稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:サード・アイ

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調査団

 

 

ー第三文明圏外シルカーク王国王都タカク日本国大使館ー

 

朝田は、日本国外務省本庁より送られてきたメールを見ていた。そこには、朝田がため息を吐きたくなる内容が記されていた。

 

「朝田さん?どうされました?」

 

そこに、事務員がやって来た。事務員に朝田は説明する。

 

「シルカーク王国にクルセイリース大聖王国が砲艦外交を仕掛けた件だ。シルカーク王国は神聖ミリシアル帝国、ムー国、そして日本国に『圏外文明国の侵攻の可能性あり』との書簡を送ったそうだ」

「圏外文明国とは?」

「文明圏及び文明圏外国にも属さない国家。多くの支配地域を持つ全貌の判明しない文明国に匹敵する共同体もしくは国家の事を言うらしい」

 

大層な名前だなと事務員は思い、一つの結論に至る。

 

「と言うことは、わが国と国交のある共同体に圏外文明国、つまりクルセイリース大聖王国が侵攻する可能性があると?」

「ああ。そして日本国政府が神聖ミリシアル帝国とムー国で調整を行った結果、第三文明圏の列強たる日本国が対処しろとの事だ。グラ・バルカス帝国をムー大陸から追いやった恩を忘れたのか?」

「彼らもここまで来る程の技術力がないだけでは?」

「どうだかな…」

 

朝田は愚痴を零しながらも業務に勤しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー圏外文明国クルセイリース大聖王国聖都セイダーー

 

聖王女ニースの騎士として、今回の北西世界の調査に出向いていたミラは、聖王女ニースに伝えるため、雨が降る中を黄色い陸鳥を駆けて、テンジー城に急いだ。

 

彼は城の中に入ると、まっすぐと聖王女ニースの執務室に向かった。彼は雨で濡れた服装を改める間もなく、入室した。

 

「失礼します!」

 

そう言って彼は聖王女ニースの言葉を待たずに資料を彼女の前に手渡した。報告書には日本国について僅かながらの説明と、軍部の日本国についての楽観的な見方が記されていた。最後には、日本国への調査を実施すべきとの文言も添えていた。

 

ニースは一通り読むと、決断する。

 

「…よろしい。許可します。軍部ではあなたの報告書にはまるで関心がありません。聖王様も日々拡大する強硬派の傀儡となりつつあります。私を慕ってくださる穏健派も少ない。衝突を回避するための最大限の努力をするべきです」

「ありがとう御座います。では、シルカーク王国の日本国大使館を訪ね、調整の後に各部門のエキスパートを集めた日本国調査団を結成したく思います」

「本来は、内密に行うのが望ましいのでしょうが、戦争を回避するためには今の流れを止める強力な一手が必要です。ある程度軍部を巻き込む必要があります。私は所詮聖王女、聖王ではないので王権は付与できません。故に、貴方の行動は調査団に留まります。軍部を抑え込む強力な一手を手に入れるため、日本国調査が可能なら詳しく調査をお願いしますね」

「承知しました!」

 

聖王女の改革は着実に進んでいく…

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外シルカーク王国王都タカク日本国大使館ー

 

クルセイリース大聖王国の王族の使者として、聖王女の騎士ミラは日本国大使館を訪れていた。彼は日本国大使との面会を申し込んでいた。日本国とは国交がないので、シルカーク王国に仲介の上実現した。シルカーク王国側は戦争を回避できるのならば、仲介の一つなど安いものだと考えたからだ。

 

ミラは大使館内に入った。すると、目に飛び込んできたのは調和の取れた光、外の湿気のジメジメとした暑さとは異なり、涼しい。入り口より少し進むと、エントランスには日本国の紹介動画が稲荷神合成ボイスで再生されていた。

 

ミラにはナレーターの声が稲荷神と言う情報は全く知らないが、途轍もない情報がこの紹介動画だけで分かる。

 

「なんと!日本国はこれほど鮮明な映像魔導具を実用化しているのか!?」

 

映像魔導具1つで感じる高度文明の片鱗。ミラは決断する。

 

「シルカーク王国が畏怖を向けるのも頷ける。必ず日本国の秘密を探ってやる」

 

ミラは事務員の案内で会議室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今回はどのようなご要件で?」

 

クルセイリース大聖王国が、どのような経緯でやって来たのか。シルカーク王国に提示した内容を知っている朝田は警戒の色を隠せない。

 

「私はクルセイリース大聖王国王家から命を受けて参りました。私としては、衝突するのは望ましくないと考えています」

 

朝田は、今までの強権的な態度とは打って変わった理性的な姿勢に驚く。パーパルディア皇国といい、グラ・バルカス帝国と言い、覇を唱える国の外交官は此方を下に見て傲慢な姿勢を取っていた。この世界では文明圏間の差別が通常だが、列強と呼ばれる国でさえ外交馬鹿だったのだ。クルセイリース大聖王国も例に漏れずシルカーク王国に対して強硬姿勢だったと言う。だが、目の前の使者は理性的だ。その様子に朝田は驚いたのだ。

 

「シルカーク王国から周辺国に対する日本国の影響力は絶大だと伺っています。日本国を知るため、約9名からなる調査団を派遣したく思います。本日はその許可と調整に参りました」

「分かりました。調査団の件は本国に問い合わせします。しかし、先日のシルカーク王国への対応とは、まるで違いますね」

 

朝田が遠回しに皮肉ると、ミラは申し訳なさそうに言う。

 

「わが国も一枚岩では無いと言うことです。ですが、衝突を避けるために模索をする人間は王家にもいる。と言うことです。よって、これは国の意思と言う訳ではありません」

「分かりました。では、こちらから貴国に調査団若しくは使節団を派遣するのは可能でしょうか?」

 

この言葉に、ミラはつまる。

 

「それは…恐らく出来ないでしょう」

「そうですか。色々と事情がお有りなのでしょう」

 

その後、会談は終了して調査団の件は本国に届く。そして、それは最高統治者である稲荷神の耳にも入るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外列強日本国首都東京ー

 

グラ・バルカス帝国戦との大詰めに入る段階で、日本国は新たな戦争の火種を抱えていた。それは、突如として現れた圏外文明国、クルセイリース大聖王国であった。

 

彼らは日本国と国交を結んでいたシルカーク王国に対して、従属とも取れる内容を出してきた。当然、これを受け入れられる訳もなく、シルカーク王国とクルセイリース大聖王国は一触即発であった。

 

しかし、シルカーク王国単独では飛空艦と呼ばれる彼らの兵器を突破する事は不可能だ。また、過去には圏外文明国の登場で混乱に陥った事例もあり、列強として知られる神聖ミリシアル帝国、ムー国、そして第三文明圏の旧列強パーパルディア皇国を滅ぼし、新たな列強となった日本国に助力を願い出た。

 

結果、日本国が対応することになり、日本国はグラ・バルカス帝国と言う西の果ての戦線と南東の2つの戦線を抱える可能性が出てきた。軍事的常識として戦線が複数個あるのは望ましくない。

 

そこに齎されたのが、クルセイリース大聖王国から日本国への調査団受け入れの是非のメールである。このメールに、外務省は緊急時に当たると判断。稲荷神様にも是非を問うべく、休暇中であるが稲荷神は呼び出されたのだった。

 

稲荷大社謁見の間にて、稲荷神は上座に座布団をかけてお菓子を食べながら外務大臣大隈の話を聞いていた。

 

「…とシルカーク王国の日本国大使をしている朝田君から連絡がありました。そこで、皆様のご意見を聞きたく存じます」

 

その言葉を皮切りに、次々と議論が交わされる。自衛隊や防衛大臣ら軍事面から、外務省の外交面から、経済産業省の内政面から。様々な意見が交わされるが受け入れ派と反対派で分かれてしまった。

 

その様子を見ていた稲荷神はお菓子を食べ終わってしまい、会議が終わるのを待っていた。そして、総理大臣石原が問う。

 

「稲荷神様。稲荷神様の考えをご教授願えないでしょうか?」

 

皆の視線が稲荷神に集中する。稲荷神は必死こいて考えを巡らす。

 

「えっと、私は受け入れるべきだと思います。理由としては、彼らが我々の脅威を知れば戦争を仕掛ける事は無くなると思うからです」

 

では、何故グラ・バルカス帝国には情報封鎖をしたのかと言えば、彼の国を放っておけば貿易相手国や安全保障の面で日本経済の衰退、日本人への攻撃が起こりかねない事を危惧したからだ。だが、今回は戦線が2つになりかねない。ならば、日本国への調査団など安いものだ。

 

と、この場に集まった灰色の脳細胞を持つ自衛隊高官、政府首脳陣は考えたのだ。実際には、稲荷神は思い付いたことを言っただけなのだが、彼らは勘違いをしていた。

 

こうして、日本国はクルセイリース大聖王国の調査団受け入れを許可した。そして、朝田は本国とやり取りをしながら、日程を調整。調査団受け入れ日が遂にやって来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外シルカーク王国王都タカクー

 

クルセイリース大聖王国の調査団を乗せた飛空艦の一団が再びシルカーク王国王都へ姿を現した。彼らはシルカーク王国で日本国の機体に乗り換えた後、日本国本土に向かう予定である。

 

王城の訓練場ではクルセイリース大聖王国の技術力を測るため、自衛隊だけではなく、有識者や技術者が多く待機していた。

 

外務省の朝田や自衛隊の田代、若手だが航空工学、機械工学に精通した井手がいた。稲荷神としても飛空艦なる物に興味があったのか、稲荷神と言う肩書は隠した上でやって来ていた。

 

飛空艦を見て、井手は稲荷神に独り言のように言う。彼からすれば生で見る稲荷神に独り言、という体でも良いから話したいのだろう。

 

「あれは…航空力学や空気力学を使用していません」

「と言うと?」

「ヘリコプターにはダウンウォッシュと呼ばれる下へと引き付ける風があります。しかし、あれは極端に少ないのです。あの程度の翼であの大きさの機体を飛ばすのは、不可能…とは言えませんがコスト上宜しくないと思います」

 

興味が唆られた稲荷神は案内として来ていた航空自衛隊の田代に話しかける。

 

「自衛隊としてはどう見ますか?」

「はっ!私1個人の見解ですが、多くの物資を運べるのであれば、運用方法次第では脅威になると考える所存です。恐らく、わが国の駆逐艦か輸送ヘリに相当します。ですが、わが国では対ヘリコプター戦術としてドローンによる攻撃を行っています。ですので、あの船体の爆発の耐久度などでは脅威になりうると考えます」

 

議論を交わす日本国の専門家と付いて行けない朝田と稲荷神を他所に、飛空艦は訓練場に着陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

メステル型輸送飛空艦に乗艦した調査団はシルカーク王国王都に着陸する少し前に、調査団のミラは目の前の人物に頭を抱えた。

 

彼女は聖王女ニースの推薦人であり、先に乗艦していると言うので彼女を乗せて出発した。しかし、いざ面会してみればその者は推薦した聖王女ニース本人だったのだ。

 

「ニース様。本当に行かれるつもりですか?」

「もちろんです。あと、"様"は不要です。私はあくまでも貴方の部下、ニースと言うことになっています」

 

ニースは続ける。

 

「私の国外外遊は聖王様にも許可は取っていません。お忍びですが、バレることは有りませんよ。手は打ってあります。それに、この変装に他の調査団の人も気づいてませんしね」

「バレるに決まってます!それから、勝手な行動は慎んで下さいね!」

「分かってますよ」

 

不安を抱えつつも、彼らは下船の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

シルカーク王国に足を踏み入れたのは、以下の面々だった。

 

・調査団団長ミラ

・生活調査員ニース

・第二魔戦騎士団長アバドン

・魔法武具士アニーナ

・魔法技師テタル

・国政経済学者イルサ

・銃神ダルサイノ

 

他1名である。彼らはミラが選抜した各部門のエキスパートであり、日本国の国力を測る上で、強力な布陣であると彼は確信していた。だが、奇しくも、一国のトップである稲荷神と一国の王女であるニースが身分を隠しての対面であった。勿論、双方がそんな事を知る由もないのだが…

 

「では、これよりこの機体、輸送用ヘリコプターにて北西のロデニウス大陸と呼ばれる大陸のクイラ王国に向かい、別の機体で日本国の首都、東京までお連れします」

 

朝田の案内で彼らの目に飛び込んできたのは、随分と小さな飛空艦であった。その様子に裏表の少ない、悪く言えば腹芸が出来ないアバドンが言う。

 

「ふん、なんとも小さい飛空艦だ。こんな小さな機体しかないのか?」

 

アバドンの言葉にミラは焦る。彼の言葉が日本国の者に聞かれ、気を悪くしたら困ると考えたからだ。しかし、飛空艦を見慣れた彼らからすると、ヘリコプターは小さいと言えるもので、他の者は頷いた。

 

因みに、何故クイラ王国を経由するのかと言うと、シルカーク王国は法により外国の航空機、またはワイバーンが王都上空を飛行するのを禁止している。その関係で、滑走路を作れず、シルカーク王国への移動手段は船であった。しかし、今回は緊急時と言うことで、特別にヘリコプターの使用許可が出ていたのだった。

 

閑話休題

 

ヘリコプターを侮っていた彼らがその評価を改めるまで、あと少し…

 

 

 

 

 






〜コラム〜

時系列

グラ・バルカス帝国、ムー大陸から駆逐。

グラ・バルカス帝国上陸作戦準備開始。稲荷神、日本国へ帰国

クルセイリース大聖王国、シルカーク王国に砲艦外交

稲荷神、シルカーク王国に向かう←イマココ

調査団同行

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

グラ・バルカス帝国本土決戦

この様な流れです。省略部分はネタバレになるので省きます。

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グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
  • 講話する
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