今回は気分を変えて稲荷神一人称視点を意識して書いてみました。
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蘇る伝説
―グラメウス大陸の名もなき山―
魔物が蔓延り、人の進出を阻むグラメウス大陸。その大陸にある人に知られていない山に1人の男が立っていた。だが、その男は背中に一対の翼が生えており単なる人族とは言えなかった。
彼はダクシルド、この世界の南に存在する大陸…ブランシェル大陸を一国支配する文明圏外国、アンニューリール皇国の公僕である。このアンニューリール皇国は人族の亜人種…有翼人の皇帝が治める国であり国民は有翼人だ。
彼はラジカセのアンテナらしき物が付いた機械を作業した結果現れた黒い渦らしき物に向ける。黒い渦が収まるとそこには身長3.5メートルほどある人間に似ているが、全身に黒い体毛が生え、頭部に角が生えたシルエットが現れた。どう見ても人間の類ではない。まあ、亜人種という可能性もあるが…
「復活したか、魔王ノスグーラ」
魔王ノスグーラ、遥か昔にフィルアデス大陸を攻め落とし、ロデニウス大陸に侵攻。ロデニウス大陸の住民は種族間連合を結成するがいとも簡単に殲滅、あと一歩と言うところで太陽神の使いに撃退。グラメウス大陸まで逃げ帰り4人の勇者パーティーに封印されたと伝わっている恐るべき存在だ。
しかし、それは表向きの情報だ。アンニューリール皇国は知っている。魔王ノスグーラとは古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国が製造した生物兵器だ。古の魔法帝国が復活する時まで、世界の下等生物を無力の存在にするべく製造された。
「忌々しい勇者共め」
魔王ノスグーラは下等生物4人に封印された過去を持つ。彼のプライドに触るのは当然だった。
「うん?誰だ貴様は」
ノスグーラは目の前に佇む羽が生えた男を見て問う。それを聞いて、ダグシルドは胸を張った。
「ノスグーラよ、我が貴様を復活させたのだ。お前の創造神である古の魔法帝国の末裔だ。忠誠を誓え」
魔王はそれを聞いて面食らった。そして頭を垂れると思われた魔王は…大笑いした。
「その辺の下種と変わらんな!」
「何だと!」
「その程度で魔帝様の末裔だと!片腹痛いわ!魔帝様は貴様らの事をその辺の下種と同類と扱うだろう。貴様のような中途半端な存在など消し去ってやりたいが、我を復活させたこと、魔帝様の血が流れている事に免じて見逃してやる。さっさと立ち去るがいい」
「なっ!」
彼ら有翼人の先祖…魔法帝国の民である光翼人の翼は魔法を行使すると光が翼に沿って光るのだ。翼が実体化するのは死に際の老人のみであり、ノスグーラの言っていることは正しいのだ。
ダグシルドは山を下りながら考えていた。
(くそ!新開発された魔族制御装置も歯が立たなかった!しかも、魔帝様の末裔たる俺をそこらの下種と同じだと…畜生め!)
彼は本国から新開発された魔族制御装置の試運転として戦力増強を見込める魔王ノスグーラを支配しようとした。しかし、歯が立たず魔王にボロクソに言われた彼の魔帝様の末裔というプライドはズタズタになった。
これが、日本国とパーパルディア皇国との戦争時の出来事である。
◆
そして、対パーパルディア皇国戦が終わってしばらくして、フィルアデス大陸北東部にはトーパ王国と呼ばれる国がある。この国は、グラメウス大陸と地続きで繋がっている。そのため、この国が魔物の手に落ちる事は、フィルアデス大陸が魔物の脅威に晒されると同意である。しかし、魔王が封印されて以降、グラメウス大陸とは【世界の扉】と呼ばれる壁によって阻まれており魔物が溢れる事は無い。
しかし、魔物は絶えずやってくるため軍備の拡張にトーパ王国は熱心だった。日本国と国交を結んでから、野戦砲や小銃を輸入したことで今までの弓や魔法での駆除より簡単になった。また、【世界の扉】近くには日本国が運河を建設しており将来的に莫大な利益が見込めると言われている。この運河も後、一年とも経たずに建設完了する見込みだ。
本来なら、こんな早い運河の完成はあり得ないが、魔法という技術がそれを可能にしている。
今日も今日とて、トーパ王国は平和なはずだった。しかし、今日は物騒だった。何故なら日本国の戦車部隊や一部輸送艦、戦闘ヘリ、稲荷神や近衛までもがやってきていたのだ。彼らを見たトーパ王国民は驚き、納得した。こんな凄い技術をもっているのならパーパルディア皇国を圧倒したのも理解出来るというものだった。トーパ王国上層部は彼らの技術に驚きこそしたが、それ以上に困惑した。
日本国へ派遣した使節団や、在日大使からは魔物というものを知ってはいるが直に見たことは無い。ということだ。そう、日本国は対魔物訓練と称してトーパ王国へやってきていたのだ。
だが、対魔物訓練を魔物が存在しない日本がする必要はないし、稲荷神という最高統治者が来る必要はない。その理由は少し時間を遡る必要がある。
◆
〈稲荷神〉
私は、久しぶりの我が家で北海道名物白い恋人を食べながら漫画を読んでいた。だが、ある時、私の500年以上生きてきた勘が面倒事を察知した。私は面倒に思うも、放置した方がもっと平穏に暮らせなくなると判断。稲荷大社に来れる閣僚を呼んだ。
私がいつもの通り遅れて来ると内閣の閣僚のほとんどが来ていた。私は別に首相と防衛大臣は名指しで呼び、ほかの人は任意でいいと連絡したはずなんだけど…と、遠い目になりながら上座の座席に座る。私は嘘が嫌いなのではっきりと告げた。
「自衛隊の一部をトーパ王国に援軍として派遣してください」
「理由をお聞きしても?」
「良くない勘です」
大臣の一人が聞いてきたので私ははっきりと告げた。反応は困惑といった所だ。やっぱり勘は駄目だよね…そう思っていると
「派遣名目をどうするかですね…」
「ええ、親日国ではありますが、オーストラリアやイギリス、ドイツ程ではない。理由説明は必要でしょう」
と、私の自衛隊派遣要請を前提に名目をどうするかで揉めていた。私は外交も分からないズブの素人だ。でも、名目が必要なのはhoiで知っているのでそんなもんか…と納得する。私は派遣するトーパ王国の使節団と会った時に、魔物の話を聞いた。そのことを何の気なしに呟いたらドンドン話が進んでしまい、その日のうちにトーパ王国への派遣部隊が編成された。私も言い出しっぺの法則と、自衛隊員の鼓舞のため、後は、魔物を生で見たいというオタク魂を理由に派遣部隊についていった。
◆
―ドーパ王国王都ベルンゲン王城―
私は日本国代表としてトーパ王国の国王だというラドス16世さんと面会していた。
「今回は、我が国の要望を聞き届けて下さりありがとう御座います」
「いえ、対魔物戦闘をしたいから軍を一部派遣したいとの事でしたが、あの鉄の地竜を見れば今回ばかりとは言わず、お金を払ってでも常駐していてもらいたいものです」
前世のアメリカと日本の関係みたいな物かな?と私はそんな事を思った。雑談をしてしばらくして、大学の教授さんが魔物について教えてくれた。
「魔物はグラメウス大陸と呼ばれる大陸に生息しており、常に我が国を通ろうとしています。しかし、現在は【世界の扉】と呼ばれる高さ20メートル程の壁がその行く手を阻んでいます。魔物の種類としてはゴブリンが最も多く、ゴブリンロードも偶に出現します。最近はオークの出現も確認しています。奴らは人間の肉を好んで食す人類の天敵です」
人の肉を食べるとか。とことん化け物みたいだな…と私は思った。しかし、話はまだまだ続きがあった。
「ですが、ゴブリンやオークなどよりも危険な存在がいます。まあ、出会うことなど万に一つもないですが、説明しておきます。グラメウス大陸にはかつて、魔王と呼ばれる存在がいました。その魔王は現在は封印されていますが他にも伝説の存在である、レッドオーガやブルーオーガ、ゴウルアスと呼ばれた魔獣、かつてのパーパルディア皇国の地竜リンドブルムをも凌ぐ赤竜がいます」
そう言って大学教授さんは王立図書館から持ってきたという写真を見せてくれた。ゴブリンとオークは私がよく知る姿そっくりだったが、オークよりも大きな全身真っ赤な鬼と同じく全身真っ青の鬼、これがレッドオーガとブルーオーガだろう。私はこれらの写真を見て
(ネーミングそのままだな~)
そんな事を思った。しかし、他にも見せてくれた写真には驚いた。角が生えた犬か狼の様な生物やパーパルディア皇国にいた地竜リンド…ブルム?だっけ?その生物より数倍大きな赤い竜と身長が3メートル位の大柄な角の生えた男がいた。これが、それぞれゴウルアス、赤竜、魔王だと思う。私が思ったものとはちがったが、まあ、今回はゴブリン討伐位だと思う。ラドス16世さんによると日本から輸入した小銃でオークやゴブリンを楽々仕留められるとの事なので、今回の任務は直に終わると思ってた。しかし、私の勘はよく当たる。良くない知らせが舞い込んできた。
「会談中失礼します!守備隊より伝令!ゴブリン数万、オーク300以上、ゴウルアスを確認!そして、レッドオーガとブルーオーガ、赤竜…そして魔王ノスグーラを確認しました!現在、日本国自衛隊の皆様と避難誘導を行っています。援軍を求むとのことです!」
この伝令を聞いた私は自衛隊の隊員達を守るべくラドス16世さんに「失礼します!」といって、窓を開けて自衛隊の救援に向かったのだった。
なお、飛び出した稲荷神を追うために護衛をしていた近衛と自衛隊派遣部隊の幹部は続けて去っていった。
一部始終見ていたラドス16世は嵐の様な人たちだな…と思った。
◆
稲荷神がトーパ王国国王ラドス16世との会談を行っている時、【世界の扉】では騒ぎが起こっていた。さもありなん。万をも超えるゴブリンの群れや数が通常より多いオーク、伝説の魔獣や果てに魔王まで現れたのだから当然だ。
魔物の軍勢を確認したトーパ王国軍は近隣のミナイサ地区の避難誘導を行っていた。戦車部隊は壁の存在があるため、後続から護衛しており、その他兵器や歩兵はそのまま魔物の軍勢を迎え撃つつもりだ。
魔物の軍勢がやって来る前に食い止めようと戦闘ヘリやコンバットフレームが飛び上がり上空からミサイルや火炎放射、キャノン砲等の武装を撃ち込んでいく。しかし、ゴブリンは地上を埋め尽くす勢いだ。だが、ゴブリンの数は着実に減っていた。しかし、伝説の魔獣は戦闘ヘリの機関銃では威力不足なのか多少足が止まる程度だった。ミサイルを撃とうとした時、空の脅威を認識している魔王は魔法を戦闘ヘリに放った。戦闘ヘリは回避行動をとるも、誘導弾のように戦闘ヘリに向かい命中、戦闘ヘリは撃墜された。
コンバットフレームも頑張ったが何せ数が数だ。機動性が良いとは言えないので、早めに後退させている。結局、魔王軍の数は減ったものの、【世界の扉】の前までやってきた。魔王はゴウルアスに命じて壁を破壊する。ゴウルアスは魔力弾を形成したそれは【世界の扉】を破壊する。形勢不利を悟った自衛隊はすぐさま撤退を開始した。戦闘ヘリが魔王から放たれた魔法により撃墜されたのも大きいだろう。討伐作戦もなければ余計な被害が出かねない。現場指揮官の指示により撤退、幸いにも魔王軍は追ってこなかったので、自衛隊、トーパ王国軍や国民に被害はなかった。
結果として、ミナイサ地区は陥落した。魔王の出現にトーパ王国は頭を抱えることになる。
◆
一方、頭を抱えていたのは魔王とて同じ事であった。何故なら、忌々しい太陽神の使いのマークがある神の船を見つけたのだ。魔王は封印される前にロデニウス大陸をあと一歩の所で陥落させる所まで来た。しかし、太陽神の使いが地を駆け巡り、空を飛び交い、海からの攻撃と3点砲火を受けた魔王は撤退を余儀なくされるという苦い経験がある。
そのトラウマは魔王やその配下であるレッドオーガやブルーオーガにも染み付いていたのだ。今回こそ、魔帝様の為に大陸の一つでも献上しようと雑多な魔物を集めてグラメウス大陸から出てみれば、下種共が小癪にも壁などを作っていた。だが、配下のゴウルアスの魔力弾で簡単に破壊できたので問題ではない。だが、問題なのは太陽神の使いの印のついた兵器がゴブリン共を駆逐していった事だ。
幸いにも魔王の魔法を回避してくる鉄の鳥を撃墜して魔王軍を鼓舞する事は出来た。しかし、下種共には逃げられてしまった。その事は魔王のプライドに触るのは当然の帰結だった。
そんな魔王とは裏腹にブルーオーガは魔王に問う。
「魔王様、此度は何処まで侵攻なさるおつもりでしょうか?」
「ウム。前回は海の向こうの南の大陸(ロデニウス大陸)に行った時には太陽神の使いを召喚されたからな…今回は南の大陸(フィルアデス大陸)までにしておくか…」
「了解いたしました」
「我々の創造主の魔帝様の復活は近い。この世界から下種どもを駆逐し、魔帝様が素早く世界を支配できるよう努めるのが我らの使命よ!」
その言葉にブルーオーガが頭を下げる。しかし、レッドオーガは魔王ノスグーラに質問した。
「魔王様、前回の戦いで我々は太陽神の使いに敗れました。奴らは強かった…ゴーと音を出す神の船、炸裂魔法を発射する鉄の竜、爆裂魔法を放つ150メートルを超える巨大な魔導船に乗っていました。今も俺はあの爆裂魔法が恐怖として残っています。俺は、魔帝様…古の魔法帝国の強さを知りません。魔王様、魔帝様の力は太陽神の使いの力をも上回るのでしょうか?」
この質問に魔王ノスグーラは高笑いして言った。
「何だそんなことか。忌々しい太陽神の使いさえも魔帝様には及ばぬよ。神の船は魔帝様の対空魔船によって墜落し、鉄竜も二足歩行兵器で破壊できるだろう。確かに、太陽神の使いの船は音の速さを超えていた。だが、魔帝様の天の箱舟の速さには及ばない。巨大船も爆裂誘導魔光弾で沈む。魔帝様の力は絶大でありいかなる種族も魔帝様には敵わんのだ。安心するがいい」
「ははっ」
魔王軍はその日のために牙を磨き続ける。だが、魔王は一途の不安を拭い去ることは出来なかった。
―コラム―
稲荷神の勘
稲荷神は直感的に動くことが多く、国内で言うと自動車の一斉点検や高速道路の一斉点検を行い、自動車はブレーキが正常に作動しない。高速道路は内部劣化が進んでいることが判明した。外国では飛行機墜落事故を止めたりチェルノブイリ原発の放射能を狐火で燃やしたりと人類の滅亡から守っている。故に、日本国及び世界では稲荷神の言う事に納得しなくても取り敢えず取り組む。後年、稲荷神の正しさが証明されワッショイワッショイされるのだ。
いかがでしたでしょうか?気に入って頂けたら幸いです。
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