稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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今回の海戦は日本国も参加する海戦なので、何パートかに分けて、各国視点も交えながら投稿します。

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フォーク海峡戦〜前編〜

 

 

―神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス皇城―

 

世界に冠たる帝国の皇帝が住まう国の皇城で緊急会議が開かれようとしていた。議題はグラ・バルカス帝国への対策だ。奇襲とは言え、神聖ミリシアル帝国が初めて土をつけられたのだ。威信と再発防止の為に会議が行われていた。

 

参加者は皇帝ミリシアル8世以下、軍務大臣シュミールパオ、国防省長官アグラ、情報局長アルネウス、外務省統括官リアージュを筆頭に他省庁の幹部も参加している。

 

「帝前会議を開始します」

 

国防省長官アグラが司会進行をする。

 

「今回の議題について詳しく説明します」

 

そう言うと、各々手元に配られた資料に目を通す。その様子を見てアグラは続けた。

 

「先進11カ国会議に参加していた、第2文明圏圏外国のグラ・バルカス帝国が世界各国に従属を迫りました。尚、元列強国レイフォルを滅ぼしたことに増長してこの様な暴挙に出たと推測されます。先進11カ国会議にて宣戦布告した後、彼等が乗ってきた戦艦で去っていきました。その後、別艦隊がマグドラ群島で演習中だった第零式魔導艦隊を攻撃、全滅されました」

 

その言葉を聞いて参加者は息を呑んだ。世界最強と言われる第零式魔導艦隊が西の文明圏外国家に奇襲とは言え敗れたのだ。まだ、話は続く。

 

「敵艦隊は戦艦2隻、大型巡洋艦3隻、巡洋艦2隻、小型艦5隻の計12隻です。なお、戦艦の総合的な強さは我が国の最新鋭魔導戦艦に匹敵するものでした。敵に与えた被害は、戦艦1隻、大型巡洋艦1隻、小型艦1隻を撃沈。大型巡洋艦1隻を大破、巡洋艦1隻を中破、その他多数の艦の損傷です。本海戦は第零式魔導艦隊の勝利に終わりましが、敵の航空隊の攻撃により第零式魔導艦隊は全滅しました」

 

ざわめきが静寂に変わった。さもありなん。第零式魔導艦隊は最新鋭艦が配備される国の威信がかかっていた艦隊なのだ。それが、航空機によって敗れたのは受け入れ難い事実だった。大臣の1人が声を荒げようとするが、アグラの話の前に押し黙った。

 

「なお、マグドラ群島という辺境という事もあり、マグドラ地方航空隊が少なく敵航空機の撃墜に至りませんでした。敵艦隊は陸軍離島防衛隊基地に艦砲射撃を加え、東に進路を取りました。グラ・バルカス帝国の目標は先進11カ国会議開催地のカルトアルパスであると考えられています。現在、東方に展開中の第魔導1艦隊、第2艦魔導隊、第3魔導艦隊をカルトアルパスに向かわせています。しかし、間に合わないと思われます」

 

アグラは一区切り付けて再び話始める。

 

「このままでは、カルトアルパスに被害が出るのは確実であり、各国に東方都市カン・ブリッドに避難するようにお願いしました。しかし、日本国とその他少数の国以外は避難を拒否しました。結果として、グラ・バルカス帝国艦隊を迎え撃つ構えです。なお、アニュンリール皇国は事前に退避しています」

 

アグラの言葉に外務省統括官リアージュが質問する。

 

「各国の艦隊で対処出来るのですか?」

「相手は奇襲とは言え、第零式魔導艦隊を葬った相手です。頼りになるのは…ムー国の艦隊と日本国の艦隊くらいでしょう。しかし、それ以外の艦隊は役に立たないと思われます。強いて言えば、数だけは多いので弾除け程度でしょう。現状説明を終了させてもらいます」

 

そう言ってアグラは着席した。

 

「アグラ、説明ご苦労であった」

 

声を上げたのは皇帝ミリシアル8世だ。手を挙げて各大臣を静かにさせる。そして、言葉を続けた。

 

「グラ・バルカス帝国か…それなりには強い様だが、我が国を他国と同一視するとは愚かなり…本土の位置は分かっているのか?」

「はっ!こちらでございます」

 

アグラは机に地図を広げた。指を差したのはムー大陸西方の海域だ。所謂、第2文明圏圏外と呼ばれる地域だ。

 

「ここに、ある程度の大きさの島が御座います。こちらがグラ・バルカス帝国本土であると考えられています。日本国より借り受けた地図により判明しました」

「島国…小国か…ん?日本国とな?」

 

ミリシアル8世は日本国と聞いて何かに気づいた。

 

「あのパーパルディア皇国を滅した国か…なにゆえ、東の辺境国家が、西の辺境国家の位置まで把握している?

…まさか、裏で繋がってはいまいな?」

 

ミリシアル8世は東に位置する日本国が西に位置するグラ・バルカス帝国の位置を正確に知っているのかが気になった。

 

「それについては、私が説明致します」

 

そう言ったのは情報局長アルネウスだ。

 

「まだ、日本国と国交を結んで日が浅く分かっていないことが多いです。ですので、日本国の実力についてはまだ未知数なことが多いです。しかし、このような地図を描けることから、彼らの技術は相当に高いのでしょう。第三文明圏外に位置しながら第二文明圏外の様子まで知れるとなると…彼らには、あの【僕の星】のような物でもあるのかもしれません」

 

その瞬間、全員に瞬衝撃が走った。【僕の星】それは、古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国が空より遥か高みに浮かべた観測機械だ。神聖ミリシアル帝国の技術力の総力を結集しても作れる代物ではない。

 

衝撃による沈黙を破ったのはミリシアル8世だ。

 

「日本国…興味深い国だな。いかん、話が脱線したな。グラ・バルカス帝国の攻撃を凌いだら第一文明圏と第二文明圏の連合艦隊を結成して旧レイフォルから叩き出すぞ。その際には日本国の強さを見てみたいものだが…リアージュ。日本国は艦隊を送り込めるか?」

 

リアージュは答えた。

 

「それは、不可能かと存じます。第二文明圏から見ても2万キロも離れています。故に、この距離を航行して第二文明圏まで行くのは容易では無いと考えられます」

「卿の言う通りだな。第三文明圏は遠すぎる上、技術レベルから考えて、グラ・バルカス帝国軍の相手は厳しいだろう。早期反撃の戦力抽出対象からは外そう。作戦案詳細は、アグラ、貴様に任せる」

「はっ!」

「我らに恥を掻かせた代償は蛮族共の血等では釣り合わないが…レイフォルから奴らを叩き出した暁には、本土にも制裁を加える」

 

世界の覇者たるミリシアル8世は怒りに燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―神聖ミリシアル帝国、カルトアルパス港―

 

「マギカライヒ共同体、機甲戦列艦隊出港します」

 

ここカルトアルパスにやって来るグラ・バルカス帝国艦隊を迎撃する為に、各国の外交官護衛艦隊は続々と出港していた。

 

マギカライヒ共同体は旧レイフォルには数では劣るが、単艦の性能は旧レイフォルの魔導戦列艦を上回る。マギカライヒ共同体の戦列艦は旧レイフォルの対魔弾鉄鋼式装甲より優れたものを取り付けている上、地球世界で言う黒船の様な水車を有している。故に、【風神の涙】よりも素早い移動を可能とする。その上、ムー国の科学技術を取り入れており、魔導砲の射程は3キロだ。

 

「アガルタ法国、魔法船団出港します」

 

第一文明圏で高い魔法技術を有するアガルタ法国の艦隊は木造船だ。しかし、見た目に惑わされるなかれ。この木造船団は秘めたる力を有している。

 

「ニグラート連合、竜母機動部隊出港します」

 

ニグラート連合はマギカライヒ共同体と並ぶ第二文明圏準列強だ。彼等は竜母機動部隊が出港する。竜母4隻、戦列艦4隻の計8隻からなる艦隊を有している。1隻あたり12頭のワイバーンロードが搭載されている為、4隻合わせて48騎の竜騎士が待機している。

 

「ムー国、空母機動部隊出港します」

 

第二文明圏最強国家ムー国は戦艦2隻、空母2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻の大艦隊だ。先進11カ国会議に参加する国の中では一番数も質も高い。グラ・バルカス帝国に勝てる可能性のあるムー国に各国が期待する。

 

「日本国、巡洋艦及び駆逐艦隊出港します」

 

本来は、日本国の艦隊のほうが出港する準備は整いつつあったのだが、文明圏の序列がどうの…と後回しにされたのである。

 

・神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス在泊地方隊シルバー級魔導巡洋艦8隻

・アガルタ法国 魔法船団6隻

・トルキア王国 戦列艦隊7隻

・ムー国空母機動部隊戦艦2隻、空母2隻、巡洋艦8隻、装甲巡洋艦4隻

・ニグラート連合竜母機動部隊、竜母4隻、戦列艦4隻

・マギカライヒ共同体 機甲戦列艦7隻

・パンドーラ大魔法公国 魔導船団8隻

・日本国 駆逐艦3隻、巡洋艦2隻

 

その他に対艦及び対空支援として、ムー国空母に搭載されている艦上戦闘機型【マリル】計50機、ニグラート連合のワイバーンロード計48騎、エモール王国の風竜騎士団22騎、神聖ミリシアル帝国の多目的戦闘爆撃機【ジグラント2】と制空戦闘機【エルペシオ2】が合わせて60機、そして第7制空戦闘団に配備された、神聖ミリシアル帝国空軍の誇る新型制空戦闘機【エルペシオ3】42機が、それぞれ護衛することになっている。

 

各国臨時連合艦隊は、神聖ミリシアル帝国の地方隊に所属するシルバー級魔導巡洋艦を先頭に、カルトアルパス湾を南下していく。その陣容は、先頭がミリシアル艦隊、その次が日本国艦隊、その後ろに国ごとに固まった各国の艦隊が続く。最後尾を務めるのは、パンドーラ大魔法公国の魔導船団だ。本来、日本国と大して変わらない出港順だったのだが、日本国艦隊の速力が速く各国艦隊を追い抜いたのだ。

 

真っ先に敵の襲撃に気づいたのは日本国だ。グラ・バルカス帝国の雷撃機及び戦闘機、急降下爆撃機の接近にレーダーで気付いたのだ。その事は直ちに各国艦隊に共有される事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ムー艦隊―

 

旗艦である戦艦【ラ・カサミ】に乗っている司令官ブレンダスは自身の指揮する艦隊に絶対の自信を持っていた。何故なら、神聖ミリシアル帝国に迫る国力を持つとされる第二文明圏の列強である、ムー国。他国とは隔絶した国力・技術力であるために、近年、ムー国は他国からの武力侵略を受けていない。その為、グラ・バルカス帝国という文明圏外で暴れて、列強レイフォルを滅ぼして調子に乗っているグラ・バルカス帝国という国に負ける訳が無い。そう考えていた。

 

ブレダンスと【ラ・カサミ】級戦艦の艦長ミニラルと意見を交わしている時だった。通信士から連絡が入った。日本国司令官から連絡が入ったのだ。

 

「読め」

「はっ!『我、グラ・バルカス帝国と思しき航空機を探知!艦隊より11時の方向、距離165キロ、数は200、あと30分程度で会敵する可能性有り』との事です」

「なんだと!日本国は100キロ以上も離れた飛行機をどうやって探知したのだ!いや、それよりも、グラ・バルカス帝国の航空機だ!今ある戦闘機を全て出せ!」

 

今回、空母に搭載されたのは新型艦上戦闘機【マリル】。日本国の九六式艦上戦闘機の設計図を基に日本国からの技術支援によって完成させた新型機だ。ちなみに、空母は建造に時間がかかるため、簡単な改造をしただけの旧式艦だ。だが、本土では新鋭艦の建造が進んでいる。

 

艦上戦闘機【マリル】はムー国発の国産金属単翼機だ。旧型機の【マリン】でもこの世界では十分な性能なのだから金属単翼機となると、その性能は凄まじい。だが、グラ・バルカス帝国の戦闘機には心許ない。それを知るものはここにはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?日本国が敵機を察知しただと?『艦隊から見て11時の方向、距離165キロ、機体数約200』だと!」

 

ムー国が迅速に対処する少し前、日本国の無線や連絡用として借り受けた魔信によって神聖ミリシアル帝国空軍基地にも届いていた。

 

「日本国は160キロ以上の位置の敵を探知する事が出来るのか!?」

「馬鹿を言うんじゃない!魔力探知レーダーの開発については我々だって散々苦労したのだ!第三文明圏外の国が出来る訳が無い!」

 

彼等は驚いていた。日本国が自分達が持つ魔力探知レーダーよりも高性能なレーダーを所有している事にだ。故に、こんな考えに至る者がいるのも必然だ。

 

「誤報だろう」

「いや、念の為11時の方向にレーダーを向けよう」

 

そうして、レーダーを報告のあった方角に向ける。すると、レーダー観測手が声をあげた。

 

「魔力反応を多数探知しました!敵機大編隊が接近中です。 艦隊から見て11時の方向、距離135キロ数およそ200!」

 

その言葉に管制室の一同は言葉を失った。それは日本国にレーダー技術が劣っているとの証拠だった。

 

「驚いている暇があるなら戦闘機を有るだけ出せ!」

 

空軍基地司令官が一喝して皆が行動を始める。命令を受けた神聖ミリシアル帝国空軍の戦闘機【エルペシオ3】が離陸する。

 

各国の艦隊は神聖ミリシアル帝国の新型戦闘機に歓喜の声をあげている。しかし、日本国は違った。

 

「石原さん。神聖ミリシアル帝国の飛行機って速度遅くないですか?」

 

稲荷神は思った事を率直に司令長官石原に問う。

 

「確かに遅いですね。部下に調べさせます。おい!神聖ミリシアル帝国の戦闘機の速度はどれくらいだ?」

「はい。神聖ミリシアル帝国の戦闘機は時速530キロです!」

「530キロだと?」

 

そう言って石原は稲荷神と神聖ミリシアル帝国の戦闘機【エルペシオ3】を見る。そして、その違和感の理由に気付いた。

 

「稲荷神様。恐らくですが、彼の国の戦闘機はジェット戦闘機です。しかし、時速530キロとレシプロ戦闘機並のの速度しか出ていません」

「それは…大丈夫なのですか?」

「はい。速度は航空機の要素の一つですが、必ずしも飛行機の良し悪しを決定づける物ではないですからなんとも…ですが、各国の航空戦力が入り乱れてしまっては対空ミサイルが撃てません。なので、航空戦力の排除は近接防空支援が主になりそうです」

「分かりました。私も出来る限り各国の航空戦力の援護をします。艦隊の指揮は任せます」

「お任せ下さい!」

 

そう言って、稲荷神は巡洋艦【木曽】の艦橋に向かっていった。

 






〜コラム〜

ムー国の技術供与

日本はムー国に対して、輸出強化の為に軍事技術の輸出に踏み切った。第六世代ジェット戦闘機を持つ日本からしてみれば、同世代か一世代下の戦闘機でない限り問題無いとの判断でまずは金属単翼機…と言うことで輸出された。他にも金剛型戦艦(イギリス仕様)やチハタンの輸出もされている。

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最後に、先日医者に出向いた所、寝不足が原因で体の不調を起こしていると言われたので、執筆時間を睡眠に充てることにしました。なので、投稿間隔が不定期なる可能性がありますが、私の体調の為にご理解下さい。

p.s.

そこまで、重篤な病気ではないのでご安心下さい。



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