作者の別作品も高評価宜しくお願いします。
―第二文明圏グラ・バルカス帝国領レイフォル州州都レイフォリア―
バルチスタ沖海戦を終えたグラ・バルカス帝国艦隊はレイフォル沖に停泊していた。その一部は既に本土に撤収し立て直しを図っている。
レイフォリアの一角に置かれた帝国情報局の会議室の一室でバルチスタ沖海戦に置ける反省会と報告会が開かれていた。ここには、バルチスタ沖海戦の司令官であり帝国の軍神とも呼ばれる東部方面艦隊司令長官カイザル中将の姿もあった。
会議はバルチスタ沖海戦における物だが、1つ。無視できない案件があった。それは、神聖ミリシアル帝国が繰り出した兵器だった。戦艦や戦闘機の性能は情報局の予測とほぼ一致していたのだが、空中戦艦パル・キマイラと言うイレギュラーが登場したのだ。
この空中戦艦パル・キマイラは、グレードアトラスターの砲術士のお陰で46センチ三連装砲の一発を命中させ、撃沈したがこの様な都合の良い展開が何度もある筈がない。今回の議題の殆どはこの空中戦艦パル・キマイラに焦点が当てられていた。
「軍部としては、あの空中戦艦が何隻程あるのか、性能、そして、全力生産した場合の建造ペース、そして似たようなイレギュラーな兵器の有無だ」
カイザルの要望に情報局幹部バミダルは冷や汗を流す。明らかに今回の空中戦艦パル・キマイラを察知できなかったのは情報局の失態だ。しかし、彼等を擁護するならば、空中戦艦は彼等の常識外の存在だ。それに、語られているのが神話の中の話だけなら「報告する価値なし」となるだろう。だが、実際に存在した以上情報の再収集は急務だ。
「了解しました。運用機数、建造ペース等の情報については神聖ミリシアル帝国に派遣している情報収集部に当たらせます。技術部も全力で分析を行います」
「頼む。既に本土には連絡してあるが、どうやら官僚方や政治家は脅威をよく分かっていないらしい。だが、軍部は非常に重く見ている。神聖ミリシアル帝国は我が国に並ぶ国だ。故に、神聖ミリシアル帝国の攻略は重要課題だ。心して職務に当たってくれ」
「心得ています」
バミダルは気合を入れるが、カイザルの話には続きがあった。
「神聖ミリシアル帝国とは別件だが、バルチスタ沖海戦に気を取られているムー国東海岸に派遣した艦隊が行方不明になっている。その原因も不明だ。軍部も原因を考えているが、情報局も調べてもらいたい」
それを聞いて、一同は何とも言えない顔になった。問題の彼等は品性劣悪、植民地現地人を一方的に嬲って楽しむ不愉快な連中だ。彼等は、軍部からも疎まれており何処かで沈んでも何とも思われない。逆に厄介払いが出来ていいくらいだ。しかし、原因不明で消息を絶ったとなると何とも薄気味悪い。
彼等は、外交官ダラスが本国へ出向いていた時に会った外務大臣にムー国首都オタハイトと商業都市マイカルの攻略を進言した。これが理にかなっていたので外務大臣は皇帝に奏上。その後、皇帝の裁可を得てイシュタム隊は出撃したのだ。故に、ムー国に敗れたと見るのが普通だが、ムー国の技術では練度が本国艦隊より劣るとは言え、負けるとは考えられないのだ。カイザルの要望はそう言った理由があった。
バミダルは「承知しました」と言う直前、ドアがノックされた。入室の許可を出すと入ってきたのはバミダルの部下の情報局員のナグアノであった。
「会議中失礼します。追加の情報が手に入りましたのでご報告しても宜しいでしょうか?」
バミダルとしては会議中なので余り聞く気にはならなかったが、視線をカイザルに向けると頷いていたのでナグアノに許可を出した。
「はい。現在ムー国に潜入している諜報員からの連絡です。どうやら、現在ムー国に日本国の空母4隻を主力とした計42隻の艦隊がマイカルやオタハイトと言った都市に駐留しているとのことです」
バミダルの表情が険しくなる。日本国と言えば、ナグアノが重要視すべきと提言してきた国だ。グラ・バルカス帝国では敵わない技術を有していると言っていたが、有り得ない事として保留にした国だ。空母4隻の42隻の艦隊は少なすぎる。戦列艦が主体だったとは言え、世界連合艦隊は300隻近い数があった。神聖ミリシアル帝国でさえ100隻近くあった。それに比べると42隻は少なすぎる。
バミダルが思案していると、カイザルが話しかけてきた。
「とうした?何か懸念事項でもあるのか?42隻程の艦隊だ。数で押し切れると思うが…」
カイザルに言われてバミダルは少し悩んで報告する。
「…はい。実はムー国に派遣していた諜報員から数カ月前に日本国に関する書籍を手に入れました。しかし、そこに記されていた内容が余りに荒唐無稽だったので欺瞞情報であると考え、報告しませんでした。それでよろしければ…」
「構わん。報告してくれ」
そう言われては断る訳にもいかず、バミダルはナグアノに問題の書籍を持ってこさせる。数分後、持ってきた書籍をカイザルに手渡して、話し始める。
「では、ご報告します。その書籍は我がグラ・バルカス帝国と日本国の戦争推移についての特集雑誌です。そこには、ヘラクレス級戦艦やオリオン級戦艦、ペガサス級航空母艦等の性能が記されています。それだけでなく、運用方法、艦載機の情報までもが事細かに記されています。しかも、グレードアトラスター級戦艦の情報までもが記載されているのです」
「何?!」
カイザルは驚き、バミダルに指定されたページを開いて見る。そこには、『幕末の大和型戦艦に酷似!』との見出し付きで此方も性能や断面図、バイタルパート、各武装の細かな性能までもが記されていた。しかも、その殆どが正しいのだ。だが、それよりも驚くべき事実がある。
『グレードアトラスター級戦艦の主砲口径は46センチ〜51センチ砲と推定される』
グレードアトラスター級戦艦の主砲口径は46センチ三連装砲だ。しかし、態々51センチ三連装砲と記すからには、日本国は51センチ三連装砲の戦艦を保有していたことになる。しかも、これが150年以上前の戦艦なら現在はもっと性能の高い戦艦を保有している可能性すらある。この事実に、カイザルは無意識に震えていた。
カイザルとは畑違いだが、陸軍の戦車についての予測もあった。この世界ではまだ使っていない筈の戦車の性能が低いものから高いものまで大凡当たっている。
ここまで正確に情報を集めたことに驚く。しかし、それでも日本国の圧勝とあった。彼は、少し不愉快になりながらも指定されたページをめくる。
そこには、『対艦誘導ミサイル』とあった。それは、音速を超える速度で飛翔する爆弾が、自動で艦の脆弱な部分に磁石のように吸い付き爆発するとあった。それは、海面スレスレを飛翔するのでレーダーでの捕捉が難しい。他のページには駆逐艦の性能も紹介されていた。
駆逐艦は色々な目的の物があるが、特筆すべきは対空能力の高さだろう。艦対空誘導ミサイルといった兵器や主砲での迎撃、近接防空システムと呼ばれる分速3000発の正確無比な射撃や対空レーザーと言った電気代と言う低コストでミサイル迎撃やドローンと呼ばれる小型飛行機を迎撃するとある。
これでは、グラ・バルカス帝国の雷撃機や爆撃機は対空誘導ミサイルを躱し、正確な主砲攻撃を躱し、分速3000発の正確な攻撃を避けて、一瞬でレーザーを躱して魚雷や爆弾を投下する必要がある。これでは、ベテランの飛行機乗りが沢山いても対応出来ない。ならば、遠くから魚雷や主砲攻撃をしようにも、魚雷を破壊したり主砲弾を飛翔中に破壊されては、攻撃手段が無い。
潜水艦についても記載があり既に日本国はグラ・バルカス帝国の潜水艦を多数撃沈している旨も記載されていた。
航空機は音速を超えるとある。戦闘機にも対空誘導ミサイルを積み込む事が可能とある。この本に書かれた事が事実ならグラ・バルカス帝国の勝利は万が一にも無いと思われる。
カイザルは、静かにバミダルに話しかける。
「この本に書かれた事が事実なのかどうか、早急に調べてもらいたい。神聖ミリシアル帝国のイレギュラーな兵器も脅威だが、日本国の兵器がこの本の記載通りなら勝て無い可能性が高い。恐らく、ムー国に派遣した艦隊も日本国に撃破されたのだろう。しかも、ムー国にいる以上、神聖ミリシアル帝国の艦隊より先に日本国艦隊と戦う可能性が非常に高い。この情報を本国に伝えると共に、両国の情報収集に全力を尽くしてもらいたい」
「了解しました!」
会議はお開きとなり、情報局員らは退出する。しかし、カイザルは会議室に残り思案する。
(あの本に書かれた事が事実なら…この戦争負けるやもしれん。これは、陛下にも奏上するべきか…)
カイザルは国を憂い、思案を続ける。
◆
―第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国帝都ラグナ―
バルチスタ沖海戦の海戦結果は、本国に届けられた。しかし、帝国の三将にして軍神カイザルはグラ・バルカス帝国領レイフォル州都レイフォリアに残っている。本土に残った帝国の三将の内の2人…海軍特務軍司令長官ミレケネス、帝都防衛隊長ジークスを始めとする軍部の幹部や高級官僚、そして、皇帝が出席する御前会議が開いていた。
「これより、バルチスタ沖海戦の戦果報告をさせて頂きます」
若手幹部が話し始める。
「バルチスタ沖海戦の結果、世界連合艦隊の約480隻の内、360隻近くの戦列艦や近代艦を撃沈しました。また、
若手幹部は続ける。
「そして、ムー国に派遣していた諜報員から日本国の艦隊の姿が確認されました。恐らく、次の艦隊決戦にはこの日本国が相手になると思われます。その内訳ですが空母4隻からなる巡洋艦、駆逐艦含む計42隻の艦隊です」
この報告に失笑が広がる。無理もない。世界連合艦隊や神聖ミリシアル帝国は100隻を超える艦隊を用意したのに日本国はその半分も無い。
「では、軍部としての空母戦艦の対応とムー大陸攻略、日本国艦隊との決戦に向けての作戦をご説明願います」
皇帝の側近が軍部に促すと、海軍特務軍司令長官ミレケネスが話し始める。
「はい。まず空中戦艦パル・キマイラですが此方は現在情報局に依頼して運用機数、性能、建造ペースを調べてもらっています。そして、今後遭遇した場合は逃げに徹し、戦艦の主砲攻撃が当たる距離を保ち主砲攻撃を行い撃沈させます」
続いて、陸軍の中将ミストスが話し始める
「ムー大陸の攻略ですが現在軍門に降ったヒノマワリ王国のムー国国境付近に要塞を建造中です。ここにカノン砲やハウンド中戦車を始めとする機甲師団とアンタレス型戦闘機、シリウス型爆撃機を集めてムー国国境付近の街、アルーに侵攻します。そこをムー国侵攻の足掛かりにして、戦線を広げ無いようにしつつ重要都市であるマイカルに侵攻、ムー国経済を締め上げ降伏に追い込みます。陸軍からは以上です」
ミレケネスが代わって話し始める。
「次に、日本国艦隊についてですがカイザル司令官率いる東方艦隊が撃破に向かいます。日本国の艦隊は設計思想が不明な点も多く、情報局に情報収集を依頼したのですが思わぬ副産物としてある情報を入手しました。情報局長ヴェスト殿、お願いします」
「ご紹介頂きましたヴェストです。実は、ムー国の地方都市イスタンにかなり厳重に情報統制された海軍基地がありました。諜報員がそこに潜入するとそこにはフォーク海峡戦で行方不明になっていたグレードアトラスター級戦艦アンドロメダの姿がありました。諜報員はその後消息を絶った為、捕縛されたものと思われます」
情報局長ヴェストの言葉は衝撃だった。グレードアトラスター級戦艦は帝国の技術の結晶と言っても過言ではない。その1隻がムー国に存在している事は彼等の誇りを傷つけられた。戦艦を撃沈するでもなく鹵獲するなど、どれ程難しいか…しかし、アンドロメダの乗組員が降伏を選んだのなら話は別だが、グレードアトラスター1隻に勝てる様ならバルチスタ沖海戦で世界連合艦隊が負ける筈が無い。彼等はそこが不思議だった。
ここで口を開いたのは皇帝グラ・ルークスその人だった。
「…グレードアトラスター級戦艦アンドロメダは撃沈処分せよ。アレは機密の塊だ。あらゆる手段を以て撃沈せよ」
フォーク海峡戦から大分経っているので帝国の技術を解析される恐れがある。しかし、神聖ミリシアル帝国は奇妙な軍艦や戦闘機設計をしている。故に、グラ・ルークスは問題視していなかった。しかし、ムー国は魔法と呼ばれる技術が一般的なこの世界で科学を発展させた。技術の開発ならムー国が優れている。ムー国が強大化する前に機密技術の塊は処分しなければならない。それが皇帝グラ・ルークスの考えだった。
これを受けて、ミレケネスは話し始める。
「承知しました。グレードアトラスター級戦艦アンドロメダについては戦艦の集中艦砲射撃を始め、爆破工作を含めたあらゆる手段を以て撃沈させます。カイザル司令官には日本国艦隊を壊滅させたらその足でイスタンに向かわせましょう」
こうして、会議はお開きとなった。
(グレードアトラスターが鹵獲されるとは…異世界の奴等はイマイチ実力が掴めん…)
皇帝グラ・ルークスはため息をついた。
〜コラム〜
対空ミサイル
日本国がこれまでの対ロウリア戦、パーパルディア皇国戦で対空レーザーを使わなかったのは、ワイバーンやワイバーンロードと言った生物の性能を各国から聞いていたとは言え、実際体感してみないことには分からないと言うことで、レーザーは使わず対空ミサイルで様子見した形です。(もうレーザーでワイバーンの類いは攻撃する)しかし、ミサイル迎撃やドローン対処で使う。だが、近距離でならグ帝(雷撃機や爆撃機)はミサイルとレーザー共に戯れる事になる。
因みに、レーザーは低コストでの発射が可能なのでミサイル迎撃やドローン対処に使われます。現実の自衛隊も試験開発してます。
※上記の通り近距離・低コストでのミサイル迎撃やドローン対処に使われるので長距離の敵戦闘機には対空ミサイルが使われるのかな?有識者いたら教えて下さい。
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