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―第二文明圏列強ムー国商業都市マイカル―
ムー国の首都オタハイトよりも広大な港を有し、神聖ミリシアル帝国のカルトアルパスにも負けない港湾施設が整っている第二文明圏の経済の中心都市、マイカル。そこには、ムー統括海軍のとは違う軍艦が多数停泊していた。
日本国艦隊の駆逐艦や巡洋艦、空母である。彼等は、ムー国政府の許可を得てマイカルの一角に拠点を置いていた。彼等は、グラ・バルカス帝国艦隊接近の報を受けてマイカルより東約150キロ地点に来ていた。
旗艦である空母出雲の司令官室で安井司令官と艦長山本、その他高級幹部がいる中その上座に座るのは自衛隊の最高指揮権を有する稲荷神である。因みに、その左右には近衛隊長とお世話係長桜さんが控えている。
「稲荷神様。今朝オタハイト沖にて発生した海戦結果がムー統括海軍より届きました。それによりますと、オタハイトを強襲するべくやって来たグラ・バルカス帝国艦隊8隻は全滅したとの事です。ですが、ムー国側の被害も多いです。首都防衛艦隊は1隻を除いて全滅、我々が改造を施したラ・カサミ改も砲塔の損傷や対艦誘導ミサイル、80式対艦誘導魚雷の補充も必要です」
その言葉に稲荷神は頷いて言う。
「それで、グラ・バルカス帝国艦隊の位置は?」
「はい。監視衛星によりますと17隻からなるグラ・バルカス帝国艦隊が接近中です。編成は、翔鶴型空母1隻、重巡洋艦3隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦3隻、補給艦3隻です。東北東、距離400キロ、マイカルに向けて速力20ノットで接近中です」
それを聞いて、稲荷神は通信士に敵旗艦に通信を繋ぐよう指示する。これに、安井司令は意見を呈す。
「稲荷神様、態々敵に我々の居場所を教えるのは得策とは思えません。地球と違って交戦規定等ありませんから…」
そう言う安井司令だが、稲荷神はその意見を否定した。
「私は戦争は好きではありません。自分の平穏な生活の為に、そして、日本国民の安全の為に戦っているに過ぎません。敵とは言え、戦闘をしなければ余計な血を出さずに済みます」
「…不肖、この安井感動しました!敵に情を掛けるその慈悲深さに!」
それを聞いて、近衛隊長やお世話係長桜さん含め、会議に出席している全員が感動に体を震わせている。
そこに、会議に出席している通信手の1人が通信装置を稲荷神の御前に持ってきた。稲荷神は、通信士から操作方法を聞いてグラ・バルカス帝国艦隊旗艦へと通信を開始した。
◆
その頃、グラ・バルカス帝国海軍本国艦隊第52地方隊、通称死神イシュタム隊の本隊はマイカルへと向かっていた。本艦隊は、ペガサス級航空母艦シェアトを旗艦としてタウルス級重巡洋艦3隻、キャニス・メジャー級軽巡洋艦1隻、駆逐艦8隻、補給艦3隻。本国艦隊としては小規模だが、この世界の国々では相手取るのが難しいレベルの艦隊だ。
そんな艦隊の旗艦シェアトの中で血が通っていないかの様な青白く、全体的に身体が細いので死人の様にも見える男がいた。彼がイシュタム隊の司令官メイナードである。
彼等は弱いものいじめが大好きなサディストの集団でありそんな彼等の司令官もまた、その一人だった。彼は、作戦目標であるマイカルをどう調理しようかと悩んでいると、不意に通信士から報告が入った。
「メイナード司令!我が軍の周波数帯の無線に突如、日本国を名乗る相手から通信が!」
「何?」
メイナードは、どうやって此方の周波数帯を割り出したのか、通信を寄越してきたのか疑問は幾つか生じたが、その通信を聞くことにした。通信士がインカムからスピーカーに切り替えるとシェアト艦内に幼い少女、或いは幼女と言って差し支えない声が聞こえてきた。
『マイクテスト、マイクテスト。此方は、日本国海上自衛隊、第3護衛隊です。通信に応答して下さい。貴方達の位置は既に把握しています』
メイナードは、驚いた。此方の編成や位置、陣形を見事に言い当てている。そんな驚愕を他所に通信士は、通信が流れる間に通信の発信源を大まかに特定していた。
「通信士、敵艦隊の位置は?」
「はっ!本艦から南西方向、距離250キロ付近と思われます」
「では、偵察機を向かわせるよう指示しろ。敵艦隊の詳しい場所が分からなくては、作戦の立てようがないからな」
「敵艦隊からの通信はどうしますか?」
「私が応じよう。我がグラ・バルカス帝国、それもイシュタム隊に通信をよこすなど我々を舐めている」
メイナードは、日本国が自国より優れた技術を持っているなど夢にも思っていない。また、彼の日本国に対する認識は『対空攻撃だけは強い』と言う物だった。グレードアトラスター級戦艦アンドロメダが鹵獲された等の機密情報が上層部に疎まれているイシュタム隊に共有されるはずも無かった。
「無線を繋ぎなさい」
「はっ!」
通信士は、無線を繋いでメイナードは無線の送話器を手に取る。
「こちら、グラ・バルカス帝国本国艦隊、イシュタム隊です。貴方は誰ですか?我々に何の用ですか?手短にお願します。私は、イシュタム艦隊司令メイナードです」
返答は直に帰ってきた。
『え〜、私は日本国自衛隊総司令の稲荷神です。直に引き返してムー国沖合から撤退して下さい。警告に従わない場合、あなた方を攻撃します。よい返事を期待します。繰り返します…』
(何だ?私を馬鹿にしているのか?)
それが、メイナードが声の主、ひいては日本国に対して抱いた印象だった。事情を知らない第三者から見れば、齢二桁にもいくか微妙な年の女の子が無線を使って一丁前に軍隊の真似事をしている。或いは、子供のイタズラと思うだろう。事実、メイナードも困惑していた。だが、実際は齢3桁、しかも人間ではなく神様だ。
メイナードは、困惑と少しの怒りを持って対応する。
「撤退?そんな事はあり得ないですね。我々の編成や位置を何処で知ったのかは分かりませんが、我々の方が圧倒的に強いのですよ。技術も戦力も、それは貴方の虚勢ですね。我々の目標はムー国のマイカルです。今から逃げるのなら命は助けてあげますよ」
『…それは無理ですね。私達はムー国に居る我が国の国民を守る義務があります。ですので、退くのはあり得ません。最後に一つ、私達は貴方達より技術格差が違い過ぎます。戦いにすらなりません』
「お前達のような野蛮人にやられる我々ではない!稲荷神!貴様はグラ・バルカス帝国を侮辱した!それは皇帝陛下を侮辱したと同義だ!万死に値する!貴様が捕虜となったら私が嬲り殺してやる!」
メイナードは通信を切った。そして、怒りのままに叫ぶ。
「グラ・バルカス帝国…そして我がイシュタム隊を侮辱するとは…許せん!おい!敵艦隊に雷撃機主体の第一次攻撃隊を送り込め!1隻残らず撃沈せよ!」
本来なら、偵察機からの情報を下に攻撃隊の編成を決めるべきなのだが、怒り心頭のメイナードは敵艦隊が防御を整える前に攻撃をしようと考えていた。
「やつらはグラ・バルカス帝国を…皇帝陛下を侮辱した!思い知らせてやる!」
メイナードは稲荷神と名乗る女の子を嬲る方法を考えながら怒りに燃えていた。
◆
一方その頃、日本国海上自衛隊の旗艦、空母出雲の司令官室では物々しい雰囲気になっていた。その原因は、グラ・バルカス帝国艦隊司令のメイナードと名乗る人物の言葉にあった。
『
これを聞いてこの場にいる者達からグラ・バルカス帝国の軍人を捕虜とする気は失せた。全員から目のハイライトが消え、司令官室は重圧が一分一秒毎に増えている。
「えっと…皆さん宜しくお願いします」
稲荷神は、侮辱されるのはこの世界では何時もの事なので慣れているが、今回は特に酷いらしく萎縮しながら指示を出した。それを受けて、安井司令は言った。
「お任せください。直に片付けます」
稲荷神に対して笑みを浮かべながら言った。
「では、各員戦闘準備して下さい。私も出ますので」
「分かりました。どうぞこちらへ」
皆が退出し、安井司令が司令官室の扉の手前で控え、稲荷神が退出してから扉を閉めた。彼の目は、やはりハイライトが消えていた。
◆
日本国艦隊からの侮辱的な通信を受け取ったイシュタム隊は、空母シェアトから第一次攻撃隊が発艦準備をしていた。やがて、準備が整って日本国と言う蛮族を痛めつけてやろうと思いいざ発艦しようとした時だった。
突如としてイシュタム隊の全ての艦が青い炎で炎上したのだ。これに慌てたのはメイナードだ。続々と報告で航空機を発艦できないだの、砲弾を撃ち込めないだの、航行不能になっただの、レーダーが使えないだの、無線が使えないだの。最早、艦隊としての機能を喪失しているとしか思えなかった。
しかし、幸いな事に熱はない為生命活動に支障はない。しかし、艦隊機能が喪失しているので消火を早急にしなければならない。
そう思っていると、突如としてメイナードが乗る空母シェアトが凄まじい衝撃と爆風に晒された。空母シェアトに乗る乗組員は分からなかったが、他の艦に乗る僅かな人数は『それ』を見た。
海面スレスレで高速飛行する物体が吸い寄せられる様に空母シェアトに向かっていたのだ。それが3本、立て続けに命中し爆発した。グラ・バルカス帝国には構想すらされていない兵器、対艦誘導ミサイルである。しかも、運悪く三本の内の一本が搭載していた航空機用魚雷に誘爆。それが連鎖的に起き、航空燃料にも引火して大爆発を起こす。最早、空母シェアトの撃沈は確実だった。
タウルス級重巡洋艦アマテルにも対艦誘導ミサイルは直撃し、魚雷発射管に命中して爆発。スコルピウス級駆逐艦サルガスも同じく対艦誘導ミサイルによって撃沈は免れない。
レーダーも無線も謎の青い炎で使う事が出来ず、敵艦隊の位置も分からぬまま、対艦誘導ミサイルの攻撃を受けて次々と航行不能ないしは撃沈されていく。対艦誘導ミサイルを撃墜しようにも、極超音速誘導ミサイルには及ばないものの、マッハで迫る対艦誘導ミサイルを撃墜出来る筈もない。(そもそも、対空砲火も狐火の所為で使用不能だが)
そんな中、空母シェアトではメイナード司令は運良く生きていた。しかし、周りにいた乗組員は物言わぬ身体になっている。彼は外を見て驚いた。死神イシュタムと恐れられた自慢の艦隊が敵を見つける事も出来ずに謎の攻撃に晒され、最早艦隊の様を呈していなかった。何をされたのか、彼自身理解出来なかった。
しかし、脳裏に日本国総司令の稲荷神と名乗る幼子から技術格差があり過ぎると言われた。その時は唯の虚勢だと一蹴したが、それは事実だったのだ。
彼は真性のサディストではあったが、祖国に対する愛国心は本物だった。このまま、祖国―グラ・バルカス帝国―が戦争を続ければ負けてしまう。そう考えて無線機に青い炎を煩わしく思いながら駆け寄る。しかし、その青い炎によって無線その他全ての機械が使用不能なのを失念していた。
そして、運悪く爆発に巻き込まれた非常脱出装置も壊れていた為に、メイナードは空母シェアトと共に海の底に消えた。
こうして、グラ・バルカス帝国本国艦隊第52地方隊イシュタムは全滅した。オタハイト沖海戦、マイカル沖海戦共に艦は全て撃沈された。オタハイト沖海戦のグラ・バルカス帝国乗組員は生き残った者は捕虜となり、本国へは帰れなくなった。異世界の国々を蛮族と思ってる彼等にとってはさぞ、屈辱的だろう。そして、マイカル沖海戦に参加した者に生き残りはいなかった。日本人は大なり小なりペロリストだ。しかも、稲荷神直属の自衛隊は重度のペロリストが多い。そんなペロリスト達に彼等の信仰先である稲荷神を『嬲り殺してやる』等と言ってしまえば、こうなるのは明白だった。マイカル沖に漂流していたグラ・バルカス帝国軍人は、日本国第三護衛隊から発艦したAI制御型無人ヘリコプターによる機関砲で皆殺しとなった。
稲荷神としては、軍事ど素人なので細かいことは安井司令に任せたが本当に皆殺しにする必要があったのかは疑問だったが…
「奴等はマイカルを火の海にしようとしていました。ここで逃せば、マイカルは燃え沢山のムー国人と日本人含めた邦人が大勢に亡くなっていました。ですから、これで良かったのです」
そう言われれば、納得するしか無かった。日本国海上自衛隊第三護衛隊はマイカルへと戻っていった。
かくして、イシュタム隊の全滅はグラ・バルカス帝国本土に伝わることなく忘れ去られたのであった。
〜コラム〜
狐火
今回、稲荷神は狐火を高温にしていないが、これは任意に調節可能だ。いくら戦争とは言え、火傷などのアフターケアは大変だと言う理由が一つ。今回は、衛星からの座標情報を下に使ったので細かい調節が出来なかったのがある。
要約すると、稲荷神が狐火を発動するには目視或いは座標を確認しておかなければ、遠隔操作出来ない
※狐火の設定は一部独自設定です。
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