稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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諸事情によりグレードアトラスター2番艦の名称を変更しています。


先進11カ国会議開催!

 

 

―第一文明圏列強神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパスー

 

神聖ミリシアル帝国の第二の心臓と呼ばれるこの町はフィヨルドに似た地形の奥に港が整備されている。故に、天然の良港であり世界から数多の人々が船や飛行機でやって来る。そのため、先進11ヵ国会議はカルトアルパスで行われるのが通例だ。

 

そして、今日はその先進11ヵ国会議が行われるので、湾岸管理局は大忙しだ。港は今回参加する国々の船で埋まりつつある。第一文明圏のエモール王国は内陸国故に風竜騎士団を22騎派遣しており、空軍基地に着陸している。第二文明圏からはムー国とニグラート連合が、第三文明圏からは南方大陸を一国支配するアニュンリール皇国が到着していた。

 

アニュンリール皇国はバリスタを装備した帆船である一方、二グラート連合は竜母4隻と戦列艦4隻、ムー国はラ・カサミ級戦艦を含めた空母機動部隊16隻を派遣している。故に、第二文明圏の停泊エリアの大部分が埋まってしまっている。

 

そこに第一文明圏のアガルタ法国の魔法船団やトルキア王国の戦列艦、第二文明圏のマギカライヒ共同体は機甲戦列艦が到着した。

 

湾岸管理局局長は第零魔導艦隊がいない事を残念に思っていた。神聖ミリシアル帝国海軍が保有する第零魔導艦隊は普段はここ、カルトアルパスの一角に停泊しているのだが、先進11ヵ国会議には神聖ミリシアル帝国西方に位置するマグドラ群島に訓練に出港しているのだ。

 

来港してきた各国の船を案内していると、遠目からでも分かるほど巨大な船が近づいてきていた。

 

「局長!グラ・バルカス帝国が到着しました!戦艦一隻です!」

「よし、第二文明圏エリアに誘導しろ!」

 

その戦艦は巨大でありながら美しさを兼ね備えていた。そう、この船こそが、列強レイフォルを一隻で滅ぼすという伝説を打ち立てた【グレードアトラスター】級戦艦の二番艦【アンドロメダ】である。あまりの大きさに周りに停泊している二グラート連合やマギカライヒ共同体の戦列艦や機甲戦列艦、果てはムー国の戦艦が玩具に見えるほどの威容を放っていた。神聖ミリシアル帝国のカルトアルパスの住民や来港した各国要人や軍人を驚かせた。しかし、ある国には別の感情を抱いていた。

 

一時間程して、日本国の艦隊がやってきた。

 

「局長!日本国が到着しました!小型艦3隻、巡洋艦2隻です!」

「分かった。第三文明圏エリアに誘導せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー日本国海上自衛隊ー

 

湾岸管理局がタグボートで誘導する中、稲荷神は近衛やお世話係と会話をしていた。

 

「ふう…ようやく到着しましたね」

「そうですね」

「どんな食べ物があるのか楽しみです」

 

何時も通りの稲荷神の言葉にお世話係はクスッと笑った。しかし、そこに近衛の声が響いた。

 

「稲荷神様!前方に大和型戦艦が停泊してますよ!」

 

声のする方向に稲荷神が向くと、そこには稲荷神の脳裏にしっかり残っている戦艦大和の姿とそっくりな戦艦があった。

 

「懐かしいですね。細かい所までそっくりです」

「そうなのですか?」

「ええ。偶然とは言えない程には」

 

世界各国がグラ・バルカス帝国の戦艦に驚いている中、稲荷神は驚くどころか懐かしいと言っていた。結果として、稲荷神はグラ・バルカス帝国の戦艦の事などすっかり忘れて神聖ミリシアル帝国の食事に舌鼓をうつのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、8日間に及ぶ会議が始まった。最初の方では外交担当が協議を行い、その後、外務大臣級の者たちで協議が行われる。その後、神聖ミリシアル帝国外務大臣ペラクスが今後の方針を世界のニュースで発表するのだ。

 

会場となる帝国文化会館で、稲荷神は中央ホールの片隅で暇を持て余していた。稲荷神は国際会議に出席した事はあるが、それはパリ講和会議のみだ。故に緊張していた。既に、カルトアルパスの食べ物の大半を食べているので食事で時間を潰す事も出来ない。稲荷神が不満に思っていると、日本使節団の外交官に近づく者がいた。そのもの達の会話は稲荷神の耳に届いていた。

 

「はじめまして、私は中央世界のアガルタ法国外交庁に勤務しているマキと申します」

「日本国外務省の近藤です」

「ありがとう御座います。近藤殿。貴国、日本の技術力に我が国は強い関心を持っています。魔法文明の世の中で科学のみで成り立つ国で、パーパルディア皇国を叩きのめした勇敢な民族が住まう国と。ムー国でさえ一部を魔法技術に頼っている中、貴国は科学のみで成り立つ…失礼な話ですが、我々の認識では魔法を使えない国は碌な文明を作れない蛮族という認識が強い。しかし、貴国は科学のみで高度な文明を成り立たせているという。今度、是非とも日本国へ行ってみたいものです」

「ありがとう御座います。是非とも我が国にいらしてください」

 

そんな会話をしているとアナウンスがロビーに響いた。

 

『間もなく先進11カ国会議を開催します。関係者の方は係りの案内に従って入室して下さい』

 

その言葉でアガルタ法国と別れた日本国使節団は稲荷神を先頭に会議室に入室、稲荷神と外交官近藤が席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先進11カ国会議…それは今後の世界の行く末を決める会議である。主に世界に影響力を持つ国が常時参加国、国際連合でいうところの常任理事国として、非常任理事国に相当する持ち回り参加国が参加する。

 

第1文明圏から第2文明圏、第3文明圏、そして南方大陸の国々が集まって会議をするため、世界の国々はこの会議に特に注目している。

 

理由は新しく常時参加国相当の国が2カ国入れ替わったからだ。前回は常時参加国として神聖ミリシアル帝国、ムー国、エモール王国、パーパルディア皇国、レイフォル王国の5カ国だった。しかし、レイフォル王国は第2文明圏圏外国のグラ・バルカス帝国によって滅ぼされ、パーパルディア皇国は第3文明圏圏外国の日本国によって解体された。よって、両国は列強失格となり常時参加国は残り3か国のみだ。

 

先進11ヵ国会議に参加する国は第一文明圏から以下の通りだ。

 

神聖ミリシアル帝国…第一文明圏列強1位

エモール王国…第一文明圏列強3位

アガルタ法国…第一文明圏

トルキア王国…第一文明圏

ムー国…第二文明圏列強2位

二グラート連合…第二文明圏

マギカライヒ共同体…第二文明圏

グラ・バルカス帝国…第二文明圏外国

パンドーラ大魔法公国…第三文明圏

日本国…第三文明圏外国

アンニュンリール皇国…南方世界

 

の国々だ。元々常時参加国であったレイフォル王国とパーパルディア皇国は列強失格となった2カ国の代わりにグラ・バルカス帝国と日本国を後釜として据える予定だ。もし、今回の会議で承認されればこの2カ国は正式に列強入りする。

 

会議が始まると早速エモール王国の代表が手を挙げた。

 

エモール王国は的中率ほぼ100パーセントの占いを実現する国であり、事情を知る各国はどんな話がされるのかと固唾を飲んで見守る。事情を知っている稲荷神も興味があり、どんな話が出るのかな〜と思っていた。

 

「エモール王国のモーリアウルである。今回は重要な事実を教えなくてはならない。心して聞いてくれ」

 

占い大国の重要事項…各国大使にどよめきが静かに広まった。

 

「先日、空間の占いを実施した。その結果、ラヴァーナル帝国、即ち古の魔法帝国が近いうちに復活する。という物だった」

 

モーリアウルの言葉は事情を知る各国を凍りつかせた。

 

「古の魔法帝国だと!」

「そんな…」

「そうであれば、我々に勝ち目はないぞ!」

 

怒号が飛び交う会議室。だが、モーリアウルは粛々と話を続ける。

 

「復活の場所についてだが、空間に歪みが生じており正確には分からなかった。だが、我々の計算によると、今年から4年から25年の間に、この世の何処かに復活するだろう。古の魔法帝国に、我々がどの程度対抗することができるのか。伝承がどこまで本当なのかは定かでは無い。だが、彼奴らの力がどれほどのものなのかは、各国にあると思う、彼奴らの遺跡が物語っている。従って、我々は不要な争いをすること無く、軍事力や技術力を強化、世界各国が一丸となって古の魔法帝国復活に備えるべきである」

 

そう言ってモーリアウルは話を終えた。各国大使は余りの衝撃に隣に座る大使たちの顔を見たりして、自身の精神を安定させようとする。そんな時だった。

 

「クックックッ…ハーハッハッハッ!」

 

国際会議の場に相応しくない嘲笑と言うか、侮蔑を含んだ声で場を乱す存在が現れた。

 

声の主はグラ・バルカス帝国の20代位の女性外交官だ。各国大使は彼女の唐突な行動に嫌悪感を抱く。国際会議で馬鹿にしたような笑い声を出されたら当然だろう。

 

「いやいや、失礼した。私はグラ・バルカス帝国外務省異界東部方面担当課長のシエリアという。古の魔法帝国か何か知らんが、過去の遺物に恐れ入るとは…この世界のレベルに唖然としているところだ。そもそも占いなぞという、当たるかもわからないオカルトを外交官ともあろう者達が信用するその精神が私には理解できない。しかも、この世界で列強という代表がこの発言とは。我が国が滅ぼしたレイフォルも列強だったらしいが、はっきり言って弱かった。これで世界会議か。…レベルの低さが知れる」

 

余りにも傲慢不遜な発言に当然ながら反発が起こる。

 

「新参者が何を言う!この礼を知らない野蛮人め!」

 

エモール王国と同盟関係にあるトルキア王国の代表はシエリアに食ってかかる。これは当然の反応と言えた。同盟国のエモール王国外交担当貴族、モーリアウルも口を開く。

 

「新参のグラ・バルカス帝国か。魔法を知らない人族の国らしいな。魔力の低い人間如きがほざくな。貴様等に期待していない」

 

プライドの高く、列強に名を連ねるエモール王国に歯向かう者など無いに等しい。だが、シエリアは真っ向から歯向かう。

 

「科学を理解できない亜人風情が楯突くとは。我が帝国に口を利くとは大したものだ」

 

この言葉にモーリアウルは激怒する。

 

「亜人とは人族以下というのは、どういう意味だ!我が国は竜人族の国だぞ!下種が!」

 

会議は紛糾し場は騒然となる。議長が抑えようとするが効果がない。地球の会議ではまず有りえないだろう。だが、日本の使節団は顔には出さないが、稲荷神以外は内心腸が煮えくり返っていた。亜人とグラ・バルカス帝国はモーリアウルを侮蔑した。つまり、この世界では獣人と一般的に定義される稲荷神も人族以下と罵ったに等しい。大恩ある稲荷神が人族以下など断じて認められる話ではない。だが、ここは国際会議だ。使節団は我慢する。その間に、ムー国大使が手を挙げる。

 

「我がムー国は、本会議において『グラ・バルカス帝国に対する2年以上の交易制限』を発議致します。理由としては、第二文明圏外国であるイルネティア王国及び、王都キルクルスに対する侵攻です。我々、第三国が口を挟むことではございません。しかし、このままグラ・バルカス帝国の勢力拡大を許せば第2文明圏、やがてはこの世界の秩序が脅かされることとなるでしょう。以上が発議の理由です」

 

入れ替わるように神聖ミリシアル帝国の代表が手を挙げる。

 

「ムー代表の方の仰る通りです。確かに彼らは世界の秩序を乱し過ぎている。我が神聖ミリシアル帝国はムー国の提案に賛成すると共に、グラ・バルカス帝国に対して『第二文明圏からの即時撤退』を要求します。このまま第二文明圏に対する対外侵攻を続けるならば、我が国としても動かざるを得ません」

 

世界が自他ともに認める最強国家、神聖ミリシアル帝国が直接介入する。その言葉に出席していた国はグラ・バルカス帝国も下手な真似は出来ないと考えた。神聖ミリシアル帝国を相手にするなど自殺志願者のする事だ。だが、グラ・バルカス帝国は違う。

 

「1つ言わせてもらう。我が国は、今回の会議に意見を述べるために参加したのではない。この世界の有力国家が集まるこの会議において、我が国からの通告を伝えるために来たのだ」

 

シエリアは一呼吸置いて、とんでもないことを口にした。

 

「グラ・バルカス帝国帝王グラ・ルークスの名において汝らに告げる。我が国に従い、我が国の支配を受け入れよ。我が国に忠誠を誓った国には、永遠の繁栄を約束しよう。だが、従わぬ者に我らは容赦しない。沈黙は反抗と見做す。…まずは問う、今ここで我らに従う国はあるか?」

 

会議室が沈黙した。各国大使は彼女が言った意味が理解できなかった。いや、理解できても常識が彼等の脳をフリーズさせた。しかし、それも一瞬。次々に怒号が飛び交う。

 

「神聖な会議をなんだと思っている!」

「下種が!」

「何を考えている!」

 

勿論、反発の声が飛び交う。しかし、この程度の反発はシエリアにとって想定の範囲内だった。

 

「やはり、今は従う国は現れぬか。まあ、当然だろう。だが、グラ・ルークス陛下は寛大なお方だ。従うのは、我が国の力を知った後でも遅くない。用があれば、レイフォルの出張所まで来るが良い。まあ、大きな被害が出てからになりそうだがな…では現地人共、確かに伝えたぞ!」

 

そう言うなり、シエリアは会議室を後にした。

 





―コラム―

国際会議

稲荷神が国際会議に出席したのは、パリ講和会議が初めてであり、ただの噂と考えられていた日本国の最高統治者は狐耳と尻尾が生えたリトルプリンセスの話が真実であったと判明した。その後は、海軍軍縮条約や稲荷講和会議(第二次大戦)、や戦後は国際会議を稲荷大社で行いたいと言う申し出が後を立たなかった。

リトルプリンセスについては次話のコラムで説明するよ。

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