稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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バルーン平野の戦い〜後編〜

 

 

―第二文明圏マギカライヒ共同体首都北方バルーン平野―

 

化け物が謎の塔を現して数日、マギカライヒ共同体首都防衛部陸上隊司令部は謎の塔に攻撃を開始しようとしていた。

 

司令部の眼下にはマギカライヒ共同体の兵士が並ぶ。その後ろには日本国陸上自衛隊国際協力部隊が控えている。

 

「まず、砲兵で塔を破壊します」

 

司令部でルイジルは、ファルタスや水田の前で宣言する。そして、続ける。

 

「しかし、塔が崩壊するとしても塔から敵が流れ込んで来る可能性も否定出来ません」

「ではどうするのかね?」

「精鋭銃歩兵大隊で対処します。銃弾を山程食らわせてやりますよ」

 

マギカライヒ共同体の銃はパーパルディア皇国同様のマスケット銃だ。その為、装填速度と連射速度をカバーする為、数を揃えて対処している。

 

「古の化け物も年貢の納め時だ!砲撃開始!」

「砲撃開始!」

 

ルイジルの指令が魔信を通して共有される。陸上配置型科学融合魔導砲の火薬が点火され、砲身内の空気が膨張する。魔石を塗り込んだ砲弾が押し出され、砲身内を飛び出す。砲身には光の模様が走り、砲口には六芒星の魔法陣が展開される。弾丸は魔石と反応してさらに加速しする。やがて轟音とともに、猛烈な火と煙が噴き出して陸上配置型科学融合魔導砲が砲撃を開始した。

 

砲弾は塔に着弾する。幾つもの砲弾による爆発は、塔に絡みつく草木や岩を破壊する。土埃が舞うが、砲撃は続く。ルイジルは、砲撃停止を命令した。土埃や煙で目標の塔の有無が分からないからだ。

 

煙や土埃が収まるとそこには、何事もなく立っている塔の姿があった。見た所、亀裂も見つからない。マギカライヒ共同体の一斉砲火でもビクともしない。ルイジルは、日本国に協力してもらおうとしたが、それは叶わなかった。

 

塔の一角から突如として今まで存在しなかった扉が現れ、扉から沢山のゴブリンがやって来たのだ。ゴブリンは剣や弓、槍、盾、鎧を装備している。しかし、皮膚の色が通常種とは異なる。何より、魔力量が違った。

 

ファルタスはゴブリンの多さに懸念を示すが、ルイジルは問題無いと言い切った。ルイジルは指令を出すと、銃歩兵が攻撃を開始した。

 

横一列に並んだ銃歩兵の攻撃により、ゴブリンが次々と倒れる。発砲した兵士がすかさず後ろに下がり後方の銃歩兵が発砲する。こうする事で、銃弾を途切れさせる事なく速射をする事が可能となる。

 

この光景にファルタスは驚愕する。自分達が使う魔法とは異なる科学がここまでの戦果を挙げた事にだ。そして、納得した。この科学を極めたグラ・バルカス帝国があそこまでの力を有している事にだ。

 

ファルタスがバルチスタ沖海戦の光景が脳裏に浮かんでいる内に、戦場に変化があった。ゴーレムが20体程現れ、ゴーレムの陰にゴブリンの姿がある。どうやら、ゴブリンはゴーレムを盾にするつもりだろう。これに、マギカライヒ共同体は慌てずに対処する。

 

「全砲兵に告ぐ!ゴーレムに砲撃用意!撃て!」

「日本国陸上自衛隊も砲撃参加します!」

 

稲荷神の言葉に動揺する事なく陸上自衛隊の12式戦車が砲撃を開始する。マギカライヒ共同体の陸上配置型科学融合魔導砲とは比べ物にならない威力の砲撃に多数のゴーレムが巻き込まれて爆発四散する。その爆発に巻き込まれてゴブリンにゴーレムの破片が直撃したり、爆発をモロに食らう者もいた。

 

そんな中、1体のゴーレムがゴーレムとは思えぬ過敏な動きで右翼歩兵に突撃を始めた。その突撃で、マギカライヒ共同体第32歩兵小隊が壊滅した。これで、周りに仲間がいなくなった砲兵達は、陸上配置型科学融合魔導砲をそのゴーレムに放つが、全くと言っていい程当たらない。このままでは、司令部が壊滅する。そんな時だった。

 

日本国陸上自衛隊国際協力部隊所属の百田が03式対戦車誘導弾を放った。

 

これは、携帯式の誘導弾だ。戦車の砲弾でも良かったのだが、AIの補助を受けているとは言え戦車の砲弾は弾道予測は出来ても誘導は出来ない。なので、確実に命中する03式対戦車誘導弾を発射したのだ。

 

過敏な動きをしたゴーレムに爆発が生じた。これを見たルイジルは、日本国の兵器の凄さを褒めちぎった。だが、ファルタスは冷や汗をかいた。何故なら、土埃や煙の中から信じられない程の魔力の奔流を察知したからだ。

 

この言葉は、楽観的な考えを否定しこの場にいる者たちは煙の中を注視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

過敏な動きをするゴーレムは、実は汎用人型陸戦補助兵器MGZ型魔導アーマーを着用した量産型戦闘培培養体・コード009、リョノスだった。

 

彼は冷や汗をかいていた。耳障りなブザー音がアーマー内に反響する。しかしこれは、アーマーが多大な損傷を受けた事を物語っている。

 

(馬鹿な!魔力が感じられないだと!)

 

実はリョノスはMGZ型魔導アーマーに岩を取り付けてゴーレムに偽装していたのだ。ゴーレムが出現すれば片がつくと思っていただけに、ゴーレムが魔力反応が無い攻撃で倒されている。これは衝撃的だった。

 

だが、彼はMGZ型魔導アーマーに絶対の自信を持っていた。事実、魔王としての力とアーマーが合わされば下等種の国など容易く滅ぼす事が出来るのだから。

 

しかし、白兵戦を仕掛けた事で日本国の危機感を煽ってしまったことが失態だった。突如として衝撃が生じた。これは、03式対戦車誘導弾の攻撃を受けたのだ。だが、運が良いことに纏っていた岩が偶然にも増加装甲の役割を果たした。結果として、岩は剥がれ落ち、アーマーの性能が1割にまで低下してしまった。岩が無かったら攻撃はアーマーを貫通していただろう。

 

ファルタスは急激な魔力上昇を感じ取った。故に、防御魔法を発動する。これは、空間を曲げて逸らす魔法であり高質量の物体は効かないと言う欠点があるが、無いよりはマシだ。稲荷神も嫌な予感がしたのか、空間魔法に貼り付ける様に狐火を纏わせる。

 

リョノスが放った魔光砲は、狐火で補強した空間魔法により後方にある丘に命中した。

 

ズガァァァァァッッッ

 

魔光砲は轟音を響かせた。丘は一部が消し飛び、茶色の地肌が剥き出しになっている。その威力の高さにこの場にいる者全てが戦慄した。

 

大型榴弾砲、空爆並みの威力に、自衛官達は単体の生物が放っていい威力では無いと思った。しかし、廉価版でこれなのだからトーパ王国の魔王はこの比ではない事に冷や汗を覚えた。

 

そんな中、水田は冷静にルイジルとファルタスに連絡を取る。

 

『我々が先陣を切ります!皆さんは後方に部隊を下げてください!』

 

しかし、これに異議を唱えたのがファルタスだった。

 

『待ってくれ。私の魔法ならあの魔帝の陸戦兵器を破壊出来るだろう。詠唱する時間を稼いでくれればいい』

 

そう言って、ファルタスは魔法の詠唱を行う。

 

「ふぅ…怒れ、金色の神獣よ。唸れ、白色の星獣よ。世は蜃気楼、時は流水、天に映るは愚者の舞踏ー」

 

この連絡を受けて、ルイジルは魔帝の兵器を前に絶望しかけたが、残った理性を総動員して部隊を下げるように指示を出す。そして、詠唱の時間稼ぎとして陸上自衛隊は12式戦車や戦闘ヘリコプターを前に出す。直に砲撃が始まった。

 

12式戦車から放たれる戦車砲がAIの補助の元、砲弾を発射する。砲弾は寸分狂わずリョノスに命中する。しかし、実際はリョノスが放った魔光砲に命中し相殺する程度に終わった。

 

リョノスは、魔導アーマーからの警戒で人種(ファルタス)の魔力量は少ない癖に攻撃力が1万を超える魔法に焦りを覚え、ファルタス目掛けて魔光砲を放ったのだが、戦車砲に命中、誘爆してしまったと言う訳だ。

 

その隙に、赤外線による探知で土煙が舞う中、リョノスの場所を的確に把握した戦闘ヘリは対戦車誘導弾を発射した。これに、リョノスは直感で防御魔法を使用した。結果として、対戦車誘導弾は防御魔法を貫通こそしなかったものの、アーマーに損傷を与える事に成功した。これによってアーマーの性能は最早無いに等しい状態となった。

 

陸上自衛隊が時間を稼いだお陰で、ファルタスの詠唱完了も間近となっていた。

 

彼の手の前ではエルゴ領域が拡大し、虚数空間から膨大なエネルギーが流入する。彼は流入する膨大なエネルギーを漏らさぬように空間を圧縮し続ける。手の前には小さな黒い点が生じ、僅かに漏れ出るエネルギーが雷撃を絶えず発している。彼は更に空間を湾曲してエネルギーに指向性を持たせる。

 

「…汝に神罰がくだされん!」

 

詠唱は完成し、黒い点は空間圧縮限界を迎える。エネルギーが光輝き、付近の物質を吸い込みながら光はどんどん大きくなる。空間圧縮によって微力の重力が生じて石ころが浮かび上がる。

 

「"イクシオンレーザー"だ!」

 

次の瞬間、ファルタスを中心に帯状の光が発射され、前方に猛烈なエネルギーの塊が射出された。高質量のエネルギーの塊は、周囲の空気を一瞬で押しのけながらマッハ7以上の高速で古の魔法帝国の兵器に向かっていった。

 

ゴォォォォォォンンンン!

 

耳を閉じたくなる様な轟音が鳴り響き圧倒的なエネルギーが解放されたことで土煙が舞っている。この威力に自衛隊の面々は超電磁砲(レールガン)を思わせた。

 

やがて、土煙が収まるとそこにはファルタスの前方を直線上に抉った跡と、横たわる大型の物体だった。それは、沈黙しており誰もがやっつけた物だと思った。

 

緊張の糸が解れたマギカライヒ共同体の首都防衛隊は安堵の余り勝利の雄叫びを挙げる。しかし、それに水を差すように敵だった物は起き上がり此方に指を向けてきたのだ。この場にいるもの全員が絶望した。その不死身の能力にだ。だが、陸上自衛隊はある物の使用に踏み切った。

 

そう、超電磁砲(レールガン)だ。稲荷神は、その余りある生命力に最大火力をぶち込もうと考えたのだ。

 

超電磁砲(レールガン)は魔王リョノスに向けて真っ直ぐ発射された。この場にいたファルタスもルイジルもその他兵士達も何が起きたのか理解出来なかった。何かの発射音がした頃には爆発が起きていたからだ。

 

超電磁砲(レールガン)の直撃を受けた魔王リョノスは満身創痍どころか瀕死に陥っても可笑しくない状態だった。MGZ型魔導アーマーは陸上自衛隊の戦車砲で機能停止状態に追い込まれ、ファルタスの"イクシオンレーザー"で完全に破壊された。

 

しかし、魔王リョノスは防御魔法と自身の高い魔法耐性で耐え抜いた。そして、余った魔力でこの場にいる全ての者を殺そうとしたが、それよりも早く超電磁砲(レールガン)の攻撃を受けてしまった。

 

MGZ型魔導アーマーは木っ端微塵になり、両手両足は吹っ飛び、腹部は陥没し、頭部正面はガラスの破片を受けて見るも耐えない姿になっている。全身も火傷を負い、這わなければ動く事も出来ない。

 

リョノスは困惑していた。絶対の自信を持っていたMGZ型魔導アーマーが破壊されたばかりか、魔力を伴わない攻撃に彼は翻弄されていた。

 

「いたぞ!捕まえろ!」

「逃がすな!」

 

彼が下等種と思っていた人間が多数押し寄せてくる。何とか逃げようとするが、下半身不随、下手したら下半身が上半身と別れるレベルの損傷を負ったリョノスは逃げられず、マギカライヒ共同体に捕らえられた。

 

その後は、古の魔法帝国の情報を引き摺り出す為に、神聖ミリシアル帝国に引き渡された。彼は、生き恥をかくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、稲荷神や自衛隊幹部は空母出雲でリョノスに関する調査書を読んでいた。

 

「先日捕まえた古の魔法帝国の生物兵器リョノスですが、素の防御力は高くありません。幕末の主力戦車"97式中戦車"の主砲で貫けるかどうかのレベルです。しかし、防御魔法と併用した場合12式戦車の主砲弾の威力を緩和する程の防御力となります。流石に超電磁砲(レールガン)に耐える程度では無いです」

 

自衛隊幹部が続ける。

 

「リョノスが着用していたアーマーですが、塔の中にあった類似の物を解析した結果、身体能力の大幅増加と魔法耐性がある物と思われます。これにより、あれ程の攻撃を受けて生存していたのだと考えられます」

 

資料をめくるように促され、めくるとそこには、リョノスによって破壊された丘の写真があった。

 

「攻撃力ですが、大型榴弾砲や空爆並みの威力が出る模様ですが、これらは誘爆しやすいらしく、戦車砲や誘導弾、レーザー等で破壊可能です。結論として、現在の自衛隊の装備であれば古の魔法帝国の生物兵器に対抗可能です。しかし、防御魔法を使用されると威力が減衰するらしく、防御魔法或いは結界の無力化ないしは、それらを上回る攻撃が必須です」

 

そう言って幹部は着席した。これを聞いて、稲荷神は決断する。

 

「防御魔法や結界についてですが、神聖ミリシアル帝国を始めとした第一文明圏の魔法国家と協同して無力化出来る方法を模索して下さい。最悪私が出ても良いのですが、私がその場に居ない可能性も充分に考えられます。また、遺跡の遺産解析を神聖ミリシアル帝国と協同して行い、対抗兵器を模索して下さい」

「はっ!」

 

稲荷神の提案は早急に行動に移される事になる。

 

ファルタスだが、マギカライヒ共同体での活躍が内外に知れ渡り国の英雄と呼ばれた。マギカライヒ共同体からは、留学の話が相次ぎ中央法王国のメンツは回復したのだった。






〜コラム〜

超電磁砲車両

装甲車の様な車体に超電磁砲を取り付けた代物。電力は充電式であり、予備電源は後方部隊が運ぶ。撃てて数発であり、現実より技術が進んでいてもこの問題は解決出来ていない。いや、正確には解決出来なかったと言うべきだろう。その理由は、またいつか述べるとしよう。

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※これから数日は用事で投稿が遅れます。

これから登場する兵器について

  • 核兵器
  • 光学兵器
  • その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)
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