ー第二文明圏外イルネティア王国王都キルクルスー
グラ・バルカス帝国によってかつて占領されたこの島は、グラ・バルカス帝国と戦う第二文明圏連合軍によって解放された。
そして、グラ・バルカス帝国の降伏に伴う戦後処理の会談が降伏から1週間後、ここイルネティア王国で行われる事になった。
参加国は以下の通りだ。
・神聖ミリシアル帝国
・日本国
・ムー国
・エモール王国
・マギカライヒ共同体
・ニグラート連合
・ソナル王国
・イルネティア王国
そして、グラ・バルカス帝国との戦いで序盤しか戦っていなかった第一文明圏のアガルタ法国を始めとする各国も発言権は殆ど無いに等しいが参加している。
そして、戦後処理に伴う会談と謳っているが、正確に言えばこれは事実確認に過ぎない。同時刻、グラ・バルカス帝国沖で降伏文書への調印式が行われているからだ。
「では、グラ・バルカス帝国の降伏に伴う戦後賠償について確認します。尚、これと同じ文書が今現在、グラ・バルカス帝国側にて調印式が行われていることをご了承下さい」
日本国副外務大臣が前置きを言う。そして、各国は降伏文書に目を通していた。
①すべての武装解除を行う
②軍国主義及び軍国主義者の排除と戦争責任追及
③民主主義の強化及び基本的人権の尊重
④帝王制の解体あるいは制限
⑤領土縮小
⑥軍隊の解散と不保持
⑦軍事研究の禁止
大枠としては事前に通達された内容と殆ど一緒だ。そして、今回の会議の焦点となるのが、権益の分配だった。
第二文明圏を始めとする各国はグラ・バルカス帝国との戦争によって膨大な戦費を消費している。流石に債務不履行になる程ではないが、危険な水準であることには変わりない。そこで、各国の取り分をどうするかを考える必要がある。
「まず、各国の皆さんにはお伝えする事があります」
そう言って切り出したのは日本国副外務大臣であった。
「わが国は、グラ・バルカス帝国に関税撤廃を求めます。それ以上は求めません」
それは、各国にとって反応するのに時間が掛かる言葉だった。この世界では敗戦国は戦勝国に併合され、地図から姿を消すのが一般的だった。だが、日本国はロクリア戦役、パーパルディア皇国戦においても鉱物資源の採掘権程度で要求を済ませてきた。しかし、今回は関税撤廃だけなのだ。皆が驚くのも無理はなかった。だが、理に聡い者は気付いた。民生品ですらムー国や神聖ミリシアル帝国を超える日本国の商品がグラ・バルカス帝国に流れる以上、グラ・バルカス帝国の企業は安く高品質な商品を前に倒産が相次ぐと言う事だ。
日本国の経済的侵略に一部の者は震え上がった。
会議が異様なほどに静まり返る。見かねた副外務大臣が言う。
「何も発言がないと言うことは、要求はしないと言う事で宜しいでしょうか?」
「それは困る!」
とある国の外務大臣が言う。それを皮切りに、権益確保を狙う各国の駆け引きが始まった。
「では、グラ・バルカス帝国の軍事技術の情報公開と言うのはどうだ?」
「いや、グラ・バルカス帝国の植民地は我々が統治しよう」
「いやまて、そもそも賠償金はそもそも払えるのか?」
各国が言い合う中、日本国は終始司会に徹していたが、1つだけ日本国から提案があった。それは…
◆
時を同じくして、グラ・バルカス帝国側の外務省長官モトロフら使節は、日本国の空母出雲の艦橋にて降伏文書に調印していた。
降伏文書は主に以下の通りだった。
①無条件降伏に伴う条件を全て履行する。
②すべてのグラ・バルカス帝国軍及び支配下の軍隊は第二文明圏連合軍に降伏する。
③すべてのグラ・バルカス帝国軍に対して敵対行為の即時禁止、航空機、艦船、軍需品の保存と維持
④第二文明圏連合軍代表の命令に従い、これを履行する
⑤第二文明圏連合軍の捕虜の解放
これらが取り決められた。調印式は順調に進み、稲荷神も退屈な調印式を見届けた。その後、稲荷神は出雲の食堂でお昼ご飯を食べるのだが、同時刻に日本国外務大臣はモトロフ長官との会談を行っていた。
「会談の機会を設けて下さりありがとう御座います。大隈殿」
「いえ、何やら緊急を要する案件と伺ったので」
日本国側としてはモトロフが穏健派の後継である統制派である事を事前に調べており、話の通じる相手だったのも理由の一つだろう。
「わが国は知っての通りグラ・ルークス陛下によって軍国主義の道を歩んできました。それに伴い民間の物資も制限されていました。それでも植民地からの物資で不便ではありませんでしたが、植民地を失った以上、物資不足が深刻です。特に、わが国は食糧生産を植民地に頼っていました。それが失われた事で国民は明日の食べ物にすら困る有様です。我々が頼むのもお門違いですが、どうか考えいただけないでしょうか?」
そう、グラ・バルカス帝国は食糧生産を植民地に頼っていたので、食糧が慢性的に不足しているのだ。それに、燃料不足も深刻だ。帝国本土北部では冬を越えられるかも怪しいのだ。
「ええ。それはこちらも把握しています。ですので、貴国には此方を提案しに参りました」
大隈が差し出したのは署名書だった。モトロフが見ると、そこにはこう書いてあった。
『占領統治における同意書』
これによると、統治はグラ・バルカス帝国政府が行うが、その上に日本国の占領統治機関があり、命令に従う必要がある。簡単に言うとこんな事が書いてあった。
そして、署名書の説明欄には次のようにもあった。
『なお、食糧及び燃料の最低限の援助を約束する』
これは一種の脅迫であった。しかし、呑まなければ国民は死に至る。元より敗戦国であるグラ・バルカス帝国に拒否する選択肢はなく、モトロフは署名した。これからの国の生末を彼は憂いた。
この占領統治政策は史実のGHQの占領統治と同じ物だった。日本国からしてみれば、統治するにしても日本国からグラ・バルカス帝国本土は遠すぎる。また、植民地運営など日本国の歴史上したことすら無い。彼らは昔から友好関係を築いて有利な土俵を作ってきた。故に、植民地などという物を作ったことすら無い。また、大陸の占領統治も辞退しているのでその手の経験は無に等しいのである。
ではムー国を始めとする第二文明圏に頼めば良いと思うかも知れないが、彼らもまたグラ・バルカス帝国との戦争で戦費がかさんでいる。そこに、国土が荒廃した土地を統治する余裕もない。
神聖ミリシアル帝国からしてみれば、グラ・バルカス帝国本土に魔帝の遺跡があれば食い付くかも知れないが、転移国家であるグラ・バルカス帝国に魔帝の遺跡がある筈もない。更に、科学国家であるために、日本国より遅れた技術を持つ彼らの技術を取り入れる必要もない。故に、興味をそそられる土地ではなかった。
故に、ババの押し付けになっていたのだが、日本国が稲荷神と日本国の関係の様に、基本は現地政府が統治を行い、稲荷神…この場合は日本政府が作ったグラ・バルカス帝国統治機構が口出しをすると言う形にするのだ。
こうして、グラ・バルカス帝国の処遇は決まったのだった。だが、忘れてはならない後処理が残っていた。
◆
ー第三文明圏外列強日本国首都東京ー
グラ・バルカス帝国の主要な皇道派を捕らえた日本国は戦争責任を追及するために各国の許可を得て日本国に輸送していた。何故、各国が許可したかと言えば、最大の功績を挙げたのが日本国だからだ。その日本国の提案に異を唱える者はいなかった。
そうして、連れてこられたのは以下の通りだ。
・帝王グラ・ルークス
・帝王府長官カーツ
・帝王府副長官オルダイカ
・外交官ゲスタ
・軍本部長サンド・パスタル
・東部方面艦隊長官カイザル
・帝都防衛隊長ジークス
・カルスライン社社員エルチルゴ
彼らは戦争を主導したり、民間人の虐殺、贈収賄の容疑が掛けられている。そして、それを裁くのは東京国際軍事裁判だ。議長にはもちろん稲荷神が参加している。稲荷神は自分の地位と責任に軽く自己嫌悪するが、コレが終われば暫くは休暇が約束される。後少しの辛抱だと耐えて職務に挑んでいた。
「被告、エルチルゴ。被告には贈収賄及びインサイダー取引関与の疑いが掛けられている。よって検察側は被告に8年の懲役と270万円の罰金を科す」
検事が罪状と求刑を呼び上げる。弁護士は弁護をするが、結局エルチルゴには検察側の求刑通りの判決が下された。エルチルゴが喚くが、係員によって取り押さえられて連れて行かれた。
エルチルゴを態々捕らえたのは、帝国上層部を調べていく過程でオルダイカとの癒着が発覚し、新しく始動するグラ・バルカス帝国…いやグラ・バルカス王国の社会の膿を排除するための物であった。
続いてやってきたのは軍本部長サンド・パスタル、東部方面艦隊長官カイザル、帝都防衛隊長ジークスである。
「被告人、カイザルは東部方面艦隊を率いて世界連合艦隊を破ったが、それは職務に従ったが故の行動であり、被告には禁固10年を求刑します。
次に、被告人、ジークスは帝都を要塞化し市民に民兵を強制している。故に、被告には無期懲役を求刑します。
最後に、被告人、サンド・パスタルはグラ・バルカス帝国の民間人に武器を持たせ、全国民をゲリラ戦に徴用、多くの市民が被害を受けました。これは人命を軽んじる行為であり容認できません。よって、被告には死刑を求刑します」
弁護士は頑張って戦うが、稲荷神のお手を煩わせる相手に裁判官が温情をくれる事もなく、求刑通りの刑罰が決まった。
そして、次に法廷に連れてこられたのは外交官ゲスタである。
「被告人、ゲスタは植民地人を虐殺、及び複数の街を滅ぼすように指示を出し、大きな破壊と混乱を招きました。コレは極めて残忍であり、到底許容出来るものではありませんよって、被告人に死刑を求刑します」
ゲスタは法廷に来るまでも喚き散らしていたが、判決が検察の要望通りに下されると、彼は弁護士、検察官、裁判官に対して文句を言いたい放題に暴言を撒き散らした。余りの騒ぎ様に法廷侮辱罪も追加され、ドナドナされていった。
次に連れてこられたのは帝王府長官カーツと帝王府副長官オルダイカだった。
だが、意外なことにカーツは大した罪状はなかった。だが、戦争責任と部下の監督不足があるとの考えから懲役5年が言い渡された。そして、問題は副長官オルダイカだった。
彼はカルスライン社のエルチルゴと癒着し、内部情報の流出、金品の不正受給を受けていた。彼には、癒着の罪状が掛けられ、8年以上の禁固刑と2500万円以上の罰金が科せられたのだった。
尚、円と表記したが、支払うのはグラ・バルカス王国である。
そして、本命である帝王グラ・ルークスである。
「被告人、グラ・ルークスは世界征服と言う国際平和と国際協調を乱す行いをし、第二文明圏を中心に多くの混乱を齎しました。これは、極めて悪質であり、情状酌量の余地はありません。よって、ここに検察側は死刑を求刑します」
グラ・ルークスは、日本国による本土侵攻が始まり、捕まったら、自分が死ぬ運命にあるのは悟っていた。だからこそ、彼は拳銃自殺を目論んだのだが、それは失敗に終わった。そして、自身の行いがどれ程愚かだったのかを日本国の首都を見て理解できた。皇城よりも高く聳え立つ高層ビルがそこかしこに立っているのだ。これだけでも彼には、自国と日本国の違いが明確に理解できた。ゆえに、彼は諦めの境地になって、ただ、狐っ娘が読み上げる判決を聞いていたのだった。
◆
戦後処理が終わったグラ・バルカス帝国は解体され、グラ・バルカス王国として再始動した。しかし、実権はグラ・バルカス王国統治機構を運営する日本国が握っている。
そして、意外なことに王位に就いたのはグラ・ルークスの息子で皇太子であるグラ・カバルではなかった。
何故なら、グラ・カバルは典型的なグラ・ルークスの帝国至上主義教育によって帝国こそ至高と考えている。そこらの軍人よりかは柔軟な発想をしているが、それでもコントロール出来ない王様など日本国側からすれば面倒でしかない。だからこそ、日本国は穏健派で暴走することも無い皇族を王位に据えたのだ。
そして、日本国の監督のもと全ての軍事研究書類は破棄され、残った航空機や軍艦、陸上兵器はマギカライヒ共同体やムー国に接収された。
こうして、約数年にわたる対グラ・バルカス帝国戦はグラ・バルカス帝国の敗北と言う形で幕を閉じたのだった。
◆
ー第三文明圏外列強日本国首都東京稲荷大社ー
グラ・バルカス帝国との戦争が終結し、一段落した稲荷神は自宅の屋根の上で月見酒をしていた。かなり疲れていたのか、稲荷神はやけ酒をする勢いだ。だが、稲荷神は酒をどれ程飲んでも酔わないので心配は無用だ。
そんな時、稲荷神の横に現れたのはこの世界で太陽神と呼ばれる天照大御神であった。
「稲荷ちゃん。グラ・バルカス帝国だっけ?あの国を対処してくれてありがとね。お蔭でこっちも色々と調査出来たよ」
「大変でしたよ。何故だが分かんないけど、第二文明圏の人々からも崇拝されてると桜さんに言われた時は驚きましたよ…それで、
稲荷神の活躍は第二文明圏や第二文明圏外にも広がり、稲荷神の名は西の果てにまで轟いている。その理由を稲荷神自身は分からなかったが、既にこの世界の第三文明圏及び第三文明圏外、第二文明圏及び第二文明圏外にまで広がっている。恐ろしい広まり様である。
そんな事を露知らない稲荷神が聞くと、親しみやすい雰囲気の
「結論から言うと、グラ・バルカス帝国の出現は空間神の仕業と言うことが分かったわ」
「お母さん。その空間神ってのはお母さんを欺ける程なのですか?」
「空間神って言うのは、名前の通り空間を司るの。それこそ、神々で一番空間への造詣が深いわ。だから、奴が隠蔽しながら何かしても、すぐには対処できないの」
「
そう言うと、
「そうね。この世界では"イル"と呼ばれているそうだけど空間神は
「色々ありましたよ。カルアミーク王国って所では原子爆弾の魔法版の製造方法が書いてありましたし、グラメウス大陸でしたっけ?そこには魔王とかいましたね。あとは…一番驚いたのはミサイル駆逐艦である"島風型ミサイル駆逐艦"の写真が残っていた事ですかね?」
そう言って、稲荷神は記憶を掘り返してみた…
遂にグラ・バルカス帝国編が終了しました。グラ・バルカス帝国編は原作では途中で終わってるので一旦完結して嬉しいです。
次はグラメウス大陸編をお送りします。今までのご愛読ありがとう御座います!まだまだ続きますので引き続き愛読宜しくお願いします!
グラ・バルカス帝国の存亡について
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徹底抗戦からの無条件降伏
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