ー南方世界アニュンリール皇国ブシュパカ・ラタンー
日本国の使者としてやって来た近藤、井上、稲荷神とその護衛達は乗ってきた空母"出雲"にてアニュンリール皇国側の返答を待っていた。
そして、約1日経ってようやく外交部高官の"カール・クランチ"の使者が返答の用意が出来たとして外交部の建物にやって来ていた。
部屋に入ると、そこには角がある肌が黒く、ピンクがかった白い髪をする女性がいた。有翼人ではない。その姿は、バハーラ達鬼人族から聞き取りをして作成されたモンタージュの顔とそっくりだった。
「日本国の皆さん。我が国の外交方針を伝えます。我がアニュンリール皇国政府は貴国日本国に対してヘイスカネンの鬼姫たるエルヤ殿を返還します」
そう言って、カール・クランチは側にいた者に視線を送る。エルヤは側使いに連れられて、日本国側に返還された。
◆
ー第三文明圏外国列強日本国近海ー
アニュンリール皇国から帰還していた空母"出雲"に乗艦したヘイスカネンの鬼姫エルヤは稲荷神から事情を聞いていた。
「なるほど、妾の預かり知らぬ所でバハーラらに迷惑をかけたようじゃの」
「いえ、バハーラさんからの依頼とは言え此方にも利益のある話と聞いていますから。それに、国家ぐるみの誘拐なんて許せませんから」
「ほう、主らにも利益ある話とな?それはどんな物かの?」
稲荷神は少し目を逸らしながら言う。
「えっと…エルヤさんの退魔結界の研究をしたいんです」
「妾のか?彼奴らも妾の退魔結界を欲しておったが、主らには無用の長物だと思うが?」
「いえ、私もそう思ったんですが、何でも退魔結界を研究、実用化すれば魔力を四散して魔法を扱えなく出来るのではないかと国内の学者さんに言われて…」
「なるほどの。確かに妾程の結界があればそれも可能やも知れぬ。して、妾はいつ頃帰れるのかの?」
「はい。一旦我が国で体調不良ではないかの検査を行った後に、バハーラさんにお渡しする予定です。彼らも我が国に向かっているでしょうから体調確認をしたら観光案内でもしましょうか?」
「うむ。科学とやらで作られた国、まことに興味があるのう。よろしく頼むぞ」
稲荷神は気の合う友人を実に300年振りに得たような気がした。そんなガールズトークに花を咲かせる2人を乗せた空母"出雲"は日本国横須賀基地に入港したのだった。
◆
ー第三文明圏外国列強日本国首都東京ー
横須賀の海上自衛隊基地から稲荷神専用車に乗って歩道から日の丸や稲荷大社のマークの付いた旗を振る群衆を横目にエルヤが言う。
「お主は相当に民に好かれていると見える」
「それならエルヤさんだって同じですよ。バハーラさん達鬼人族の皆さんから好かれてるんですから」
「…そうやも知れぬな」
「そうですってエルヤさん」
「エルヤでよい。妾の事はエルヤと呼ぶがよい」
「…分かりました。エルヤ」
群衆に手を振りながら護衛の白バイや近衛兵達とともに彼らは"東京大学医学部附属病院"に入るのだった。
そして、様々な検査を受けたエルヤだったが、監禁状態によるストレスが多少見られる程度で健康には問題が無い事が分かった。だが、「人間の判断で鬼人族の体調を決めつけて言いのか」との意見もあり、後日やって来る神聖ミリシアル帝国の技術者や魔法で名を馳せているパンドーラ大魔法公国、エモール王国などからも技術者、外交官、医者が来ることになっている。
それまでの間は稲荷神に連れられて、東京観光案内が行われた。
稲荷スカイツリーや浅草、稲荷タワーそして稲荷神の居住である稲荷大社だ。尊大な口調のエルヤもグラメウス大陸と言う魔物が闊歩する森の中で暮らしていたので東京の街並みに圧倒されていた。
「凄まじいものよな。稲荷神よ。お主がこの国を守護しておるのだな」
「ええ。こんな地位は捨てて退位したいんですが、エルヤと友達になれたのならこの地位も良かったかも知れませんね」
「フフ、嬉しいことを言ってくれるではないか」
そうして、東京観光は終わり、エルヤと稲荷神は稲荷大社の聖域、つまりは稲荷神のこじんまりとした小屋と見間違えかねないほどに簡素な家でお泊り会をするのだった。
◆
次の日、横須賀の海上自衛隊基地や成田国際空港にヘイスカネンからやって来た鬼人族バハーラと神聖ミリシアル帝国を筆頭に技術者、外交官、医者、が集まっていた。
神聖ミリシアル帝国からは外交官と医者が、パンドーラ大魔法公国からは技術者と医者が、エモール王国からは外交官が来ていた。
「鬼姫様!ご無事で何よりです!」
「ウム。バハーラよ。お主が救出を依頼したとの事だな。そなたの忠義に敬意を払うぞ」
「勿体ないお言葉です!」
感動の再会は程々に魔法面から見たエルヤの診療が始まった。だが、やはり魔法面からも異常は見られず、問題無しとなった。そして、日本国とパンドーラ大魔法公国の者達は気になっているであろう鬼姫エルヤの退魔結界だが、技術的に言うと圧巻の一言だった。
圧倒的な演算能力と魔力によってなされる退魔結界は凄まじい。科学的に表現するならば定期的にセキュリティパスワードが変更されると表現するべきだろう。エルヤの思いのままに退魔結界を出入り出来るものを選定し、万が一にも魔物が侵入しようともウイルスバスターの様に許可なく侵入した者の肉体が消滅する事になる。
これはエルヤの、ひいては彼女の一族のみが持つ高い演算能力のお陰だったが、日本国のスーパーコンピュータを持ってすれば再現は可能だった。
結論から言ってしまうと、技術大国日本はスーパーコンピュータと外部からの魔力注入で退魔結界の再現に成功した。だが、コストが高い為にこれらの機械は国際港や国際空港などの魔法を使用したテロ対策に用いられる事になる。
更に言えば、専門家の間ではこれを利用すれば魔法文明に対して魔法を封じられるのでは無いかとの指摘も出ており、来たるべく魔法帝国の激突に有効だとして期待されている。だが、この世界は魔法文明が主流であるので、この機械の存在は秘匿される事になる。
こうして、日本国に新たな技術革新を起こしたエルヤは友である稲荷神に別れを告げて日本国に来日した3日後、ヘイスカネンに向けて出航するのだった。
◆
ー第一文明圏列強神聖ミリシアル帝国ゴースウィーヴスー
グラ・バルカス帝国本土決戦前に枠組みが決められ、グラ・バルカス帝国降伏後に成立した国際連合。その総会が設置された"ゴースウィーヴス"ではグラ・バルカス帝国を国際連合に加盟させるか否かの決議が行われていた。
「グラ・バルカス帝国、あの国が国際連合に加盟するなど断じて許容出来ない!」
そう言うのは第2文明圏外の国だ。この国はグラ・バルカス帝国の植民地支配を受けていたので、彼らの植民地統治の方法が苛烈故にグラ・バルカス帝国を嫌悪していた。
「今は駄目でも将来的には参加させる必要があると思いますよ」
「そうですね。平和維持の為の相互協力が国連の設立目的の筈ですから」
逆に乗り気なのは穏健派のムー国やグラ・バルカス帝国に手痛い被害を受けなかった第三文明圏の国々だ。議論は平行線を辿り、埒が明かないので議長に就任した神聖ミリシアル帝国の者は言った。
「ここは、グラ・バルカス帝国を下した功労者であり、国連の発案国である日本国の意見を聞くべきだろう」
会場の注目が日本代表に集まる。日本代表として送り込まれた1人、西田は国として(稲荷神の)方針を伝える。
「我が国としてはグラ・バルカス帝国の国連参加はある観点から見て賛成すべきだと考えます」
西田は理由を説明する。
「グラ・バルカス帝国は来たるべき魔法帝国の良い尖兵となってくれると考えたからです」
「ちょっと待って下さい!グラ・バルカス帝国の非武装化は貴国が提案したのでは無いのですか!」
「ええ。ですが、改めて魔法帝国との戦いを想定した際、あの国は我が国にはない利点を持っていました。それは物量です」
「…と言いますと?」
西田は説明をする。
「魔法帝国の軍事技術は我々と同等か少し劣っていると自衛隊内部では結論付けられています。そして、誘導弾などの兵器の生産には数百万から億単位の費用がかかります。ですが、グラ・バルカス帝国の兵器はそこまでの費用は掛かりません。つまり、物量によるごり押しが可能になる訳です。勿論、我々からも最大限の支援をしますが、物量による魔法帝国の圧殺が可能ならば実行しない手はないでしょう」
つまり、総力戦を想定して質より量を重視するグラ・バルカス帝国と質を重視する一点豪華主義の日本国。この二カ国が協力すると言うことだった。更に言えば、グラ・バルカス帝国が生産した小銃などを各国に供与すれば足手まといになる可能性はなくなる。
そんな事を西田は主張した。これに賛成したのは文明圏外国の国々だった。彼らからしてみれば下手に出る必要がある文明国よりも高い軍事力を手に入れられるのだ。しかし、それに反対するのは文明国だ。文明国からすれば文明圏外国からの献上品がなくなる恐れがあるからだ。
彼らの文明圏外国と文明国の溝は固定観念として強く残っている。だが、西田はこう言った。
「確かに思う所はあるかも知れません。しかし、魔法帝国が復活すれば力など無い小国は蹂躙されるまでです。先進11カ国会議でエモール王国のモーリアウル殿が仰った様に団結して事に当たる必要があります」
その意見も最もだが、やはり魔法文明の国にとってこの案は余り受け入れられる物では無い。魔法文明国でも賛成派と反対派がいるのだ。決まる筈も無かった。
本来なら多数決で決定すべきなのだが、グラ・バルカス帝国からの武器購入の案は強制するものでは無いとして各国の判断に任せることになった。
そして、肝心のグラ・バルカス帝国国際連合加盟についてだが、賛成派の僅差によって無事可決される事になった。
◆
ー第三文明圏外国列強日本国沖縄県宮古諸島ー
ここは沖縄県に属する諸島だ。だが、この諸島に世界各国から技術者達が大勢集まっていた。神聖ミリシアル帝国やムー国は勿論のこと、中小国の者達も見受けられる。また、その他には民間人が見学するスペースも設けられている。
では、何故こんな場所に集まっているのか。それは、日本国が打ち上げるロケットにあった。日本国は様々な種類の衛星を発射している。その過程でブラック・ナイト衛星、後に判明することだが古の魔法帝国の僕の星と思しき衛星を多数発見したのだ。その数、およそ60機である。
今回は、僕の星の回収し、研究するための衛星打ち上げが行われようとしていた。
『発射まで後5…4…3…2…1…0!』
稲荷神のカウントダウンによって発射されたロケットは火と煙を噴き出しながら空へと浮かび上がり、高度を上げて宇宙の彼方へと飛行するのだった。
◆
ー宇宙空間ー
『地球は青かった』有名な有人宇宙飛行を成し遂げたソ連パイロットガガーリンの言葉だ。だが、残念ながらこの世界では、その偉業は数十年前に日本国が貰っている。
この世界でも古の魔法帝国でも成し得なかった偉業を日本国は打ち立てた。即ち、有人宇宙飛行である。そして、この名誉ある宇宙飛行士として参加したのは、なんと稲荷神自身であった。
今回は僕の星回収の為に稲荷神が派遣されていた。何故か?それは僕の星の大きさが問題だった。
そもそも、地球では使い終わった人工衛星を"ポイント・ネモ"と呼ばれる陸地から離れている海域に捨てるのだ。つまり、態々回収するなんて事をしない。だが、今回はその回収をしなくてはならない。更に言うと、僕の星の大きさは約20mにも及ぶ。
その様な巨体を回収するのは不可能だった。そこで、稲荷神による狐火で僕の星を保護し、決められた海域に着水させる計画だ。これならば何個でも回収する事が出来る。だが、今回は試験運用と言うことで1基のみの回収である。
稲荷神は大気圏外に飛び出した。ロケットは無事に宇宙空間に至っていた。それを聞いた地上の見物人達は歓声を上げる。だが、稲荷神のミッションはこれからだった。
稲荷神は足から狐火を射出し、僕の星に向けて飛翔する。そして、僕の星に到着すると僕の星を狐火で包みこんだ。
そうして、稲荷神は自らの意思でロケット狐火を止め、自由落下運動を僕の星と共に開始した。大気圏に突入し、地上からは流星の様に見える。しかし、狐火によって保護された僕の星と稲荷神は大気圏突入によって生じている熱を物ともせずに海に着水した。
そこは、宮古諸島から程近い海域であり、すぐに日本国の海上自衛隊の駆逐艦がやって来て稲荷神と僕の星を保護した。
その後、僕の星は研究施設に移され、各国による共同研究によって解析が進んでいく。
〜コラム〜
稲荷神
実を言うと狐火で飛行すれば宇宙空間にも行けるのだが、世界各国からロケットと言うものを見てみたいと言う要望があり、幾つかの対価を条件に態々ロケットを作った次第である。
因みに、グラ・バルカス帝国の話について疑問があった方は感想で適宜返信します。
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アニュンリール皇国戦について
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原作?知るか?!
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原作出るまで待ちます
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平和に終わる