作者の別作品も是非宜しくお願致します。
今回、話が長引いたので分割します。
―第二文明圏ムー大陸西南西ニグラート連合北西部沖バルチスタ海域―
グラ・バルカス帝国艦隊は、陣形を整え世界連合艦隊を待ち受けていた。海上では、戦艦や重巡洋艦が勇ましく行進し、上空ではアンタレス07式艦上戦闘機の編隊が一糸乱れぬ編隊で警戒に当たっている。
バルチスタ海域を進んでいると、旗艦【グレードアトラスター】の通信手から報告が入った。
「報告します!最前列艦前方1時の方向、250キロ先に敵艦隊を発見。第一次攻撃隊が発艦しています」
ついに、史上稀れを見る海戦が起きようとしていた。これを見ている者がいるとは知らずに…
◆
―バルチスタ海域、海中―
間もなく世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊が接敵しようとしていた時、同海域に何処の国の物でもない艦がいた。しかし、その艦は海中にいた。これは、日本国が保有する原子力潜水艦【依10型】である。この原子力潜水艦は、世界トップクラスの性能を持つ潜水艦だ。その性能たるや、垂直発射システムによる敵の脅威圏外からの攻撃を可能とする装置やリチウムイオン電池搭載によって原子炉を稼働しなくても電池が許す限り航行が可能になった。しかも、その時の方が原子炉の熱を冷やす物音がしないので、スクリュー音のみで遥かに静音性が高い。実戦に向いている。また、AIによるアシスト機能やステルス性も有している。
そんな潜水艦が何故こんな所に来ているかと言うと、敵情視察である。監視衛星等で戦局を把握する事は可能だが、生で見た方が良いとの判断だ。また、グラ・バルカス帝国の戦術や戦略も予想の域を出ない。ともかく、情報収集を兼ねての出撃である。交戦は可能な限り禁じられている。しかし、如何に原子力潜水艦と言えど潜望鏡深度まで浮上すればグラ・バルカス帝国に発見される恐れがある。そこで、役立つのが"音紋"だ。日本国は、あらかじめ各国の音紋を採取していた。先進11カ国会議に参加する国々は勿論、世界連合艦隊に参加している国々の音紋も採取済みだ。これで、比較的深い海中にいながらソナーによって戦局を判断するのだ。
彼等の存在を知る者は居ない…
◆
グラ・バルカス帝国は、世界連合艦隊を偵察機にて発見すると、慣れた手つきで艦載機を発艦させる。アンタレス07式艦上戦闘機やシリウス型爆撃機、リゲル型雷撃機が発艦する。全機合わせて100機近くだ。それに対して、世界連合艦隊もグラ・バルカス帝国の偵察機に気付いて、各国が航空戦力を発艦させる。ワイバーンロードやムー国の【マリル】が迎撃に上がる。
空中戦が始まると、速度で負けるワイバーンロードはいとも容易く撃墜され、ムー国の【マリル】も数機のアンタレス07式艦上戦闘機を撃墜したが、零戦モドキに勝てる訳もなくバタバタと撃墜される。そんな彼等を尻目に雷撃機は世界連合艦隊に攻撃を加えるべく接近する。
魚雷と言う存在を日本国から知ったムー国や神聖ミリシアル帝国は世界連合艦隊に参加している国々に魚雷を始めとした兵器の事を共有している。そんな危険な兵器を撃たせない為に、対空砲火を開始する。
しかし、ムー国と神聖ミリシアル帝国以外からは対空砲火が少しも上がらない。上がるのは単発式の砲やバリスタ、魔法だがそれが零戦モドキに当たる筈もない。しかし、神聖ミリシアル帝国はカラフルな対空弾幕を上げている。ムー国も日本からの技術供与によって受け入れた対空機銃や対空砲で応戦する。一方、アガルタ法国は帆船であるにも関わらず、六芒星を形成し極太レーザーを照射する。これにより、上空を飛ぶグラ・バルカス帝国航空機を5機程撃墜したが、それまでだった。あっという間にレーザーが消失し、どんどんやられていく。戦列艦はシリウス型爆撃機の爆弾で轟沈し、中では機銃で爆発四散する艦もある。
リゲル型雷撃機は、ムー国艦隊に狙いを定め低空飛行に入る。ムー国は必死に対空砲火を浴びせる。しかし、近接信管が搭載されていない機銃では当たらない。5機を撃墜したが、そこまでだった。20数機が魚雷を投下した。それらは、真っ直ぐにムー国艦隊に迫る。巡洋艦数隻に命中し、1隻の空母に魚雷が3本迫る。その時、駆逐艦が身を挺して空母を守った。しかし、駆逐艦は魚雷攻撃を受けて航行不能どころか撃沈は不可避となった。
世界連合艦隊がグラ・バルカス帝国航空機に攻撃されている頃、グラ・バルカス帝国艦隊も攻撃に晒されていた。相手は、神聖ミリシアル帝国だ。
神聖ミリシアル帝国の最新鋭戦闘機【エルペシオ3】だ。しかし、グラ・バルカス帝国からすれば、良い鴨でしかない。そう、グラ・バルカス帝国は情報収集とフォーク海峡戦にて神聖ミリシアル帝国の航空機が大したことが無いと判断していたのだ。実際、その判断は正しい。神聖ミリシアル帝国の戦闘機に限った話ではないが、この世界でジェット機を採用している数少ない国の1つだ。しかし、ジェット機とは言うもののその性能は一番の売りである速度で、グラ・バルカス帝国のレシプロ戦闘機―アンタレス07式艦上戦闘機―に負けているのだ。他にも、旋回性能や上昇速度、加速性能でも劣るのだ。そんな戦闘機同士が戦ったらどうなるか?自明だ。
空戦が始まると、グラ・バルカス帝国は太陽を背に奇襲を開始した。この奇襲で8機は神聖ミリシアル帝国側の戦闘機が撃墜された。本格的な空中戦に移行すると、勝敗がはっきりする。神聖ミリシアル帝国の空戦ドクトリンに従い一撃離脱戦法をとっているが、加速性能すら劣るエルペシオ3が零戦モドキに勝てる訳もなくバタバタと撃墜される。
結果として、6機程はグラ・バルカス帝国の航空機を撃墜する事に成功したが、100機程いた神聖ミリシアル帝国の戦闘機は全て撃墜されてしまった。
上空の安全が保たれたグラ・バルカス帝国艦隊は、第二次攻撃隊を発艦させる。その数、およそ150機。彼等は、世界連合艦隊では無く襲来してきた神聖ミリシアル帝国の艦隊を叩くべく針路をとる。
神聖ミリシアル帝国艦隊を発見したグラ・バルカス帝国攻撃隊に対して、対空砲火を浴びせる。しかし、対空砲火は当たらず、数機を撃墜しただけだった。接近した攻撃隊は、敵艦隊上空に展開する直掩機への攻撃を開始する。これもまた同様にアンタレス07式艦上戦闘機に撃墜される。その間に、シリウス型爆撃機やリゲル型雷撃機が各々の敵艦に狙いを定める。
それに対して、神聖ミリシアル帝国の艦は魔力によって僅かにある装甲を強化する。しかし、急降下爆撃によって多くの艦が炎上してしまった。そこに、雷撃機によって多くの魚雷が投下された。
魚雷は真っ直ぐ神聖ミリシアル帝国艦隊に迫る。しかし、魚雷と言うものを知っている神聖ミリシアル帝国は回避行動をとる。これにより、小型艦数隻が撃沈、巡洋艦1隻航行不能、戦艦は3本の魚雷を受けて中破した。そして、空母は急降下爆撃を受けなかった6隻中2隻が被雷したが、その内の1隻が魚雷を5本も食らって撃沈は不可避となった。
この一連の流れをソナーによって把握していた日本国海上自衛隊所属原子力潜水艦【依10型】はもう世界連合艦隊と神聖ミリシアル帝国艦隊に勝ち目はないと判断した。航空攻撃でこれだけの被害を受けては、艦隊決戦まで持ちそうにもないからだ。そう思った時、巨大な…それこそ戦艦レベルの大きさの飛行物体がやって来ている事に気づいた。
これは、監視衛星でもバッチリ確認出来ており、衛星写真を後日見た稲荷神は空中戦艦と言う浪漫兵器に見た目相応にはしゃいでいたが、自衛隊関係者は、まさしく魔法としか言いようがない兵器に頭を抱えた。
閑話休題
ともかく、この空中戦艦は全長260メートル、機体上部に機関砲3基、機体下部に巡洋艦クラスの口径を持つ三連装砲6基に機関砲3基を搭載している。この圧倒的な兵器が時速200キロで動くのだ。航空機としては鈍足も良いところだが、戦艦として見れば破格の速さだ。
神聖ミリシアル帝国の空中戦艦に対して、グラ・バルカス帝国は航空攻撃を選択した。数十機のアンタレス07式艦上戦闘機が機銃掃射を行うが、全く効かない。装甲には魔力による装甲強化があるからだ。機銃が駄目なら爆弾を…とシリウス型爆撃機が威力の高い爆弾を持ってやって来る。しかし、空中戦艦は先程の神聖ミリシアル帝国の艦隊のとは次元の違う対空弾幕を浴びせ始めた。それは、圧倒的な命中率でバタバタとグラ・バルカス帝国の戦闘機が撃墜され、数十機あった戦闘機は10機にも満たなくなった。この圧倒的な対空弾幕は日本国海上自衛隊の近接防空システムを彷彿とさせる。
圧倒的な力でグラ・バルカス帝国航空機をあっという間に蹴散らした空中戦艦は、グラ・バルカス帝国艦隊に交信した。
『…神聖ミリシアル帝国対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部所属、空中戦艦パル・キマイラ艦長メテオスだ』
『ご丁寧に何の用だ』
『忠告だよ』
『忠告…だと?』
『何、私は弱者を一方的にいたぶり、虐殺する趣味は無い。今すぐ尻尾を巻いて全滅する前に逃げなさい。本隊も連れてレイフォルまで戻りなさい。もう一度言う、私は弱者をいたぶり、虐殺する趣味は無い』
空中戦艦パル・キマイラは、空中戦艦の名に相応しく装甲が厚そうだ。自信の表れなのか、艦長メテオスは上から目線で撤退勧告をしている。
『私が乗っているこの空中戦艦パル・キマイラは、無知蒙昧な君達は知らないだろうが、古の魔法帝国…暴虐の限りを尽くしたラヴァーナル帝国の戦艦なのだよ』
この通信も軍事通信衛星を通じて、日本国は傍受していた。これにより、こんな超兵器を有しているラヴァーナル帝国には日本国も驚愕するばかりだ。まあ、カルアミーク王国の遺跡からコア魔法―核兵器―の様な物についての記述もあったから今更であるが…
しかし、日本国が傍受していることなど知らない両者のやり取りは続き、グラ・バルカス帝国の司令官の答えは
『馬鹿め!』だった。
この返答を受けて神聖ミリシアル帝国の空中戦艦パル・キマイラに対して、グラ・バルカス帝国は35隻の艦隊を本隊から分けて対応していた。
その中には、長門型戦艦に酷似したヘラクレス級戦艦やドレットノート級戦艦(日本では金剛型戦艦)に酷似したオリオン級戦艦の姿もある。他にも重巡洋艦数隻に軽巡洋艦と駆逐艦合わせて30隻程だ。
先手を取ったのは長門型戦艦モドキのヘラクレス級戦艦とドレットノート級戦艦(金剛型戦艦)モドキのオリオン級戦艦だ。2種類の戦艦は主砲の砲身に仰角をつけて、空中戦艦パル・キマイラを狙う。しかし、如何に的が大きいとは言え、空中の、しかも時速200キロで進む物体に当たる訳もなく、空中戦艦パル・キマイラの接近を許してしまった。
グラ・バルカス帝国の分隊艦隊約20キロ近くまで近づいた所で、外側のリングを回転し始めた。それに連動して空中戦艦パル・キマイラ下部の三連装砲が動き、グラ・バルカス帝国分隊艦隊に照準を定める。
空中戦艦パル・キマイラに搭載された三連装砲から砲弾が発射される。砲弾は青白い尾を描きながら重巡洋艦1隻に狙いを定める。三連装砲から発射された砲弾は初弾から命中する。高度差があるとは言え、初弾から命中する辺り自衛隊のAIや弾道予測システムに通ずる物がある。
爆発の規模から15.5センチ砲だ。その砲弾が数十発と受けた重巡洋艦は艦上構造物を全て破壊され、撃沈は免れないだろう。そんな中、1発の砲弾によって大きな花火になった。魚雷に誘爆したのだろう。グラ・バルカス帝国も負けじと対空砲火を浴びせるが、効いている様子がない。空中戦艦だけあって、装甲も厚いのだろう。
グラ・バルカス帝国が対空砲火を浴びせてもびくともしない空中戦艦パル・キマイラは重巡洋艦や軽巡洋艦、駆逐艦を1隻、また1隻と撃沈させていく。時間を掛けて着実にグラ・バルカス帝国艦隊を撃沈させ、もう15隻前後しか残っていない。ドレットノート級戦艦(金剛型戦艦)も無力化されている。
そんな中、空中戦艦パル・キマイラに動きがあった。輪形陣の中央に陣取っている長門型戦艦モドキのヘラクレス級戦艦に向かって突撃を始めたのだ。グラ・バルカス帝国もそれを察して対空砲火を集中させる。しかし、火花が散るだけで弾かれており効いている様子がない。
空中戦艦パル・キマイラも長門型戦艦モドキのヘラクレス級戦艦に集中して攻撃を加えるが、戦艦の面目躍如と言ったところか、軽巡洋艦クラスの主砲では上部構造物は破壊出来ても主砲やバイタルパートについては無事なようだ。艦橋も無事なので、上部構造物にいた乗組員はともかく、ヘラクレス級戦艦に乗っている高級幹部は無事そうだ。
そんな中、空中戦艦パル・キマイラは何を思ったのかヘラクレス級戦艦の真上に移動した。これによって、ヘラクレス級戦艦は高角砲や両用砲でない限り攻撃が出来なくなってしまった。それは、空中戦艦パル・キマイラも同じだ。
しかし、空中戦艦パル・キマイラは下部のハッチを開いて、細長い物体を投下した。その数秒後、激しい閃光と爆風、爆音が響いた。あまりの威力の高さからキノコ雲が上がっている。これは、近年研究が終わり配備され始めた超大型魔導爆弾【ジビル】による物だ。これは、古の魔法帝国のコア魔法に比べれば威力は格段に劣るが、威力は折り紙付きだ。その爆弾がヘラクレス級戦艦の真上で爆発したのだ。
それらが収まると、ヘラクレス級戦艦の上部構造物は黒焦げだったが、艦の形状は保っていた。水上機等は燃えているが、それ以外は何ともなかった。しかし、シビルによる攻撃を受けたヘラクレス級戦艦に魔力探知レーダーを向けてみると、反応が無いことが分かる。グラ・バルカス帝国は科学文明だから、この世界の船舶が持つ魔力を有しない。故に、人が持つ微細な魔力を探知するのだが、このヘラクレス級戦艦にはその反応が無い。即ち、乗組員は全員が死亡したと言うことだ。
その後はあっという間だった。空中戦艦パル・キマイラは、遠距離砲撃にてグラ・バルカス帝国艦隊を1隻ずつ撃沈させた。そして、艦長メテオスは神聖ミリシアル帝国艦隊に告げた。
『我々、空中戦艦パル・キマイラ2隻はこれより、敵本隊に突撃、主力艦隊を撃破する。神聖ミリシアル帝国に逆らうとどうなるかを教育してやる』
その魔信後、空中戦艦パル・キマイラはグラ・バルカス帝国本隊へと向かった。これを見た世界連合艦隊の反応は様々だった。
古の魔法帝国を畏れる者、魔法文明の凄さを実感した物、神聖ミリシアル帝国を讃える者。三者三様の考えを他所に、空中戦艦パル・キマイラはグラ・バルカス帝国本隊を叩くべく針路をとった。
〜コラム〜
ドレットノート級戦艦
日本が建造した史実の金剛型戦艦に当たる物。ロシア帝国の対馬占領事件の際に使用された戦艦大和を見た英国人は、日本の造船技術に強い衝撃を受けた。ヴィカース社は日本の造船技術を取り入れるべく、日本に戦艦発注を行った。しかし、歴史の強制力が働いたのか金剛型戦艦は建造されたのは19世紀ではなく、20世紀初頭の事である。金剛型戦艦として日本は建造したが、イギリスではドレットノート級戦艦と呼ばれている。
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これから登場する兵器について
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