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―神聖ミリシアル帝国西部カルアリス地方 マグドラ郡島―
マグドラ群島とは、神聖ミリシアル帝国領の無人島の集まりだ。だが、辺境と言える島だ。何故なら、神聖ミリシアル帝国本土から遠いうえに、海流の乱れや霧が発生しやすい。その為、過ごしにくいのだ。マグドラ群島には地元民でも寄り付かず、無人島ばかりが集まっている。
そんな無人島の集まりを縦横無尽に水上を駆ける船達があった。それはこの世界にしては先進的な形状であり、SF的な見た目をしている。そう、この船達は神聖ミリシアル帝国が誇る第零式魔導艦隊16隻だ。
16隻と聞くと少ない様に思う。だが、神聖ミリシアル帝国の第零式魔導艦隊は世界最強であり、敵無しだった。
艦隊の内訳は以下の通りだ。
ミスリル級魔導戦艦2隻
ゴールド級魔導戦艦1隻
プラチナム級重装甲魔導巡洋艦他1隻
ブロンズ級魔導巡洋艦3隻
小型艦8隻
この小型艦とは地球世界の駆逐艦に当たる。しかし、この駆逐艦には魚雷らしき物は見当たらない。何故なら、神聖ミリシアル帝国は古の魔法帝国の遺跡から魚雷を発掘した事が無いのだ。故に、魚雷を主武装とする潜水艦も知らない。神聖ミリシアル帝国でも発見及び解析出来ていない物をムー国以下、全ての国が知る由もない。
第零式魔導艦隊は2つの集団に分かれて模擬戦を行っていた。だが、異変はすぐそこまで迫っていた。
ミスリル級魔導戦艦【コールブランド】が魔力探知レーダーで迫ってくる複数の反応を察知した。オペレーターはこれが敵襲の可能性を考えた。
神聖ミリシアル帝国は列強2番手のムー国を仮想敵国として定めている。しかし、問題となるのが魔力探知レーダーだ。ムー国の兵器は科学で出来ており、魔力探知レーダーが反応しないのだ。その為、飛行機や船に乗る人を探知している。
だが、今回の反応はムー国の航空機や船でもない。何故なら速度が違うからだ。艦長はオペレーターから齎された情報を元にグラ・バルカス帝国の敵襲と考えた。
『全軍戦闘準備!これは訓練では無い!繰り返す!これは訓練では無い!』
ここに、マグドラ沖海戦が幕を開けた。
◆
グラ・バルカス帝国はこの世界を支配下に治めるべく、手始めに世界最強と宣う神聖ミリシアル帝国の主力艦隊に攻撃を行い、神聖ミリシアル帝国が勝てない国に勝てる訳が無い…と、各国が自主的に帝国の軍門に降る為の第1段階だ。
今回の攻撃に用意した艦隊は以下の通りだ。
オリオン級戦艦2隻、
タウルス級重巡洋艦3隻、
キャニス・メジャー級軽巡洋艦2隻、
キャニス・ミナー級駆逐艦3隻、
エクレウス級駆逐艦2隻の
この計12隻だ。マグドラ沖海戦の始まりは神聖ミリシアル帝国の多目的戦闘爆撃機【ジグラント2】24機による爆撃だ。本来、駆逐艦ならばいざ知らず爆撃機を利用するのは無謀もいいところだ。何故なら、爆撃では戦艦は撃沈出来ないからだ。まあ、地球世界には爆撃した爆弾が戦艦の機関部で爆発して轟沈させた凄腕爆撃手がいるがそれは例外だ。
では、何故爆撃機なのか。それは前述した通り、神聖ミリシアル帝国には魚雷が無いからだ。魚雷が無い故に、航空機の役割は専ら戦艦の援護だった。彼等は所属不明艦―十中八九グラ・バルカス帝国―に攻撃を仕掛けようとする。
しかし、グラ・バルカス帝国からの対空射撃―近接信管―によってあっという間に友軍機が落とされる。なんとか急降下爆撃を行うが、回避行動を取られて戦艦に1発しか命中しなかった。神聖ミリシアル帝国爆撃機は25機中、13機が撃墜されたが敵被害は爆弾1発と初戦は神聖ミリシアル帝国側の敗北に終わった。
続いて、艦隊決戦が始まった。神聖ミリシアル帝国海軍は砲撃準備をする。一方、グラ・バルカス帝国は駆逐艦、神聖ミリシアル帝国側の呼称で小型艦を5隻先行させた。
神聖ミリシアル帝国とグラ・バルカス帝国の砲撃戦の初弾は神聖ミリシアル帝国側が掴んだ。そこから一進一退の砲撃戦の結果、命中弾1発が敵戦艦の機関部に損傷を与えて速力低下を与えた。だが、グラ・バルカス帝国も負けていない。ゴールド級魔導戦艦の喫水線付近に着弾、被弾した艦は浸水被害を受けた。
そこにグラ・バルカス帝国の小型艦が反転して帰ろうとする。しかし、そこに巡洋艦の主砲弾が命中、小型艦を真っ二つにした。
実は、グラ・バルカス帝国の駆逐艦が反転したのは53センチ魚雷の射程圏内に入ったからだ。だから、駆逐艦は横っ腹を見せて魚雷を発射したのだ。しかし、何度も言うようだが、神聖ミリシアル帝国に魚雷は無い。だから小型艦の動きを不審に思ったが、戦艦への攻撃を集中させた。
結果として、神聖ミリシアル帝国が勝った。しかし、それは辛勝と言える物であった。双方の被害は以下の通りだ。
神聖ミリシアル帝国海軍 第零式魔導艦隊
喪失…小型艦1隻
大破…ゴールド級魔導戦艦1隻、プラチナム級重装甲魔導巡洋艦1、シルバー級魔導巡洋艦1隻
中破…シルバー級魔導巡洋艦1隻
小破…ミスリル級魔導戦艦2隻、以下多数
グラ・バルカス帝国海軍 東征艦隊
喪失…オリオン級戦艦1隻、タウルス級重巡洋艦1隻、キャニス・ミナー級駆逐艦1隻
大破…タウルス級重巡洋艦1隻
中破…キャニス・メジャー級軽巡洋艦1隻
小破…オリオン級戦艦1隻他多数
神聖ミリシアル帝国は勝ったには勝ったが、無敵と思われていた第零式魔導艦隊がこの被害を受けたのは衝撃だった。しかし、被害はこれだけに終わらない。まだ、グラ・バルカス帝国の駆逐艦が放った魚雷が到着していないのだ。
魚雷は砲弾によって機関部に損傷を受けて速力が低下していた戦艦に命中、沈没してしまった。
そこに追い打ちを駆けるようにグラ・バルカス帝国の航空機がやって来た。零式魔導艦隊はダメコンも満足に出来ぬまま、対空戦闘用意をする事になる。
【ジグラント2】はやってくるグラ・バルカス帝国の航空機に対処するべく動いていた。接敵したためにドクトリンに従い、一撃離脱する戦法を取っていた。しかし、グラ・バルカス帝国の【アンタレス戦闘機】は時速550キロそれに対して【ジグラント2】は時速510キロだから無理もない。だが、性能差故に【ジグラント2】は撃墜されたのだった。
残った艦隊はアクタイオン25ミリ連装対空魔光砲を敵航空機に向けて発射する。しかし、当たらない。グラ・バルカス帝国の航空機は急降下爆撃をする。薄い対空射撃のせいで多くの航空機の接近を許した魔導艦隊は大きな被害を受けた。
彼等は任務を終えると帰っていった。しかし、後続の【リゲル型雷撃機】が雷撃を行うべく低空で接近し、魚雷を発射した。結果として魚雷は命中し神聖ミリシアル帝国が誇る第零式魔導艦隊は全滅したのだった。
◆
―神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス―
外務省統括官リアージュは先進11カ国会議に出席している国々を相手にする所に外務省に呼び出された。緊急会議との事なので外務省の会議室にやって来た。中に入ると、そこには何人もの重役が顔を揃えていた。外務省の幹部、アルネウス含め帝国情報局、それに軍の幹部、アグラ国防省長官、シュミールパオ軍務大臣までもが着席していた。根回しもしていないこの状態で、これだけのメンツが揃っている事は、何か重大な事態が発生したのだろう。
リアージュが着席すると同時に、会議が始まった。
「これから、会議を始めます」
そう言うと同時に資料が配られる。そこには信じられない事が書かれていた。
「概要を説明致します。昨日昼頃、本国の西方にあるマグドラ群島周辺で訓練中の第零式魔導艦隊が、『所属不明の艦隊及び航空機による攻撃を受けている』との連絡を最後に音信不通となっております。また、同群島にある地方空軍基地も、『攻撃を受けている』との連絡を最後に音信不通となりました。幸いな事に陸軍離島防衛隊のみが通信可能な状態です。そこから報告を受け取ったのですが、所属不明艦隊及び航空攻撃により、第零式魔導艦隊は全滅。空軍基地も敵航空攻撃により全滅した。とのことであります。尚、この所属不明艦の国旗を確認したところ、グラ・バルカス帝国と断定致しました」
出席している全員に衝撃が走った。
「ちょっと待ちたまえ。第零式魔導艦隊が全滅した…だと? 数こそ少ないが、新鋭艦で構成された艦隊だった筈だ。相手が同数であれば、間違いなく世界一の筈だ。いくらグラ・バルカス帝国が強くても、数で押してこようと、損傷ならともかく全滅とは…本当なのか?」
「残念ながら事実です。陸軍離島防衛隊の情報によると離島空軍基地に艦砲射撃を行い、その後東へ向かったとの事です」
再度、皆に衝撃が走った。
「東…まさか…!」
「はい。予想される攻撃地点はここ帝都ルーンポリス、或いは先進11ヶ国会議開催中の港街カルトアルパスです」
「防衛対策はどうなってる!」
「離島防衛に向かわせている第4及び第5魔導艦隊を帝都防衛の為に呼び戻しています。帝都は第4、第5、第6・第7魔導艦隊で防衛を行うため万全といえるでしょう。しかし、問題は港街カルトアルパスです。現在東方ベリアーレ海に展開中の第1、第2、第3魔導艦隊をカルトアルパス周辺に展開させるように手配を行っています。しかし、離島からの距離を考慮すると、グラ・バルカス帝国の方がカルトアルパスに早く到着する可能性があります。今カルトアルパスを守れる艦隊は、在泊地方隊の巡洋艦クラス8隻のみとなります。制空戦闘型を含めた天の浮舟は、迅速にカルトアルパス周辺の空軍飛行場に移動させます。ですが、空軍はともかく魔導艦隊が間に合わない可能性が高いです。現在、カルトアルパスでは先進11ヶ国会議が行われています。その為、外務省統括官の意見も伺いたいと思い、今回の会議にお呼びしました」
リアージュが尋ねるとアグラ国防省長官が回答した。一瞬思考して、リアージュが荒声を出す。
「冗談じゃない!世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国が、その国の威信を賭け警備をしている先進11ヶ国会議の開催期間中に、『蛮族に攻められて、守り切れないので避難して下さい』などと、言えるものか! その様な事を言えば文明圏外の属国が大量に離反を始める!それに、列強や文明圏外国も我が国を軽く見始めるだろう!国体と繁栄の維持のために、強さを見せる必要があるのは理解出来る筈だ!各国に伝えるなら、『大艦隊に奇襲を受けた』と、被害が出てから発表する方がまだマシだ。奇襲を受けて被害が出るならば、対グラ・バルカス帝国包囲網で纏まるだろう。攻めてくることを知っていて、被害が出たのならば、各国は我が国をグラ・バルカス帝国よりも弱い国と見るだろう。それだけは避けなくてはならない」
その主張にアグラが反論する。
「リアージュ殿。仰る通り、今回の第零式魔導艦隊が敗れたことは想定外で、恥ずべきことだ。しかし、奴らは…グラ・バルカス帝国は侮ってはならない。私はそう認識した。このままだと、最悪の場合には先進11ヶ国会議に乱入される恐れが有ります。各国の外務大臣が殺害されたら『何故敵の接近を探知できなかったのか?』と各国は思うでしょう。その方が、我が国の能力を疑われます。神聖ミリシアル帝国が探知出来ない筈がないと各国は思うでしょう。攻撃をグラ・バルカス帝国の共謀と考える者もいるかもしれません。ここは正直に、各国の代表に事情を話した上で、会議の延期、もしくは会場の変更を伝え、各国の代表に一時避難を促すべきかと思います」
アグラの言葉にリアージュは鼻で笑って言った。
「アグラ殿は気楽だな。その様な事をすれば、本当に我が国の能力を疑われかねない。艦隊が間に合わないなら、古代兵器の海上要塞パルカオンを使用することは出来ないのか? あれなら、グラ・バルカス帝国がどのような大艦隊で来ようが殲滅出来るのではないか?」
リアージュの言葉にアグラは汗を掻く。彼の代わりにシュミールパオが引き継いだ。
「古代兵器パルカオンは、我が国にたった1隻のみ現存している、国家存続危機級の事態がある場合のみ使用許可が降りる。古の魔法帝国の超兵器です。ただ、まだ50パーセント程度しか解明できていません。よく分からない兵器が多数搭載されており、本来の力がほとんど出せてません。その状態でも、グラ・バルカス帝国の艦隊程度、殲滅できるでしょう。しかし、投入には皇帝陛下の決裁が必要です。それに、この程度の危機で投入することは出来ないでしょう。これは、エモール王国の占いにて予言された古の魔法帝国との戦いにおいて、恐らく魔法帝国の兵器に唯一通用する我が国の切り札となる兵器です。この程度の事態では許可はでないと思います。それに万が一にでも、損傷でもしたら…直せません」
夜にまで続いた会議の結果、以下の決定がなされた。
︰グラ・バルカス帝国の大艦隊が迫っている。
︰これは奇襲攻撃であり、現在展開している神聖ミリシアル帝国戦力では、討ち漏らしが起こる可能性がある。
︰万が一にでも被害が出ない様、各国代表は港街カルトアルパスから、東方都市カン・ブリッドに一時移動をお願いしたい。
神聖ミリシアル帝国にとって苦渋の決断であった。
―コラム―
リトルプリンセス
日本には狐の耳と尻尾を付けた神様がいるとザビエルから欧州に齎された。しかし、その頃はふーん程度だった。しかし、土佐藩に漂流したサン・フェリペ号の船長らが稲荷大社で販売されている稲荷神グッズを何の因果か当時のイギリス王室に献上された。そこから欧州ではルネサンスならぬ稲荷神ブームが起きた。欧州貴族の間では稲荷神グッズを見せ自慢する文化が生まれた。
そう、マルコ・ポーロのジパングが別の意味でジパングになったのだ。カトリック総本山ローマでも流行り、上層部が日本の職人が作った緻密な人形にハマり、末端が邪教と言ってもローマ教皇の「リトルプリンセスと言うのは地上に残った大天使である」という苦肉の策をとった。しかし、稲荷神の希望で却下され、神ではなく、リトルプリンセスだからセーフという理論で乗り切った。そこから、欧州人は稲荷神=リトルプリンセスとなった。ちなみに、イギリス王室の稲荷神好きが始まったのはこの時期である。
稲荷神グッズについては次回また…
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