稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:サード・アイ

115 / 121
2026/07/22日刊ランキング入賞ありがとう御座います!!

お気に入り登録、高評価、誤字報告ありがとう御座います!


日本国の強さ

 

 

ー第三文明圏外列強日本国首都東京神域ー

 

ガハラ神国との会談が終わり、クルセイリース大聖王国の調査団は富士演習場に向かったが、稲荷神は神域でガハラ神国のクシナダの言葉を吟味していた。しかし、幾ら吟味した所で当事者ではない稲荷神が知っている情報などたかが知れている。そこで、当事者を呼ぶことにした。

 

稲荷神の家の縁側に座って、自分ともう一人分の菓子折りを準備し終えてお茶を飲んでいた。待っていると、稲荷神の母である天照大御神(おかあさん)が顕現していた。

 

「珍しいわね。稲荷ちゃんが私を呼ぶなんて」

「実はですね、ガハラ神国って言う国から八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が復活するって言うんですよ。日本神話ではスサノオ様が退治した筈なので矛盾があるな〜と思って、当時を知ってるだろう天照大御神(おかあさん)を呼んだんです」

 

稲荷神の説明に天照大御神(おかあさん)は、バツが悪そうに言う。

 

「えっとね。(スサノウノミコト)が私に内緒で分け御霊を与えたの。唯でさえ、私の上司の天之御中主様の分け御霊を与えられていた人間が武勇に優れた(スサノウノミコト)の力まで得たら中津国にも悪影響と判断して稲荷ちゃんの生まれる遥か昔の中津国に追放したの。まあ、高天原で暴れてたからお仕置きの意味も込めてね…」

 

一息置いて、天照大御神(おかあさん)は言う。

 

「中津国にはこの世界に追放された八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の半身が暴れてたの。(スサノウノミコト)は半身を退治することで義妹と結婚したのよ」

 

つまりは、間接的なマッチポンプであった。

 

「まあ 今のが日本神話の裏話って所ね。でも八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の封印が解かれるのは確実っぽいわ。私も稲荷ちゃんに加護を与えておくから、頑張ってね。私達は日本から外には危険すぎて出れないから、頑張ってね!」

 

なんとも気の抜けた応援をして、天照大御神(おかあさん)は姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外列強日本国富士演習場ー

 

「これより皆様には日本国の軍事力について簡単な説明をします」

 

稲荷神が天照大御神(おかあさん)と会話をしている頃、クルセイリース大聖王国はガハラ神国との会談を終えて、富士演習場に来ていた。

 

調査団はこの場所に来るための移動手段にも驚愕した。リニアと呼ばれる時速500kmに及ぶ大規模移動手段は高速で動く割には振動が驚くほど少ない。室内は快適な温度に保たれている。

 

魔法技師テタルと魔法武具士アニーナは終始リニアに驚愕していた。

 

超高層ビル群を抜け、田舎を抜け、トンネルが暫く続くいたかと思えば目的地に着いていた。魔戦騎士団長アバドンは超高層ビル群が沢山あった事など、目に見える日本国の国力に驚き疲れていた。

 

だが、これからは自分達が専門とする軍事演習の見学だ。自国の騎士団が日本国にどれ程対抗出来るのか見極める為にも気は抜けなかった。

 

案内された場所は広い敷地だった。視界の奥には雲の上にまで聳え立つ綺麗な山が見える。

 

「左をご覧ください」

 

案内の自衛官に促され、左を見るとそこには地鳴りのような音を出しながら接近する3つの鉄の箱が高速で彼らの目前に現れた。この地鳴りのような音が鉄の箱の重さを物語っている。

 

この大質量の鉄の塊に、アバドンは騎士団の爆裂魔法でも対処出来ないと考える。彼の中で"12式戦車"は突撃戦力であると考えていた。だが、その考えは打ち砕かれる。

 

「では、これより砲撃演習を行います」

「え?」

 

案内人に促されて視線を移すと、遥か2km先に四角い板があるのが目に映った。

 

「何を言っている!あんな所にまで陸上戦力の砲撃が通る訳がない!近づいて砲撃するのか?!」

「いや、あの鉄の箱から飛び出る棒は砲身ではないのか?」

 

アバドンとシエドロンは互いに意見を言う。だが、彼らの知識にあそこまでコンパクトかつ、スマートな砲身は見たことが無かった。彼らの知識として、飛空艦に用いられる砲台は射程2km未満の単発式だ。しかも、牽引式魔導砲は馬にひいて運ぶ物であり、射程も精度も悪い。

 

「それにしても遠すぎる。とても届くとは思えない。届いたとしても何発撃ち込むつもりなんだ…」

 

故に、このような結論に至るのも仕方なかった。その答え合わせかのように、"12式戦車"は発砲する。発射された砲弾は直線上にあった的の真ん中を撃ち抜いた。

 

初撃で命中させたことに2人は驚く。驚きが冷えない中、案内人は冷静に「スラローム射撃を実施します」と言う。

 

戦車は静かに走行を始め、砲撃を行う。彼らの知識では走りながらの砲撃など不可能。しかし、それを可能とし、あまつさえ的の中心を砲撃する日本国の戦車に彼らは何度目かの驚愕を受ける。

 

1発1発の砲撃が、最近開発された魔導具による魔法の威力を凌駕している。

 

「では、次に航空自衛隊の戦闘機富士による機動飛行を行います。東の空をご覧下さい」

 

言われた通り、東の空を見ると矢じりのような物体が超高速で飛来してきた。日本国に入国する際に乗ってきた飛空艦よりも速い速度で調査団のすぐ近くまで来た富士は、機首を上げる。

 

雷鳴のような轟きが空気を震わせ、耳を刺激する。機首を上げた富士は圧倒的な上昇スピードで空に向かい、視界から消えてしまった。

 

「シエドロン飛空艦隊長、どうされました?」

 

ニースが声を掛けたシエドロンは冷や汗を滝のように流し、震えていた。

 

「ありえん!ありえんぞ!」

「どうされました?」

 

2人は日本人には聞こえないように小声で話す。

 

「あんなに速くては対竜鳥連射式魔炎砲などの対空魔光砲の効果が期待できない!はっきり言ってあたらないぞ!飛空艦隊の装備では制空権を確保できない!練度で埋められる差を優に超えている!」

 

自分達の知る分野でも負けていた事に、シエドロンやアバドンは打ちのめされる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー同日夜、日本国首都東京帝国ホテルー

 

クルセイリース大聖王国の調査団は会議室に集まって調査結果を共有していた。

 

「1つ、確実にわかった事があります。日本国は事前調査で脅威ではないと判断されたパーパルディア皇国を遥かに凌駕した国力と技術力、軍事力を有しています。絶対に敵に回してはならないと言うことです」

 

調査団団長ミラの言葉に皆が頷いた。

 

「ミラ殿の言う通り、嘗て列強と恐れられていたパーパルディア皇国であれば、国力は向こうが高くとも飛空艦隊の運用次第では戦局を優位に進められただろう。しかし、日本国は次元が違う。なんでもパーパルディア皇国との戦争で、日本国は誰一人として死者を出していないという。彼らを敵に回すのは愚かな行為だ」

 

クルセイリース大聖王国軍の主力、飛空艦隊を長年率いてきたシエドロンの言葉は重い。様々な意見が交わされるも、その土台には『日本国を敵に回すのは愚策』と言う1点があった。

 

その後、クルセイリース大聖王国の調査団は日本国によってシルカーク王国まで移送。その後、飛空艦によって帰国した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外国クルセイリース大聖王国聖都セイダーー

 

日の帷は消え、聖城であるテンジー城の一角にある軍王ミネートの執務室にて、二人の影がロウソクの火によって作られていた。金色の正装を身に纏った短髪の初老の男が上座。テーブルを挟んで初老の男の向かい側に白色のローブを纏った男が座っていた。

 

「軍王ミネート様、この報告書の内容。どうされますか?」

 

彼らの目の前にはテーブルに置かれた報告書があった。表紙には王家の印がある。つまりは、公的文書の中でも無視出来ないものであった。

 

「日本国は危険。日本国と敵対してはならない。荒唐無稽だ。しかし、一考に値するのも事実だ」

 

彼は武力によって植民地を増やし、国を富ます事を是としている人間だ。故に、この報告書は彼の考えを邪魔しているようにしか思えなかった。だが、報告書の内容を一蹴する証拠もないと考えていた。

 

シルカーク王国より北方には更なる国がある。ミネートにとって魅力的な市場だった。だが、日本国などの列強に勝てる確証がないのも事実。

 

ミネートが考えている時、彼の対面にいるメナスの瞳が怪しく輝き、その光に当てられたミネートの目の光は一瞬失われる。しかし、次の瞬間には戻っていた。

 

「まあ、問題あるまい。日本国が飛空艦隊を破ったとしてもあれがあるからな」

「はい。黒月族の対ラヴァーナル帝国決戦兵器、"キル・ラヴァーナル"ですね?」

「ああ。それにしても貴様の占いの精度は凄まじいな」

「お褒めに与り恐悦至極」

「キル・ラヴァーナルがある限り我が国の国土を踏み荒らす者はいない」

 

キル・ラヴァーナルを製造したとされる種族、黒月族。古の魔法帝国に少数民族でありながら戦ったとされる。ラヴァーナル帝国とは異なる独自の魔法技術体系を持ち、少数で大きな戦力を動かすのに長けていた。

 

だが、彼らはラヴァーナル帝国の住人たる光翼人に負けず劣らず極悪であった。光翼人と黒月族は他種族を下と見做す点は同じだが、黒月族は少数民族故に目立った殺戮は必要最小限な点は幸い…?なのかは疑問が残るが、とにかく、彼らはラヴァーナル帝国と戦った。

 

彼らは黒い月の住人と考えられたことから"黒月族"と呼ばれた。そんな黒月族に対してラヴァーナル帝国も、ラヴァーナル帝国に対して黒月族も互いに激しい憎悪を抱いていた。

 

ラヴァーナル帝国は黒月族に多額の懸賞金を掛け、集落を見つけては軍を派遣して殲滅し、街に潜んでいれば街ごとコア魔法で殲滅する。報復の為に黒月族は対ラヴァーナル帝国の兵器を世界各地に残している。黒月族は現在では確認されていないが、時々彼らの兵器が発見されることがある。それを彼らは見つけていたのだ。

 

「軍王様、キル・ラヴァーナル以外にも我々の切り札はあります」

「聖王直轄軍は戦力にはならないぞ」

「いえ、あの魔法のことです」

「ふむ…お主が何故国家機密を知っているのかは知らぬが…確かにあの魔法があれば怖いものなしだ!」

 

彼らは今後の栄華を夢見て笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外シルカーク王国王都タカク日本国大使館ー

 

朝田達は、連日の忙しさ故に休めずにいた。シルカーク王国から世界に通達された『圏外文明国侵攻の可能性』は世界を驚愕させた。

 

唯でさえグラ・バルカス帝国と言う世界の敵をムー大陸から追い出したとは言え、脅威は消えていない。そんな中で、東の端。第三文明圏外の外にまで外征する余裕は第一文明圏と第二文明圏には無かった。故に、第三文明圏の列強とされる日本国への対応を求める圧力は強かった。

 

日本国としても、シルカーク王国の邦人保護を目的に稲荷神は自衛隊派遣を決定した。しかし、第三文明圏及び第三文明圏外国としては外征能力に余裕があるパールネウス王国も海軍と竜騎士団を派遣することを決定した。パールネウス王国としては、パーパルディア皇国から生まれ変わり、周辺国との歩調を合わせる協調外交路線に切り替えたと世界に示すチャンスだからだ。

 

10隻の竜母を含む魔導戦列艦と100騎程度の竜騎士をシルカーク王国に派遣した。この情報に自衛隊は難色を示した。

 

理由としては、敵味方識別装置が付いていないワイバーンオーバーロードでは誤撃墜する可能性があるからだ。国際協調に皆は頭を抱え、朝田も窓の外から見えるワイバーンオーバーロードと海上自衛隊の艦隊を見て、今後の自分を考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外シルカーク王国王都タカクー

 

シルカーク王国陸軍本部では、クルセイリース大聖王国から突き付けられた猶予である2ヶ月が経過しようとしていた。

 

楕円形の大きな机には、錚々たる面子が集まっていた。

 

《シルカーク王国》

・竜騎士団長ヒーシル

・王都防衛騎士団長ビセキ

 

《パールネウス王国》

・竜騎士団長ハムート

・対圏外文明国防衛艦隊司令長官バイア

・蒸気戦艦艦長ガーラス

 

《日本国》

・陸上自衛隊シルカーク王国派遣軍団長大内田

・海上自衛隊シルカーク王国派遣艦隊平田中将

・航空自衛隊シルカーク王国派遣軍団長新原

・稲荷神

 

今後の第三文明圏外及び第三文明圏の今後を左右する会合にシルカーク王国側も気合が入る。しかし、日本国の機能性を追求した装備に、パールネウス王国やシルカーク王国は貧相に見えてならない。しかし、侮ることなかれ。

 

日本国の軍人を、日本国そのものを貧相だの蛮族だのと下に見ていた国は尽くが滅ぼされる道を辿っている。特に、パールネウス王国は前身たる列強パーパルディア皇国を下した日本国への畏怖も持っていた。

 

パールネウス王国のハムートは自衛隊員に向けて言う。

 

「日本国の方々、シルカーク王国は現在、飛行場の建設を急いでいるが、時間が無いために貴国の戦闘機を飛ばすレベルにまでは建設まで時間が掛かると聞く。そこで、建設が終わるまではシルカーク王国はパールネウス王国のワイバーンオーバーロード及びワイバーンロードがシルカーク王国領空を守ります。異論はありませんか?」

 

シルカーク王国は国防策として他国が飛行場の建設、利用するのを禁止していた。しかし、亡国の危機が迫っている中でそんな事を言っている場合では無くなり、急遽建設に踏み切った経緯がある。だが、急にジェット機が運用できる飛行場を建設できる訳もなく、日本国の攻撃ドローンと各国のワイバーンに任せるしかない。

 

シルカーク王国本土のワイバーン用の飛行場を改造してワイバーンロードやワイバーンオーバーロードを運用出来る状態になっている。

 

また、パールネウス王国は竜母を保有しているので、竜母からの発艦が可能だ。しかし、ワイバーンロードやワイバーンオーバーロードを長時間船の中に居させるのは、彼らの体調的に宜しくない。故に、ハムートは言う。

 

「当面の間、シルカーク王国の竜舎を我々は利用させてもらいます。異論はありませんか?」

 

他国の軍隊をシルカーク王国に駐留させる事に少し抵抗を覚えるが、シルカーク王国とパールネウス王国、そして日本国とでは実力が異なる。ワイバーンロードにしても、ワイバーンオーバーロードもシルカーク王国のワイバーンとは一線を画すのだ。自国を守るためには納得せざるを得ない。

 

日本国としては、敵味方識別装置を持っていない飛行物体が空を飛ぶのは困るが、陸上自衛隊としては特に問題はないので言わなかった。

 

「次に海軍ですが、我々パールネウス王国対圏外文明国防衛艦隊が先陣を切ろう。日本国はどうかね?」

 

この少し挑発気味な言葉に稲荷神は少しイラッときた。そこで、海上自衛隊平田中将に目配せし、彼は意見を言う。

 

「失礼ですが、我々は貴国の艦隊とは別行動を取ります。そもそも、貴国の艦隊では我々の艦隊に付いていく事は出来ませんし、貴国の航空戦力を誤射する可能性があります。認識に違いがあるので申しておきますが、我々の対空戦闘として、目で捕捉出来る距離まで接近された場合、2重の対空防衛網を破られたことになります。担当空域は分けるべきかと」

 

パールネウス王国はシルカーク王国よりもレベルの高い国だ。そんなパールネウス王国に、日本国の将軍は『君たちは弱いから付いてくんな』と言っているに等しい。

 

パールネウス王国としても、列強パーパルディア皇国を滅ぼした日本国は軍事研究の対象だ。しかし、軍事知識は自国の常識を元に判断しているので、研究には四苦八苦していた。

 

パーパルディア皇国は日本国に手も足も出すこともなく倒され、異界の大帝国たるグラ・バルカス帝国もムー大陸から追い出したと聞く。

 

結果として、次の事が取り決められた。

 

・シルカーク王国王都タカク防衛は、空はパールネウス王国のワイバーンロード及びワイバーンオーバーロードと、日本国の攻撃ドローンが担当。陸では、陸上自衛隊が防衛を担当する。

・海では海上自衛隊が王都タカク南東の150kmのシルカーク王国ヒシー島海域に、パールネウス王国は同島よりさらに東150kmに展開する。

・ジェット機が運用可能になったら再度協議する

 

以上の事が取り決められるのだった。






〜コラム〜

神秘

神や悪魔といった人間が信じなければ存在を保てない彼らは、地上から追い出され高天原に封じ込められた。簡単に言えば、神秘が空気。信仰心が栄養だ。これがなければ神達や悪魔は存在を保てない。信仰心が史実地球より遥かに高い稲荷地球でも日本国しか存在を保てないと言う次点で日本国の異質さが分かるだろう。

お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!



グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
  • 講話する
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。