稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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今回で魔王編は決着します!


神と魔王

 

 

ートーパ王国自衛隊仮駐屯地ー

 

ミナイサ地区から民間人を撤退させた自衛隊は魔王軍に占拠されたミナイサ地区近郊に仮駐屯地を設置している。その中の本部テントにて作戦会議を行っていた。

 

作戦会議には魔王の出現を聞いて急いで駆けつけて来たものの、自衛隊は撤退していて出る幕は無くなってしまった稲荷神と稲荷神を追ってきた近衛や自衛隊幹部も息を若干切らしながらも参加していた。トーパ王国軍からも騎士団長や副団長も参加していた。

 

「それでは、魔王軍の殲滅作戦をご説明致します。まず、こちらが魔王軍に占拠されたミナイサ地区です。幸いにも魔王軍は現在、ミナイサ地区に留まっており死傷者が出る前に排除することにしました。その作戦内容ですが、市街地では戦車や自走砲、コンバットフレームは取り回しが難しいです。ですので、少数精鋭の部隊で現在は停止している噴水の水道から現地に潜入します。歩兵はパワードスケルトンを使えば追いつかれる事は然う然うないと思います。引き付けた所で、レッドオーガやブルーオーガを排除します。その他魔獣についてはトーパ王国側から旧式の小銃でも問題なく排除できるとの事なので、問題はありません。大まかな作戦概要は以上です。最後に稲荷神様からの意見をお聞きしたく存じます」

 

(私は軍事は素人だからオタクの偏った知識しかないけど…)

 

そう、稲荷神の前世はオタクの女子高校生なので軍事は素人だ。基本的に稲荷神が指示するときは専門家のカンペがついている。だが、悩んでも仕方がないと話そうとした瞬間だった。

 

稲荷神は嫌な予感がして本部テントを飛び出す。そして空を見上げた。続けてテントから体を出した会議に参加していた面々は稲荷神に釣られて空を見る。そこには、遠近のせいで体が小さく見えるが、白い服に黒い翼をはやした人間が飛んでいた。稲荷神は一瞬自衛隊の隊員が飛んでいたのかと思ったが、即座にその考えを打ち消した。そもそも自衛隊の服は周囲に溶け込めるよう迷彩柄だし、人間に羽が生えていることなどあり得ない。そもそも、気づけたのも稲荷神の耳が人間とは比較にならぬほどに高いからだ。とまあ、日本国側の反応は淡泊だったがトーパ王国側は違った。

 

「あれは、魔王の側近であるマラストラス!」

 

魔王軍の手の者だと知った稲荷神は狐火を発動した。狐火は寸分狂わずマラストラスに命中、青い炎で燃え上がるマラストラスは絶叫を上げながら自由落下運動を開始、地面に激突した。稲荷神達は知らない事だが狐火で既にマラストラスは絶命しており落下時の衝撃が伝わらなかったのがマラストラスにとっては幸運だろう。

 

自衛隊員と稲荷神は魔王の側近と言う割には簡単に倒せたことに拍子抜けし、ペロリストである自衛官は「さすが稲荷神様!」と褒め称える。

 

一方、トーパ王国側は唖然とした。魔王の側近を務める程の魔力を持ち、その魔力を駆使して空を飛び魔法を撃ってくる。このマラストラスという魔物には苦労させられていた。変温動物であるワイバーン、火喰い鳥は寒い地域には生息するのは不可能だ。故に、亜寒帯気候に属するトーパ王国には、ワイバーンや火喰い鳥が生息していない。そのため、トーパ王国軍は空からの攻撃に対抗する手段をほとんど持てなかった。精々が弓矢と魔法程度であり余裕で回避されていた。マラストラスが空から撃ってくる魔法には、散々苦労させられたものであった。マラストラスのせいで殺されたトーパ王国軍の騎士は、100人を下らない。しかも、マラストラスにはただでさえ高い魔力を有している為に飛ばなくても十分すぎる脅威だった。

 

それを不意打ちとは言えども簡単に魔法で倒すことが可能な日本国…ひいては稲荷神と呼ばれる狐の獣人に驚いた。日本国はムーと同じ科学文明だった筈…魔法技術も発達しているのか?と疑問を抱かずにはいられない。

 

しかし、マラストラスを倒してくれたのは紛れもない事実だ。マラストラスの行き先は恐らく王城だ。トーパ王国の頭を失ったら大変な事態に陥っていただろう。トーパ王国軍団長らは稲荷神に感謝したのだった。

 

 

 

 

 

 

マラストラスを倒して中断していた稲荷神のお言葉を再度頂戴する流れとなった。

 

「えっと、魔王軍との戦いについてなのですが…魔王は私が打倒します。なので、他の魔獣の露払いをお願いします」

 

その言葉に自衛隊や近衛、トーパ王国軍からもざわめきがおこった。ペロリストである自衛隊や近衛は勿論、トーパ王国軍も稲荷神を止めようとする。勇者パーティでさえ、封印するのがやっとなのに倒すなど自殺行為と考えたからだ。自衛隊や近衛はそんな危険な場所に稲荷神を向かわせたくない。確かに稲荷神は通常兵器でさえ効かない、しかし、魔王の攻撃に稲荷神が無事な確証はないのだ。稲荷神vsペロリストの押し問答が始まったが神皇権限で押し通した。

 

なんのかんの時間はかかったが、作戦の概要が決まった。まず、自衛官が魔王軍の強者を引き寄せて戦車部隊で各個撃破。その後魔王を引き寄せて戦車部隊や戦闘ヘリの援護の元、稲荷神が魔王を撃破する…というのが作戦概要だ。

 

トーパ王国兵は万が一の住民の避難誘導を行うことになった。かくして、自衛隊と近衛はミナイサ地区へと足を進めていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

ートーパ王国ミナイサ地区ー

 

魔王軍はミナイサ地区で休息をとっていた。何故なら、壁を破壊してフィルアデス大陸に進む過程で、ゴブリンやオーク、果てはオーガまで倒れてしまったからだ。故に、部隊の再編成を行い魔帝様の為に大陸を献上するための休息をとっていたということだ。

 

そんな時に招かれざる敵が来た。そう、日本国自衛隊の歩兵である。自衛官は魔王軍の伝説の魔獣と言われるレッドオーガ等の強者をおびき寄せるためだ。自衛隊は単体行動をしているレッドオーガを発見。手りゅう弾を投げ目くらましを行い、そのすきに脱兎の如く逃げ出した。その行動にレッドオーガは怒り追ってくる。本来なら体躯の割に素早い動きをするレッドオーガに追いつかれるだろう。しかし、パワードスーツを着込んだお陰で本来の身体能力以上の動きが可能だ。

 

やがて、戦車が待ち構えている大通りにやってきた。歩兵はスライディングをしながら自衛隊の陣地に滑り込む。レッドオーガは過去に見たことがある太陽神の使いのマークを見て動揺する。しかし、後の祭りだ。自衛隊戦車の砲が火を吹いた。

 

砲弾はレッドオーガの強靭な肉体を爆発四散させ、四肢が路面の上に倒れこんだ。レッドオーガに撃ち込んだ榴弾砲の爆風で民家の窓が破裂したがコラテラルダメージだ。その後を追うように沢山の魔物がやって来る。だが、魔物は榴弾砲の餌食となりあっという間に殲滅された。

 

当然、こんな戦闘音が聞こえれば気づかれない筈がない。魔物の咆哮が響き渡った。何事かとミナイサ地区方面を見れば40体ばかりのオークを引き連れたブルーオーガであった。

 

自衛隊は慌てることなく戦車砲を発射。レッドオーガが耐えれなかった砲弾を同格のブルーオーガが耐えれるわけもなく沈黙した。オークも自衛隊所有の小銃や軽機関銃で掃射、殲滅された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ートーパ王国ミナイサ地区ー

 

トーパ王国ミナイサ地区の広場では二人の影があった。一人は身長が3メートル以上あり角が生えた筋骨隆々な男…魔王ノスグーラ

 

対してもう一人は小学生程度の身長であり、ノスグーラとは比較にならぬ程ひ弱そうな狐耳と尻尾をつけた獣人…否、稲荷神。

 

2人は正面から互いの事を見つめていた。

 

「貴方の事を倒しに来ました」

 

稲荷神の第一声にノスグーラは大笑いした。

 

「笑止!下種一人の分際で我に敵うものか!」

「ええ。私は戦いは苦手です。けど…日本国民に被害が出るなら走ってでも止める!それが私のやり方です!」

 

そう言って稲荷神は鳴狐(なきぎつね)を構える。余談だが、この鳴狐は鎌倉時代に一流の鍛冶職人が鍛えた逸品だ。稲荷神に剣術の覚えはないので、高校までの基本的な型しかできない。それでは心許ないので狐火を刀に纏わせる。そして、その刀で魔王に切りかかった。

 

魔王は冷静に距離を取り魔法の詠唱を行う。相手はレッドオーガとブルーオーガを倒した相手なのだ。早急に決着して下種どもを排除しようと全力投球だ。

 

「魔界の王の名において命ず。魔界の獄炎を纏う鳳凰よ、我に逆らう愚かな敵を焼き尽くせ!魔王炎殺拳奥義、炎殺黒鳳波!」

 

手のひらから噴き出した黒い炎が集まり鳥の形状となって稲荷神に迫る。

 

「はぁ!」

 

しかし、稲荷神はその炎を狐火を纏った鳴狐で切り裂いた。これには魔王も驚いた。何故なら魔王は目の前の獣人にほとんどの魔力を感じなかったのである。それもその筈、稲荷神が使うのは人々の信仰心…神力なのだ。魔力より上位の力が感じ取れる訳がない。理解するには、人々の信仰心が最低限ないといけないのだ。それを知らない魔王は自らが持つ魔物を操る能力を持って生き残っている魔物を稲荷神にけしかける。稲荷神は普通の域を出ない剣術を人外の力を以てふるう。それは見切れず、多くの魔物が切り捨てられた。しかし、これは魔王にとって時間稼ぎにしかならなかった。

 

「大地の王よ。その力を解放し我が配下の古の魔人を呼び覚ませ!出でよ!カイザーゴーレム!」

 

詠唱が終わると地響きがミナイサ地区を包み込んだ。大地が盛り上がり岩の塊が出現する。その岩の塊は巨大な人の姿となり15メートルを優に超えるゴーレムが完成した。

 

稲荷神はこれがゴーレムか…と呑気に考えていたが、一般的なゴーレムは精々が1メートル程度、エルフの魔導士ですら2メートルが限度だ。故に、この15メートルは圧倒的というほかは無い。

 

稲荷神は愚直に魔王目掛けて斬りかかった。しかし、魔王が発動した防御結界を張ったことにより防御結界はバターのように崩れたが魔王は無事だった。

 

防御結界を容易く破壊した狐の獣人に魔王ノスグーラは驚いた。この、カイザーゴーレムは古の魔法帝国の二足歩行型陸戦兵器を真似たものだ。勿論、オリジナルには劣るが下種どもには簡単に倒せるゴーレムではないのだ。それが破壊されたのだ、無理もない。しかし、更に驚いた出来事が起きた。なんと次の瞬間カイザーゴーレム全体が狐の獣人が持っている武器に纏っている青い炎に包まれたのだ。ノスグーラは危険な物と判断し即座にカイザーゴーレムから距離をとった。その判断は正しい。狐火はカイザーゴーレムの核もろともを一欠けらの土すら残さず消滅させた。

 

魔王が驚いている隙に稲荷神は距離を詰めて魔王に迫る。判断が遅れた魔王は防御結界を張るも、稲荷神の蹴りによって破壊されその反動で飛んだ稲荷神は見よう見真似である技を披露した。

 

「飛天御〇流龍槌閃!」

 

そう。稲荷神は人外の力を駆使して有名なあの作品…るろう〇剣心の技を使用したのだ。理由は漫画で知っており、ガン=ガタもできたのだからこれも出来るだろうという直感的な話だ。

 

それを受けた魔王は見るも無残になっていた。胴体が真っ二つに切れていたのだから無理もないだろう。そんな時に、レッドオーガとブルーオーガを討伐した自衛隊とトーパ王国軍が合流した。まだ、意識があった魔王ノスグーラは屈辱に震えた。そこには、太陽神の使いの鉄竜をより洗練したような物があった。つまり、この獣人は太陽神の使いの関係者ということだ。

 

「おのれ!太陽神の使いどもめ!」

「お母さんがどうかしましたか?」

 

稲荷神が衝撃のカミングアウトをした。天照大御神はこの世界では太陽神と呼ばれているので、魔王ノスグーラの言葉に反応したのだ。しかし、魔王は衝撃を受けた。そして、最後の力を振り絞った。

 

「太陽神の娘だと!貴様らのせいで我が野望を止めよって!よく聞くがいい!下種ども!近いうちに魔帝様が復活なさるだろう!圧倒的な魔帝様のお力によって貴様ら下種どもは一匹残らず奴隷となるだろう!」

 

そう言って高笑いしている内に魔王の姿は砂となって崩れ去った。魔物を率いていたトップが亡くなった事に動揺した魔物達は我先にグラメウス大陸に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【世界の扉】の残骸から逃げ出した魔物達は待機していた赤竜やゴウルアスと合流し逃げようとする。

 

だが、そうはさせまいと自衛隊の無人戦闘ヘリの機関砲がゴブリンやオークの命を刈り取っていく。しかし、生き残った魔物はグラメウス大陸奥深くへと逃げようとする。しかし、そこには艦砲射撃が待っていた。主砲から放たれる正確な砲弾はゴブリンやオークの命を容易く絶命させ、ゴウルアスも肉塊となった。しかし、そんな攻撃を耐えていたのが赤竜だ。この赤竜は重力魔法と呼ばれる魔法を駆使できる。これにより、砲弾の威力を軽減するのだ。本来、赤竜は属性竜よりも強く神竜にも匹敵しうるのだが如何せん知能が低い。

 

低い知能でやって来る砲弾にどれくらい魔法を行使すればいいか瞬時に判断しなくてはいけない。しかし、力を振り絞って体のあちこちから流血しながらもグラメウス大陸に帰ろうとする。しかし、上空にいた大型ステルス爆撃機星影が特殊爆弾を持ってきていたのだ。

 

貫通特化型爆弾。その名の通り貫通力に特化しつつも最低限の威力が保証された小型爆弾だ。星影から投下された貫通特化型爆弾は誘導により赤竜の背中を貫通。噴水の様に血を噴き出し絶叫をあげて絶命した。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、トーパ王国では国をあげての祝宴が行われた。当然だ。1万年以上に渡って文献として残り恐れられてきた魔王をたった1人で討伐したのだ。魔王を討伐した稲荷神はトーパ王国民から感謝され、稲荷神の知らない内にトーパ王国民は稲荷神を信仰することになるのだが、それを知るのはもう少し後の話である。

 






―コラム―

鳴狐

鳴狐は鎌倉時代の有名な鍛冶職人が手がけた逸品だ。本来は重要文化財止まりだったが、文久3年(1863年)に稲荷神が函館の五稜郭近くの公園で狐火を纏った鳴狐で機銃掃射を撃ち返し、大岩を真っ二つにした。結果、価値が高まったとして鳴狐は国宝になった。また、真っ二つの大岩とえぐれた地面が文化財となり、公園が国立公園になる事態となった。

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次回は各国の反応、外交関係をやろうと思います。
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