稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:サード・アイ

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外伝〜グラメウス大陸編〜
忘れ去られた王国


 

 

ー第三文明圏外日本国首都東京ー

 

時間はパーパルディア皇国との戦争中にまで遡る。

 

日本国は人工衛星によって魔物が住まう土地であるグラメウス大陸に光が付いている事が分かった。解析した所、文明らしき物が2つ程確認できた。しかし、その内の1つはグラメウス大陸奥地にあり、接触するのは難しい。しかし、もう一つの文明は接触は容易だと考えた。そこで、日本国はグラメウス大陸への文明への接触を思索する。

 

そして、トーパ王国の要請に基づき魔物駆除の為に自衛隊を派遣していたが、グラメウス大陸の害獣である魔物を駆逐する為に大規模なグラメウス大陸焦土作戦が採択された。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外トーパ王国王都ベルンゲンー

 

突如として復活した魔王ノスグーラを討伐した日本国に技術支援と戦力支援を要請していたトーパ王国は日本国からの戦力派遣を見て驚愕した。

 

トーパ王国に派遣されていた自衛隊の工作部隊が作成したトーパ王国王都ベルンゲン郊外の飛行場に大規模な爆撃機部隊や輸送機が多数着陸する。

 

この光景に、トーパ王国側は魔物の駆除に何故これほどの戦力を投入するのか不明だったが、それはすぐに明らかになった。

 

「グラメウス大陸の完全制圧ですと!?」

 

声を荒げたのはトーパ王国国王ラドス16世だった。その対面に座るのは稲荷神である。

 

「はい。グラメウス大陸は魔物の闊歩する土地ですが、我々の装備であれば容易に魔物の駆除が可能です。なので、空からの爆撃によって魔物を炙り出し、処理して人類の生存圏とする為です。

 

日本国としては大きく分けて3つの目的があります。1つ目がグラメウス大陸に眠る鉱物資源。2つ目に魔物の駆除、3つ目にグラメウス大陸にある文明への接触です」

 

自衛隊高官の言葉にトーパ王国側は騒然とした。

 

「グラメウス大陸に文明だと?!」

「そんな馬鹿な!あの土地に人類が住める訳がない!」

 

そう言うトーパ王国側に衛星写真を見せた。そこには、確かにお城などの文明的な建物があった。

 

「本当だ…これは確かなのですか?」

「ええ。間違いありません。そこで、皆様にお聞きしたいのですが、この文明について何かご存知ありませんか?」

「いや、皆目見当も付きません。申し訳ない」

 

トーパ王国の学者が言う。つまりは、情報は無いという事であった。

 

「では、グラメウス大陸の魔物を駆逐したらこの大陸の利権についてはこの文明2つと我々日本国、そしてトーパ王国で話し合う。と言うのはどうでしょう?」

「ええ。我々としても魔物がなくなれば軍事費を削減できますからな。願ったりです」

 

「では、稲荷神の名において、グラメウス大陸攻略作戦を開始します!」

 

ラドス16世は日本国側の提案を了承。稲荷神の号令で、グラメウス大陸攻略作戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーグラメウス大陸南部ー

 

グラメウス大陸南部の海上には日本国の海上自衛隊が集結していた。

 

派遣されたのは2隻の原子力空母である"白虎"と"朱雀"だ。他にも10隻程度のイージス駆逐艦、ミサイル巡洋艦、強襲揚陸艇2隻と強襲揚陸艦2隻を展開している。

 

作戦は以下の通りだ。

 

①トーパ王国にほど近い地点に海上からの攻撃を行い、 上陸部隊を送り込む。

②部隊を二手に分けて2つの文明に向けて進軍する。

 

と言ったシンプルな物だ。だが、2つの文明に刺激を与えてはならないという政治的理由から文明がある地域まで進軍するのはごく少数のみとされた。

 

そして、グラメウス大陸への艦上攻撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔物達は恐怖に包まれた。森を突如として包んだ火災と黒煙、硝煙とそれに混じって感じることが出来る同胞たちの肉の匂いが彼らの恐怖を煽る。

 

そこに加わる森林火災と砲弾の雨、グラメウス大陸を襲ったのは、無誘導ロケットの群れだった。他にも、駆逐艦や巡洋艦の主砲から放たれる砲弾が魔物達の群がる場所目掛けて突撃する。

 

また、空母やトーパ王国から発進した大型の爆撃機がナパーム弾を投下した。

 

そう、後のグラ・バルカス帝国戦で活躍するナパーム弾はグラメウス大陸の魔物を処理するために生産された物なのだ。そうでなければ、日本国は地球世界でナパーム弾を生産して保管していたことになるので、国際法違反になってしまう。

 

結果的に、史実で起きたベトナム戦争のアメリカ軍によるナパーム弾の投下が、この異世界のグラメウス大陸で再現された訳だ。勿論、そんな事をこの世界の日本国の住人が知る由もない。

 

閑話休題

 

森を、木々を、草木を、大気を、地面を、山を、海岸を、魔物を焼き払う。環境破壊などお構いなしだ。日本側の犠牲をなくすため、徹底的な焼き打ちが行われた。グラメウス大陸の海岸には魔物達が多くいたが、彼らは怨嗟と轟音、悲鳴を撒き散らして地獄を作り出していた。

 

魔物は全て消滅し、生き残った魔物達はグラメウス大陸奥地に逃げ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラメウス大陸に上陸した水陸機動団は後からやってきた陸上自衛隊と交代して、焼け落ちた森の中を、航空自衛隊の近接航空支援を受けながら進軍していた。

 

所詮は知能の低い魔物が、集団行動を取れる訳もなく、烏合の衆である事も理由なのか、数日の内に文明近くまで進軍に成功した。

 

その間に、ゲリラ戦の様に魔物が襲いかかってくる。当然、魔物は人を襲うために脅威度が高いが、徹底的なドローン等を活用した索敵で、犠牲者は出ていない。勿論、このグラメウス大陸攻略作戦に参加した稲荷神による獅子奮迅の活躍も大きいだろう。

 

魔物の接近をいち早く察知して狐火を放つ稲荷神の姿に自衛官の多くは士気が爆発的に上昇したことだろう。

 

だが、魔物の中でも脅威だったのは4足歩行の魔物だ。自衛隊は知らなかったが、これは"ゴウルアス"と呼ばれる魔物だ。

 

"ゴウルアス"とは全長5m、全高2m程の巨大な猛犬あるいは狼だ。だが、日本の狼や犬と違うのは翼と角が生えている点だ。翼はあるものの飛ぶことは不可能らしい。

 

この魔物の恐ろしい点は角から発射される雷属性の衝撃波を伴う爆裂魔法と口からは導力火炎弾と同等の速度で発射される火属性爆裂魔法が無尽蔵に発射される点だ。また、パーパルディア皇国が使役する陸戦生物兵器"リンドヴルム"と同様にスピードは無いと思われたが、そうではなく、機動力は高く、体当たりや爪による引っ掻きですら高威力な完全な上位互換だ。

 

だが、その反面防御力は低く、自動小銃を掃射すれば倒せると言う紙装甲だ。だが、これは野生の生物であるからこそ犠牲なく倒せたのだ。"ゴウルアス"の下位互換である"リンドヴルム"を軍事利用しているパーパルディア皇国を警戒視して、日本国は過剰に攻撃を加えるのだが、それは別の話だ。

 

閑話休題

 

そして、自衛隊は数日後にはグラメウス大陸の文明へ接触を果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外文明国エスペラント王国ー

 

この国は、国民達の間では"人類最後の砦"と呼ばれる国である。それは何故か、それは1万数千年前に遡る。太陽神の使いの手によって魔王はグラメウス大陸奥地に逃れた際、4人の勇者と共に魔王討伐隊が組織され、彼らはグラメウス大陸へと渡った。

 

だが、変質魔素中毒症による症状の悪化が討伐隊に見られると、討伐隊は勇者達に促され撤退。しかし、撤退中に運悪く遭難し、天然の要塞に立て籠もって捜索隊を待つことになった。この時点で、討伐隊は半数を下回っていたが、捜索隊は何年経っても現れなかった。なので、討伐隊のメンバーは魔王によって人類は滅ぼされ、自分達が最後の生き残りと考えるようになった。

 

実際の所、これは間違いなのだが、討伐隊を捜索していた種族間連合の間でも見つからなかった事から討伐隊は全滅した。と言うすれ違いが起こり、討伐隊隊長エスペラントが少しずつ街を作り初代国王に即位した。これが始まりである。

 

そんなエスペラント王国だが、最近は不気味な出来事が続いていた。これは、日本国が魔王ノスグーラを討伐したが為であった。

 

ノスグーラはエスペラント王国を認識していたが、自分達のエサである人類が近場に居るという観点から彼らの知らぬ間に牧場となっていた。だが、魔王ノスグーラが倒された今、魔物達が後先考えずにエスペラント王国に襲い掛かっていたのだ。

 

そして、更に不気味なのが魔物達が大なり小なり火傷や傷を負っているのだ。それも怯えた様子でエスペラント王国に迫ってくるのにはある種の不気味さがあった。それを裏付けるように連日のように南の空が明るい。それが火災によるものなのは明白だったが、その火災に地鳴りの様な物が轟くのを聞いて、人類の終わりが近いのかと思った者もいる。

 

だが、そんな南からやって来たのは、既にエスペラント王国以外では滅んだ筈の人類であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エスペラント王国の南に位置するスダンパーロ区では、エスペラント王国側とやって来た人類との間で現地指揮官同士の話し合いが行われていた。軍隊らしき者達を前にネイロは警戒して、屋外での会談となった。

 

「初めまして。私は日本国自衛隊最高指揮官である稲荷神です」

「こちらこそ。私はスダンパーロ地区代表のネイロと申します」

 

設営されたテントで、交渉が始まって早々稲荷神はいきなり本音をぶっかけた。

 

「我々は貴国と国交を結ぶべくやって来ました」

 

この言葉にネイロは驚いた。エスペラント王国は人類最後の砦である。それなのに国交を結ぶと言う言葉を額面通りに受け取るならエスペラント王国とは別の国があるという事になる。

 

「済みませんが、中央にも貴方達の情報を伝えなくてはなりません。尽きましては、貴国、日本国とその周辺国について教えてもらいたいのですが」

「はい。我々は島国でして。現在国交を結んでいる国は増えていますよ」

「なんと!では、神話の"世界の門"はまだ機能していますか!?」

「はい。トーパ王国と呼ばれる国が管理していますよ」

 

ネイロは常識を覆す内容に脳が震えた。そして、一国も早くこの情報を伝えるべく彼は中央に文を送るのだった。だが、朗報を打ち砕くかのように魔物が襲撃を仕掛けてきた。

 

彼らは一様に火傷を負い、死に物狂いで迫ってくる。ネイロは重要な証人である日本国の者達だけでも逃がそうと騎士達に動員を掛ける。しかし、騎士達を待たずに、魔物達を前に稲荷神は臆する事なく言った。

 

「総員構え!」

 

カチャカチャ

 

皆が銃を構える。しかし、ネイロからしてみればおかしな恰好をした者達が杖を向けているようにしか見えない。

 

「撃てぇ!」

 

バババババババ

 

そう言った瞬間、魔物達が一瞬で動きを止めて倒れ込む。この様子をネイロ含めた騎士達が唖然とした様子で見ていた。今回侵入した魔物はゴブリン100、オーク50、オークキング1、漆黒の騎士1だ。

 

ゴブリンとオークは何とかなる。しかし、オークキングはオークを2回りも大きく、知能もある。しかも弓や剣を弾き、人間の力を軽く超えた筋肉による攻撃を受けては人間など簡単に潰されてしまう。

 

そして、漆黒の騎士はオークキング程の筋肉を持ち、名前の通り漆黒の鎧に身を包んでいる。その剣技は達人の域を超え、築かれた屍は数知れない。そんな敵だったのだ。それがこうもアッサリと倒されたとあっては驚くのは無理もなかった。

 

そして、彼らの持つ知識、軍事力はエスペラント王国の現状を変えうると判断したネイロは至急、王がいるレガステロ区に文を飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーエスペラント王国ラスティネーオ城ー

 

今代のエスペラント王国国王、ザメンホフ27世はスダンパーロ区の代表であるネイロから送られてきた文を家臣と共に吟味していた。

 

「ふむ…『南から日本国と名乗る島国が国交を結びに接触。彼らの他にも国があることが彼らの証言で確認。彼らはマスケット銃と似ているが、連射性能は段違いの武器を装備。許可があれば王城まで案内したく思う…』コレをどう見る?」

 

ザメンホフ27世は彼が信頼する老騎士モルテスに問う。

 

「そうですな。銃でしたら銃士ザビルの方が詳しいかと存じます」

 

モルテスとザメンホフ27世はザビルと呼ばれる男を見る。少し痩せ型であり、緑色の服に身を包む紳士だが、銃を装備している。その腕前は王国随一である。

 

「陛下。その異国の軍隊は銃を装備しているとの事ですが、連射性能が段違いと言うことが解せません。マスケット銃は次弾装填がかかる代物であり、連射はできない筈です。つまりは、我々より高性能な銃を装備している物と思われます」

 

そして、最後にザメンホフ27世の息子…つまりは王太子であるセイに目を向ける。彼は王太子ながら技術や新しい物に目が無く、言葉遣いも王太子とは思えない。本人曰く王になるつもりはなく、ザメンホフ27世は彼を矯正しようとしたが、結局失敗して諦めてしまう程だが、その頭脳は王国随一である。

 

「そうだね。僕もザビルに同意見かな。火縄銃だってここ百年でより性能の良いマスケット銃になったんだ。銃の技術を高めていけば連射だって可能だと思うよ」

 

セイは異国の兵士達が持つ銃を見たくてしょうが無いと言った様子だ。王自身、国を助けてもらった礼もあるので、彼らを王城に案内する方向で会議は決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 






〜コラム〜

ゴウルアス

グラメウス大陸に棲息する魔物。原作内では魔帝が転移前まで活用していた陸戦兵器らしい。だが、稲荷神達はそこまでの情報を知らないので、グラメウス大陸固有の魔物だと思っている。

グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
  • 講話する
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