稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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お気に入り登録、高評価ありがとう御座います!今回はムー側の視点と稲荷神側の視点の2つで描いてみました。


旧友との再開

 

 

―第2文明圏列強ムー―

 

冬が明け暖かな春がやって来る頃、技術士官マイラスは軍を通じて外務省からの急な呼び出しに困惑した。外務省から呼び出されたのは空軍のアイナンク空港だった。列強ムーには民間空港が存在する。飛行機の使用料金が高く富裕層しか使えない上に晴天の間しか飛ぶ事は出来ないが民間航空会社が成り立っている。

 

民間航空会社が存在するのは神聖ミリシアル帝国とムーでのみ成り立つ列強上位国のみである。機械文明ムーの発明した車に技術士官マイラスは乗り込んで空軍基地アイナンク空港に到着した。

 

しばらく控え室にて待っていると軍服を着た者と外交用礼服を着た者2名が部屋に入ってきた。

 

「彼が技術士官のマイラス君です」

 

軍服を着た者が外交用の礼服を着た者に紹介した。

 

「技術士官のマイラスです」

 

一同は椅子に腰掛けて話が始まる。

 

「単刀直入に言うと正体不明の国の技術レベルを探ってほしいのだよ」

「グラ・バルカス帝国の事ですか?」

 

第2文明圏外国にて暴れ回り列強レイフォルを滅ぼした彼の国はマイラスも注視していた。そう思っての言葉だったが違った。

 

「違う。新興国家だ。本日ムー東側海上に駆逐艦と思しき船が1隻現れた。臨検した所日本という国の特使がおり我が国と新たに国交を開きたいと言ってきたのだ。我が国と国交を開きたいと言ってくる国は珍しい事では無いが問題は彼らの船は帆船では無いのだよ」

 

外交官は1度話を区切り続ける。

 

「そして魔力感知器にも反応が無いので魔導船でもない。つまり機械による動力船であると思われる」

「そうですか…」

「だが、さらに問題なのが我が国の技術的優位を見せるため会談場所をここ、アイナンク空港に指定したら飛行許可を願い出て来たんだ。当初は外交官がワイバーンで来るのかと話題になった。ところが飛行許可を出してみたら飛行機を使用して飛んで来たのだよ…また、先導した空軍機によれば、相手は時速160キロ程度の飛行速度で速度を合わせるのが大変だったと言っていた。だが、パイロットによると見たことも無い形の航空機でな…そこで君の出番となった訳だ」

 

マイラスにとって未知の航空機、それはロウリア戦争の時に観戦武官から送られてきた回転翼機かと見切りをつける。

 

「彼らの言うには日本は第3文明圏フィルアデス大陸のさらに東に位置する文明圏外の島国だ。しかし、あの飛行機の技術はパーパルディア皇国を超えているように見える。我が国との会談は1週間後に行われるがその間に彼らを観光案内してもらい我が国の技術の高さを知らしめ相手の技術レベルを探ってくれ」

「解りました」

 

マイラスは未知の技術である回転翼機に興味津々だった。

 

「今回日本の使用した飛行機は空港東側に駐機してあるのでまずは見ておいてくれ」

 

外交官は去り際にこんな事を言って立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

マイラスは未知の回転翼機の航空機を見て震えていた。ざっと見た限りどんな構造でどんな作りになっているかは見当がついたが、それを作るためのエンジン、緻密な調節が必要な代物に度肝を抜かれた。

 

応接室へ向かうマイラスの足取りは重い。日本国の飛行機械はムーではエンジン出力不足で作る事が出来ないだろう。少なくともエンジンについては彼らはムーよりも優位である可能性が高い。しかし、ムーにはエンジン以外にも凄いところは沢山ある。気持ちを切り替えマイラスは日本国の使者が滞在する部屋にノックした後部屋に入った。

 

中には3人の男と女性2人、そして狐の獣人の1名だ。

 

「外務省の御園です。今回ムー国をご紹介いただけるとのことで、感謝いたします。こちらにいらっしゃるのが我が国の最高統治者である稲荷神様です」

 

マイラスはとても驚いた。獣人はエルフ同様見た目で判断する事は出来ないがこんな幼女が最高統治者なのはそうだが、国のトップがやって来ている事にとても驚いた。たが、気持ちを切り替えて話し始める。

 

「今日は遠い所からお疲れでしょう。明日からご案内します。この空港をご案内後ホテルにお連れします」

 

マイラスは空港出口へ連れて行く前に空港格納庫内に使者を連れて行く。格納庫に入ると白く塗られた機体に青のストライプが入り前部にプロペラが付きその横に機銃が2機配置され車輪は固定式であるが空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機が1機駐機してあった。

ピカピカに磨かれ整備が行き届いた機体だと1目でわかる。

 

「この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機です。これは我が国最新鋭戦闘機【マリン】です。最大速度はワイバーンロードよりも速い380キロ、前部に機銃…つまり火薬の爆発力で金属を飛ばす武器ですね。これを付け1人で操縦出来ます。メリットとしてはワイバーンロードの様にストレスで飛べなくなる事も無く大量の排泄物の処理や水や食事をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です」

 

日本人は口を開けて珍しい物を見ている。

 

「複葉機ですか…レシプロエンジン…珍しいですね…稲荷神様はどうです?」

「複葉機…懐かしいですね。よく覚えてます」

 

どうも可笑しい。スーツを着た男性は珍しいと言ったが狐の獣人は懐かしいと言っている。どうも主張がチグハグだ。それに最新鋭の航空機に搭載されたレシプロエンジンを珍しく見ている。

 

日本のエンジンの秘密を得るべく探りを入れる。

 

「内燃式レシプロエンジン以外にどういったものが?蒸気機関もレシプロといいますから」

「日本にはジェットエンジンと呼ばれる航空機がありますよ」

 

稲荷神と名乗る獣人が答えた。やはり日本のエンジン技術はムーを超えている様だ。

 

「日本にも航空機に適したエンジンがあるのですか…是非構造を教えてもらいたいものですね」

「簡単な設計図や原理なら日本の書店でいくらでも購入できます。しかし、専門書ともなると技術流出防止法があるので公開は出来ないですね…」

 

ジェットエンジンと言うムーでは考えられていないエンジンがあるなら日本の航空機はムーより上かも知れない。そう思いマイラスは探りを入れた。

 

「日本の航空機はどの程度速度が出るのですか?」

 

航空機は速度が重要だ。いかに運動能力や武装が強くても速度が遅ければどうしようもない。

 

「どうしますか…お教えしますか?」

「ええ。構わないですよ」

 

マイラスには聞こえなかったがスーツを着た男性が稲荷神に耳打ちした。そして男が答えた。

 

「我が国の主力戦闘機【富士】の速度は最高速度3700キロですね。マッハ3…音速の約3倍です」

 

何気なく告げられた言葉にマイラスは絶句した。3700キロ…音速の約3倍…どんな技術を使えばいいか皆目見当がつかない。

 

「そ…それは凄いですね…ではこちらへ」

 

何とか声を振り絞ってマイラスは案内を再開した。

 

車を使ってホテルに案内した。しかし、彼等は車に乗っても平然としているのを見て彼等の国は車は特段珍しいものでは無いということだ。マイラスは1日でとても疲れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ムー歴史資料館―

 

翌日、稲荷神はムーの歴史資料館に来ていた。昨日、複葉機という稲荷神にとって懐かしい物を見せてくれたマイラスと言う人の案内を受けていた。

 

「我々の歴史を簡単に説明します。まず、各国にはなかなか信じてもらえないのですが、我々のご先祖様はこの星の住人ではありません」

「えっ?」

 

稲荷神はポカーんとした。天照大神(お母さん)から西の果てにグラ・バルカス帝国と呼ばれる転移国家があると言われたがこのムー国も転移国家とは思はなかった。まあ、地球ではムー大陸とかアトランティス大陸とかの伝説があった。まあ、天照大神とかの神様が顕現出来るからあってもおかしくないけど…嫌な予感がした。

 

「約1万200年前【大陸大転移】と呼ばれる現象が起きました。これでムー大陸はこの世界へ転移してしまいました。当時王政だったムーの正式な政府記録に残されています。これが前世界の惑星になります」

 

そう言ってマイラスと名乗る人は日本人にとって見慣れた地球儀を取り出した。

 

「稲荷神様!これは…」

「えっ!えぇ…そうですね…」

 

「「地球ですよ(ね)!」」

 

「この大陸は形的に南極大陸ですね。しかし、この位置にあると言うことは氷には覆われていなかったようですね」

 

御園は南極大陸を指さして稲荷神に話す。マイラスは南極大陸を指さしして説明する。

 

「この大陸はアトランティスといいます。前世界ではムーと共に世界を2分する力を持った国家でした。てますが、ムーがいなくなった今はおそらく世界を支配しているでしょう」

「すみません、マイラスさんこれを借りて良いですか?」

「えぇ…構いませんが…」

 

御園は地球儀を回して見る。

 

「稲荷神様!日本です!日本が有りますよ!この時代にも有ったのですね…」

「えぇ。驚きです」

 

指さししている国を見てマイラスが答えた。

 

「…何故あなたたちはムーの友好国ヤムートを日本と言うのでしょうか?」

「え?やむーと?でしたっけ?これ日本です。同じ国です」

 

稲荷神が純粋に可愛らしく首をかしげる。その言葉にマイラスは思考停止した。だが、御園が日本地図を取り出すことで氷解する事になる。

 

「これが、我が国の地図です」

「これは…ヤムート!」

「えぇ、我が国は貴方方がヤムートと呼ぶ国です。何の因果か転移してしまいました」

 

思わぬ旧友の再会にマイラスは驚き、稲荷神は天照大神(お母さん)に文句の1つでも言いたくなった。その後、ムーの苦難の歴史を教えてもらったが歴女でもない赤点ギリギリの成績だった稲荷神は眠そうにしている。マイラスはそんな様子を可愛らしく思いながら海軍基地に日本国使者を案内した。

 

 

 

 

 

 

―ムー 海軍基地―

 

そこにはムーの最新鋭艦【ラ・カサミ】が停泊していた。マイラスが戦艦について説明する。

 

「お〜!三笠だ!懐かしい!」

「そうですか?記念艦として残ってますよ?」

「いえ、家から出ること自体あまり無いので…」

 

稲荷神は思いを馳せる。1820年代に建造された三笠の進水式や1年に1回の1日艦長で何度か乗った記憶がある。そんな事を思い出しているとマイラスが話しかけてきた。

 

「日本にも戦艦はあるのですか?」

「えぇ。150年程前までは建造されていたのですがコストの面や技術面で建造されなくなりました」

「では、これから建造する計画はあるのですか?」

 

そう聞いてくるマイラスに御園は稲荷神に確認をとる。

 

「戦艦の建造予定はないですよね?」

「はい。私はそんな事を聞いてませんよ」

 

マイラスの質問に御園はしっかりと否定する。ならばとマイラスは更に質問した。

 

「先ほど三笠…と言っていましたが日本にも類似の戦艦が?」

「えぇ。確か約200年程前の戦艦です。まあ、当時は周辺国が遅れていたので出番は然程有りませんでしたが…」

 

周辺国が遅れていた…まだ帆船が主流だったのだろうか?マイラスはこのチグハグな日本と言う国の事がよく分からなくなって来た。

 

後にムーの技術士官マイラスの案内が一通り終了し日本と言う国の報告がムー首脳陣に上がった。信じ難い内容の報告書だったが敵対している訳でもなく高い技術が入手出来る可能性がある。グラ・バルカス帝国の脅威が存在する状況下に友好的な態度をとる日本国との国交を拒否する理由は無いためムーは日本との国交を結ぶ事になった。

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

第1外務局は混乱の最中にある。何故なら西に存在する列強レイフォルがグラ・バルカス帝国と名乗る国に敗れたことだ。

 

レイフォルはパーパルディア皇国よりも国力は下とはいえ海軍の質は似通っている。ワイバーンロードを簡単に撃墜し、首都レイフォリアを1隻の船で灰燼に帰すなど今までの歴史では無かった。

 

レイフォルやパーパルディア皇国を超える列強…

 

第1外務局局長エルトはそんな考えがよぎる。そして、フェン王国に懲罰部隊が敗れたのにグラ・バルカス帝国が関わっているとしたら…そう思いエルトは至急情報収集を命じた。

 

そして、たどり着いたのがロデニウス沖海戦…圧倒的勝利で終わるはずだったロウリアが海戦で敗れた戦いだ。その戦いでパーパルディア皇国国家戦略局でロウリア王国と日本のロデニウス沖海戦に参加していた観戦武官のヴァルハルなる人物からの報告書だった。

 

そこには見たことも無い大きさの船8隻が的確に船を百発百中で沈め見たことも無い鳥が空を舞い船を沈めていく…そんな様な内容が書かれていた。エルトも信じられないが、もし本当なら大変な事になる。エルトは部下に日本についての情報を集めさせる事になる…

 






―コラム―

稲荷神はオタクなのだが歴史には疎く赤点ギリギリしかとれない。なので、日本に転生した時も最初に会った有名人は本多忠勝だがへ〜としか思わず、松平さんに会った時もふ〜ん、としか思わなかった。松平さんが徳川家康に改名してから本人だと知った程だ。

ちなみに稲荷神様の戦国時代の知識は織田信長と豊臣秀吉、徳川家康の3人で1人は天下から強制退場、天下が長続きせず、300年の天下泰平を築いた…これくらいの認識です。だがら稲荷神様にマイナーな事言っても駄目だよ!(映画とか雑学とかなら多少は知ってる)

ちなみに男女2人ずつ外交官と一緒にいましたが彼等は近衛とお世話係です。

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パーパルディア皇国は滅ぼすべき?

  • 聖戦だ!滅ぼせ!
  • いやいや、講話でしょ
  • クーデター政権と講話
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