稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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フォーク海峡戦〜中編〜

 

 

―神聖ミリシアル帝国第7制空戦闘団

 

カルトアルパス近郊に位置する空軍基地から離陸した第7制空戦闘団の【エルペシオ3】42機は敵が来る南東方面に向かっていた。

 

隊長の指示により、戦闘団は高度5500メートルまで上昇していく。これは、神聖ミリシアル帝国で採用されているドクトリンが原因だった。

 

神聖ミリシアル帝国はムー国とエモール王国を当面の仮想敵国(一番は古の魔法帝国)としており、ムー国の戦闘機【マリン】やエモール王国の風竜に対抗するため、速度を活かした一撃離脱のドクトリンが採用されている。【エルペシオ3】は旋回能力があまりよくないので、この様なドクトリンになっている。

 

そして、敵航空機を発見した。戦闘団は降下し始める。そこに、奇襲をかけるように太陽を影にしてグラ・バルカス帝国の戦闘機が奇襲をかけてきた。戦闘団は即座に上昇を始めるが、戦闘機による機銃掃射によって一気に5機が撃墜される。これにより、37機に減ったが相手方は20機だ。まだ、戦えると各員が散開して戦闘を始める。しかし、グラ・バルカス帝国の戦闘機は【エルペシオ3】を上回る速度、上昇速度、旋回能力を有しており一機、また一機と味方が落ちていく。神聖ミリシアル帝国の誇る戦闘機が文明圏外国家の飛行機によって撃墜されていた。しかし、ここで稲荷神の援護が入った。突如としてグラ・バルカス帝国の戦闘機が全て青い炎で炎上した。飛行機は制御を失ったかのように海面に激突していく。結果として、神聖ミリシアル帝国はグラ・バルカス帝国の航空機に勝つことは出来たが、残った機体は10機程度だった。稲荷神による援護のお陰で"戦闘機"を全滅させる事はできた。しかし、自力で撃墜した敵航空機は3機位だった。

 

カルトアルパス近郊の空軍基地では魔力探知レーダー観測手が驚愕していた。それは【エルペシオ3】の魔力反応が次々になくなっているからだ。そもそも、敵航空機はムー国と同じ機械である事は判明している。故に、搭乗者の魔力を探知している為、反応は小さいのだ。逆に大きい反応が【エルペシオ3】というわけだ。

 

「大変です!第七戦闘団の魔力反応が次々に消えてます」

「そんな馬鹿な!あの戦闘団は練度が高い精鋭部隊だ!レーダーの故障の線は?」

「レーダー、異常有りません!」

「まずい!新型機も旧型機もありったけ出せ!それとエモール王国の風竜騎士団に応援要請だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国は先進11カ国会議とかいう蛮族の集まりで世界に宣戦し、愚かにも歯向かってくる国々の艦隊を沈め、世界にグラ・バルカス帝国の名を轟かす為に、攻撃を行う。

 

今回、第一次攻撃隊に課せられたのは各国艦隊を適度に攻撃し、その後神聖ミリシアル帝国のカルトアルパスの基地を攻撃する事だ。各国艦隊の殲滅は第二次攻撃隊が行う予定だ。

 

今回の、作戦目標は2つ。

 

・各国に対して、グラ・バルカス帝国に対する恐怖を植えつけること。

・神聖ミリシアル帝国の弱さを各国に見せつけ、神聖ミリシアル帝国は世界最強である。という世界各国の認識を打ち崩し、神聖ミリシアル帝国から離反させ、グラ・バルカス帝国の軍門に下らせること。

 

これらの目標を達成すべくペガスス級航空母艦【マタヤ】から発艦したシリウス型急降下爆撃機は各国の艦隊を攻撃すべく、移動していた。視線の先にはグレードアトラスター級戦艦(大和型戦艦)より小さいが、帆船やムー国の艦より大きい艦がある。

 

日本国の巡洋艦だ。シリウス型急降下爆撃機に乗る中隊長は全ての艦を撃沈しようと、意気込んでいた。そうして、艦隊の奥に位置するパンドーラ大魔法公国の木造帆船の艦隊に向かう。何故、日本国が攻撃しなかったのか?それは、射程が問題だった。近接防空支援は射程が足らず、艦対空ミサイルを使用するにしろ敵味方識別システムが登録されているのは自国の航空機のみだ。故に、乱戦時には使えないのが理由だった。これによって、シリウス型急降下爆撃機の編隊は日本国艦隊を素通りしたのだった。

 

進路の先にはアンタレス艦上戦闘機がムー国の固定翼機と竜と交戦していた。時たま、青い炎でアンタレス艦上戦闘機が炎上するが、概ね制空権は取れていた。

 

そして、パンドーラ大魔法公国の艦隊に向かったシリウス型急降下爆撃機の小隊は急降下を開始した。それに対して、パンドーラ大魔法公国は対空攻撃として、【ルーンアロー】を使用した。

 

この【ルーンアロー】とは元宗主国であったパーパルディア皇国のワイバーンロードを想定して作られた対空兵器だ。原理はアルタラス王国の【風神の矢】と同じで爆裂魔法を仕掛けており、所謂ロケット兵器だ。しかし、威力や速度、射程はロケットには比べようもなく低いが…

 

お返しとばかりにシリウス型艦上爆撃機の12.7ミリ機銃を打ち込む。その機銃の弾は運悪く魔導船を貫通して爆裂魔法を仕込んだ魔石保管庫に直撃して誘爆、木っ端微塵に吹き飛んだ。他の艦も木っ端微塵になっていく。しかし、シリウス型艦上爆撃機の活躍もここまでだった。稲荷神による狐火が全てのシリウス型急降下爆撃機を燃やした。結果としてシリウス型急降下爆撃機は炎上して水上に突っ込んだ。結果として、パンドーラ大魔法公国の艦で生き残ったのは3隻のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああもう!きりが無い!」

 

稲荷神は文句を言った。当然だ。世界最強と言われていた神聖ミリシアル帝国の戦闘機はグラ・バルカス帝国の戦闘機に大した損害を与えることは出来なかった。他のムー国の戦闘機やエモール王国の風竜も苦戦しており、制空権の喪失は明らかだった。

 

『パンドーラ大魔法公国、3隻以外轟沈!』

『トルキア王国、戦列艦2隻轟沈!』

『ニグラート連合、竜騎士団劣勢!』

『ムー国、戦闘機また一機落とされました!』

『アガルタ法国、魔法船団戦闘突入します!』

 

司令室から送られてくる魔信で稲荷神は援護すべき所に視線をあっちこっちと目まぐるしく動かす。援護しても間に合わない所が多かった。そんな時だった。

 

『稲荷神様!我が艦隊に敵爆撃機6機来ます!』

「すぐに近接防空システムを作動して下さい!私は各国の援護に当たります!」

 

そう言って、日本国艦隊に向かってくる敵爆撃機を稲荷神は無視して、各国の支援をする。

 

一方、日本国艦隊はやって来る爆撃機を撃墜するべく近接防空システムを作動した。既に、主砲攻撃によってある程度は撃墜できている。しかし、数が多いため、何機かの突破を許してしまった。その何機かに対応するべく、毎分発射速度4500発のAIと防空システムの補助を受けて、正確に爆撃機に攻撃を行う。1機を取り逃し、爆撃をされるが駆逐艦の旋回能力で切り抜けた。更に、そこに新たな爆撃機と雷撃機による同時攻撃が始まった。

 

爆撃機の方は近接防空システムによって排除出来た。しかし、雷撃機は1500メートルを切っている。此方も、主砲攻撃によってある程度撃墜できている。しかし、主砲は4基しかない。爆撃機への対処をしていたがために、反応が遅れ、間に合わなかった。近接防空システムの有効射程には入っているが、先んじて攻撃を行っていた雷撃機は1200メートル地点で魚雷を投下した。だが、この距離までくれば近接防空システムの面目躍如だ。しかし、魚雷を投下して帰投する雷撃機までは追えない。結果として、雷撃機を多数撃墜したものの、魚雷5本を投下されてしまった。

 

本来なら回避行動を取るのが正解だろう。しかし、日本国艦隊は魚雷迎撃魚雷を使用する事にした。理由としては、ここ、カルトアルパスは海峡であり左右海岸には神聖ミリシアル帝国の住民が住んでおり魚雷が危険だから。2つ目に各国艦隊が入り乱れる中、狭い海峡で各国艦隊を避けながら回避行動をするリスク。そして、3つ目が艦橋で各国艦隊の援護をしている稲荷神の邪魔にならないためだ。

 

だが、稲荷神は驚異の身体能力を有しているので、急速な回避運動でも立っていられるだろう。しかし、あくまで邪魔をしたくなかった司令室石原は魚雷迎撃魚雷の使用に踏み切ったのだ。

 

この魚雷迎撃魚雷とは日本が初めて開発した敵魚雷に向かって航行し、魚雷を爆発させる魚雷だ。現実世界のドイツが初めて開発したが、今回使用された魚雷迎撃魚雷はそれより高性能だ。駆逐艦から放たれた5本の魚雷は誘導によって敵魚雷に向かい日本国艦隊の前で爆発。被雷した艦は無かった。

 

その結果に石原が安堵すると、貸し受けた魔信から連絡が入ってきた。

 

『アガルタ法国魔法船団、艦隊陣形で六芒星を形成します。艦隊級極大閃光魔法を使用するとの故、各艦隊は注意されたし』

 

その魔信により皆が後方に位置するアガルタ法国の艦隊を見る。そこには、複数の帆船から光が集まる。次の瞬間、極太のレーザーの様に強烈な光を発していく。光はなめるように動き、敵航空機を2機撃墜した。

 

(あれってフェイズドアレイレーダー…だっけ?確か自衛隊の人が言ってた…)

 

稲荷神はこの極太レーザーを見てそんな事を思った。これなら私の援護は必要ないな…と思ったその時だった。

 

レーザーの色がどんどん薄くなり、発射開始から10秒もせずに極太レーザーは消えてしまった。

 

『アガルタ法国魔法船団、魔力枯渇しました。再充填まで368秒』

 

そんな魔信が流れてきた。

 

「え!もう魔力切れなの!?燃費悪すぎ!しかも後六分もかかるの!」

 

稲荷神がツッコミを入れていると、艦内放送が起きた。

 

『敵爆撃2機!敵機直上!急降下!』

『近接防空システム展開!撃ち〜方始め!』

『近接防空システム撃ち〜方始め!』

 

シリウス型艦上爆撃機の2機は予想外の閃光に混乱している内に日本国艦隊に250キロ爆弾を投下しようとした。しかし、近接防空システムにより正確に駆除をした結果、250キロ爆弾は爆発する事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ムー艦隊―

 

ムー艦隊の旗艦である【ラ・カサミ】戦艦では歓声が湧き上がっていた。ムー国が日本国から技術輸入した艦上戦闘機【マリル】は、グラ・バルカス帝国の戦闘機に劣勢、神聖ミリシアル帝国の戦闘機も殆どが撃墜された。

 

そんな、世界最強の国家の戦闘機が勝てない航空機に日本国の艦隊は一切の被弾を受けずに全機撃墜を成し遂げたのだ。

 

(技術部及び、情報分析課の話なら、あの射撃はレーダーという電波を利用した敵探知及び距離測定装置。そこに、高性能演算装置とAIと呼ばれる人工知能?を搭載した射撃管制システムのお陰らしい…我が国にもぜひ導入させてもらいたいものだ)

 

【ラ・カサミ】戦艦長ミニラルがそんな事を考えていた時だった。

 

「報告!敵機2機、本艦に接近中!」

「面舵いっぱい!対空戦闘用意!」

 

ミニラルは即座に指示を飛ばす。

 

その命を受けて、戦艦は回避行動に移る。しかし、戦艦と言う巨体がすぐに回避行動を取れる訳では無い。面舵している間に乗組員は対空機銃に乗り込み敵爆撃機を攻撃する。これは、本来【ラ・カサミ】戦艦に取り付けられた8ミリ単装機銃ではない。日本国からの技術支援や輸出によって配備された九九式20ミリ機銃だ。

 

合図とともに機銃から20ミリの銃弾が発射される。しかし、対空機銃は日本国の艦隊と違い全然当たる気配がない。お返しとばかりに敵爆撃機が搭載された機銃で攻撃する。戦艦の装甲を貫く程の威力は無いが、機銃掃射を行っている乗組員には致命的だ。何名もの乗組員が殉職する。これにより、少ない対空砲火が更に少なくなる。

 

そこに、敵爆撃機2機が爆弾を投下する。しかし、その頃には【ラ・カサミ】戦艦は回避行動に移っていた。お陰で、1発は海に着水し、水柱を立てただけだったがもう1発の爆弾が【ラ・カサミ】戦艦の前部甲板に命中した。

 

「被害報告急げ!」

 

怒鳴るミニラルに続々と報告が集まる。

 

『前部主砲、砲身破損! 使用不能!』

『艦隊前部で火災発生!』

『右舷、1番、3番、5番、9番対空機銃破損!使用不能!7番対空機銃沈黙!』

『こちら機関室!異常無し!全速航行可能!』 

 

たった一回の攻撃で、前部主砲と右舷対空機銃の殆どが使用不可になった。列強であるムー国の最新鋭戦艦が被害を受けたのは列強と認められて以来、初めての事だった。

 

ミニラルは日本国との技術格差を実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ムー国の艦隊がグラ・バルカス帝国の攻撃に苦戦しているのは各国の外交官護衛艦隊も同じだった。木造帆船が炎上するか、穴を開けられ水が艦内に入り込み沈む。ムー国の空母が炎上する。果ては神聖ミリシアル帝国のシルバー級魔導巡洋艦の1隻までもが、爆弾を艦体後部に被弾して航行不能になっていた。

 

日本国護衛艦隊旗艦【木曽】に貸し与えられた魔信には悲痛な報告がひっきりなしに入り込んできた。

 

『アガルタ法国、魔法船団被害甚大!』

『ムー国、戦闘機損耗率40パーセント超!』

『ニグラード連合、竜騎士団損耗率80パーセント!』

『トルキア王国、戦列艦隊2隻残して全滅!』

『エモール王国、風竜騎士団戦闘開始します!』

『敵機一部は、カルトアルパス市街地及び基地を攻撃中!』

 

(明らかな劣勢だよね?けど、日本人の被害は無いのが救いだよね…)

 

稲荷神の援護虚しく各国艦隊の艦や航空戦力に被害が出ている。しかし、日本人の被害が無いだけマシと言うものだ。そう思っていると、最悪な一報が舞い込んできた。

 

『ミリシアル帝国空軍から緊急連絡!ケイル島南部に超大型戦艦を発見!艦識別の結果からグラ・バルカス帝国グレードアトラスター級戦艦と判明!ケイル島南部からフォーク海峡に向けて航行中!約20分で到着します!』

 

その言葉は各国に衝撃を与えた。特に、大和型戦艦と同等と思われるとの情報を別班経由で得ている日本はそれ以上の衝撃だ。100年以上前の戦艦とは言え、51センチメートル砲の威力は多少軍事に詳しい者なら知るところだ。だが、逃げようにもフォーク海峡から脱出する頃には敵戦艦も到着している。一戦交える事も覚悟しなければならない。

 

稲荷神は司令長官石原と連絡をとる。

 

「石原さん。敵戦艦の狙いって何だと思います?」

『恐らく、フォーク海峡を封鎖して各国艦隊を撃沈するつもりでしょう』

「脱出は間に合いそうですか?」

『そうですね…恐らく脱出は出来るでしょうが、敵戦艦の有効射程だと思います』

 

その言葉に稲荷神は考え、結論を下した。

 

「全速力で航行、海峡を脱出して本土に帰還します!」

『了解しました!全艦に告ぐ!全艦、全速力で航行を行い海峡を突破せよ!』

 

しかし、ここで邪魔が入る。

 

『対空レーダーより11時の方向、数30、敵航空機です!』

『対空攻撃用意!艦対空誘導弾の使用を許可する!』

 

日本の対空技術の力が発揮される事が決定した。






〜コラム〜

戦艦大和

開国初期には戦艦大和、戦艦武蔵が竣工しており、稲荷世界の大和は当時世界最大の51センチメートル砲を装備しています。本来は駆逐艦、巡洋艦と竣工していくはずが、稲荷神の「戦艦と言えば大和ですよね」のひと言で戦艦大和建造を行った。その際、稲荷神様の設計図(趣のある図)を基に建造した。

尚、国家予算何年も食うこの大和型戦艦を3番艦、4番艦の信濃、紀伊も建造する予定だとか…(原作には予定として登場しており、実際に建造したかは不明。今作品では建造しなかったと言う事にしています)

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