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ー第二文明圏圏外国グラ・バルカス帝国ー
グラ・バルカス帝国は未曾有の転移という事象を前に当初は宥和外交を行っていたが、皇族がパガンダ王国に処刑されたのを契機に前世界のユグド同様武力による勢力拡大に政策方針を変えた。
前世界も今世界においても、【情報】を重視していた。相手国の情報を分析し国力や軍事力を判断して行動している。
この世界は情報戦に対して乏しい知見しか無いらしく、情報は続々と入ってきている。故に、グラ・バルカス帝国情報局にとっては仕事がやり易い状態であった。
そんな情報局のオフィスで情報技官ナグアノは、今後行われる戦争に向けて異世界の国々の軍隊の分析及び考察を行っていた。
彼は机に向かって仕事をしていた。彼の机には第二文明圏外国で撮影された写真があった。それは、嘗てグラ・バルカス帝国に宣戦布告してきたものの、相手にならないほど弱く返り討ちにあった大陸国家、アストラル王国の木造帆船だった。ちなみに、このアストラル大陸より西にグラ・バルカス帝国が東にパガンダ島、その更に東にムー大陸が存在する。
「フフ…」
カラーで撮影されたアストラル王国の帆船の写真、それは地球世界でいえば紀元前頃のガレー船である。その前時代的どころか、何世紀も前の代物の船に彼は思わず笑った。
「どうしたナグアノ?」
不気味な笑いに隣で仕事をしていた同僚が話しかけた。
「いや、見てくれよ。帆船に矢除けの盾にオールだぜ。こんな何世紀も前の代物が現役なんだぜ。思わず笑っちまうよ。研究考察どころか最早趣味のレベルだぜ」
「こらこら、局長に怒られるぜ。一応こんなのでも相手の戦術の研究をして行くのが考えるのが俺らの仕事なんだ」
「すまん。でもこれは脅威度が低すぎるから後にしよう」
ナグアノは写真を机の引き出しに放り込んで、別の写真を取り出した。それはアストラル王国同様帆船だが、こちらのほうが大きく、両舷に大砲が沢山取り付けられていた。
「戦列艦か…」
今や、グラ・バルカス帝国領に編入された第2文明圏元列強、レイフォル王国が保有していた100門級魔導戦列艦だ。第1文明圏のトルキア王国の戦列艦、第2文明圏のニグラート連合の戦列艦、果ては第3文明圏の旧パーパルディア皇国のフィシャヌス級100門級魔導戦列艦の姿もあった。グラ・バルカス帝国からすれば第3文明圏は東の果てであるにも関わらず、写真が存在する。この事から、グラ・バルカス帝国の諜報員の行動範囲が窺える。これらはグラ・バルカス帝国からすれば骨董品であるが、ロマンはある。
それでも、大砲射程は2キロ程度と相手にならないのだが…だが、面白い発見はあった。
レイフォル王国同様、パーパルディア皇国は【風神の涙】と呼ばれる風を生み出す推進方法により船を常時動かす事が出来る。この魔道具と呼ばれるものにナグアノは興味を抱いた。
「なあ、この【風神の涙】を使えば空母の滑走距離を短く出来るんじゃないか?」
彼は研究対象としてレイフォルの戦列艦にメモを残した。レイフォル王国を滅ぼしたことで、【風神の涙】は直に手に入るのだ。
戦列艦を見たことで興味を失った彼は第2文明圏列強ムーの艦艇が写った写真を見る。それはムー国の最新鋭艦、【ラ・カサミ】級戦艦の姿だった。
「これが次に衝突すると思われる戦艦か…」
「この世界では珍しく全て機械仕掛けらしい」
そう、地球世界の日本が江戸幕府後期から幕末初期頃にかけてに保有していた戦艦三笠とそっくりな為、回転砲塔を有している。その点で、今までの戦列艦とは違うと言えるだろう。
ナグアノは考察する。この戦艦の速度は約18ノット*1。主砲は口径30センチ程度と見られる。グラ・バルカス帝国の基準で約40年程前の戦艦に当たるだろう。
砲の射程や戦艦の速度、そして、空母の艦載機の性能を考えるに、グラ・バルカス帝国基準で少なく見積もっても20年の技術の開きがあると思われる。
「飛行機の技術の開きが10年程度しかない。これは…少し脅威だな」
「この世界はワイバーンやワイバーンロードを何処の国も持ってる。それらに対抗出来るように航空戦力を開発したって所じゃないか?」
「なるほど、仮想敵に対抗出来るようにしたから飛行機の技術が進んでるのか…だが、流れ弾が当たらない限りウチの戦闘機がやられる事は無さそうだ」
「確かに…戦艦についても空母艦載機の攻撃で沈むだろうし…そこまで脅威ではないが…陸軍戦力が気になる。そちらを重点的に頼もう」
「そう言えば、神聖ミリシアル帝国の情報は?」
「いや、まだだな。もう少しで来るとは思うが…」
彼等の情報分析は続いた。
◆
時間は同日の夕刻にまで過ぎる。ナグアノは所用で職場から離れていた。そして、先程、帰ってきた。彼は自分のデスクの荷物を纏めて帰ろうとした。しかし、そこには気になる封筒があった。
それは現地に派遣した諜報員からの報告だった。グラ・バルカス帝国の情報収集の方法は幾つかあるが、大まかに分けると二つだ。
一つは情報局員が現地に向かい情報収集を集めさせるのだが、二つ目に現地人を雇い、情報を集めさせる二つがある。だが、現地人が集める情報は価値が無い物が多いため、情報局員が集めた情報の方が価値がある。なので、ナグアノは情報を読むくらいには残業しても良いだろうと思い、封を開けた。
封筒には『日本国に関する調査書』と記されていた。
(日本国…東の果の島国か)
ナグアノはこの世界の地理の大体を把握していた。この世界は3つの文明圏と文明圏外からなる地域に大別される。文明圏は発展度に応じて第一、第二、第三と分かれている。フィルアデス大陸が属する第三文明圏は文明レベルが遅れており、第三文明圏パーパルディア皇国でもワイバーンロードや戦列艦、マスケット銃とグラ・バルカス帝国より劣っている。そのため、第三文明圏への侵攻は距離があるために補給が大変だが、補給が万全なら簡単に征服出来ると考えていた。しかし、列強と言われていたパーパルディア皇国が第三文明圏外国の【日本国】に滅ぼされたのだ。故に、グラ・バルカス帝国は日本国を軽く調べていた。すると、日本国には勝てるだろうが、一筋縄ではいかない事が最近分かってきた。
封筒の中身を取り出すと、そこには数枚の写真と報告書があった。
その写真を見て、ナグアノは驚いた。
元々、パーパルディア皇国を探る為に派遣していた諜報員が日本国は戦車やロボット、我が国の戦闘機より速い航空機や回転翼機を運用しているのを見たというのだ。故に、グラ・バルカス帝国は日本国に対して諜報員の増員を行っていた。日本国はこの世界の国々と違い、情報戦に通じているらしく、日本国本土に潜伏した諜報員とはほとんど連絡が取れなくなっている。そのため、日本国近隣の国々で情報を集めていたのだ。
そこには、メモと共に写真が添付されていた。
『フェン王国にて確認、日本国製と思われる』
そこには日本国がフェン王国に輸出した九七式戦闘機の姿があった。
「これは!我が国の旧マルカブ型戦闘機にそっくりではないか!」
他にも様々な国に、似たような航空機や戦車の写真があった。これは全て日本が幕府後期から幕末初期にかけて製造、運用された物を生産して輸出したのだ。
「不味い!単翼機は神聖ミリシアル帝国しか持っていないと思っていたが、日本国は最低限単翼機を製造する技術があるという事だ!しかもこの航空機を輸出すると言うことは日本国の軍隊はそれ以上の可能性がある!諜報員の危険を考えても現地での情報を収集せねば!」
ナグアノは通信室に出向いて新たな指令を諜報員に命令した。彼は暗号通信を送信して家に帰った。
突然だが、グラ・バルカス帝国が運用する暗号機について説明したい。グラ・バルカス帝国が用いている暗号はエニグマ暗号。第二次世界大戦時代、国家稲荷主義ドイツ労働者党が用いたアナログ暗号だ。これはセットする歯車の数だけ暗号が複雑になっていく。それでいて、解読には歯車の数を揃えて逆向きに回していけば容易に解読できる。日本も明治時代に運用していた代物だ。しかし、置き換え暗号である以上総当たりでチェックすれば解読は可能なのだ。グラ・バルカス帝国はコンピューター等という計算機械は無いに等しい。だが、日本には何兆通り、或いはそれ以上の計算を瞬時に行う事が出来るスーパーコンピューターがある。故に、その暗号通信が日本国に傍受され、同時に解読されているとはナグアノは夢にも思っていない。
◆
「班長、グラ・バルカス帝国の暗号通信を傍受しました」
そう言うのは自衛隊所属の別班に所属するメンバーの1人だ。
「内容は?」
「我が国の航空機を中心に、可能なら船舶を確認しろとの事です」
「通信をキャッチした場所は確認しているな?」
「はい。諜報員の位置は捉えています。今、別働隊が向かってます」
「抜かるなよ。稲荷神様が統治なさるこの日本で好き勝手させるな」
彼等が何故グラ・バルカス帝国の暗号通信を傍受出来たのか?それは日本国に潜入したグラ・バルカス帝国の諜報員数名から自白剤を用いて様々な情報を聞き出したからだ。その際に、彼等が保持していた通信機を押収して周波数や暗号の解き方をスーパーコンピューターで即座に解析、傍受する事が出来たのだ。それを利用して同じ周波数が流れている地点に別班のメンバーを送り込んでグラ・バルカス帝国の諜報員を捕縛して来たのだ。
数時間後、別班の別働隊から諜報員を捕縛したとの情報があった。これにより、まだ生き残っていた諜報員は軒並み捕縛されナグアノが求める情報は手に入らなかった。結果として、日本国の情報は手に入る事はなかった。
◆
―日本国首都東京稲荷大社謁見の間―
この日、謁見の間では首相以下各大臣が集まり、重要な会議を行っていた。それは、この世界の最強の国家と謳われる神聖ミリシアル帝国が2年おきに開催する先進11カ国会議に関する会議についてだった。
「今回行われる先進11ヵ国会議についてですが、海上保安庁じゃなくて、海上自衛隊を派遣します」
稲荷神が会議の初めから本音をぶちまけた。
「分かりました、稲荷神様。しかし、仮にも国際的な会議に砲艦外交をしても良いのでしょうか?」
外務大臣が懸念を示した。しかし、声をあげたのは稲荷神では無かった。
「自衛隊及び、防衛省としては稲荷神様の意見に賛成します」
そう言って、防衛大臣は理由を話し始めた。
「まず、この世界では地球の国際連合の様な組織はありません。故に、覇権主義が一般的であり、植民地に否定的なのはごく少数です。そのため、砲艦外交が平然と行われています。これは、主催国である神聖ミリシアル帝国やパンドーラ大魔法公国等の複数からの情報です。また、こちらは別班の情報ですが、西の果て、第二文明圏外で勢力を拡大するグラ・バルカス帝国がアクションを起こす可能性が高いとの情報を入手しています。以上のことから、稲荷神様の考えを支持します」
「…分かりました。海上自衛隊を派遣しましょう。しかし、派遣する艦はどうするのです?」
外務大臣の問いに防衛大臣は答えた。
「派遣する艦は駆逐艦3隻、巡洋艦2隻の計5隻です。そこで、稲荷神、派遣許可を頂きたく存じます」
「許可します。会議に私は行きたくはないのですが、日本の為です。微力を尽くしましょう」
「ははっー!」
そして、後日計五隻の艦隊は神聖ミリシアル帝国南部の港町カルトアルパスに向けて、稲荷神を伴って出港した。
◆
ー第二文明圏外国グラ・バルカス帝国帝都ラグナ皇城ー
日本とは反対の地域に位置するグラ・バルカス帝国の皇城では、重大な御前会議が開催されようとしていた。
「これより会議を始めます」
司会が会議の開催を宣言する。しかし、既に関係各所に向けて根回しは終わっており、後は最終決定をするだけだ。
「カイザル、ミレケネス、間もなく先進11ヵ国会議があるが、準備は整っているか?」
帝王グラ・ルークスは会議に顔を出している男女に確認をとる。男性は、帝国海軍東部方面軍艦隊司令長官カイザル、女性が帝国海軍特務軍艦隊司令長官ミレケネスだ。
「はい。帝王陛下。準備は整っております」
カイザルは帝王に答えた。
「陛下。今回の作戦で現地人どもは…世界は驚き我らに頭を垂れるでしょう」
カイザルの隣で、外務省長官ラウスが自信たっぷりに答えた。
「神聖ミリシアル帝国などに遅れをとるまいな。この世界では最強と呼ばれているようだが」
「現地人に遅れを取ることはありません。兵器の設計思想が間違っていると情報局から報告があがっております」
「であるか…よろしい。作戦を許可する」
グラ・ルークスの言葉に出席者全員が敬礼をして、御前会議はお開きとなった。
彼らの認識が間違っていると理解するのは何時頃だろうか…
―コラム―
諜報員
日本人は稲荷神様が大好きなので、稲荷神様の心を乱す存在を許しません。諜報員や工作員の処理は徹底しており、彼等の処理には一般人も喜んで協力する。無線封鎖出来る日本が第二次大戦仕様のグ帝に情報戦で負ける訳が無いんだよ!
次回は先進11カ国会議です。
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