稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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※投稿を間違えました。申し訳ありません


フェン王国戦後の反応

 

 

時はフェン王国戦前に遡る。

 

―日本国首都東京稲荷大社謁見の間―

 

この日、アルタラス王国王女ルミエスは謁見の間に呼ばれていた。ルミエスが中に入ると首相以下閣僚が起立してお辞儀した。ルミエスも一礼して着席した。

 

ルミエスの視線の先には上座に座る稲荷神の姿だった。

 

「ルミエスさん。留学は満足いただけましたか?」

「はい。初めて見るものだらけで毎日楽しく過ごさせてもらっています」

 

少し雑談で気分をほぐしてから稲荷神は本題に移った。

 

「先日、パーパルディア皇国がフェン王国人を処刑しようとしました。しかし、私が何とかして助け出す事に成功しました」

「はい。聞き及んでいます。それが原因で日本に殲滅戦を宣言した事も…」

「実はその事でルミエスさんに頼みたい事が有ります」

「なんでしょうか?」

「今度、フェン王国に対して陸上自衛隊を派遣する事になっています。恐らくパーパルディア皇国に対して大打撃を与えられると思います。なのでその時にパーパルディア皇国が所有している植民地を扇動して欲しいのです」

 

これを聞いたルミエスは驚いた。列強の植民地を解体するなんて事が本当に出来るのだろうか?本当に出来るのならこの国は技術と軍事の双方でとてつもない力を持ちながら理知的な国ということだ。ルミエスは今一度、日本と日本との貿易によってパーパルディア皇国と戦ったアルタラス王国兵に感謝の意を示した。ここにルミエス王女と稲荷神の謁見は終わった。

 

そして時はフェン王国戦争後に戻る。

 

ルミエス王女は再び稲荷大社謁見の間に来ていた。

 

「今回は我々の提案を受けて魔信?での宣言ありがとう御座います」

「いえ、パーパルディア皇国は各地に勢力を広げています。今ここで彼の国を倒さなければフェン王国の様に別の国で悲劇が起きかねません。私はそんな悲劇が起きない様にしただけです」

 

ルミエス王女は日本の軍事力の強さに驚愕した。確かに文明圏外国の首都に天をつく様な摩天楼を造れる国なら軍事力も高いと思っていたがパーパルディア皇国相手に1人の犠牲もなくフェン王国戦で勝てるとは思っていなかった。フェン王国に勝ったと聞いてから魔信での宣言を行った。完全に日和見をした形になるが日本としては別に宣言をするしないに関わらずパーパルディア皇国を滅ぼすのは既定路線だ。日本国民の殆どはそう思っている。

 

ルミエス王女は稲荷神と共に首相達と今後の方針を決めていく事になる…

 

 

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国皇都エストシラント―

 

軍最高指揮官アルデは困惑した。ムーが観戦武官を日本側に送り日本がフェン王国での戦いに勝つと分析していると知った時は日本は大軍をもって対応したと考えた。そうならばムー国の分析も理解できるし敵の出方を見誤っただけかと思った。しかし、会議中に飛び込んできた情報は彼を困惑させるのに十分だった。フェン王国派遣部隊の全滅は皇国陸上戦力としては損傷は軽微だ。しかし、皇国海上戦力は3分の1以上…下手したら半分近くが消失したに等しい。

 

この情報に彼は混乱の極みだった。彼の認識は文明圏内の国家が戦列艦数千隻を使用して皇国海軍に襲い掛かっても僅かな被害と作戦の遅延が予想されるのみで決して全滅にはならない筈だ。ロウリア王国戦争時の結果から日本国の戦力を算出したが情報が根本的に間違っているのかも知れない。

 

彼の脳裏にはある考えが浮かんでいた。ムーは今まで決して行ってこなかった自国の機械科学兵器の輸出を開始したのかもしれない。ムーが存在する第2文明圏から反対の国に存在する日本に輸出する事で自国が被害を受ける可能性も無い、また我が国への攻撃にもなる。万が一第3文明圏が日本の手に落ちても間には第1文明圏がある。神聖ミリシアル帝国を挟んでおりムーには攻撃出来ない。文明圏外国家なら文明差がありすぎて兵器の複製も出来ないだろう。ムーにとっては自国の兵器が他の列強にどれだけ効果があるのか測定できて輸出費も儲けることが出来てパーパルディア皇国への牽制も出来るため一石二鳥どころか一石三鳥である。

 

彼は日本国の情報の洗い直しを命じた。彼の認識が間違っているのに気づくのはもう少し先である…

 

 

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京ホテルの一室―

 

ムーの技術士官マイラスと戦術士官ラッサンは日本について話し合っていた。2人は駆逐艦秋雨に乗り観戦武官としてフェン王国の戦いを見学していた。駆逐艦から見ていた日本の力は途轍もない物だった。日本の兵器や戦術は彼らにかつて無い衝撃をもたらしていた。まず驚いたのは艦砲の連射性とその命中率であった。本来船とは波の高さによって揺れ動く。それは相手も同様だ。パーパルディア皇国と日本国の艦砲は目視していた限りではという百発百中とんでもない命中率を日本の艦は叩き出している。日本で売られていた本を購入して噛み砕いて理解するとこれは安定させる技術と射撃管制システムと呼ばれる物で敵艦との相対速度を瞬時に算出、そして砲弾の飛翔速度も計算して敵の移動速度や波の高さを算出して砲を撃っている。このシステムで信じられない事であるが、艦砲で空を飛ぶ目標をも撃墜できるとの事であった。

 

また、その本には今回の戦争では見ることが出来なかった兵器の数々が記載されている。潜水艦と呼ばれる海に潜る事が出来る船や潜水艦の主力武装である海中を進む魚雷という兵器、ドローンという小型で飛行機やヘリコプターといった飛行物体や戦車を自爆して破壊する飛行物体、誘導弾という射程1000キロを超える敵を狙って誘導される兵器…そんな兵器は考えたことが無かった。現時点のムーの技術力の総力を結集しても造れるものでは無い。特に誘導弾やドローンに関しては潜水艦や魚雷と比べて造れるものでは無い。

 

また、更に驚いたのは少数の人が利用していた小型の人形ゴーレムの様な物だった。そのゴーレムは宙に浮き一方的に戦列艦を破壊していた。飛行機にのって人が空を飛ぶ事が出来るが航空力学的にはムーではそこまで発展していない。

 

マイラスとラッサンが見た日本国の圧倒的な軍事力はまだまだ日本の極一部の力にすぎず技術的優位性は全く無いという事に気付かされた。これ程の力を持つ国からの技術供与があれば覇権主義を掲げ、未だ正体が未知数のグラ・バルカス帝国への備えになるだろう。

 

「マイラス、日本をどう見ている?」

「技術が進みすぎて分からない事が多すぎる。だが、この本が事実なら魚雷や潜水艦ならムーでも造ることは可能だろう」

 

そう言ってマイラスはある本を取り出した。それは第一次世界大戦から第二次世界大戦までの各国の兵器の変化が書かれていた軍事特集の書籍だった。

 

「魚雷は水雷防御を施していない艦なら【ラ・カサミ】級戦艦でも沈むぞ。それにこの潜水艦に関しては対策兵器すら無い。これが出てきたらムー海軍は消滅まっしぐらだ」

「我が国の艦隊はパーパルディア皇国なら蹴散らす事が出来るだろう。だが、日本を相手にした場合は今回のパーパルディア皇国艦隊と全く同じ運命をたどるな。日本とは素人目に見ても技術格差が大き過ぎる。戦術でどうにかなる様な問題には思えない」

 

2人は日本の技術の高さは天井知らず…この結論に落ち着いた。帰国したら報告書が大変だ…と思ったがマイラスは希望を見出していた。

 

「だがなラッサン。今後ムーが進むべき道が見えたぞ」

「なんだ?」

「まずは潜水艦と魚雷、水雷防御だろう。その後に戦車の開発、そして誘導弾だ。やるべきことはいっぱいある。落ち込んでる場合じゃない」

 

それを聞いたラッサンも同様にやる気を出した。そしてふと思った事を口にした。

 

「そう言えばグラ・バルカス帝国はどうなんだ?」

「分からない。技術がムーより50年位は進んでいるのは確かだ」

「そうか…」

 

2人の苦労は続く…

 

 

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京在日ムー大使館―

 

外務省官僚柳田はムー大使館に来ていた。

 

「ムー大使のユウヒです。本日はどの様なご用件でしょうか?」

 

ユウヒの顔には緊張の糸が見て取れた。柳田は話し始める。

 

「実は貴国に対して要望が有るのです」

「なんでしょうか?」

 

そう言うと柳田は鞄からある写真を取り出した。それはアルタラス王国の正確無比な地図だった。

 

「ムーは各国に外交連絡用の空港を造っていると伺っています」

 

そう言って柳田は地図の一点を指さした。

 

「アルタラス王国にあるこの空港の使用許可とこの空港がどの程度の加重に耐えうるのか設計の詳細が知りたいのです」

「なんと正確な!これは航空撮影ですか?」

「いえ、これは宇宙にいる人工衛星より撮影された写真です」

「いやはや…貴国の書籍で知識としては知っていましたが実際に見ると凄まじいですね…」

 

驚いたユウヒだったが気持ちを切り替え質問に応えた。

 

「確かにその空港は我が国が造った物です。細かい仕様は分かりませんので本国に問い合わせて判明すればすぐにお伝えいたします。アルタラス王国は大規模魔石鉱山があるために将来的に大型輸送機の開発及び輸送も考えられていたため相当強く造っていたと記憶しています。ただ、我が国が飛行場を造る場合には土地の使用及び飛行場の建設許可をもらった後に建設いたします。しかし、その所有権はあくまで空港のある国に属します。つまり、アルタラス王国にあればその空港はアルタラス王国の所有物となります。今回の写真はアルタラス王国の物ですのでアルタラス王国側に使用許可をとって下さい」

 

これを聞いて柳田の顔は明るくなった。

 

「ありがとう御座います。実は貴国に対して技術供与を緩和する話が出ています。ですので本国にお伝え下さい」

「!それはありがたい話です」

 

会談は終了した

 

 

 

 

 

 

―神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス―

 

世界の情報を集める神聖ミリシアル帝国情報局はかつて無いほどの忙しさに見舞われている。神聖ミリシアル帝国は『情報』の重要性を良く理解し、情報を制する者は世界を制するの考えの下に情報分析に力を入れている。

 

しかし、ここ最近はよく分からない事が多かった。

 

それは第ニ文明圏外国に現れたグラ・バルカス帝国の事だ。

 

本来、文明国に属する国家と文明圏外に属する国家では超えられない技術の壁が存在する。故に文明圏外国家は文明圏に入ろうとする場合が多い。しかし、文明圏の各国は文明圏外国家を見下している。その為に文明圏外国に技術を供与するのは文明圏国の技術より遅れた物だけだ。文明圏外国の国力が万が一にでも文明圏を超えると報復に出る可能性がある。その為に技術流出に対しても相当の制限がかけられている。そしてその国力差で文明圏内国は文明圏外国から奴隷や特産品を吸い上げる。技術差を利用した文明力の差による既得権益がそこには存在しているのだ。

 

歴史上では文明圏外国が連合して文明圏国に挑む事例は幾らでもあった。しかし、それは一度でも成功することは無かった。

 

だが、グラ・バルカス帝国なる文明圏外国が例外を作ってしまった。つまりは注目に値する国家と言える。

 

情報局局長アルネウスは部下に問う。

 

「グラ・バルカス帝国について新たな情報はあるか?」

「グラ・バルカス帝国は現在も本国の位置さえ不明です。そして、レイフォルとの戦いから分析した結果グラ・バルカス帝国の戦艦グレードアトラスターに関しては我が国の最新鋭戦艦と同等或いはそれ以上の性能と思われます。全く信じ難い事ですが、分析結果はそのようになっています」

 

アルネウスは頭を痛めた。そして更に頭を痛める事案があった。それは第三文明圏外国の国家である日本国の事であった。同じく第三文明圏外国のフェン王国で起こった第三文明圏列強のパーパルディア皇国との戦争であった。こちらはまだ起きて日が浅く情報が錯綜しているが、フェン王国に派遣されたパーパルディア皇国の艦隊や陸軍が殲滅されたのだという。

 

その際に使われた鉄の地竜や鉄の鳥、我が国の【天の浮舟】に似た航空機、何故か砲が1門しかない軍艦、空飛ぶゴーレムといった物があった。

 

特に【天の浮舟】に似た航空機や我が国では考案されていない回転翼機、二足歩行型のゴーレム等のミリシアル帝国を超えると思われる技術があったという。情報局局長アルネウスは日本国について調べる様に命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京稲荷大社謁見の間―

 

この日、稲荷神や閣僚達は謁見の間にて次に起こると思われるパーパルディア皇国との戦争について作戦会議を開いていた。

 

「今回、我が国はフェン王国に派遣されていたパーパルディア皇国の陸軍及び海軍戦力を殲滅しました」

 

防衛大臣の言葉に他の閣僚は満足気で当然とばかりに頷く者もいた。何しろ稲荷神様を愚弄した国を滅ぼす第一歩を踏み出せたのだ。閣僚だけでなく国民も沸き立っている。皆が落ち着いたのを見計らって防衛大臣が話を続ける。

 

「今後の我が国の戦略を自衛隊の方よりご説明してもらいます」

「はい。お話を代わります。今後の対パーパルディア皇国戦ですが次の主戦場はアルタラス王国かと思われます」

「その根拠は何でしょうか?」

 

稲荷神は質問すると幹部が答えた。

 

「はい。パーパルディア皇国はアルタラス王国戦、フェン王国戦と戦力を減らしている状態です。また、在日しているルミエス王女からの連絡で彼の国の鉱物資源である魔石を産出する魔石鉱山を献上せよ…と命令され拒否した所戦争になったとの事でしたので彼の国のプライドを加味すると失った戦力補充とアルタラス王国への報復の為に再度戦争を仕掛けてくる物と思われます」

「なるほど…ではどうするのでしょうか?」

 

幹部は「はい」と答えて続けた。

 

「まず、アルタラス王国に援軍として海上自衛隊を派遣します。パーパルディア皇国海軍を殲滅後にアルタラス王国に建設された空港を利用してパーパルディア皇国の主要工業都市を戦略爆撃機で攻撃する予定です」

「わかりました。アルタラス王国への出撃を許可します。私も近衛を連れて参戦しますが………くれぐれもやりすぎないで下さいね」

 

稲荷神はこの約束の結末がどうなるか薄々感づいていた。

 






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