稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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今回は、パーパルディア皇国に焦点を当てているため、稲荷の出番は少ないです。ご了承ください。


皇国の息切れ

 

 

―アルタラス王国王都ル・ブリアス王城―

 

稲荷神はアルタラス王国から提供された王城の一室に自衛隊通信士と共に通信室の中でパーパルディア皇国本土爆撃とパーパルディア皇国海軍撃破の結果を待っていた。

 

そして、成果が報告された。

 

『こちら本部、フォックス01、応答願う』

「こちらフォックス01、本部、どうしました?」

『こちら本部、フォックス01、結果を報告せよ』

『こちらフォックス01、敵航空戦力の撃破を確認。これより帰還する』

 

この報告を皮切りに立て続けに報告がやって来た。

 

『こちらボア01、本部応答願います』

「こちら本部、ボア01、どうしました?」

『こちらボア01、敵海軍基地の破壊を確認した。これより帰還する』

 

ボアはステルス爆撃機星影からの報告だ。こちらもパーパルディア皇国の陸軍基地と同じく海軍基地を攻撃してい破壊した事を報告した。損害は無かった。又、パーパルディア皇国主力艦隊を撃破した司令長官高杉が指揮する艦隊、こちらも損害は無かった。あるとすれば両者共に高価なミサイルや爆弾を使用した位だ。

 

やがて、戦闘機や爆撃機、艦隊が帰還すると稲荷神による感謝の言葉があった。

 

「今回、あなた達のお陰でパーパルディア皇国の度肝を抜く事が出来ました!爆撃機隊と戦闘機隊はこのまま、工業都市デュロという街の工場への攻撃を行います。決して油断せず、皆1名の欠落も無く帰還して下さい!」

「「「は!」」」

 

稲荷神の激励を聞いて艦隊の乗組員は休息するが、戦闘機、爆撃機の乗組員は皆各々の航空機に乗り込んでいく…攻撃目標は工業都市デュロ、パーパルディア皇国の心臓部である。

 

 

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国工業都市デュロ―

 

工業都市デュロの近郊にはパーパルディア皇国の3大基地の1つが置かれている。それは、このデュロがパーパルディア皇国の工業製品を生産する重要都市だからだ。故に、巨大な陸軍基地が置かれている。同様の理由で海軍基地も置かれ、戦列艦が多数停泊している。

 

そんな陸軍基地で緊急会議が行われていた。メンバーは以下の通りだ。

 

デュロ基地司令官ストリーム

デュロ基地陸軍将軍ブレム

皇国海軍東部方面司令官ルトス

デュロ基地竜騎士団長ガウス

 

以下副官や他の幹部も参加している。司会進行としてデュロ基地司令官ストリームが進める。

 

「先程、皇都からの連絡で日本軍により皇都が攻撃を受けた。幸い、陛下は無事だが、基地が破壊され、海軍基地も壊滅。皇都より出撃した海軍第三艦隊も壊滅したそうだ」

 

その言葉に皆は騒然とした。しかし、ストリームは皆を宥めた。そして、話を再開する。

 

「日本国がパーパルディア皇国の皇都エストシラントに攻撃をしたのは事実だ。そして、はっきりしているのは次に狙われるのはここデュロだと言う事だ」

「…確かに、あり得ない話ではない…」

 

ストリームの言葉は場を更に騒然とさせたが、一部は納得していた。

 

「何故なら、ここデュロはパーパルディア皇国の工業生産を一手に担う都市だ。この都市を破壊すれば我が国は継戦能力を失う。故に、今回の会議を開いたのだ。忌憚なき意見を聞きたい」

「では、デュロ防衛に国家監査軍の戦力を割り当て哨戒任務を減らすのはどうでしょう?」

 

竜騎士団長ガウスが提案した案を皆は吟味する。そして、この案は採用となった。そこに、デュロ基地陸軍将軍ブレムが手を挙げた。

 

「今回、皇都エストシラントを攻撃したのは飛行機械だと言います。なので、対空魔光砲を使用するのはどうでしょう?」

「アレを使うのか?アレは解析が遅々として進んでいない上に1台しかない貴重な物だぞ」

「皇国が攻撃された以上四の五の言っている場合では無いと思いますが…」

「………分かった。使用を許可する」

 

この対空魔光砲とはイクシオン20㎜対空魔光砲と言う、神聖ミリシアル帝国から密輸入して手に入れたものだ。しかし、魔術回路が複雑過ぎて複製、量産どころか解析すら遅々として進んでいない。尚、神聖ミリシアル帝国からすれば、この対空魔光砲は型落ち品のオンボロ兵器である。

 

デュロは厳戒態勢を敷くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国工業都市デュロ上空―

 

アルタラス王国から発進した爆撃機、護衛戦闘機は工業都市デュロ上空の成層圏にいた。敵航空戦力は哨戒任務なのだろう。沢山のワイバーンロードが行きかい、歩兵が水平線の向こうを見ているのをAIも活用した地上識別装置が確認している。

 

ワイバーンロードはこちらの高度まで上がることは出来ないのは確認済みだ。故に、今回も先に爆撃から始める事になった。

 

ステルス爆撃機星影は空対地誘導爆弾を陸軍基地、海軍基地に落としていく。この攻撃は兵舎やワイバーンロードの竜舎まで破壊していく。海軍基地も同様だった。

 

東部方面司令部、ドッグ、兵舎と言った施設が破壊される。

 

攻撃が始まった事でワイバーンロードは陸軍基地の滑走路を破壊され着水或いは不時着しなければ地上に戻れなくなってしまった。彼等はデュロを攻撃した敵を探そうとする。しかし、全く見当たらない。そう思っていた。

 

しかし、戦闘機富士は本部へ連絡を行い皇都エストシラント爆撃時と同じ様に稲荷神から許可を貰って敵航空戦力の撃破に向かった。突如として上空から現れた敵飛行機械にワイバーンロードは対応出来なかった。戦闘機は空対空ミサイル…パーパルディア皇国風に言うならば対空魔光弾を発射させる。如何にワイバーンの上位個体とは言え空対空ミサイルを回避出来る筈がない。ワイバーンロードは全滅した。

 

その様子を見ていた1つの集団がいた。彼等は戦闘機富士に対空魔光砲を発射しようとしていた。しかし、戦闘機富士に搭載されたAIによる危険認識システムによって危険な物であると判別。戦闘機富士が副兵装として装備している機関砲を撃ち込んだ。対空魔光砲は沈黙し、工業都市デュロに爆撃から逃れる手段はなくなってしまった。

 

停泊している戦列艦も同じく爆撃機の空対艦ミサイルによって纏めて破壊されていく。ここに、工業都市デュロの生産基盤は破壊されパーパルディア皇国は継戦能力が大幅に無くなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―パーパルディア皇国皇都エストシラント皇城―

 

時はデュロ攻撃前に遡る。謁見の間では緊急御前会議が開かれていた。議題は先程、皇都エストシラントを攻撃した日本国に対する対応である。

 

参加者は以下の通りだ。

 

皇帝ルディアス

皇族レミール

皇軍最高司令官アルデ

第1外務局長エルト

第2外務局長リウス

第3外務局長カイオス

臣民統治機構長官パーラス

経済担当局長ムーリ

 

その他農務局長や国家戦略局長、情報局長等の幹部とその他補佐の副官が参加している。

 

彼等は第3外務局と第1外務局が作成した日本国に関する資料を見ていた。そして、しばらくして資料を読み終えたのだろう。会議に参加している面々が顔をあげた。

 

「…では…軍から報告します」

 

報告するのは軍最高司令官アルデだ。 

 

「まず海軍です。海軍の主力の第1艦隊から第3艦隊、皇都直衛艦隊は全滅しました。また、アルタラス王国に派兵した第4艦隊、第5艦隊も全滅したので6艦隊が全滅した事になります。ですが、デュロに駐屯している第6艦隊、第7艦隊は無事です。

また、レノダに駐屯する第8艦隊も無傷です。この3つの艦隊を合わせると、海軍戦力は第1級戦力として戦列艦数百隻と竜母5隻、国家監察軍の第2級戦力として戦列艦数十隻と竜母3隻が残っています。この戦力だと本土防衛は出来るでしょう。しかし、日本国への直接攻撃ないし上陸作戦を敢行するのは難しいと思われます」

 

アルデはプルプルと震えている。皇帝に叱責されるのが怖いのだろう。しかし、職務を続ける。

 

「次に、陸軍についてです。皇国にある陸軍三大基地のうちの1つである、皇都防衛隊基地が日本国と思われる空襲によって破壊されました。基地に勤めていた兵士やその他兵器類は破壊され、少しの生存者を残して全滅しました。彼らは誘導魔光弾と思われる兵器で基地をピンポイントで破壊しました。誘導魔光弾に我が国が対処する方法は有りません。また、日本国が何処から攻撃を行ったかも分かりません。

また、今後基地を作る際に、基地を適度に分散する必要性が今回の戦訓により得られましたが、今戦争には反映するには間に合いそうにありません」

 

アルデは水を一口飲んで続ける。

 

「皇都の防衛体制に大穴が空いた為、属領統治軍を撤収させて、皇都防衛に当たらせます。今回は皇都防衛という最重要任務の為、早急に対処する必要があります。その為、皇軍最高司令官の権限で撤収指示を出しています。

属領統治軍を全て撤収させて、皇都防衛に当たらせても、人的資源で言えば壊滅した皇都防衛隊に匹敵する兵力を得られます。しかし、兵士の練度は低下しており、壊滅した皇都防衛隊よりも低下しています」

「お待ち下さい!アルデ殿!」

 

そう言って報告を遮ったのは臣民統治機構長官パーラスだった。

 

「属領統治軍を撤収する、 そんなことをすれば、属領で反乱が起こりかねない!代替案として他の基地から戦力を引き抜くわけにはいかないのですか?」

 

パーラスの問いにアルデは…

 

「無理です」

 

はっきりと拒否した。

 

「デュロは工業製品を生産する一大拠点です。故に、デュロから戦力を引き抜くのは良い物ではないです。レノダや、パールネウスも同様の理由です。よって、これらの基地から兵力を補充して皇都防衛にあたらせる…ということはできません。

我が皇国陸軍の最大の強みは地の利に詳しいことです。私も、パーラス殿と同様、これらの拠点から兵力を引き抜き皇都防衛に当たらせ、代わりに残りの拠点防衛に属領統治軍をあたらせることは考えました。しかし、その案は皇国軍全体の軍事力が低下すると考え、却下しました」

 

アルデは「それに…」と付け加えて言った。

 

「パーラス殿、臣民統治機構は属領民が反乱を起こされないように、属領を統治している筈です。もし万が一の為に反乱が起きた時に属領統治軍がいるのです。しかし、報告を聞いた限り、属領統治はうまくいっている様子…何か困る事でも有るのですか?」

「そ…それは…」

 

パーラスは言い淀んだ。何故なら、属領を統治している臣民統治機構の暴走を黙認していたからだ。アルタラス王国にいた1外交官が一国の王女を味見する等、有りえないことだ。この例は臣民統治機構の職員では無いが、他の属領では重税、暴力、性暴力、誘拐、殺人、その他諸々例を挙げればきりがない。彼自身、蛮族の土地を支配している臣民統治機構の行動を「仕方なし」と片付けていた上、賄賂等で黙認していた。彼自身もレミール等のパーパルディア皇国至上主義者と同じ様に周辺国を蛮族と蔑んでいたのも理由の一つだ。つまり、属領からパーパルディア皇国は恨みを買いまくっていると言うことだ。しかし、アルデはそんな事は知らない。

 

「属領は皇国の長い支配に抵抗しようとする勢力の牙は抜いてあります。属領同士の連携等も確認されていません。ですので、反乱が起こる可能性は低いでしょう」

 

アルデはパーラスの挙動不審に不信感を覚えるも続ける。

 

「それに万が一に属領が反乱を起こした結果、属領が失われたとしても…皇都の防衛と属領の鎮圧、どちらに兵力を割くべきかどうかは明らかだと思いますが、如何でしょうか。パーラス殿?」

「それは…そうでしょうね」

「それに、先ほども説明しましたが、各属領統治軍には既に指示を出しています。現在、既に各属領統治軍は皇都に向かう準備を開始しています。また、行動の早い部隊は既に撤収している。との報告を受けております」

 

もう決まって行動まで移しているのならどうしようもない。パーラスは着席した。

 

「また、皇帝陛下と経済担当局長ムーリ殿には既にご承知頂いておりますが、戦時経済へと移行し、物価の統制や兵器生産の増産を決定しています。また、先程のパーラス殿の指摘どおり、予備役や退役軍人を呼び戻し穴埋めを行う予定です。工業都市デュロに対して武器弾薬の増産を、港湾都市レノダにはフィシャヌス級戦列艦を始めとする戦列艦の造船、退役艦の40門級や50門級の戦列艦も復帰させます。これにより、戦力補填を万全にする予定です」

 

アルデが着席すると第3外務局カイオスが起立した。

 

「皆様もこの報告を聞いて日本国が侮ってはならない敵だと認識していると思われます。そこで、問題となるのが今戦争の落とし所です」

 

その言葉に皆は周囲の人の反応を窺う。その様子を見ながらカイオスは質問する。

 

「軍最高司令官アルデ殿に質問です。陛下のご意思である日本人の殲滅は可能ですか?」

「もちろんです。陛下のご意思を叶えるため全身全霊で挑むつもりです」

「精神論は聞いていません。今、私が聞きたいのは現有戦力で可能かどうかです」

 

その言葉にアルデは苦虫を噛み潰したような顔になって言った。

 

「現有戦力では不可能です。日本人殲滅を達成するべく戦力の補充を現在進行形で進めています。時間をかければ可能でしょう」

 

その言葉にカイオスは深いため息を心の中でついた。アルデの予測は日本国が何もしてこないという楽観的予測に過ぎない。だが、思考を戻していく。

 

「エルト殿、日本国は皇国にどんな要求をしているのでしょうか?」

「日本国はフェン王国及びアルタラス王国への謝罪と賠償金、技術の公開、フェン王国人処刑を指示した下手人を引き渡すようにとの事です」

「では、日本国の外交担当だったレミール様はこれらの意見についてどうお考えでしょうか?」

 

俯いてビクビクと動いていたレミールは顔をあげた。

 

「わ…私は…」

 

レミールが言葉を紡ごうとした時…

 

「もう良い!」

 

今まで沈黙を貫いていたルディアス帝の一喝が響いた。

そして、ルディアス帝はカイオスをギロッと睨む。

 

「カイオス!何が言いたい!貴様はレミールを差し出し完全敗北を望むか!」

「いえ、違います。私は皇国臣民のためにあらゆる可能性を模索しているのです。日本国は強い。これは事実です。私はパーパルディア皇国という国が廃れていく可能性を危惧しているのです」

 

カイオスはリアルに首が飛ぶ危険があったが何とかそれは回避した。ルディアス帝はカイオスの言葉に答える。

 

「確かに、日本国は強い。しかし、フィルアデス大陸は我が皇国の庭の様な物だ。例え、日本国が上陸してこようが地の利を生かして我が精鋭陸軍で迎え撃てば負けることはない」

 

ルディアス帝の言葉にカイオスは反論したかった。しかし、皇帝のお言葉を遮っての意見具申は首が飛びかねない。故に、口を閉じた。彼の懸念は属領の一斉蜂起だった。

 

臣民統治機構の統治が上手くいっていないのをカイオスは商人を通じて知っていた。属領は、パーパルディア皇国への恨みがたまりつつある。しかし、今までは属領統治軍が睨みをきかせていた。だが、今回の日本による攻撃で属領統治軍は撤退しつつある。現地住民が蜂起して臣民統治機構が陥落して属領を失う。こんなことがあれば、話を聞いた他属領も連鎖的に蜂起しかねない。

 

カイオス自身は、日本と独自の外交チャンネルを得ておきたかったのだが、日本はレミールが呼び出して以降、訪れる気配はない。彼は焦りを感じていた。

 

カイオスが考えている間に、話は纏まっていく。

 

「…では、今後の我が国の方針は、戦時経済の移行による武器弾薬の増産、退役軍人や予備役の復帰、海軍戦力の拡充のため、退役艦の復帰、新規造船を行い、今までの二倍以上の海軍戦力で夜のうちに日本国沖合に船団を送り込み橋頭保を確保します。その後、日本国の首都を落とします。異存ある方はいますか?」

 

アルデの提案にルディアス帝含め承認した。しかし、表向きには反対しなかったが、カイオスは頭を抱えた。これには、2つの理由がある。

 

一つ目は、アルデの作戦だった。この作戦は日本が何もして来ないことを前提としている。こんな希望的観測で作成された作戦は作戦とは呼ばない。

 

二つ目は、アルデ自身だ。こんな希望的観測で作戦を決める者が、軍最高司令官になっていることに頭を痛めた。これは、このガバガバな作戦で日本に勝てると思っている同僚にも言えることだが…

 

どちらの考えが正しいかは後日分かるだろう。

 






~コラム~

コードネームボア

原作の稲荷様には登場しないが、戦国時代に皆の前でイノシシの豪快な血抜きを披露した。ボアはこのイノシシを参考にした。

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パーパルディア皇国は滅ぼすべき?

  • 聖戦だ!滅ぼせ!
  • いやいや、講話でしょ
  • クーデター政権と講話
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