ークルセイリース大聖王国聖都セイダーー
メナスが言う"魔法"それは"国家級敵国殲滅魔法"の事である。星の世界(日本で言う宇宙)から星の欠片(小隕石)を引き寄せる古代魔法だ。だが、命中誤差が150mもあるが威力は約束されている。"艦隊"に使用すれば文字通り壊滅させられる。
だが、この魔法は欠点があり引き寄せる星の欠片の大小や数はランダムであり、欠片が分裂すれば周辺に散らばったり、数km単位の誤差が生じる。つまり、自国民にすら被害を与えかねない代物であった。
軍王はメナスに対して言う。
「わかった。考えるから静かにしてくれ」
「分かりました。私は別室に移りますのでご決断はお早めに…」
メナスが扉を閉める。それを見届けた彼は考えを巡らせた。
当初報告されていた北西世界。とりわけ日本国に対する
報告書の内容はすべて間違いだった。それは、過大評価しても自国が負けるわけが無いと言う自信の下であった。だが、飛空艦隊が壊滅したと聞いた時には衝撃が駆け巡った。
その時に和平交渉を結ぶべきだったのに、
如何に敵が強かろうと、古の魔法帝国の兵器には敵う筈がなかった。その根拠が空中戦艦の強さにあった。空中戦艦1隻で1国を壊滅させられる強さがある。だが、そんな空中戦艦だが1隻1隻性能が異なる。
それは、解析技術の差や経年劣化が原因だ。だが、聖帝ガウザーの性能は従来の性能を90%も発揮できる。だが、そんな空中戦艦は日本国の水上艦1隻に破壊されてしまった。
今になって彼は聖王女ニースが連れて行った調査団の報告が真実であると悟った。何故自分は情報の裏取りをしなかったのか、開戦に舵を切ったのか思い出せない。だが、時間は待ってくれない。
キル・ラヴァーナルは今も暴れているが、海上を動く能力はない。故に、それが敵にバレてしまえばキル・ラヴァーナルは放置して、騙し討ちをした落とし前を付けにやって来るだろう。
そして、使用を躊躇っている国家級敵国殲滅魔法。これはメナスが齎した魔導技術によってクルセイリース大聖王国から溢れ出す神通力を使用する。この魔法は禁呪指定され、国家機密であり、その内容を知るのはごく一部だ。(だからガハラ神国の術を調査団は知らなかった)
本来、この魔法は効率が悪くとてもではないが使用出来る程ではなかった。だが、クルセイリース大聖王国の天才達が研究開発をした結果、神の遺産たる"王家の秘宝"と軍王に貸与される"軍神の指輪"を組み合わせることで神通力の使用を可能にし、国家級敵国殲滅魔法は現実のものとなった。
そして、軍王ミネートにとって幸運なことに必要な"王家の秘宝"と"軍神の指輪"は聖王子ヤリスラの摂政たる聖母ラミスから与えられ、手元にある。これも、聖母ラミスから軍王ミネートに対する信頼の結果だろう。だが、神通力は使用を禁じられており、それを提案すれば反対派が現れるのは自明の理だ。
彼は軍王と言う立場を利用して事後承認で禁止されている神通力の使用に踏み切ることを決意した。向かって来るであろう古代兵器を圧倒する水上艦が艦隊を率いてやって来る。それを迎え撃つためにミネートは"神の棟"と呼ばれるいつ作られたのかも不明なアーティファクトがある。その中心部の"軍神の棟"は溢れ出る神通力の濃度が最も高い。
そこで儀式を行うのが最善と考え、彼は行動を開始する。
「メナスよ!メナスはいるか!?」
「はい。軍王様」
ミネートは大声でメナスを呼ぶ。メナスはすぐさまやって来た。
「私は目の前の脅威を取り除くべく、"国家級敵国殲滅魔法"の使用に踏み切る!その前に問うが、神通力使用による副作用はどうだ?」
「副作用などはありません!無限とも思える力がわが国から湧き出しています。魔法の連発すら可能でしょう」
「よろしい。では、目標はワカスーカルト沖に展開中の日本国艦隊だ!」
その言葉にメナスは悪い笑みを浮かべて言う。
「第2射を日本国本土に向けないのですか?」
「奴らの本土座標が分からぬ。使用しても未来の税収源たる民を無作為に滅ぼす必要もあるまい」
「今後を見据えた考え。流石でございます。私は魔法の補助に回りましょう。かの魔法帝国ですら逃げるしかなかった魔法。劣化版とは言え奴らに防げる筈がありません」
軍王ミネートは自室の扉を開き、宣言する。
「よし!儀式を開始する!必要な人材を集め"軍神の棟"に向かうぞ!」
彼は行動を開始する。
◆
ークルセイリース大聖王国"軍神の棟"
最上部にて準備を開始する大魔導士たち。そんな彼らと軍王ミネートを見て、メナスは笑いがこみ上げるのを必死に抑えていた。
何故なら、彼にとって神通力の使用こそ待ち望んだものであり、何年も暗躍をした成果が間もなく現れるからだ。
幻惑魔法を使用して暗躍した甲斐があった。彼の計画が順調に進んでいる事に彼は達成感を感じつつあった。だが、まだ完璧ではない。
彼の視界には5人の大魔導士が五芒星を描く様に立ち、魔力伝導率が高い配線を持ち、五芒星の中心部に"王家の秘宝"が安置されている。
「それでは、"国家級敵国殲滅魔法"を発動せよ」
軍王ミネートの号令の下、大魔導士達は詠唱を始める。メナスは手から使い魔を飛ばす。この使い魔は直径1mmと小さい。
妨害工作などにもってこいのこの使い魔を使って、彼は魔法陣の書き換えを開始する。
◆
儀式は順調に進んでいた。大魔導士が詠唱に集中し、魔導機械を操るオペレーター達が魔力を儀式用の神通力に転用する。
やがて、オペレーターが報告した。
「魔力充填率135%。神通力変換必要魔力に到達しました」
「"神の棟"へ接続を開始せよ」
"軍神の棟"が光り輝き、その光は"神の棟"に向かって進んでいく。その光景は宇宙から見れば十字に光り輝いて見えるだろう。
魔力を利用して神通力に指向性を持たせ、儀式用に転用する。だが、異変はすぐに現れた。
「報告!神通力が想定の28倍もの出力です!これ程の出力であれば高高度の大きな星の欠片を呼び寄せることも可能です!」
「ならば高威力のを叩き込め!」
ミネートの指示に、オペレーターは迅速に行動する。
「神通力変換開始…」
「最終呪文詠唱を開始して下さい」
オペレーターの指示に従って大魔導士達が呪文を唱える。
「「「「「神の僕たる幾千の星々よ。我らに従属し、敵を滅せよ」」」」」
「出力安定、座標入力…完了。"国家級敵国殲滅魔法"発射準備完了」
軍王ミネートは神の御業に立ち会えることに歓喜した。メナスも喜びながらミネートに近づく。
「軍王様、ご命令を」
「ウム。わが国を脅かす敵を滅せよ!"国家級敵国殲滅魔法"を発動せよ!」
『貴方が侵略したんだろう』と日本国やシルカーク王国の者達が聞けばそう答えるだろう。だが、そんな事を知らない彼らは魔法を発動させる。
"神の棟"から射出された光は宇宙へと向かい、十字に光る。この様子に国民は不安がる者、神の奇跡と言う者と、反応は様々であった。
◆
無事に発動したかに思えた"国家級敵国殲滅魔法"だったが、異変はその直後に現れた。
5つの叫び声が儀式場に響いたのだ。皆が声の発生源を見ると、そこには五芒星を立ち位置で描いていた大魔導士達が青色の炎に包まれて灰になっていく様子があった。
※稲荷神の名誉の為に言っておくと、狐火によるものではない。
「原因は?」
「わかりません。術式も完璧、術者への魔法防壁も正常に機能しています。ですが、"国家級敵国殲滅魔法"は正常に機能しています」
無理もない。そもそも、魔法と言うのは規模の小さいものから大きいものまで術者の魔力量に左右される。
"国家級敵国殲滅魔法"と言う、神代の魔法を行使するのだ。必要な魔力量も桁違いだ。報告したものは術式は完璧と言ったがメナスがその術式の書き換えを行っている。それ故に出力の大幅上昇を齎した。それに伴って必要な魔力量も増えることになる。彼らは魔力の呼び水たる生命力すらも消費して儀式用の魔力に転用してしまったのだ。
この非常事態にこの場にいる者達は混乱した。大魔導士と呼ばれる者達は国の軍事力や技術的にも大きな損失だ。
「うろたえるな!」
だが、それを沈めたのが軍王ミネートだった。
「既にメテオは発動された!後は敵艦隊に命中するかどうかだ!大魔導士達の死を無駄にせず、再発防止の為の調査をするのだ」
メテオの様子が映像化される。そこには宇宙空間から大気圏を突入して赤い尾をひいていく隕石の姿があった。この場にいる者達はメテオに感嘆するのだった。
◆
ー日本国海上自衛隊駆逐艦夕立戦闘指揮所ー
稲荷神を乗せた駆逐艦夕立はワカスーカルトから沖合10km地点を航行していた。目の前にいる巨大なコンバットフレームを倒すため、遠距離からのアウトレンジ砲撃を試みようとしていた。
しかし、レーダーには目の前のコンバットフレームとは比べ物にならない脅威が映っていた。
「レーダーに感あり!8時の方向、距離48.28km、高度329.184km、弾数3、展開中の友軍に向け落下中。時速4600kmから現在も加速中!」
「まさか弾道弾か!?」
誘導弾と続いて弾道ミサイル。戦闘指揮所は騒然とする。だが、レーダー手はそれを否定した。
「いえ!レーダーの反射面積が弾道ミサイルにしては異様に大きいです!これは…隕石の可能性があります!」
「隕石ですか?確認しましょう」
稲荷神は足が付かない指揮官席から立ち上がり、戦闘指揮所を後にする。そして、そのミクロ単位。下手をするとナノ単位以上の物体を肉眼で捉える視力で遥か空を見る。そこには、3つの隕石が赤い尾を引きながら落下しているのが見えた。近衛兵達も隕石は見えないが、赤い尾を引く何かが見えることはうっすらとわかった。
稲荷神と近衛兵はこの事実を戦闘指揮所にいる乗組員全員に教えた。
これを聞いた艦長は稲荷神に事の重大さを言う。3発の隕石の大きさ、硬度が分からない。対弾道ミサイル迎撃ミサイルを使用しても隕石を破壊できるかは未知数だ。割ったとしても破片が誘導される可能性もある。当たったとしても、軌道をそらすのが関の山かも知れない。
迎撃ミサイルの数にも限りがある上、誘導の大元を潰そうにも誘導方法が分からない。だが、そうも言ってられない。
艦長は迎撃ミサイルの発射をしようとして、稲荷神に止められた。
「いえ、ここは私が出ます。艦長の考えは理解できました。ここは、私の力を振るうべきですから」
そう言って一人で艦橋にその圧倒的身体能力で移動した稲荷神は、空を見上げる。先ほども見た隕石3つがワカスーカルト沖150km地点にいる海上自衛隊艦隊に向かっていくのが見える。
稲荷神は片手を隕石の方に伸ばす。
「破っ!」
気合の掛け声と共に握り拳を作った。
3つの隕石は青い炎に包まれ、チリ一つ残さず消失するのだった。
◆
ークルセイリース大聖王国"軍神の棟"最上部ー
軍王ミネート、メナスを始めとする者達は映像化されたメテオの様子を見て興奮を隠せない。
「メテオ、今なお加速中であります」
メテオとは魔法名であり、隕石を指す言葉ではない。しかし、クルセイリース大聖王国では"隕石"と言う概念が存在せず、メテオと言う言葉がそのまま定着した。
知識として知っていても、実際に目にすることで自国の兵器よりも速い速度に軍王ミネート含め、皆が興奮する。この様子に、『クルセイリース大聖王国万歳!』と三唱する者さえいる。
その時だった。突如として隕石が3つとも青い炎に包まれたと思いきや消失していく。それはあまりにも一瞬の出来事であった。
「メテオ消失!破片すら見当たりません!」
「破片すらだと!?破片すら残さず消す魔法などあってたまるか!!」
軍王の狼狽とは裏腹に、隕石ははじめから何も無かったかの様に青空が広がっていた。
◆
ー日本国海上自衛隊シルカーク王国派遣部隊ー
空母朱雀を始めとするシルカーク王国派遣部隊はレーダーに映る隕石らしき反応と夕立から送られた情報から敵が艦隊に向けて隕石を誘導していることが分かった。
しかし、迎撃ミサイルが発射される前に稲荷神が隕石を狐火で破壊してしまった。結果として、隕石破壊に伴う衝撃波や破片は発生せず、夕立含めた艦艇に1隻も被害はなかった。
海上自衛隊派遣部隊の責任者である平田含めた自衛官は稲荷神に感謝し、より一層のワッショイワッショイが上がる。
彼らは敵の第二次攻撃に警戒するとともに、隕石の威力に冷や汗を流すのだった。
〜コラム〜
魔力の扱い。
この世界の魔力は種族によって保有量が異なり、
神竜>光翼人≧黒月族>有翼人≧竜人族≧ハイエルフ≧エルフ>ドワーフ>人族>獣人
である。獣人は魔力量が少ない代わりに身体能力が高く、人間は繁殖能力が高い。そして、魔力の回復方法は共通しており、食事して休憩し、睡眠を取ることで回復できる。あるいは、魔石を取り込むかである。
魔石に関しては自身の得意属性の魔石でなければ拒否反応が出る可能性がある。
※独自設定である。
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