稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:サード・アイ

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本土決戦〜後編〜

 

 

ー第二文明圏外グラ・バルカス帝国帝都ラグナー

 

帝都ラグナの近くにある砂浜。ここは、夏には海水浴場として賑わっている。しかし、その砂浜は鉄と魔法の嵐に見舞われていた。

 

何故なら、神聖ミリシアル帝国のミスリル級戦艦、ムー国のドレットノート級戦艦やラ・カサミ改型戦艦、マギカライヒ共同体のカタルーニャ型戦艦による艦砲射撃が行われていたからだ。

 

帝都ラグナにほど近いと言うこともあり、この砂浜はジークス少将の監修の下で要塞化されている。内陸に強固なトーチカを乱立させ、トーチカ同士の連携が取れるようになっている。

 

また、砂浜には数十万もの地雷を設置している。他にも、機甲戦力として戦車を内陸に温存している。こんな防御を施したラグナビーチは砂煙と硝煙、火で満ちていた。

 

せっかく敷設した地雷も各国の艦砲射撃でその数を減らしている。艦砲射撃開始から数時間後、遂に日本国水陸機動団が上陸を開始した。上陸部隊は水陸両用戦車の陰に隠れてドローンの索敵を受けて進軍する。しかし、生き残ったトーチカから砲撃をするが、自国の"2号戦車ハウンド"を想定して野戦砲を生産している。グラ・バルカス帝国の戦車装甲をゼロ距離で貫徹できる日本国の戦車には全くの無意味だった。逆に反撃される始末であった。

 

上陸した水陸機動団は難なく同地を占領する事に成功した。そして、ムー国や神聖ミリシアル帝国から送られる追加部隊を受け入れ、帝都の目と鼻の先に上陸する事に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、経済都市ランクを中心に占領地を段階的に広げていた第二文明圏連合軍は陽動として大規模攻勢を開始した。

 

大規模攻勢により、敵部隊は対応に追われていた。その理由は兵員不足である。第二文明圏連合軍による連日の爆撃でインフラが完全に破壊されているからだ。修復作業をしている途中でもやって来るのできりがなかったのだ。その結果、今日まで修復作業は完了せず、兵員輸送が不可能になっていたのだ。

 

結果、スカスカの前線を第二文明圏連合軍は押し上げていくだけだった。だが、第二文明圏連合軍も機甲戦力の燃料となる魔石や石油、ニグラート連合などの機甲戦力を持たず騎兵で補っている部隊の食糧などで思うように進軍はできていなかったが、ワイバーンロードなどの近接航空支援で着実に占領地域を広げていた。

 

だが、森林地帯、山脈地帯は順調には行かなかった。いや、前線の押し上げは出来ているのだが、民間人のゲリラ戦によって自衛官は疲弊していた。とは言っても、士気がダダ下がりと言うわけではなく、湿気や高所故の気温の低さなどが原因だが、戦闘には支障は無かった。

 

彼らは索敵ドローンで森の木々、茂みを探し周り潜伏している敵兵がいたら躊躇なく索敵ドローンや連動している攻撃ドローンで攻撃する。また、民間人が武装蜂起をしていたら見逃すが、武器を持っていたら同じ対応を取った。

 

山脈でもドローンは活躍した。戦闘では今も昔も高所を取ったほうが有利だ。しかし、ドローンには、山脈の岩や障害物などあって無いような物であり、難なく索敵が出来た。こちらも、敵兵や武装した民間人…民兵を見つけては掃討をする。そして、強化外骨格を装着した自衛隊は通常の歩兵では考えられないスピードで森林や山を進軍する。

 

こちらもまた、森林の日本軍同様にグラ・バルカス帝国は予想以上の日本軍の進軍スピードによる戦線の押し上げによって当初の防衛計画が破綻。後退するも、後退よりも日本軍の対ゲリラ戦の迅速な対応によって進軍を止められず包囲される部隊もあった。

 

民間人、いや、民兵によるゲリラ戦も軍の指揮がなければ烏合の衆だ。彼らもまた後手に回っていき、防衛ラインの突破を許してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都ラグナへの空挺降下の為に派遣された日本国自衛隊第1空挺師団と稲荷神は輸送機から飛び降りた。一昔前ならパラシュートを着用すべきだが、現在では長時間でなければ飛行できるスラスターユニットに特化した宇宙服サイズの強化外骨格を着用することで不要になった。

 

それは、稲荷神も同じである。尤も、稲荷神はパラシュートも強化外骨格も不要だが…

 

ともかく、稲荷神は降下した時に狐火を展開して落下地点に降下しようと考えた。しかし、狐火の出力を間違えて降下地点を大きくズラしてしまった。結果、イギリスのビックベンに似た時計塔の様な施設に命中してしまった。

 

ソ連の時は謎の人物像に当たって粉々にしてしまったが、今回は時計塔を粉々にしたらしい。稲荷神はあれから数十年経ったのに未だに狐火を制御できてないことを嘆いたが、気持ちを切り替えて第1空挺師団の皆さんと合流しようと、足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

第1空挺師団は稲荷神と逸れてしまったが、彼らの目的は皇族及び政府首脳陣、一部の皇族派の軍人の確保だ。だが、一番の目的は皇族と政府首脳陣の確保である。

 

彼らは頭に叩き込んだ帝都ラグナの地図を下に皇城に向かう。しかし、空挺降下して来た連中を皇城に近づけさせる訳がない。帝都ラグナはまだ未完成ではあるものの要塞化されている。しかし、強化外骨格を装着した彼らは、自転車に乗っているかの如くのスピードで移動する。

 

道中で多少の襲撃はあったが、練度が低いグラ・バルカス帝国の民兵や軍人が第1空挺師団の足を止められる訳もなく、容易く皇城まで辿り着く事を許してしまった。

 

稲荷神が時計塔を破壊したので、注目がそちらに集まっているのも要因の1つだろう。稲荷神は勘で移動していたが、第1空挺師団と無事に合流し、皇城に侵入することに成功した。

 

皇城に侵入した彼らは、まっすぐ地下へ向けて進軍した。事前調査で空襲を恐れて地下壕にいる事を掴んでいる。道中襲ってきた皇城の近衛兵を、稲荷神の優れた視力と聴力、そして圧倒的な攻撃力を持つ狐火で敵を倒し、第1空挺師団の持つ自動小銃で敵を掃討する。大きな被害もなく第1空挺師団と稲荷神は政府首脳陣がいる地下壕に侵入し、数十分後には政府首脳陣がいる部屋に侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーグラ・バルカス帝国帝都ラグナ皇城地下壕ー

 

連日の爆撃を凌ぐために作られた地下壕の会議室の中で軍本部長サンド・パスタルが、敵部隊に対応するために不在の帝都防衛隊長ジークス少将の代わりに現状説明を帝王グラ・ルークスにしていた。

 

「現在、帝都にほど近いラグナビーチに敵部隊が上陸を試みています。我々はここへの上陸を警戒して防衛陣地を展開していましたが、敵戦艦による艦砲射撃で少なくない被害が発生しています。ですが、上陸部隊は地下に張り巡らせた地下壕でゲリラ戦を展開しています。また、経済都市ランクを中心に占領地域を広げていた敵は、大規模攻勢を開始しました。我々は帝都方面とランク方面の2正面作戦を強いられています。また、臣民義勇軍によるゲリラ戦も振るわず、戦線の突破を許してしまい、包囲殲滅される部隊もあるとの事です」

 

遂に始まった敵の大規模反攻作戦。これを阻止しなければ、グラ・バルカス帝国の末路は滅亡。その2文字だけだ。現状、兵力を輸送できないのならば最適解は上陸部隊を叩き落とす事だ。上陸を阻止しつつてやって来る敵部隊を帝都で迎え撃つ。これが兵力集中の観点から見ての解である。

 

だが、彼らの前提を覆す報告が齎される。

 

「報告!敵上陸部隊が上陸されました!また、帝都上空より空挺部隊を確認しました!」

 

伝令兵の言葉にパスタルは慌てて指示を飛ばす。

 

「空挺兵ならば大した装備は持っていない!帝都防衛部隊の半数をそちらに割り当てるようにジークス少将に伝達!後は現場の裁量に任せる!残りはジークス少将の命令に従え!」

「はっ!」

 

パスタルは帝王の前でありながら大声を出した事に謝罪するが、グラ・ルークスは気にしなかった。だが、彼らの行動が裏目に出ることになる。

 

数十分後、次々と届けられる戦線突破の報告にサンド・パスタルは対応に追われている時だった。突如として作戦会議室の扉が開け放たれたのだ。

 

「何事…「動くな手を挙げろ」…!」

 

部下を叱責しようと振り向いた時、そこにいたのは迷彩服を着た見知らぬ者達だった。一部、狐耳と尻尾を持った幼女がいる事が気になるが、どう見ても敵兵なのは明白であった。銃で脅されている以上、手を挙げない選択肢はない。

 

「貴様が軍本部長サンド・パスタルだな、他には…」

 

そう言って次々と関係者を拘束していく。やがて、第1空挺師団の1人が帝王グラ・ルークスに手錠を掛けようとした時だった。突如として、グラ・ルークスは懐に忍ばせておいた拳銃を手に取った。

 

「これが余なりの責任の取り方だ」

 

パァン!

 

そう言って、グラ・ルークスは己の脳天に拳銃を打ち込み、死亡…しなかった。稲荷神が拳銃を狐火で焼いた結果、機能が停止してしまったからだ。

 

カチッ、カチッと引き金を引くが弾は射出されない。グラ・ルークスは呆気なく日本国によって捕らえられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラ・ルークスが日本国によって捕らえられたと同時期、皇城の上層階では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

第1空挺師団の目的は、主要な強硬派の皇族と軍人の確保だ。その他にも、多少の政治的パフォーマンスが含まれているが、目的は皇城の天辺に旭日旗を掲げる事だ。

 

広域無線でグラ・バルカス帝国側に対して降伏を促すことは容易だ。帝王グラ・ルークスを捕らえたと言えば降伏する者も現れるだろう。しかし、熱心な帝王信者の者達は周りを巻き込んで「帝王陛下を奪還する」と意気込みかねない。それを阻止するために、帝王のシンボルとも言える皇城に他国の旗を掲げる事で、戦意を徹底的に挫こうと考えたからだ。

 

そして、帝王を捕らえてから数十分後、旭日旗を持った第1空挺師団の者がやって来た稲荷神に旗を手渡す。彼らにとって稲荷神こそが、忠誠を向ける相手であり、それは国民に親しまれている天皇陛下も同様だ。そんな彼女だからこそ、この役割に相応しいと考えたからだ。

 

「この戦争で、何人もの方が亡くなりました。グラ・バルカス帝国の行動によって不幸に見舞われた人は数知れません。ですが、我々は戦い抜きました!」

 

そう言って稲荷神は狐火でグラ・バルカス帝国の国旗を燃やす。代わりに置かれたのは日本国の旭日旗であった。

 

自衛隊はグラ・バルカス帝国に広域無線によって降伏を呼びかけた。徹底抗戦を望む者は、そうでない者によって封殺され、数日後には降伏を受け入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

降伏の受け入れは第二文明圏連合軍に伝えられた。この報告に、第二文明圏を中心としてお祭り騒ぎとなった。

 

だが、一部の者たちは今後の展望について話していた。

 

ムー国のマイラスとラッサンもその内の一人に入っていた。

 

「日本国の助力もあってグラ・バルカス帝国は降伏したそうだぞ」

「ああ。日本国に対しては頭が上がらないな。稲荷神様には個人としても礼をしたいものだ」

 

そんな会話をする2人の話題は日本国との連携にシフトしていた。

 

「ラ・カサミ改の改造に伴う戦果を見ても日本国の技術は分かりきっていることだが魔法帝国に迫るかそれ以上だ。是非、上層部を説得して今後も軍事協力を取り付けていきたいものだ」

「グラ・バルカス帝国との戦いでムー至上主義の奴らも頭は冷えてるだろ。心配ないと思うけどな」

 

 

 

 

 

ー第1文明圏列強神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスー

 

 

神聖ミリシアル帝国では、ミリシアル8世が報告を受けていた。

 

「陛下。先ほど軍部より入った情報ですが、グラ・バルカス帝国が降伏したとのことです」

「そうか。遂に我々は不遜な輩共を成敗した訳だ」

 

だが、部下の報告は終わらなかった。

 

「陛下、日本国からの提案でグラ・バルカス帝国の降伏に伴う戦後処理について改めて後日に第二文明圏連合軍に参加した各国を交えて戦後処理をしたいとのことです」

「ふむ。それは当然の事であろうな。ペクリスよ。各国との会談の調整を頼むぞ」

「はっ!」

「魔帝との戦いは近い。目下の問題を片付けた以上、早急に備えなければならんからな。各国との連携を急げ」

 

神聖ミリシアル帝国は来たるべき魔帝との戦いについて準備を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外列強日本国首都東京ー

 

グラ・バルカス帝国降伏の報を受けた日本国は閣僚会議を開いていた。

 

「遂にグラ・バルカス帝国が降伏しましたな。約2年。奴らの物量はアメリカ程ではありませんが薄ら寒いものですな」

「逆に言えば、アメリカが規格外なだけでは?」

「違いない」

 

余計な戦費が消えたからか、閣僚達の顔色は明るい。彼らはこの数年間、稲荷神様が不在の中で日本国を纏めてきたのだ。稲荷神様が隠居の身とは言え日本国を助けてくれたのだ。その稲荷神様が日本国に長時間居ないと言うのは国民感情的にも宜しく無かった。つまりは、彼らの国民精神の支柱の大部分が帰ってくると合っては喜ばずには居られなかった。

 

「稲荷神様が戻られるのは嬉しいが、我々は我々の役目を果たしましょう。外務大臣は第二文明圏連合軍各国との戦後処理についての会談の調整を頼みます」

「お任せください」

 

こうして、世界の列強達は戦後を見据えて模索を始めるのだった。

 

 

 






〜コラム〜

人物像

稲荷神がモスクワ市内に降下した時にパラシュートを着用していなかった稲荷神は落下途中に降下地点に人が居たら大変な事になると考えて狐火による翼で落下速度を緩めようとしたが、失敗してしまった。その結果、巨大な人物像に激突してしまったのだ。

因みに、これは史実では完成しなかったソビエト宮殿の巨大レーニン像であり、この世界ではある程度まで形になっていたが、歴史の集成力で破壊された模様。グラ・バルカス帝国ではビックベンが破壊されました。コミカライズ版のお城はイギリスの国会議事堂そっくりですので、気になった方はご確認下さい。

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グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
  • 講話する
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