山脈より西は漁業が帝国で一番盛んである。
故に、ここを現代兵器での索敵と攻撃ができる日本国が担当することになった。
「それでは、何か質問がある方は?」
「貴国が森林や山脈地帯を担当すると言うことですが、それはあなた方が言うゲリラ戦を見越したものですかな?」
マギカライヒ共同体の軍人が言う。
「はい。前回の作戦会議でも申しましたが、グラ・バルカス帝国は国民を総動員して抵抗を試みています。現状ではその被害は散発的ですが、帝都ラグナに近づくほどにその被害は増加するでしょう。ゲリラ戦は簡単に言えば少数の兵士が大多数の敵兵を陰湿な嫌がらせを仕掛ける戦いです。故に、兵士の心労も絶えません。ですが、我々の兵器であればその心配は無用と明言させていただきます」
「頼もしいですな!宜しくお願い致しますぞ!」
そう言って、マギカライヒ共同体の軍人は着席した。次にムー国の軍人が言う。
「わが国と神聖ミリシアル帝国で前線の陽動をするとの事ですが、進軍する必要はありますか?」
「いえ、あくまで大規模攻勢を掛けるだけですので、無理に進軍する必要はありません。しかし、陽動とバレてしまえば問題ですので無理の無い範囲での進軍なら大丈夫です。また、ムー国、神聖ミリシアル帝国以外の国々は後方支援や占領地域の治安維持をお願いします」
残念ながら、ソナル王国、ニグラート連合、マギカライヒ共同体の陸戦兵器ではグラ・バルカス帝国の小銃や戦車には抵抗できない。日本国の言うことは尤もなので無駄なプライドを張る者もいなかった。
「ワイバーンによる近接航空支援との事ですが、グラ・バルカス帝国の対空兵器は大丈夫でしょうか?」
そう言うのは、ソナル王国の軍人だ。ソナル王国は第一次バルチスタ沖海戦には参加しなかったが、参加した国の竜騎士団が対空火器で一掃された情報を掴んでいる。それ故に、自国のワイバーンロードも全滅するのではと心配するのは当然の帰結だった。
「その点は大丈夫です。我々があらかじめ対空火器を破壊します。撃破漏れはあるかも知れませんが、被害は最小限になるように最善を尽くします」
「宜しくお願い致します」
そう言って軽くお辞儀した。
その後、質疑応答を経て史上最大の作戦が始まる…
◆
ーグラ・バルカス帝国帝都ラグナー
経済都市ランク郊外への敵部隊上陸とランク占領の報はすぐさま帝王グラ・ルークスの下に届けられた。
「この現状をどうするのか、サンド・パスタルよ説明してもらおう」
「…はい」
地下室で行われている帝前会議で帝王直々に指名を受けたパスタルはそう言って立ち上がる。彼の顔色は悪い。
「現在、わが帝国の西部工業地帯である経済都市ランク郊外に敵軍が上陸、同地を占領されました。また、それに伴い援軍を派遣した西部方面軍司令部からは派遣部隊の全滅が確認されました。残った部隊は民間人を誘導し、ゲリラ戦を展開するとのことです」
恐れていた敵部隊の本土上陸を簡単に許してしまったことに軍人以外からは非難の声が上がる。
「軍部の本土防衛策は万全ではなかったのか!?」
「1週間で上陸を許しただと!?怠慢だ!」
怒号が飛び交う中、帝王府長官カーツが立ち上がって発言する。
「現在、敵航空機の本土攻撃から帝王陛下の身の安全を確保する為に帝王陛下並びに皇族の皆様、そして国の主要機能を帝都ラグナより西、中央部の山地付近に植民地人を強制動員させて建造している巨大地下壕に移す計画があります。現在8割ほど建造が終了しています。尽きましては、帝王府として皆様にはそちらの方に移って頂くのが安全だと愚考させて頂きます」
それは、国家を徹底的な戦争システムに移行することを示していた。いや、グラ・バルカス帝国は既に戦争を国家の歯車として国民生活までも制限していた。それを、国家存亡を掛けてまでしている。それは、理性を欠いた狂気の沙汰であった。
「分かった。段階的に国家機能をその地下壕に移せ。して、具体的な地下壕の機能を説明せよ」
「はっ!この地下壕を帝国本土の中央部に建造しているのは、内陸故に敵部隊が来るまで時間が掛かること、周囲が硬い岩盤で囲まれていて、大型爆弾の直撃に耐えられる事、山に囲まれていながら盆地であるために飛行場の運用が可能です。また、機能を3つほどに分け政府機能を移す地下壕、帝王陛下並びに皇族の方々が住まう地下壕、物資倉庫の3つです」
これだけの大規模地下壕を数ヶ月掛けて突貫工事で作ったのだ。安全面という点で不安が残るが、この世界の国々に負けることはないと思った故の世界征服を考える国だ。自分達が負けるとは微塵も考えいなかったので急ごしらえは仕方ないのかも知れない。だが、この突貫工事で亡くなった植民地人に敬礼。
「分かった。敵に気付かれないように最大限防諜をした上で少しづつ国家機能を移せ」
「はっ!」
帝王府長官カーツの話が終わったので、話題は再び上陸した敵部隊に移った。
「では、国家機能を移すとして、軍としてはどの様な戦術を取るのだ?」
そう言うグラ・ルークスにサンド・パスタルは言う。
「はい。現在、密かに送り込んだ偵察兵によると敵は戦艦や
また、臣民義勇軍には製造した小銃を配備していますが、如何せん数が足りません。ですので、数人に1人の支給や旧式の火縄銃、竹槍、手榴弾で正規軍の補助及びゲリラ戦で遅滞戦闘に努めます。
また、海岸線に防衛線を構築していますが、構築途中でありこちらはあまり期待出来ません。更に言うと、連日の航空戦力による爆撃でインフラが破壊され兵員輸送が出来ません。なので、経済都市ランクへの逆侵攻は不可能と断じるべきでしょう
纏めますと、こちらから侵攻はせず、やって来る敵を軍と臣民であらゆる手段を用いて撃破し、一撃講和を図る。この様な方針です」
軍本部長サンド・パスタルの言葉に帝都防衛隊長ジークスが続く。
「最後に、帝都にまで彼らが進軍した場合の想定で防衛案をご説明します。まず、帝都ラグナより西に流れるラグナ川に防衛線を構築し、対戦車壕、砲兵陣地を構築します。また、ラグナ上流のダムを破壊して周囲を泥濘にして進撃を阻みます。
そして、帝都ラグナは3つの防衛線を構築します。まず、ラグナ周囲の外縁部、都市鉄道の高架や線路、駅舎を利用した内周防衛線、国会議事堂や皇城を含むコアエリアです。
また、都市内でゲリラ戦を展開するために建物の瓦礫や即席の土嚢を利用した道路封鎖で敵戦車の侵攻ルートを阻みます。また、少数生産が始まっている"2号重戦車ワイルダー"も全て投入して防衛をします。他にも、地下鉄や下水道を利用したゲリラ戦、建物の一部屋、屋根裏、地下室などに潜伏部隊や狙撃手を配置して待ち伏せをします。
そして、使い捨て兵器として火炎瓶や地雷を利用して敵の陸戦兵器を破壊します。これら兵器をラグナ市民に持たせます。徴兵するのは16歳以上60歳未満の男女、傷害者、老人、子供に至るすべての市民に武器を取って貰う所存です」
そう言って着席した。これを聞いた官僚達はジークス少将に文句を言う。
「そこまでして抵抗する必要がどこにある?!」
「わが帝国の歴史ある建物を破壊するおつもりか?!」
「降伏と言う選択肢はないのか!?」
そう、前時代前の戦争であれば軍人同士の殴り合いだった。しかし、今の兵器ではどうしても民間人にも被害は出る。それを理解しているだろうに、軍は帝都までも要塞として抵抗すると言う。そこまでする必要がないと言うのが官僚達の意見だった。
「分かっている。この戦争で軍民問わず何百万と言う臣民が死んだ。彼らの犠牲を無駄にしない為にも、この征服戦争を始めた余にも責任はある。ならば、最後まで臣民が信じる帝王として死ぬのが余の務めだ」
帝王グラ・ルークスは、王たる器に相応しい度量を持っていた。だが、自国の技術を過信した結果、身の丈に合わない野望を抱いてしまった。それを自分の手で自分なりの方法で責任を取ると言ったのだ。その精神は素晴らしいが、巻き込まれる臣民からすれば、たまったものではない事をグラ・ルークスは思い至る事はなかった。
◆
ー第二文明圏連合軍占領地元グラ・バルカス帝国領ランクー
グラ・バルカス帝国本土に上陸して2ヶ月が経過していた。この2ヶ月の間に日本国は各国と協力してグラ・バルカス帝国各地に爆撃を敢行していた。
これにより、鉄道輸送はさらに悪化、補給も覚束ない状態にする為にインフラを破壊、グラ・バルカス帝国の補給網はズタズタにされる。更に、日本国がワイバーンロードなどの航空戦力がグラ・バルカス帝国の"アンタレス07式戦闘機"や高射砲に撃墜されないように、対空火器や戦闘機などを徹底的に破壊した。
他にも、海上輸送航路に機雷を仕掛け、海上輸送航路をマヒさせたりと徹底的な飢餓状態に送り込み、被害を出すことなく降伏させる手筈を整えていた。
それと並行して、占領地域を少しづつ拡大して巨大な航空基地を建設していった。今までは、ロレア島から爆撃機やワイバーンロード、イルネティア島からの空中補給で攻撃をしていた。しかし、グラ・バルカス帝国本土に航空基地が出来た以上、24時間の爆撃が可能になったのだ。
これ程の準備を整えた第二文明圏連合軍は戦力を集めた。そして、遂にライトニングフォックス作戦が始まる。
第二文明圏連合軍は前線に張り付き攻勢を待つ。帝都ラグナ郊外に上陸するために援軍として派遣された追加の水陸機動団が到着した。
そして、第二文明圏連合軍は大規模攻勢を開始した。それと同時期に経済都市ランクの航空基地では空中戦艦パル・キマイラ、神竜イルクス、そして自衛隊が誇る最凶戦闘集団第1空挺団を乗せた輸送機とそれを護衛する戦闘機が今、発着しようとしていた。
稲荷神は、第1空挺師団を乗せた輸送機の中で彼らに言葉を投げかける。
「皆さん、この数年にわたる戦争に終止符を打つ時が来ました。必ずやこの作戦を成功させ、平和を取り戻しましょう!」
「「「はっ!」」」
稲荷神の発破に第1空挺師団の隊員が答える。そんな会話を繰り広げていると、輸送機は既に帝都ラグナ上空に来ていた。
「降下!」
「降下しろ!稲荷神様に続け!稲荷神様バンザイ!!」
第1空挺師団長中山は隊員と共にグラ・バルカス帝国帝都ラグナの空に飛んだ。
〜コラム〜
巨大地下壕
本土決戦が近い事を予感したグラ・バルカス帝国が建設した巨大な地下壕。国家機能や通信手段を一手に集め、国民に無線指示する事が可能。因みに、この地下壕は大日本帝国の松代大本営を参考にしている。
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