―第三文明圏外、日本国首都東京、稲荷大社謁見の間―
先進11カ国会議に向けて出港した艦隊が帰国してから、約3日後、稲荷神を乗せた海上自衛隊所属駆逐艦が帰国した。閣僚達は、久しぶりに帰国した稲荷神にゆっくりしてもらいたかったが、事情が事情であるが故に、帰国した翌日に会議が行われた。議題は勿論。全世界に宣戦布告したグラ・バルカス帝国への対応である。
報告をするのは、現地に派遣された外交官近藤と、司令官石原、である。対して、報告を聞くのは、我らが、稲荷神、各大臣に加えて、自衛隊統合幕僚長、別班統合隊長、公安委員会長官、ついでに近衛とお世話係等錚々たる面子である。
「…故に、稲荷神様が鹵獲なされた偽大和型戦艦、敵艦グレードアトラスター級戦艦【アンドロメダ】は、科学文明であるムー国に輸送し、そこで、各国の技術者と交えて、技術共有を行いたいと考えています。私からは、以上です」
近藤の報告に外務大臣が口を開く。
「近藤君、それに稲荷神様、お疲れ様でした。立て続けに悪いが、先進11カ国会議での状況を教えてくれ」
「はい。神聖ミリシアル帝国のガン・ブリッドに移動し、先進11カ国会議を続行し、協議を行いました。議題は、全世界に宣戦布告したグラ・バルカス帝国への対応と、旧パーパルディア皇国を下した、日本国の列強承認についてです。主に、ムー国が賛成に回って下さったお陰で、我が国は列強承認されました」
ムー国は勿論、神聖ミリシアル帝国含めた列強諸国は軒並み日本国列強入りを認めた様だ。話は続く。
「当然ですが、旧レイフォルを滅ぼしたグラ・バルカス帝国の列強承認は見送られました。前代未聞な宣言をした上に、各国に攻撃を仕掛けたのですから当然ですね。中でも、ムー国は、我が国に、軍事支援を要請してきました。どうやら、神聖ミリシアル帝国も援軍は一国でも多い方が良いと言う判断でしょう」
ムー国がグラ・バルカス帝国の宣戦布告を受けて直に支援を求める辺り、相当にグラ・バルカス帝国を脅威と感じているのだろう。
「国内世論としては、武力行使論と慎重論の2つです。しかし、相手側が宣戦布告をしている上、稲荷神様の身に危険が及ぶ所だったので、武力行使論の方が優勢ですね」
公安委員会長官が言う。武力行使論を主張する者達は、『宣戦布告されたのだから戦うのは当然!』と言う主張を展開、慎重論を主張する者達は、『相手の国力が分からない以上、早計な行動は避けるべき』と言う主張を展開している。これは、どちらも正しい。今回は、食料確保の為に援軍として派遣したロウリア王国戦や殲滅戦を宣言されたパーパルディア皇国戦と違い、宣戦布告されたに過ぎない。(ロウリア王国は、ジェノサイドを主張してたからね)だが、ここは稲荷神を崇める国、日本国。稲荷神が出兵すると言えば、国民は了承するだろう。今後の展開に稲荷神が悩んでいる間にも、会議は進行する。
「自衛隊としては、哨戒任務シフトを増やし、潜水艦哨戒も行っている。グラ・バルカス帝国所属の艦や航空機を発見次第攻撃するように指示しています。潜水艦についても、敵対行動を取れば、攻撃する様に指示しています」
「それがいいと思います。遠慮して此方が被害を受けてしまっては元も子もないので」
自衛隊統合幕僚長の言葉に、稲荷神が意見を出す。稲荷神の意見により、この会議に参加する面々は、グラ・バルカス帝国が稲荷神が治めし、日本国の土を穢れさせる訳にいかないと、闘志を燃やした。そんな事を思っているのを知らずに、稲荷神は質問する。
「フォーク海峡戦を見てて思ったんですが、各国の戦力弱過ぎる気がするんです」
稲荷神の疑問に答えたのは、司令官として派遣されていた石原だった。
「稲荷神様の考えは当たっています。この場を借りて、各国の戦力を共有したいのですが、統合幕僚長、宜しいですか?」
「許可する」
「では…」
石原は、許可を貰うと近衛とお世話係が資料を配る。こういった所で気配りが出来る点で、教育が行き届いていると石原は思った。
「では、今回我が国に宣戦布告して来たグラ・バルカス帝国ですが、パーパルディア皇国以上の技術力を有しているでしょう。しかし、装備は、幕末頃の日本の装備に酷似しており、油断はできませんが、弱点を知っている点で優位に立てるでしょう。グラ・バルカス帝国は、先進11カ国会議に鹵獲されましたが、大和型戦艦に酷似した戦艦を派遣しました。また、彼等の戦闘機、雷撃機、爆撃機も我が国の飛行機にそっくりでした。それで、各国の戦力ですが、此方を見て下さい」
そう言って、石原は資料の次のページをめくるよう促した。それを見た会議に出席している面々はため息をついたり、頭を抱えたりした。
「ご覧の通り、この世界のメジャーな航空戦力であるワイバーンの類は、グラ・バルカス帝国の戦闘機に通用せず、技術支援したムー国の新型戦闘機も鎧袖一触でした。世界最強を名乗る神聖ミリシアル帝国の戦闘機も期待外れでした。恐らく、第二文明圏外国の国々を滅ぼしているので、国力はかなりのものかと。下手をしたら、アメリカ並の国力やもしれません」
石原はそう言って着席した。すると、別班統合隊長が口を開いた。
「現在、グラ・バルカス帝国における情報収集をしております。その際、先程、大和型戦艦に酷似した戦艦や航空戦力があると言う事で、別班としては、グラ・バルカス帝国はどういう訳か、幕末から明治初期にかけての我が国の兵器に酷似している可能性があります。なので、現在、グラ・バルカス帝国が所有している兵器一覧と、ざっくりとした性能を纏めました。ご覧下さい」
そう言って、お世話係の人に頭を下げて、資料を配布してもらう。稲荷神も、その資料を見るが、稲荷神としては、懐かしいな〜と思ったが、ページをめくっていくと、顔が険しくなる記述があった。それは、出席している大臣達も同様だった。
「はい。下手をすると、グラ・バルカス帝国は核兵器を保有もしくは、核兵器を製造可能な状態である可能性があります」
「…これは事実かね?」
防衛大臣が懸念の意を現す。
「はい。まだ、未確認情報ですが、可能性は捨てきれません。ただ、ミサイルの様な兵器ではなく、爆撃機による投下だと思われます。なので、事前に撃墜してしまえば、環境に影響は出るやもしれませんが、本土に被害はありません。問題は、各国の技術からみて、爆撃機を撃墜できる技術があるかどうか不安な点です。重要な経済取引国であるムー国がグラ・バルカス帝国の核攻撃。或いは、通常兵器による滅亡してしまえば、経済への影響は、計り知れません」
以上をもって、別班統合隊長は着席した。そして、どうするかの議論がなされ、最終的に稲荷神が決める事になった。稲荷神は悩みに悩んだ結果、結論を出した。
「世界征服という、平和を乱す行為は許されざることです。皇国の興廃この一戦にあり!各員一斉奮励努力せよ!」
「「「ハハッー!」」」
稲荷神の鶴の一声で、グラ・バルカス帝国戦への参戦を内外に表明した。
◆
―第二文明圏グラ・バルカス帝国領レイフォル州―
先進11カ国会議に参加した各国艦隊に武力攻撃を行ったグラ・バルカス帝国は、各国艦隊に全滅に近い被害を与えた。その際、捕虜もとったわけだが、グレードアトラスター級戦艦が鹵獲された際に、全員が解放され、乗組員が代わりに捕虜になってしまった。この事実は秘匿され、一部外交官や政府高官が知るのみとなった。そんな中、外交窓口であるレイフォル州に各国の外交官が集まり、捕虜に対する交渉などの為に、グラ・バルカス帝国領レイフォル州の地方都市、旧レイフォルの首都レイフォリアに訪れていた。しかし、【世界のニュース】で各国の国民も知る所となった。各国の国民は『グラ・バルカス帝国討つべし』と言う論調なので、極秘裏での派遣であった。また、『グラ・バルカス帝国の軍門に下る』と言うが、殆どの国は首を縦に振らないだろうが、具体的な概要を聞いていない。それを確認する為の派遣でもある。
・神聖ミリシアル帝国西部担当外交部長シワルフ
・ムー国外交官ヌーカウル
・日本国外交官朝田、稲荷神
・アガルタ法国外務卿リピン
以上4名と1柱である。
グレードアトラスター級戦艦の砲撃を受けたレイフォリアの復興は進んており、アチラコチラに建物が建設されている。しかし、そのどれもがグラ・バルカス帝国様式の物であり、レイフォル人の為の復興はなされていない事が窺える。レイフォル人は、やる気のない、どこか旧列強であったという誇りや覇気を感じない。ここから、グラ・バルカス帝国が厳しい統治をしていることが窺える。だが、外交窓口は開いておくとの事だったので、彼等は、外交窓口が設けられた建物に入る。
待つこと十分、部屋に外交官が入って来た。人相の悪い男、ダラスである。
朝田は、話始める。
「私は、日本国外務省外交官の朝田と言います。我が日本国は、グラ・バルカス帝国が行った武力攻撃に対して、遺憾の意を表明し…」
「ほう!貴方が、我が国と同じ転移国家ですか」
朝田が話している所に、ダラスが割って入った。
「日本国も大変だな。お荷物な国を抱えて、さぞ辛いでしょう」
「では、そんなお荷物を抱えながら、グレードアトラスター級戦艦を鹵獲した日本国は、グラ・バルカス帝国よりも優れていると言うことですね。何より、そんなお荷物国家にある程度の損害を出しているのは何故ですか?」
ダラスの挑発に、神聖ミリシアル帝国のシワルフが割って入った。それを聞いたダラスは、顔を一瞬だけ歪ませた。実際、公には秘匿されているが、グレードアトラスター級戦艦【アンドロメダ】が鹵獲されたのは事実だ。しかも、お荷物国家と言った神聖ミリシアル帝国に砲撃戦で負けているのだ。シワルフの仕返しはぐうの音も出ない正論なのだ。都合が悪いと判断したダラスは、話を変える。
「所で、何の用でこちらに?遺憾の意とは?」
面白くなさそうに話すダラスに、朝田は話始める。
「我々は、グレードアトラスター級戦艦に乗っていた乗組員全員を捕虜としました。同時に、外交官も捕縛した為、今回は外交官のみを返還し、それ以外は、神聖ミリシアル帝国で管理してもらいます」
「待て、我が国の将兵を捕虜としただと?巫山戯るな!そんな横暴が許されるか!」
余裕を持っていたダラスは、いきなり大声で叫び始めた。彼の認識では、蛮族である彼等に自分達が負けるとは思っておらず、将兵達が劣悪な環境にいるのに我慢ならない。と言うのが実情だ。そんなダラスの言葉を遮るように、シワルフが口を開いた。
「何って、我々はグラ・バルカス帝国と捕虜に関する取り決めを条約で定めていない。故に、身代金での釈放もしない。それに、先進11カ国会議で無礼を働いたグラ・バルカス帝国に、我々は、謝罪と賠償を求める。そして、旧レイフォルからの撤退を命令する。これは、要求ではなく命令だ。第一文明圏含め、全世界の総意だ」
その言葉に、ワナワナと震えるダラス。しかし、それも一瞬。直に返答をする。
「捕虜については、もういい。我々はそんな命令等飲まない。我々の要求については、先進11カ国会議の時と、違いない」
シワルフは、ダラスを睨見つけるが、ダラスはどこ吹く風だ。
「グラ・バルカス帝国は何を望む?」
「我が国の軍門に下ることだ。当然、主権は認められない」
「具体的には?」
「植民地化だ」
シワルフは、睨みを凄める。しかし、ダラスには効果がない。そんな時、声をあげたのは、アガルタ法国の外務卿リピンである。
「そんな要求を飲むわけないでしょう!」
「だろうな。我々も簡単に飲むとは思っていない。お前達は、敗退し、軍、国民、領土が悲惨な目になって降伏するだろう。外交窓口は開いておくから、そうなる前に、勇気ある決断を期待するよ」
一触即発の中、ムー国の外交官ヌーカウルが、口を開いた。
「では、1つ質問したい。グラ・バルカス帝国は現在、第二文明圏全体に宣戦布告をしていたが、先進11カ国会議でのあの宣言は、日本国が所属する第三文明圏外国も宣戦布告をした。これは、我がムー国や神聖ミリシアル帝国、アガルタ法国、日本国と言った国々全てへの宣戦布告と捉えていいのか?」
「そうだ。それともあれかね?亜人とか言う蛮族を抱える国は同じ事を何度も聞かないと、気がすまないのか?」
この言葉に、ヌーカウルはチラッと朝田外交官を見た。そして、後悔した。朝田の顔は、怒っているのが丸わかりな表情をしており、シワルフの睨みとは比べ物にならない。その横で、小声で稲荷神が宥めているが、怒りは収まっていなさそうだ。本来、彼の目的は言質の入手だった。ムー国にとって、日本国は頼りになる存在だ。ムー国の心の支えである日本国がグラ・バルカス帝国戦で協力してくれる様に、汚い言い方をすれば、この戦争に引きずり込むためだ。公式での2度に及ぶ、しかも、その内1回は、日本国から伝わったICレコーダーで確かな声明を記録している。ヌーカウルの仕事は、果たされたのだ。しかし、ダラスの本人が自覚していない言葉のせいで、日本国民の8割から9割の国民感情を逆撫でして、ヌーカウルの努力は無駄になるのだが、それは関係の無い話だ。
しかし、朝田もこの事を感づいていたが、別に何もしなかった。上から、グラ・バルカス帝国に自衛隊派兵をするのは決まっていると聞かされていたからだ。
その後、15分かけて、交渉が行われたが事態は進展しなかった。
「では、グラ・バルカス帝国は、全世界に植民地化を要求する。また、捕虜の返還交渉もしない。これで相違ないか?」
「ああ。相違ない」
ダラスの中では、グレードアトラスター級戦艦を鹵獲したのは驚愕の事実だったが、自分達の軍が負けるとは思っていない彼は、神聖ミリシアル帝国が降伏してから捕虜を解放すればいいと判断した。そもそも、蛮族相手に捕虜になった奴等の為に、捕虜に関する条約を定める必要は無いと判断したのだ。実際に体験するのと、見聞きするのでは、違うと言うが、彼がその典型だろう。
「では最後に、グラ・バルカス帝国民の為に忠告しよう。神聖ミリシアル帝国の保有艦数は、今回戦った艦船の数を遥かに上回る。我が国の魔導工学に基づく工業力も他国を遥かに凌駕している。早めの降伏をお勧めしますよ」
「そうか。自国民を大事に思うなら交渉窓口も置いておくので、早めの降伏をこちらもお勧めしよう」
各国の外交官が帰国しようとしていると、ダラスは口を開いた。
「少し、個人的な意見を述べようと思う。弱小国を抱えた状態で、勝てるほどわが帝国は甘くない。いずれ、全ての国を支配下に治めるだろう。お前達も列強としてのプライドはあるだろうが、国土が焦土化するか、帝国に下るかよく考えるといい」
ここで言い返したのは、日本国外交官朝田だった。下手に出れば、パーパルディア皇国の二の舞になりかねない。強気に出ることにした。
「私も個人的な意見を述べます。貴国、グラ・バルカス帝国は、現実が見えていない。国際会議での武力攻撃、そして、わが国含めた全世界への宣戦布告。世界征服等という行為は、文明国とは思えない行為です。その傲慢は身を滅ぼすとご忠告します。わが国も外交窓口は開いてます。ムー国に頼んで入国し、ムー国の大使館にいらしてください」
同日、ソナル王国では先進11カ国会議の護衛艦隊が全滅に近い被害を受けた事を受けて、戦わずに降伏する事も視野に入れていた。
〜コラム〜
ダラスの反応
ダラスは、グレードアトラスター級戦艦が鹵獲された事を知る人物の1人です。なので、普段の傲慢な態度も少しは、抑えてます。また、捕虜に関しても、蛮族に捕らえられるとは、帝国の恥だと思ってるので、傲慢な態度を変えていないのが実情です。
お気に入り登録、高評価、宜しくお願いします。
これから登場する兵器について
-
核兵器
-
光学兵器
-
その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)