稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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※前話にて稲荷神の行動に違和感を感じたと言う感想を多く頂きました。その為、最後の部分を加筆修正しました。

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開戦前日

 

 

―日本国東京稲荷大社ラジオ放送室―

 

この日、事前に政府から発表されたパーパルディア皇国から日本国への要求に日本国民は激怒した。

 

稲荷神は日本人の誇りであり恩人だ。遥か戦国時代の世にたった6年で泰平の世を実現し神の御業を人の業にする技術を授けて下さり、江戸の世の大火や開国後の舵取り、関東大震災の救助活動、第二次世界大戦の行く末など日本をより良い方向へ導いてくれた。そんな大恩がある稲荷神と天皇陛下をパーパルディア皇国は恐れ多くも人質として要求してきたのだ。断じて認める訳にはいかない。

 

しかも、フェン王国の戦争では無関係の民間人が処刑されかけた。こんな野蛮な国を許すな!と言う感情が全国を駆け巡った。そんな中でIHKのラジオ放送が始まった。

 

『皆さんこんにちは。今日は悲しいニュースを伝えなければなりません。先日、わが国の友好国であるフェン王国のニシノミヤコにパーパルディア皇国が侵攻しました。そして、彼等は我が国に植民地同然の要求をしてきました。飲まなければ恐らく日本人を処刑するつもりです』

 

稲荷神は一拍おいて続けた。

 

『私は戦争はしたく有りません。しかし、ここで食い止めなければ日本人の生命が危険に晒されます。よって、ここにパーパルディア皇国との戦争を宣言します!』

 

この宣言に日本人は歓喜した。政府から公開された外交文書によってパーパルディア皇国感情が最悪な程になっていた。そこに、稲荷神自ら宣戦を決定したのだ。彼等は第二次世界大戦以降本格的な派兵を行ってこなかった。しかし、今日この日稲荷神の直属の自衛隊はその力を解放する。稲荷神を恐れ多くも差し出せ等という輩に遠慮する気があるのかは押して然るべきであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国王都ル・ブリアス

 

ターラ14世の元に『日本国、パーパルディア皇国に宣戦布告!』の報が入ってきた。

 

これを聞いたターラ14世は歓喜した。日本とは魔石の輸出で懇意にしており国交開設の折には兵器輸入にて蒸気戦艦や銃、魔導砲といった物を多数輸入していた。輸入した蒸気戦艦は侵攻してきたパーパルディア皇国の本国艦隊をも殲滅し、上陸して来た部隊も日本製の銃や魔導砲で皇国兵のマスケット銃や地竜リンドブルムの鱗をものともせず敵を倒すことが出来た。

 

壊滅したアルタラス王国海軍にパーパルディア皇国海軍を迎え撃つ戦力は無い。文明圏外国にしては高い軍事力を持つアルタラス王国でも敵わないパーパルディア皇国の本国艦隊、それをあしらう事ができる日本の軍艦…聞けば自分達が保有する兵器類は日本では型落ち品らしい。圧倒的な技術力を持つと思われる日本が参戦すればアルタラス王国は救われる…ターラ14世は安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

―第2文明圏列強ムー―

 

ムーは今回のパーパルディア皇国と日本国の戦争でどちらに観戦武官を送るかの会議をしていた。彼等は戦争が起こる度に西へ東へと情報分析課から観戦武官を送り情報を収集しているのだ。しかし、今回の戦争は一味違う。前世界である地球の友好国ヤムートなのだ。しかも、技術力はあちらの方が高いと来た。

 

「…以上の報告から判断するに日本国は極めて高い機械文明を有しています。そして、その技術は部分的にはムーをも上回る技術があると考えています。よって観戦武官は日本国に派遣したいと思うがよろしいでしょうか?」

 

ムーの軍人が手を挙げた。

 

「報告書には何度も目を通した。しかし、この報告は本当なのか?我が国を上回る技術というが実物を見たのか?そして、戦力としてパーパルディア皇国を上回る武力の投入が可能なのだろうか?」

「それについては真実です。国力については間違有りません。日本国で勤務している外交官や訪問してきた国会議員からの聴取も報告書と一致します。軍からも数人が派遣されていると聞いていますが?」

「軍の内部からも同様の報告を聞いている。しかし…やはり信じられないな…」

 

紆余曲折ありながらもムーは日本国へ観戦武官を派遣することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―フェン王国首都アマノキ―

 

剣王シハンは上機嫌だった。

 

パーパルディア皇国からの森林地帯の割譲や租借を断った事から始まったパーパルディア皇国による懲罰に日本国を巻き込んだ。しかし、今回フェン王国の民がパーパルディア皇国に連れ去られ、危うく処刑される所だった。しかし、稲荷神様に助けられ『空母』と言われる船に乗せて全員が帰還することができた。

 

日本国は圧倒的な技術力と軍事力を持ち、未知の魔法技術もある。ニシノミヤコはパーパルディア皇国によって陥落してしまったが日本国の陸軍を派遣してくれれば勝てる!そんな予感があった。

 

剣王シハンは日本国に恩を返そうと惜しみない協力を日本国にしていくことになる。

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国皇都エストシラント皇城―

 

第3文明圏の富が集まる皇都にある国力の象徴とも言える皇城に住まう主である皇帝ルディアスが参加する緊急御前会議にて第1外務局に出向しているレミールを始め、各大臣が参加している。

 

「………」

 

御前会議には最悪な雰囲気が漂っていた。原因は言わずもがな日本国であった。

 

先日、レミールが日本国の使節を前にフェン王国人を処刑して、恐怖で屈服させようとした。しかし、処刑する前に同行していた亜人が皇族であるレミールを取り押さえ気絶させた。そして、処刑場にいたフェン王国人を救出され騒ぎを聞き付け応援に来た近衛兵を青い炎で焼き尽くした。お陰で近衛兵に多数の死者が出た。にも関わらず、日本国の見たことも無い空飛ぶ鳥でフェン王国人が全員脱出されてしまった。

 

つまり、列強たるパーパルディア皇国の皇都に蛮国が襲来し皇城で暴れ回ったのにも関わらず、日本国やフェン王国人に被害が無いと来た。はっきり言って泥を塗りたくられた…そう表現するのがいい事件だった。

 

「余は怒っている…皇城で暴れ回った常識を弁えぬ国…日本国…今回の事件の落とし前をきっちり払わせなければならない!」

「ええ!その通りだと存じます!」

 

ルディアス帝の言葉に稲荷神によって気絶させられたレミールは同調した。

 

「余は彼の国に更生の余地があると思っていたが、この様な事をするのでは更生など望む余地も無いな…余の名においてレミールより提案されていた殲滅戦を日本国に対して宣言する!異論のある者はおるか?!」

 

会議に出席して異論を唱える者は誰一人いなかった。よってここに、パーパルディア皇国は日本国に対して殲滅戦…つまりはジェノサイドを宣言するのである。

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京稲荷大社謁見の間―

 

この日、稲荷神は対パーパルディア皇国戦争の概要を聞いていた。

 

「では、説明させて頂きます。現在パーパルディア皇国はフェン王国ニシノミヤコにて出撃の体制を整えています。陸上戦力は約2500名以上、地竜と呼ばれる戦車に相当すると思われる竜が32頭確認されております。この陸上戦力は間もなく出撃すると思われます」

 

監視衛星によって作られた精巧な地図を使いながら防衛省の幹部は首相や稲荷神に説明する。

 

「航空戦力についてですが、竜母と呼ばれるワイバーンを飛ばす空母に相当するものを12隻有し、船体の大きさから各20騎ずつの計240騎の航空戦力を有するものと思われます。現在、ワイバーンロードはフェン王国上空の制空権を確保しています。そのため、主に地上への支援攻撃に利用されています」

 

「海上戦力に関してですが、砲艦と呼ばれる大砲を搭載した戦列艦が200隻、前述した竜母が12隻、陸上戦力を運ぶ揚陸艦が101隻、計310隻の艦隊がニシノミヤコ沖合いに展開しています。しかし、竜母12隻と戦列艦8隻の計20隻はニシノミヤコの西側約30キロの位置に展開しています。おそらく陸からの小船による急な攻撃を回避するため沖合いに出ていると推測されます」

 

稲荷神は軍事はど素人なのでなんか数が多いな〜位が聞いた感想だった。そんな事を考えている間にも話は続く。

 

「まず、先んじて派遣していた艦隊に所属する空母からの戦闘機で敵航空戦力であるワイバーンロードや竜母を攻撃して制空権を確保します。その後に、必要であれば艦砲射撃にて敵艦隊を攻撃を加え殲滅、制海権を確保します。確保したら輸送船にて陸上戦力を派遣します」

「分かりました。私も輸送船で合流した後に共に出陣します」

 

その言葉にその場にいた皆は驚いた。単体戦力として最強の稲荷神が加われば怖いものはない。

 

「自衛官だけが死地に行って私だけ行かない訳には行きません!皇国の荒廃この一戦にあり!各員一層奮励努力せよ!」

「「「ははぁー!」」」

 

その場にいた全員が平伏した。ここに、自衛隊の本領が発揮されることになる。

 

「あの〜よろしいでしょうか?」

 

凄くいい雰囲気の中、声が響いた。稲荷神が声のする方向を見るとお世話係の1人が居心地が悪そうに手を挙げていた。

 

「どうしました?」

 

稲荷神が声をかけるとお世話係はバツが悪そうに言った。

 

「駐ム大使より日本国に観戦武官を派遣したいとのムー国からの要請が…」

「…別にいいと思います。迎えを寄越す様に伝えて下さい」

 

 

 

 

 

 

―第2文明圏列強ムー―

 

技術士官マイラスは軍上層部に呼び出された。

 

「今回、パーパルディア皇国と日本国の戦争にて日本国に観戦武官を派遣する事にした。そこで、高い技術と軍事力を持つ日本について探って欲しい」

「了解しました」

 

マイラスは日本へ観戦武官として行くことが楽しみだった。直接戦闘を見ることで何か分かるかも知れない…そんな気持ちでムーが持つレシプロ旅客機【ラ・カオス】巡航速度280キロ、航続距離7000キロの旅客機は東の地にある日本へと飛び去った。

 

 

 

 

 

 

―日本国防空識別圏近郊―

 

ムーを飛び立って5日目の朝、【ラ・カオス】は日本国で防空識別圏と呼ばれる空域に接近しつつあった。防空識別圏に入ると日本国の戦闘機が案内する手筈になっている。

 

「どんな戦闘機が来るかな…」

 

ジェットエンジンの戦闘機があると知っているマイラスはどんな戦闘機が来るかとワクワクしていた。しかし、対照的に戦術士官のラッサンは冷めていた。彼等が話をしていると煩いレシプロ機の中でも分かる轟音が響いた。何事かと外を見ると翼が横では無く後に伸びた航空機がレシプロ機を追い越した。しかし、それは直にUターンしてレシプロ機に並んだ。

 

「なんだあれ!プロペラが無いぞ!」

 

ラッサンとマイラスは未知の戦闘機に驚愕した。

 

ムーの旅客機は日本の戦闘機【富士】の先導により日本の都市、福岡へと向かった。

 

そこで彼等は1地方都市の割には物凄く発展した福岡の街を見た。彼等は福岡空港へ【富士】の先導のもと着陸した。

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国皇都エストシラント第1外務局―

 

レミールはルディアス帝によって宣言する日本国への殲滅戦の文書を作成し、書類をチェックしていた。隣には局長エルトも同席して書面に目を通していた。

 

エルトは日本国と言う国に怒りすら感じていた。パーパルディア皇国の皇都…しかも皇城で暴れた挙げ句謝罪の1つも無いときた。謝罪されたとしてもそれを許すかは別問題だがルディアス帝によって宣言する殲滅戦によって日本人が殺されていく様子が脳裏に浮かんだ。

 

そんな時だった。部屋のドアがノックされ許可を出すと次長ハンスが書類を持って駆け込んできた。しかし、彼の顔色は悪く酷く緊張している様だ。

 

局長エルトはハンスにどうしたか尋ねた。 

 

「今回のフェン王国及び日本国との戦争に関して観戦武官の派遣の有無を各列強に調査しました。内容として、神聖ミリシアル帝国及びエモール王国は観戦武官を派遣しないとの事でした」

「いつものことだな。では、ムーはどうしたのだ?」

 

ハンスの顔は何とも言えない顔になった。

 

「ムーは我が国に観戦武官を派遣しないとの回答でした」

「珍しいな?いつもの情報収集癖がなくなったか?」

 

ハンスの言葉にレミールが嘲笑しながら呟いた。しかし、ハンスは黙りを決め込んだ。しかし、こうもしていられないので意を決して答えた。

 

「ムーは…日本国に観戦武官を派遣した事が判明しました」

「えっ?」

 

レミールとエルトの間抜けな声が部屋に響いた。

 






―コラム―

日本人の対パーパルディア感情は最悪であり一部の重度のペロリストや自衛隊内部ではパーパルディア許すな!とか聖戦だ!とか主張している。

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パーパルディア皇国は滅ぼすべき?

  • 聖戦だ!滅ぼせ!
  • いやいや、講話でしょ
  • クーデター政権と講話
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